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○集団給食施設等に対する援助及び指導について

(平成八年四月三〇日)

(健医発第五四六号)

(各都道府県知事、各政令市市長、各特別区区長あて厚生省保健医療局長通知)

食品の生産、加工等の技術革新及び流通機構の整備など、社会環境の著しい変化に伴って集団給食施設における栄養管理のあり方も大きく姿を変えている。

また、地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律は、平成六年七月一日法律第八四号をもって公布され、住民に身近で頻度の高い保健サービスについては、市町村で一元的にきめ細かな対応を図ることとされたことに伴い、栄養改善法(昭和二七年法律第二四八号。以下「法」という。)の一部が改正され、特定多数人に対して継続的に食事を提供する施設(以下「給食施設」という。)に対し、今後とも必要な援助及び指導をすること並びに平成九年度より専門的栄養指導業務として位置付け、都道府県、保健所を設置する市及び特別区(以下「都道府県等」という。)に設置する栄養指導員がこれに当たることとされた。

このような状況を踏まえ、給食施設に対する援助及び指導の強化について、左記の事項に留意の上、管下の給食施設に対する指導方につき特段のご配意をお願いする。

なお、本通知は平成九年四月一日から施行することとし、同日付けをもって、昭和二七年九月一六日衛発第八七八号厚生省公衆衛生局長通知「集団給食指導について」及び昭和三三年一二月一八日衛発第一一五七号厚生省公衆衛生局長通知「集団給食施設の把握について」は廃止する。

第一 栄養管理及び指導の強化

一 給食施設等の把握

(一) 法第八条の二第一項第二号に基づき、給食施設に対して、栄養効果の十分な給食の実施、給食担当者の栄養に関する知識の向上及び食品の調理方法の改善等について、必要な援助及び指導を効率的に実施する観点から、関係給食施設について実態把握に努めること。

(二) 給食施設に対する援助、指導を効率的に行う観点から、給食の開始または廃止等の届出をなされるよう、関係施設の管理者等の理解と協力を得て行うこと。

二 管理栄養士並びに栄養士配置の促進

法第九条の二第三項に規定する集団給食施設には、管理栄養士の配置が義務付けられているところであり、配置の促進について指導を行うこと。なお、これ以外の集団給食施設については、同条第一項において給食施設の設置者は栄養士の配置に、また、同条第二項により給食施設の設置者は管理栄養士の配置について努力することになっているので、関係者等の理解と協力を求め、その指導に努めること。

三 都道府県等が行う給食施設指導の重点事項

(一) 都道府県等は、法第八条の二第一項第二号に基づき、給食施設に対して栄養効果の十分な給食の実施、給食担当者の栄養に関する知識の向上及び食品の調理方法の改善等について必要な援助及び指導を行うこと。

(二) 特に、集団給食施設であって栄養士を置かないものには、法第一〇条及び栄養改善法施行規則(昭和二七年厚生省令第三七号)第六条により、毎月一回以上栄養指導員により実地指導する旨規定されているところであり、この規定の励行に努めること。

(三) 都道府県知事、保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長は法第一一条の規定に基づき、栄養改善指導上必要があると認めるときは、集団給食施設の管理者から報告を求め、又は給食施設について栄養改善の見地から必要に応じて栄養指導員に必要な指導をさせること。

(四) 都道府県等は、少なくとも毎年一回以上管内給食施設の運営状況を把握するための調査を実施し、その結果に基づいて必要な指導を行うこと。

(五) 都道府県等が行う給食施設に対する栄養管理及び指導については、その効果的な実施に資するため、栄養管理上指導の必要性が高い給食施設に対して重点的かつ計画的に行うこと。

四 計画的な指導及び記録

(一) 都道府県等が行う集団給食施設等に対する指導は、年間を通じて計画的に行う個別指導(巡回指導等)とともに、必要に応じて集団指導を併せて行うこと。

(二) 個別指導の実施に当たっては、集団給食施設栄養報告書等の記録を十分活用すること。また、指導後には、集団給食施設栄養指導票等を発行するとともに事後の指導の資料として活用を図ること。

(三) 集団給食施設等には直営方式・委託方式等運営形態の違うものや多種の給食施設があるが、指導に当たってはこれらを十分考慮して行うこと。

五 関係機関等との連携

学校及び教育委員会と連携し、児童・生徒・学生及び教員に対する健康づくりへの動機づけと知識の普及を行うこと。また、企業と連携し従業員に対する健康づくりのための諸活動や栄養指導・栄養相談等の支援を行うこと。その他福祉施設等関係機関と連携し、喫食者や職員等の健康増進に寄与すること。

