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○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律における大都市特例の施行について

(平成八年三月二一日)

(健医発第三二三号)

(各都道府県知事、各指定都市市長あて厚生省保健医療局長通知)

精神保健法等の一部を改正する法律(平成五年法律第七四号)により、精神保健法(平成七年法律第九四号により「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改正)第五一条の一二の大都市特例の規定が設けられ、平成八年四月一日に施行されることとされているが、今般、平成八年一月四日政令第一号により「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令及び地方自治法施行令の一部を改正する政令」が、また、平成八年三月二一日厚生省令第一〇号により「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が公布され、大都市特例の施行のための政省令の規定が定められた。その内容及び留意事項は左記のとおりであるので、円滑な施行に特段の御配意を図られたい。

第一 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令及び地方自治法施行令の一部を改正する政令について

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「法」という。)第五一条の一二第一項の規定により指定都市が処理し、又は指定都市の市長その他の機関若しくは職員が行う事務については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(以下「令」という。)第一三条によって、その内容は、地方自治法施行令第一七四条の三六の二に定めるところによるものとされ、具体的には、以下のとおりである。

(一) 移譲する事務の内容(地方自治法施行令第一七四条の三六の二第一項関係)

法及び令に定める都道府県又は都道府県知事その他の都道府県の機関(以下「都道府県等」という。)が処理し又は管理し及び執行する事務は、都道府県立精神病院の設置(法第一九条の七)を除いて、全て指定都市又は指定都市の市長その他の指定都市の機関(以下「指定都市等」という。)が処理し又は管理し及び執行する事務とすること。また、法及び令の中、都道府県等に関する規定は、都道府県立精神病院の設置に係る規定及び(二)から(五)に掲げるものを除き、指定都市等に適用があるものとすること。

このため、具体的には、

① 指定都市は、法第六条の精神保健福祉センターを設置することができる。また、国は、法第七条の規定に基づき、指定都市が設置する精神保健福祉センターの設置又は運営に要する経費の一部を補助する。

② 指定都市の市長は、法第一九条の四第二項の規定に基づき、精神保健指定医に対して、同項に定める職務を指定をすることができる。

③ 法第一九条の七の都道府県立精神病院の設置義務は、指定都市には適用されない。このため、指定都市立の精神病院には、法第一九条の一〇第一項の都道府県立精神病院に対する国の補助規定は適用されず、同条第二項の補助規定が適用される。

なお、国の補助率は「保健衛生施設等施設・設備整備費の国庫負担(補助)について」(昭和六二年六月三〇日厚生省発健医第一七九号厚生事務次官通知)で定められているとおり、市町村立には都道府県立と同様の二分の一の補助率が適用されているため、差異はない。

④ 指定都市の市長は、法第一九条の八第一項の規定に基づき、指定都市の区域内にある精神病院について、同項の指定病院の指定を行う。一方、指定都市を有する道府県の知事は、指定都市の区域を除いた当該道府県の区域にある精神病院について、指定病院の指定を行う。

なお、国立又は都道府県立の精神病院は、指定病院の指定を行わなくても措置入院の受け入れ病院となるが、指定都市立の精神病院は、措置入院の受け入れ病院となるためには、指定病院の指定を受けることが必要である。

⑤ 指定都市の市長は、その区域において、法第二三条から法第二六条の二までの規定による申請、通報又は届出を受けるとともに、法第二七条の規定による診察を行い、法第二九条から法第二九条の五までの規定による入院措置及びその解除等を行い、法第四〇条の仮退院の許可を行う。

⑥ 法第二九条の六から法第三一条までの規定により、指定都市は、指定都市の市長が行った入院措置に要する費用を負担し、国は、指定都市に対し、その負担に要する費用の一部を負担する。

⑦ 法第三二条から法第三二条の四までの規定により、指定都市は、指定都市の区域に居住地を有する者の通院医療に要する費用を負担し、また、国は、指定都市に対し、その負担に要する費用の一部を補助する。

⑧ 指定都市の市長は、その区域に所在する精神病院の管理者から、医療保護入院に係る法第三三条第四項又は法第三三条の二の規定による届出を受ける。

⑨ 指定都市の市長は、法第三三条の四の規定により、その区域に所在する精神病院について、応急入院に係る指定病院の指定及びその取り消しを行い、指定を受けた精神病院の管理者から、応急入院に係る届出を受ける。

