添付一覧
○精神障害者保健福祉手帳による税制上の優遇措置について
(平成七年九月一八日)
(健医発第一一五四号)
(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)
今般、精神保健法の一部を改正する法律(平成七年法律第九十四号)により、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第四十五条の規定が設けられ、「精神障害者保健福祉手帳」の制度が新たに創設されたところであるが、精神障害者保健福祉手帳による税制上の優遇措置については、左記のとおりであるので、精神障害者やその家族がその活用を図ることができるよう、十分な周知に努められたい。
なお、平成元年三月十七日付け健医発第二八八号当職通知「精神障害者に対する所得税法上の障害者控除の適用について」、同年四月二十一日付け健医精発第一七号精神保健課長通知「精神障害者に対する所得税法上の利子等の非課税制度の取扱いについて」、同年五月二十九日健医発第七二三号当職通知「精神障害者に対する地方税法上の障害者控除の適用について」、同年十二月六日健医精発第五三号精神保健課長通知「精神障害者に対する所得税法上の障害者控除の適用等に関する留意事項について」及び平成二年四月三日健医発第四九七号当職通知「精神障害者に対する相続税法上の障害者控除等の適用について」は、本月末をもって廃止する。
1 手帳による優遇措置の実施について
記
(1) 証明方法の変更及び対象範囲の拡大
精神障害者については、平成元年から所得税の障害者控除及び利子等の非課税が、平成二年度からは住民税の障害者控除、相続税の障害者控除、贈与税の非課税及び自動車税等の減免が、また、平成五年からは、法人税について精神障害者を多数雇用する公益法人等の収益事業の非課税がそれぞれ創設され、実施されてきたところである。
今般、精神保健法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成七年政令第二百七十八号)により、所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)、地方税法施行令(昭和二十五年政令第二百四十五号)及び法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)の一部が改正され、障害者控除等の対象となる精神障害者の範囲を、これまでの、障害年金一級から三級までの障害の状態と同程度の状態にある旨を証する都道府県知事の証明書を受けている者(特別障害者にあっては障害年金一級の障害の状態と同程度の状態にある旨を証する都道府県知事の証明書を受けている者)から、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者(特別障害者にあっては手帳に障害等級が一級である者として記載されている者)に改められたところである。
この改正により、証明手段が手帳に一本化されて事務手続の簡略化が図られるとともに、精神障害者保健福祉手帳の三級の対象範囲が、年金の三級の対象範囲よりも広いため、税制上の優遇が受けられる精神障害者の範囲も拡大されるものである。
(2) 変更に伴う経過措置
これまでの証明書交付事業は、平成七年十月一日より、手帳制度に移行するものであるが、従来の証明書の有効期間が二年(自動車税等については一年)であることから、税制上の優遇措置については、既に発行した証明書がなお効力を有する間については、手帳のほかに、従来の証明書でも対象とするものとする経過措置が設けられている。
2 精神障害者保健福祉手帳による税制上の優遇措置の内容
(1) 所得税:
① 障害者控除
本人又はその控除対象配偶者若しくは扶養親族が障害者である場合には、二七万円(特別障害者は三五万円)を所得金額から控除する。(所得税法第七十九条、同法施行令第十条)
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級から三級まで(手帳一級は特別障害者)
② 配偶者控除及び扶養控除の同居特別障害者加算
控除対象配偶者又は扶養親族が、特別障害者で、かつ、本人又はその配偶者若しくは本人と生計を一にするその他の親族のいずれかと同居を常況としている者である場合には、一般の配偶者控除又は扶養控除に加えて三○万円を所得金額から控除する。(租税特別措置法第四十一条の十四第一項)
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級。
③ 郵便貯金、預貯金等及び公債の利子所得等の非課税(老人等マル優)
障害者の
ア 元本三五○万円以下の郵便貯金(所得税法第九条の二、租税特別措置法第三条の四)
イ 元本三五○万円以下の預貯金、貸付信託、金銭信託、公社債、公社債投資信託、その他の証券投資信託(所得税法第十条、租税特別措置法第三条の四)
ウ 額面三五○万円以下の国債及び地方債(租税特別措置法第四条)
に係る利子等については、所得税を課さない。
ア、イ、ウそれぞれ前記の額を上限とするので、合計一○五○万円まで非課税。
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級から三級まで。
(2) 法人税:障害者等を多数雇用する公益法人等の収益事業の非課税
公益法人等が行う事業のうち、その事業に従事する者の総数の半数以上が障害者等であり、これらの者の生活の保護に寄与している事業については、課税対象の収益事業には含まれない。(法人税法施行令第五条第二項第一号ニ)
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級から三級まで。
(3) 相続税:障害者控除
相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続又は遺贈に係る法定相続人に該当し、かつ、障害者である場合は、その者に係る相続税額から、その者が七○歳に達するまでの年数各一年につき六万円(特別障害者については一二万円)の税額を控除する。(相続税法第十九条の四、同法施行令第四条の四)
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級から三級まで(手帳一級は特別障害者)
(4) 贈与税:特別障害者扶養信託契約に係る贈与税の非課税
特別障害者が、他の個人と信託銀行との間で、その特別障害者を信託の利益の全部の受益者とする特別障害者扶養信託契約が締結され、その契約に係る財産が信託されることにより信託受益権を有することとなる場合には、その契約に基づいてその信託がされる日までに、信託銀行の営業所等を経由して納税地の所轄税務署長に「障害者非課税信託申告書」を提出したときは、その信託受益権のうち、六○○○万円までの贈与税が非課税となる。(相続税法第二十一条の四)
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級。
(5) 住民税:
① 障害者控除
本人又はその控除対象配偶者若しくは扶養親族が障害者である場合には、二六万円(特別障害者である場合には二八万円)を所得金額から控除する。
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級から三級まで(手帳一級は特別障害者)
② 同居特別障害者配偶者控除及び扶養控除
控除対象配偶者又は扶養親族が、特別障害者で、かつ、本人又はその配偶者若しくは本人と生計を一にするその他の親族のいずれかと同居を常況としている者である場合には、一般の配偶者控除又は扶養控除に代えて五四万円を所得金額から控除する。(二一万円の加算に相当)
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級。
③ 障害者の非課税限度額
障害者であって、分離課税とされる退職所得を除外した前年中の所得が一二五万円以下の者については、住民税に係る所得割を課さない。
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級から三級まで。
(6) 自動車税、軽自動車税及び自動車取得税:障害者に対する自動車税等の減免
障害者又はその生計同一者が取得し、又は所有する自動車等で、当該障害者の通院等のためにその生計同一者が運転するものについては、自動車税、軽自動車税及び自動車取得税を全額減免する。
対象範囲は、精神障害者保健福祉手帳一級。
手続きについては、平成二年三月三十日健医精第一六号精神保健課長通知(平成七年九月十八日健医精発第四九号通知により改正)を参照のこと。