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○第四次改定日本人の栄養所要量の取り扱いについて

(平成元年一一月九日)

(健医健発第八九号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局健康増進栄養課長通達)

第四次改定日本人の栄養所要量(以下「改定栄養所要量」という)については、平成二年四月から使用することとし、平成元年九月二五日付け健医発第一一七八号をもって厚生省保健医療局長から通知されたところであるが、その使用に当たっては、左記の取り扱い事項に十分留意の上関係事業の推進のための資料として、効果的に活用されるよう貴管下関係機関等への周知方よろしくご配意願いたい。

1 改定栄養所要量の基本的考え方と改正の要点

(1) 個々人の健康づくりに利用しやすい栄養所要量とした。

栄養所要量は、性別、年齢別に平均的な体位を有する者を基礎として算定されており、このため、性、年齢が同じでも、身長、体重が異なる個人には適用できないという問題があった。そこで前回、個人を対象とした性別、年齢別、生活活動強度別、身長別の栄養所要量を示したところであるが、今回は、これをさらに一歩進め、個人がより適切に使用できるものに改定した。

(1) 個人別エネルギー所要量(目安)の簡易算出式を示した。

性別、年齢階層別、生活活動強度別、身長別のエネルギー所要量(目安)を、自分の身長にあわせて簡単に算出できる計算式を示した。

(2) エネルギー所要量算定の基礎となる生活活動指数の計算方法を示した。

エネルギー所要量は、生活活動強度により大きく変化するが、その区分の仕方については必ずしも明確なものが示されていない。

今回、これを各種生活動作のエネルギー代謝率(RMR)と生活時間配分とにより算出する計算方法を示し、より適切な生活活動強度が算出できるようにした。

(2) 高齢者社会により適切に対応できる栄養所要量とした。

高齢化社会の進行に伴い健康に気を使う老人が増えてきたこと。また、高齢者においては若年層に比べ個人差が大きくなってくること等を配慮し、より適切な対応ができるようにした。

(1) 栄養所要量の年齢区分は従来、二○歳以上については一○歳きざみで示していたが、六○歳代、七○歳代については年齢区分を五歳きざみとした。

(2) 特に、高齢者との関係の深いビタミンE及び虚血性心疾患と関連するマグネシウムについて目標摂取量として示した。

2 改定栄養所要量を活用した今後の栄養指導の進め方

今後の健康づくり対策については、個々人の自覚を促し、日常生活において、栄養・運動・休養のバランスに配慮することが基本であり、今回の改定にあたっても、こうした考え方に基づき日常生活の内容を総合的に考慮して生活活動強度を判別することとし、更に、自分の身長に見合ったエネルギー所要量の簡易算出式を示したところである。また、日常生活において増やすことが望ましい生活活動と付加運動によるエネルギー消費量の目安については運動所要量とあわせた適切な活用が望まれる。従って、今後、改定栄養所要量を活用し、栄養指導を行うに当たっては、生活活動強度判別の際に得られる情報を十分に活用するなど、栄養面だけでなく、運動や休養の面も含めた幅広い指導を行うことが望ましい。

3 改定栄養所要量の別表別用途

栄養所要量は別表一~別表一三をもって構成されているが、栄養指導の対象と目的によってその用途は異なるので、それぞれの表の用途を正しく理解して使用すること。

① 別表一 成長期および生活活動強度Ⅱ(中等度)における栄養所要量

この表は成長期および生活活動強度Ⅱ(中等度)に該当する者の平均的な栄養所要量である。

なお、この表は性別、年齢別に日本人として平均的な体位(身長・体重)の人間を想定し、それが健康を保ち、身体的に健全に発達し、能率のよい生活を営むために摂取することが望ましい栄養素量として策定されたものである。

従って、この表で示した栄養所要量は成長期または生活活動強度Ⅱ(中等度)に該当する者の集団を対象として給食を行う場合等に用いること。

② 別表二 生活活動強度Ⅰ(軽い)における栄養所要量

この表は生活活動強度Ⅰ(軽い)に該当する者の平均的な栄養所要量であるが、これに該当する者は健康増進の観点から生活活動量が十分でないという位置付けがされるものであって、この栄養所要量をそのまま適用したのでは、対象者の健康増進を図ることは期待しにくいので生活活動量を高めることが望ましい。

