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○結核患者収容モデル事業の実施について

(平成四年一二月一〇日)

(健医発第一四一五号)

(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)

平成三年五月十七日付公衆衛生審議会の意見具申「結核患者収容施設のあり方について」に示された、結核患者を医療上の必要性に応じて一般病床においても適切に収容するための体制の整備について、今般、別添「結核患者収容モデル事業実施要領」により実施することとしたのでご了知願いたい。

別添

結核患者収容モデル事業実施要領

1 事業の目的

本事業は、平成三年五月十七日付公衆衛生審議会の意見「結核患者収容施設のあり方について」及び平成十一年六月三十日付同審議会の意見「二十一世紀に向けての結核対策」並びに平成十四年三月二十日付厚生科学審議会感染症分科会結核部会報告「結核対策の包括的見直しに関する提言」の趣旨を踏まえ、結核患者の高齢化等に伴って複雑化する、高度な合併症を有する結核患者又は入院を要する精神障害者である結核患者に対して、医療上の必要性から、一般病床又は精神病床において収容治療するためのより適切な基準を策定するためにモデル事業として行うものである。

2 事業実施者の要件

本事業の名称は「結核患者収容モデル事業」(以下「モデル事業」という。)とし、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五に定める病院であり、本要領に示す諸要件を満たすものの開設者のうち、都道府県知事、政令市市長又は特別区区長の推薦を受けた者であって、かつ、厚生労働省の指定を受けた者(以下「実施者」という。)が行う。また、モデル事業は、医療法第七条第二項第一号(一般病床)及び第五号(精神病床)において行うこととし、当該病院の開設者は事業実施に先立って、結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)第三十六条に基づく指定を受けなければならない。

なお、モデル事業を実施する病院は、結核予防法第二十九条に規定する「結核患者を収容する施設を有する病院」として同条に基づく結核患者の収容を行うことができるものとする。

3 結核患者の要件

(1) モデル事業において収容治療する結核患者の要件は、別紙「モデル病室に収容する結核患者の要件」による。

(2) モデル事業において、結核患者が別紙の要件に該当しなくなった場合には、速やかに結核病床において収容治療すること。

4 施設の構造及び設備に関する要件

(1) モデル病室及びモデル区域

結核患者を収容する病室(以下「モデル病室」という。)及びその周辺区域であって、モデル病室以外の病室(以下「一般病室等」という。)との境界内(以下「モデル区域」という。)の構造及び設備は次の要件を満たすこと。

ア 空気しゃ断

モデル病室又はモデル区域と他の病室等との境は、空気の流出をしゃ断する構造とし、出入口の扉は、病室の空気の循環にできるだけ影響を与えないよう、引き戸とし、扉は自動的に閉じる構造とすること。

イ 換気

① モデル病室及びモデル区域は独立した換気設備によることとし、その空気は直接屋外へ排気し、廃棄口は、他の建物の吸気口や病室の窓等から離して行うなど、他への感染の危険がないよう工夫すること。

② 一般病室等と共通吸気設備を使用する場合には、機械換気設備が停止しても逆流したり他の一般換気に混入することのないようにすること。

③ モデル病室及びモデル区域を陰圧に保つ設備の設置はさらに望ましいこと。

ウ 殺菌設備等

モデル病室及びモデル区域の空気を殺菌、除菌する設備を設置することが望ましい。

なお、この設備を設置する場合は、空気の流れ等を考慮し、最も有効な場所に設置するとともに、紫外線を使用するに当たっては、患者及び病院職員等の眼の安全確保に十分留意すること。

エ 手洗設備

常に適切な手指の流水洗浄・消毒ができる設備をモデル病室又はモデル区域内に設置すること。

オ 便所

便所は、原則として、モデル病室又はモデル区域内に設置することとするが、他の患者(結核患者でない患者をいう。以下同じ。)と共用の便所を使用する場合は、結核患者専用のトイレを設け、そのトイレには、紫外線殺菌灯等の殺菌設備を設置すること。

カ 浴室

浴室は、モデル病室又はモデル区域内に設置することが望ましいが、やむをえず結核患者と他の患者が共用する場合は、同時に使用させないこと。

キ 談話室等

談話室は、モデル病室又はモデル区域内に設置することとし、食事は配膳により、モデル病室又はモデル区域内で行わせるものとする。

(2) モデル病室及びモデル区域以外の施設

モデル病室及びモデル区域以外で結核患者が利用する主な施設の構造及び設備は次の要件を満たすこと。また、結核患者がモデル病室及びモデル区域からできるだけ近くにある施設、設備を使用できるよう配慮すること。