⑩ 指定都市の市長は、法第三八条の二の規定により、その区域に所在する精神病院の管理者から措置入院者及び医療保護入院者についての定期の報告を受け、法第三八条の三の規定により、精神医療審査会の審査を受け、その結果に基づく措置を講じる。

⑪ 指定都市の市長は、法第三八条の四の規定により、その区域に所在する精神病院に入院中の者から退院等の請求を受け、法第三八条の五の規定により、精神医療審査会の審査を受け、その結果に基づく措置を講じる。

⑫ 指定都市の市長は、その区域に所在する精神病院について、法第三八条の六の報告徴収等を行い、法第三八条の七の改善命令等を行う。

⑬ 指定都市の市長は、その区域に居住地を有する精神障害者に対し、法第四五条の精神障害者保健福祉手帳の交付を行う。

⑭ 法第五〇条第一項の社会復帰施設の設置及び法第五〇条の三第一項の地域生活援助事業(グループホーム)の実施については、社会福祉事業法に大都市特例が設けられていないことから、手続面を同法に委ねている精神保健福祉法においては、指定都市にはこれらの規定を適用せず、それぞれ法第五〇条第二項又は法第五〇条の三第二項によることとしたものである。

このため、指定都市の区域において、国又は都道府県以外の者(指定都市を含む。)が社会復帰施設又はグループホームの事業を開始したときは、第二種社会福祉事業として、社会福祉事業法第六四条の届出を都道府県知事に対して行う必要がある。

⑮ 指定都市は、法第五〇条の四の社会適応訓練事業を行うことができる。

⑯ 指定都市は、法第五一条の規定により、その区域の社会復帰施設の設置者及び地域生活援助事業(グループホーム)の実施者に対し、費用の一部を補助することができ、国は、指定都市に対しその補助に要する費用の一部を補助することができる。また、国は、指定都市が行う社会適応訓練事業に要する費用の一部を補助することができる。

なお、指定都市が社会復帰施設を設置し、又はグループホームを行う場合についても、補助要綱に基づき、国は直接に指定都市に対して補助を行うものである。

(二) 地方精神保健福祉審議会及び精神医療審査会の設置(地方自治法施行令第一七四条の三六の二第二項、第三項及び第五項関係)

都道府県と同様に、指定都市に地方精神保健福祉審議会及び精神医療審査会を置くものとすること。また、指定都市に置かれるこれらの機関については、都道府県に置かれる当該機関の規定を、所要の読み替えを行って準用すること。

なお、指定都市に置く審議会及び審査会の委員については、都道府県の審議会又は審査会の委員と重複してもさしつかえない。

(三) 越境措置の場合の特則(地方自治法施行令第一七四条の三六の二第四項関係)

措置入院者について、法第二九条の五(措置症状消退届)、法第三八条の二第一項(定期病状報告)、法第三八条の四(退院等の請求)及び法第四〇条(仮退院の許可)の規定を適用するときは、これらの規定中「都道府県知事」とあるのは「その入院措置を採った都道府県知事又は指定都市の市長」と読み替えるものとすること。

措置入院に当たっては、これまで、都道府県の区域内の精神病院に措置を行うのが通例であったが、大都市特例の施行後は、道府県内での精神病院の立地の偏りのため、指定都市が指定都市の区域外の精神病院に措置し、又は道府県が指定都市の区域内の精神病院に措置する、いわゆる越境措置が行われることとなる。

指定病院には、その指定を行った知事・市長のみならず、他の知事・市長も措置を行うことができるが、定期病状報告等の提出先は、法の規定では、精神病院の所在地を管轄する知事・市長とされているため、越境措置の場合には措置主体と報告等の提出先が異なってしまうことから、大都市特例の場合には、これを入院措置を採った都道府県知事又は指定都市の市長と読み替え、次のような取扱いとするものである。