従って、この表で示した栄養所要量は生活活動強度を「Ⅱ(中等度)」のレベルまで高めることが困難な者の集団を対象として給食を行う場合等に用いること。

なお、妊婦・授乳婦の所要量については、この表に「付加量」で便宜上示されているが、妊婦・授乳婦の生活活動強度はすべてⅠ(軽い)ということではなく、おのおの生活活動強度に応じたものとすること。

③ 別表三 生活活動強度Ⅲ(やや重い)における栄養所要量

この表は生活活動強度Ⅲ(やや重い)に該当する者の平均的な栄養所要量である。従って、この表で示した栄養所要量は生活活動強度Ⅲ(やや重い)に該当する者の集団を対象として給食を行う場合等に用いること。

④ 別表四 生活活動強度Ⅳ(重い)における栄養所要量

この表は生活活動強度Ⅳ(重い)に該当する者の平均的な栄養所要量である。従って、この表で示した栄養所要量は生活活動強度Ⅳ(重い)に該当する者の集団を対象として給食を行う場合等に用いること。

⑤ 別表五

生活活動強度Ⅰ(軽い)の男子における年齢階層別、身長別栄養所要量

別表九

生活活動強度Ⅰ(軽い)の女子における年齢階層別、身長別栄養所要量

これらの表の栄養所要量は生活活動強度Ⅰ(軽い)に該当する者、すなわち、日常生活の中で歩く時間が二時間以下及び立っている時間が二時間以下の個人に適用することができる。しかしながら、これに該当する者は健康増進の観点からもっと生活活動量を高めてエネルギー消費量を増やす必要があるので、この表の栄養所要量をそのまま適用するのではなく、日常の生活活動の内容を変えたり、余暇に運動やスポーツを実施するなど運動を付加することによって生活活動強度Ⅱ(中等度)のレベルまでエネルギー消費量を増やすよう指導を行うこと。

⑥ 別表六

生活活動強度Ⅱ(中等度)の男子における年齢階層別、身長別栄養所要量

別表一○

生活活動強度Ⅱ(中等度)の女子における年齢階層別、身長別栄養所要量

これらの表の栄養所要量は、生活活動強度Ⅱ(中等度)に該当する者、すなわち、日常生活の中で歩く時間が二時間から四時間以下及び立っている時間が二時間から六時間以下である個人に適用することができる。

⑦ 別表七

生活活動強度Ⅲ(やや重い)の男子における年齢階層別、身長別栄養所要量

別表一一

生活活動強度Ⅲ(やや重い)の女子における年齢階層別、身長別栄養所要量

これらの表の栄養所要量は、生活活動強度Ⅲ(やや重い)に該当する者、すなわち、日常生活の中で歩く時間が二時間から四時間以下、立っている時間が六時間から九時間以下及び筋肉運動が一時間程度である個人に適用することができる。

⑧ 別表八

生活活動強度Ⅳ(重い)の男子における年齢階層別、身長別栄養所要量

別表一二

生活活動強度Ⅳ(重い)の女子における年齢階層別、身長別栄養所要量

これらの表の栄養所要量は、生活活動強度Ⅳ(重い)に該当する者、すなわち、日常生活の中で歩く時間が四時間、立っている時間が九時間を超し、さらには筋肉運動も一時間程度など農耕作業、運材作業等、ほとんど座ることがなく、立ったり、歩いたり、走ったり、力仕事して全身の筋肉を使っている個人に適用することができる。

⑨ 別表一三 生活活動と付加運動によるエネルギー消費量

この表は、エネルギー消費量の減少から派生する肥満、体力低下などの諸問題を未然に防止し、健康の維持・増進を図るために現在のわが国の社会における限定された条件のもとで、適当とされる生活活動と付加運動量の目安を示したものである。余暇時間に運動やスポーツを行うことは望ましいことではあるが、すべての人々にそれを期待することは容易でない。一方、人によっては特別に運動やスポーツをしなくても、日常生活の過ごし方を変えることによって適正付加運動量のレベルまでエネルギー消費量を高めることが可能である。