ア 処置室

モデル病室又はモデル区域に隣接して結核患者専用の処置室を設けることが望ましい。

イ エレベーター、廊下等

結核患者がエレベーター、廊下等を使用する場合には、なるべく他の患者との接触を少なくするよう配慮する。

ウ 殺菌設備等

モデル病室及びモデル区域以外の施設に空気殺菌等の設備を設置する場合は、空気の流れ等を考慮し、最も有効な場所に設置するとともに、紫外線を使用する場合は患者及び病院職員等の眼の安全確保に十分留意すること。

5 患者管理及び施設運営に関する要件

実施者は、結核が主に空気を介して感染することに十分留意し、当該施設の管理者(医療法第十条に定める管理者)をもって他の患者及び病院職員等に感染しないよう十分管理させること。

この際、次の要件を遵守すること。

(1) モデル病室及びモデル区域

ア 混合収容の制限

モデル病室に結核患者を収容している期間は、その病室に他の患者を同時に収容しないこと。

イ 気密性の維持

モデル病室の窓、扉及びモデル区域と一般病室等との境界に設置した扉は、室内の空気が不必要に流出しないよう必要最小限の開閉に止めるよう留意すること。

(2) モデル病室以外の施設

ア 診察室、処置室等の使用

診療のために使用する診察室、処置室等には、結核患者と他の患者を同時に入室させないこと。

イ 他の患者が使用する談話室、食堂等の使用

他の患者が使用する談話室、食堂等は、結核患者に使用させないこと。

ウ マスクの使用

感染性結核患者がモデル病室又はモデル区域を出る場合及び入室する職員や家族等と接する場合は、患者は通常のガーゼマスク又は使い捨てマスクを着用すること。

(3) 医療廃棄物等

結核患者に対する医療行為等により不要となった包帯、ガーゼ、マスク等の医療廃棄物及び患者が使用したティッシュペーパー等のごみの取扱いについては、「感染性廃棄物処理マニュアル」(平成四年八月十三日衛環第二三四号厚生省生活衛生局水道環境部長通知「感染性廃棄物の適正処理について」)に基づいて適切に処理すること。

(4) 看護の基準

モデル事業における看護の基準は、原則として既に承認されている基準看護によって行うこと。

(5) その他

モデル病室に収容する結核患者及びその家族等に対して、モデル事業の趣旨及び結核感染防止上の注意事項を十分周知徹底すること。

6 その他の要件

(1) モデル事業に従事する病院職員について、定期的に結核感染の有無を検査によって確認しなければならない。この際、ツベルクリン反応検査も行い、結果を記録して比較検討することが望ましい。

(2) モデル事業実施施設には、結核に関する診断、治療、看護及び院内感染防止について十分な知識、経験を有する医師及び看護師が常勤していることを原則とする。

(3) 院内感染防止、職員の健康管理及び研修等に関する事項を検討するための委員会を設置し、モデル事業を適正に実施するための運営組織を確立すること。

(4) 医師及び看護師等の病院職員を結核に関する研修会等、モデル事業の適正な実施に資する会合等に積極的に参加させること。

(5) 結核菌による曝露状況を把握するため、モデル事業に係る諸施設について定期的に結核菌有無の検査を行うこと。

(6) モデル事業実施施設の他の患者の中から結核が発生した場合は、結核予防法に基づく届出のほか、厚生労働省に連絡するとともに感染原因を究明し、もし、モデル事業の実施によって感染したことが判明した場合は、速やかに所要の改善を図ること。

(7) 実施者は、各年度におけるモデル事業の実施結果を別添様式により翌年度の五月末日までに都道府県、政令市及び特別区を経由の上、厚生労働省に報告すること。

(8) モデル事業の実施状況について厚生労働省が別途連絡する調査等に協力すること。

別紙

モデル病室に収容する結核患者の要件

モデル病室に収容する結核患者は、結核の治療が必要な者のうち、次の条件の一つ以上に該当する者とする。

① 合併症が重症あるいは専門的高度医療又は特殊医療を必要とする場合

② 合併症が結核の進展を促進しやすい病状にある場合

③ 入院を要する精神障害者である場合

別添様式 略