① 法第二九条の五の措置症状消退届は、精神病院の所在地の最寄りの保健所長を経由して、入院措置を採った知事・市長へ提出する。

② 法第三八条の二の定期病状報告は、措置入院患者の場合は、精神病院の所在地の最寄りの保健所長を経由して、入院措置を採った知事・市長へ提出する。なお、法第三八条の三による審査は、同条により、報告書の提出を受けた知事・市長がその都道府県・指定都市の精神医療審査会に審査を求め、その結果の通知を受けた知事・市長が退院措置を講じるとされているため、入院措置を採った知事・市長及び当該都道府県・指定都市に置かれた精神医療審査会が行うこととなる。

③ 法第三八条の四の退院及び処遇改善の請求は、措置入院者の場合は、入院措置を採った知事・市長に対して直接行う。なお、法第三八条の五による審査は、同条により、請求を受けた知事・市長がその都道府県・指定都市の精神医療審査会に審査を求め、その結果の通知を受けた知事・市長が退院又は処遇改善のための措置を講じることとされているため、入院措置を採った知事・市長及び当該都道府県・指定都市に置かれた精神医療審査会が行うこととなる。

④ 法第四〇条の仮退院の許可は、入院措置を採った知事・市長が行う。

⑤ 精神病院に対する報告徴収(法第三八条の六)及び職権による改善命令(法第三九条の七第一項)は、入院措置に直接関わるものではないため、常に精神病院の所在地を管轄する知事・市長が行う。

なお、昭和五九年六月二二日衛発四二五号・医発第五八三号・社保発第六二号厚生省公衆衛生局長・医務局長・社会局長通知の二(三)に基づく措置入院者についての指定医の実地審査は、措置を採った知事・市長が行うものとする。

(四) 居住地変更届についての特則(地方自治法施行令第一七四条の三六の二第五項関係)

精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者が他の都道府県の区域に居住地を移した場合の令第八条第一項の届出について、指定都市の区域内から当該指定都市の区域外に、又は指定都市の区域外から指定都市の区域内に居住地を移した場合においても、同項に基づく届出を行うものとすること。

また、同条第二項に基づく新居住地の都道府県知事から旧居住地の都道府県知事への通知についても、指定都市に関して所要の読み替えを行うこと。

(五) 経過措置(附則第二項関係)

① 施行日前に都道府県等が行った処分その他の行為で現にその効力を有するものであって、施行日以後において指定都市等が行うこととなる事務に係るものは、施行日以後においては、指定都市等が行った処分その他の行為とみなすこと。

例えば、施行日前に行った指定病院の指定、入院の措置、通院医療費公費負担の患者票の交付、精神障害者保健福祉手帳の交付等は、それぞれ、精神病院の所在地、入院措置に至った経路、精神障害者の居住地等によって、施行日以後は、指定都市等が行うこととなる事務に係るものであるかどうかを区分けし、それについては、指定都市等が行ったものとみなされる。

② 施行日前に都道府県知事に対してなされた申請、届出その他の行為で、施行日以後において指定都市の市長が行うこととなる事務に係るものは、施行日以後は、指定都市の市長に対してなされた申請等とみなすこと。

例えば、施行日前に都道府県知事が受理した法第二三条から法第二六条の二までの規定による通報等や、法第三八条の二の定期病状報告、法第三八条の四の退院及び処遇改善の請求については、精神障害者の所在地、あるいは精神病院の所在地等によって、施行日以後であれば指定都市の市長が受理することとなるものであるかどうかを区分けし、それについては、指定都市の市長が受理したものとみなし、それに伴う診察、入院措置、審査等の事務は、指定都市において行うこととなる。

③ 施行日前に行われるべきであった措置に関する費用の支弁、負担及び徴収については、なお従前の例によること。

例えば、指定都市区域内に居住する者の通院医療費の公費負担は、平成八年三月診療分に係るものについては都道府県が負担するものとし、平成八年四月診療分に係るものについては指定都市が負担する。

第二 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則の一部改正

(一) 手帳の居住地変更届に係る規定の改正(規則第三〇条第一項関係)

同一の都道府県の区域内で居住地変更を行う場合のうち、指定都市の区域と指定都市の区域以外の道府県の区域との間の移動については、令第八条第一項の規定による届出を行うこととなるため、規則第三〇条第一項の届出の規定を適用しないこととすること。