従って、別表一三は対象者の生活活動強度に応じて、生活活動の内容を変えるよう指導したり、また、余暇に運動やスポーツを実施することによってエネルギー消費量を高めるよう指導を行う場合の目安として用いること。

なお、この付加運動の目安量は望ましいエネルギー消費水準をはかるという視点から、運動の質的内容を特に限定しないものであることに対し、これに質的な面を考慮に入れたものが平成元年七月に発表された運動所要量といえる。両者を対象者の状況や指導目的に応じて適切に活用することが大切である。

4 改定栄養所要量の利用上の注意

改定栄養所要量を利用するにあたっては、次の諸点に十分に留意すること。

(1) 別表一~四で示した栄養所要量は平成七年における日本人の性別、年齢別体位(身長・体重)の推計基準値を基礎として算定されているので、個々人にそのまま適用すべき数値ではない。個人に対して栄養所要量を示す場合は別表五~別表一二によること。

(2) 生活活動強度については、一日の生活内容を総合的に考慮のうえ、具体的には五の日常生活活動強度区分の目安により判別すること。

(3) 生活活動強度「Ⅰ(軽い)」に該当する者は、健康づくりのために日常の生活活動の内容を変えるか、または運動を付加することによって、別表Ⅰの生活活動強度「Ⅱ(中等度)」に相当するエネルギー量を消費することが望ましいので、別表一三によって指導を行うこと。

(4) 別表一三で示した「生活活動と付加運動によるエネルギー消費量」は、日常生活活動強度ごとに栄養所要量に付加して消費を増やすことが望ましいエネルギー量であって、これには安静時代謝量は含まれていないこと。なお、対象者の健康状態を十分勘案して指導を行うこと。

(5) 栄養指導を行うにあたっては、栄養所要量の数値をそのまま用いるだけでなく、所要量を充足するためにどのような食品をどれくらい取ったらよいのか、具体的に食品構成として示すことが大切であること。

5 日常生活活動強度の判別

(1) 日常生活活動強度区分の目安

生活活動の強度は、一日の日常生活の内容を総合的に考慮して判別することとし、これを判別する目安として表一―二「生活活動強度の区分」が示されたところである。しかし、ただし書きにもある通り、ここに記してある平均RMRは関連動作を含む集団の平均的な数値であり、個々人に適用すべきものではない。

個々人における生活活動指数の算出に当たっては表Ⅰ―一二「日常生活活動と運動の強度の目安」をもとに次式により計算すること。

X=(9/10)×((t3×0.9+Σ(RMR+1.2)tw)/(24×60(分)))-1

X:生活活動指数

t3:睡眠時間(分)

tw:各種動作に要した時間(分)

〔t3+twは24時間(1440分)になること〕

なお、比較的大多数の者を対象として生活活動強度の判別を行うに当たっては、簡便のため次に示す「別表 日常生活活動強度判定の目安」を用いてもよいこと。

別表 日常生活活動強度判定の目安

生活活動強度

判定基準の目安

(参考)職種の例

Ⅰ(軽い)

日常生活の中で歩く時間

2時間以下

○技術的な仕事

○事務的な仕事

○管理的な仕事

○上記に類似した内容の仕事

○幼児のいない専業主婦

立っている時間

2時間以下

Ⅱ(中程度)

日常生活の中で歩く時間

2~4時間

○製造業、加工業

○販売業、サービス業

○上記に類似した内容の仕事

○乳・幼児の世話に手間のかかる主婦

○自営業の主婦

たっている時間

2~6時間

Ⅲ(やや重い)

日常生活の中で歩く時間

2~4時間

○農耕作業

○漁業作業

○建設作業

○上記に類似した内容の仕事

たっている時間

6~9時間

筋運動

1時間程度

Ⅳ(重い)

上記Ⅲ以上あるいは右記に示したような仕事中にほとんど座ることなく、立ったり、歩いたり、走ったり、力仕事をして全身の筋肉を使っている。

○伐木・運材作業

○農繁期の農耕作業

○プロのスポーツ選手

○上記に類似した内容の仕事