六 集団給食施設等の組織化及び育成

(一) 集団給食施設等に対する指導の効率化を図るため、喫食者を含めた給食関係者による給食委員会を設け、給食全般についての意見交換を活発に行わせるなど、常に施設全体で給食運営の改善に努めるよう指導すること。

(二) 集団給食施設等の管理者、栄養士、調理従業員などによる研究会、施設間の情報交換や必要な教育研修等を自ら行えるよう集団給食協議会等の組織化及び育成を図り、さらに給食運営の評価や改善が自主的に取り込むとともに、地域住民の健康増進に寄与する活動が行われるよう指導に努めること。

第二 集団給食施設等における栄養管理要領

集団給食施設等における栄養管理の運営については、特定多数人に対して継続的に食事を提供する観点から、その運営の適・不適が喫食者の健康状態に影響を与えるとともに、疾病の治癒や予防、さらには健康増進等に大きな役割を果たすものであることから次の事項に留意し、計画的に実施することが重要であること。

一 食品材料の選択・購入

(一) 食品材料の納品に当たっては、それぞれの給食施設において品質等を十分確かめ、適切に検収がなされるようにすること。

(二) 加工食品の使用に当たっては、原材料、栄養成分等の表示がなされているものを選択することを心がけ、定期的に納入業者の自主検査結果の提出を求めるなど衛生管理に努めること。

また、食品材料の選択に当たっては、新鮮な素材の購入に努めること。

(三) 食品材料の購入に当たっては、地域の食品材料の流通、価格等を検討し発注業務を行うとともに、常に価格変動等に着目するほか、複数の施設による共同購入など効率化に努めること。

なお、一括購入はその利点も多いが保管について特に注意すること。

二 献立の作成

献立の作成は、次の諸条件を考慮して一定期間(一週間、旬間、一か月)を単位に予定献立を作成すること。なお、予定献立に変更が生じた場合は、実施献立に明示すること。

(一) 荷重平均栄養所要量を用いる場合は、喫食者の年齢別、性別、生活活動強度別人員構成を考慮し、各施設毎に作成すること。この場合、給与エネルギー所要量は、各人の栄養所要量との差が±一〇%以内になることが望ましいこと。

(二) 算定された荷重平均栄養所要量が充足できるように食品構成表を作成すること。

(三) 献立は、喫食者に魅力ある給食とするため、各料理の組み合わせのほか、地方色あるいは季節感、行事食等を考慮し、変化に富んだ献立とすること。

(四) 給与栄養量の配分については、一律に一日の栄養量の三分の一等を配分するのではなく、喫食者の食習慣や給食以外の摂取栄養量等を勘案すること。

(五) 提供された給食の評価や内容の向上等を図るため、給食管理者による検食を行うこと。

(六) 複数献立や選択食(カフェテリア方式)のように、喫食者の自主性により料理の選択が行われる場合には、モデル的な料理の組合せを提示するように配慮すること。

三 給食関係帳簿の整備

給食関係業務を適切に実施するため、次の関係帳簿等を備えること。

(一) 喫食者の性、年齢、生活活動強度別人員構成及び荷重平均栄養所要量は、喫食者の性、年齢及び生活活動強度を考慮して定期的に算定すること。また、人事異動等により喫食者の性、年齢別人員構成が著しく変化した場合は、改めて算定すること。

なお、個々人のエネルギー所要量と荷重平均エネルギー所要量にかなりの差異がある場合には、栄養基準量を再区分してそれぞれ±一〇%以内に納まるようにすることが望ましいこと。

(二) 食品構成表

一人一日当たり荷重平均栄養所要量を用いて、食品群別の食品構成表を作成すること。

また、食品群別荷重平均成分表は、当該施設における使用食品の頻度に基づき作成すること。その際、地域において同種の施設が共同で作成している場合には、それを参考にしても差し支えないこと。