また、同一の指定都市の区域内で居住地の変更を行う場合については、当該指定都市の市長に届出を行うものとすること。

(二) 読替え規定(規則第四一条関係)

規則の規定中の「都道府県知事」の字句を「指定都市の市長」に読み替えるものとすること。

なお、規則第一一条中の「都道府県」の字句は、指定都市に移譲されない都道府県立精神病院に関する規定であるから、読み替えは行わないものである。

(三) 別記様式の改正(別記様式第二号及び別記様式第三号関係)

別記様式中の都道府県の字句について、指定都市を加えること。

第三 その他

(一) 支払基金との契約の締結に関する事項

従来より、都道府県においては、措置入院及び通院医療費の公費負担に係る医療費の審査及び支払いの事務について、社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会と契約書及び覚書を締結してきたところであるが、指定都市においても同様の契約書及び覚書を締結すること。

(二) 精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)に関する事項

法第五〇条の三に基づく精神障害者地域生活援助事業については、「精神障害者地域生活援助事業(精神障害者グループホーム)実施要綱」(平成四年七月二七日付け健医発第九〇二号厚生省保健医療局長通知)により行われているが、指定都市の区域においてグループホームを運営しようとする場合は、同実施要綱の「三 運営主体の選定等」による都道府県知事の運営承認は、指定都市の市長が行うものとし、同実施要綱に基づく申請、届出、報告等は、指定都市の市長に対して行うものとする。

また、施行日前に、都道府県知事の指定を受けた精神障害者地域生活援助事業のうち、指定都市の区域に所在するものは、施行日以後は、指定都市の市長による指定を受けたものとみなすこと。

なお、社会福祉事業法第六四条に基づく事業開始の届出は、指定都市の区域のグループホームについても、都道府県知事に対して行うものであること。

(三) 精神障害者社会適応訓練事業に関する事項

法第五〇条の四に基づく精神障害者社会適応訓練事業については、「通院患者リハビリテーション事業実施要綱」(昭和五七年四月一六日付け衛発第三六〇号厚生省公衆衛生局長通知))により行われているが、指定都市の区域に居住する精神障害者についての本事業の実施については、指定都市が実施主体となり、同実施要綱に基づく運営協議会の設置、協力事業所登録の手続き、対象者登録の手続き、委託の手続き、訓練期間中の指導等を行うものとする。

また、施行日前に、都道府県知事が同実施要綱六(二)による対象者登録簿に登録している対象者であって、指定都市の区域に居住する者については、指定都市の対象者登録簿に登録を移すものとし、都道府県知事が実施要綱七(一)により協力事業所に対する委託契約を行っている者については、指定都市の市長が当該協力事業所と委託契約を結ぶものとする。また、施行日前に同実施要綱五(二)の協力事業所登録簿に登録している協力事業所については、指定都市の市長から対象者の委託契約を結ぶこととなる事業所は、指定都市の協力事業所登録簿に登録するものとする。

(四) 社会福祉・医療事業団の福祉貸付けに関する事項

社会福祉・医療事業団法第二一条第一項に規定する社会福祉・医療事業団法福祉貸付資金借入申込を行う場合については、社会福祉・医療事業団業務方法書第一八条により地方自治体の長の意見書を添付することとされており、その形式については、昭和六三年一二月一九日付け健医発第一四四〇号各都道府県知事宛て厚生省保健医療局長通知「精神障害者社会復帰施設に対する社会福祉・医療事業団の福祉貸付けについて」により行われているところであるが、指定都市の区域内に設置する精神障害者社会復帰施設については、指定都市の市長が意見書を添付するものとする。

(五) 「精神科救急医療システム整備事業実施要綱」(平成七年一〇月二七日健医発第一三二一号保健医療局長通知)による精神科救急医療システム整備事業及び「老人性痴呆疾患センター実施要綱」による老人性痴呆疾患センターの指定は、引き続き都道府県において行うものとする。

(六) その他

大都市特例の施行に当たっては、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(又は平成七年改正前の精神保健法若しくは昭和六二年改正前の精神衛生法)の施行に関してこれまで発出し、なおその効力を有する通知のうち、指定都市に移譲される事務に係るものについては、「都道府県」等とあるのを「指定都市」等と読み替えて指定都市に適用するものとする。