(三) 献立及び発注

献立は、食品構成表に基づき作成するものとし、食品の廃棄率を考慮した使用量に給食人員を乗じた量及び検食、保存食が確保できるよう発注が行われるようにすること。

(四) 栄養出納表

給食の実施状況に基づき一定期間(一週間、一〇日間、一か月等)の食品群別給与量を算出し、適切に給食が行われているか確認すること。

(五) 食料品消費日計表及び在庫量表

当日使用する生鮮食品については伝票でも良いが、在庫量表の受け払いについては正確に記録する必要があること。また、使用量は実施献立表等と一致していること。

(六) 給食日誌等

給食日誌等は、給食作業の円滑化を図るとともに衛生管理上の観点からも備えること。

(七) 委託契約書等

委託契約を交わしている場合は、委託契約の内容が確認できるよう委託契約書等を備えること。

四 調理作業

給食施設における調理は、法第一一条の二に基づき当該施設が栄養指導員の指導を受けている場合にあっては、栄養指導員の栄養指導に従って行わなければならないので、次の点に留意して指導すること。

(一) 調理従事者は、食品の合理的な取り扱いについて衛生及び栄養に関する知識を充分に備えること。

(二) 常に調理技術の向上に努めること。

(三) 調理作業を合理的かつ科学的に行うため、調理機器の整備、配置等について絶えず研究すること。

(四) 調理従事者が、作業を円滑に実施するために「調理作業基準表」、「作業予定表」等を作成し、調理作業の効率化に努めること。

(五) 給食従事者の労働力、設備等により調理作業方法等を考慮する必要があるが、常に労働力及び施設設備の合理化に努めること。

五 配食作業

喫食者の給食の効果を高めるには、盛り付けや適温での配食が大切であり、次の点に留意すること。

(一) 盛り付けは、荷重平均栄養所要量に沿ったものとなるよう配分に努めること。

(二) 料理の温度や味を損なわず、調理終了後短時間に配食ができるよう配食機具等(例 保温・保冷配膳車、保温食器、カフェテリア方式等)の設備を整えるとともに、その改善に努めること。

六 衛生管理

衛生管理上、次の点に留意すること。

(一) 調理従事者の健康管理(毎月一回以上の検便を含む。)に留意するとともに、管理者は健康診断結果を保管すること。

(二) 食中毒対策上、配食後食事の一部を四八時間以上冷蔵保存すること。

なお、都道府県において七二時間以上の保存を指導されている場合には、それに従うこと。

(三) 給食施設・設備・器具等の洗浄・消毒及び保管には、常に衛生的な配慮を心がけること。

(四) 食品材料については、保管中の細菌の増殖防止等に配慮すること。

(五) 調理作業過程(加熱・冷却操作を含む。)において衛生的な取扱いが行われるよう十分配慮すること。

七 非常災害時における対応

非常災害時における対応としては、計画的に施設・設備全体の点検を行うとともに、非常食、食器の備蓄、調理関係従事者の教育、他部門の理解と協力体制を得るなど総合的な体制の整備を図ることが重要であること。

また、それぞれの施設の特殊性を考慮し、非常時に備えた体制の整備を図ることが必要であること。

八 栄養管理及び事務管理等の合理化

栄養管理及び事務管理の合理化、各種調査の効率的な実施並びに喫食者の栄養指導の充実を図るため、常に業務内容の改善への検討を行うことは勿論のこと、必要に応じてコンピュータの導入なども考慮すること。

九 各種調査・研究

給食の効果を高めるために、次の調査・研究に努めること。

(一) 喫食者の健康状態及び日常の食生活を把握すること。

(二) 喫食状況を調査するほか、残食調査、嗜好調査等を行うこと。

(三) 必要に応じて給食に要する人員、作業時間、作業環境、配膳方法等作業の効率化等について検討すること。

(四) 検食記録の分析や健康管理状況等給食に関する評価を行うこと。

(五) 給食運営の向上を図るため、施設間等の調査・研究に努めること。

一〇 喫食者等に対する健康・栄養教育

喫食者等に対し献立表の掲示やエネルギー、たんぱく質、脂質及び食塩等の主要栄養成分の表示を行うなど、健康や栄養に関する情報の提供に努めること。

また、給食は、喫食者が正しい食習慣を身につけ、より健康的な生活を送るために必要な知識を習得する良い機会であるので、各々の施設に応じ喫食者及びその家族等を含めて各種の媒体を活用するなど積極的に健康・栄養教育に努めること。

さらに、給食を通じ望ましい栄養摂取のあり方などの指導を実施することは、喫食者はもとよりその家族や地域の栄養改善を推進するうえで重要な役割をもっているので、集団給食施設等における栄養管理は、栄養・食生活改善を通じて、積極的に地域住民の健康づくりに寄与するものとなるよう配慮すること。