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○精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項について

(平成七年九月一二日)

(健医精発第四五号)

(各都道府県精神保健福祉主管部(局)長あて厚生省保健医療局精神保健課長通知)

精神障害者保健福祉手帳診断書の様式については、本日付け健医発第一、一三二号厚生省保健医療局長通知において別紙様式2として示されたところであるが、この診断書の記入に当たって留意すべき事項は別紙のとおりであるので、関係者への周知方よろしくお願いしたい。

(別紙)

精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項

Ⅰ 精神障害者保健福祉手帳の精神障害の判定と診断書

精神障害者保健福祉手帳の精神障害等級の判定は、(1)精神疾患の存在の確認、(2)精神疾患(機能障害)の状態の確認、(3)能力障害(活動制限)の状態の確認、(4)精神障害の程度の総合判定というステップを経て行われるが、このための情報は、精神保健指定医その他精神障害の診断又は治療に従事する医師によるもので、初診日から6か月以上経過した時点の診断書から得るものである。この診断書の記載にあたっては、統合失調症をはじめとした精神障害の診断又は治療全般に関する十分な見識に基づく判断が求められる。

Ⅱ 診断書記入に当たって留意すべき事項

1 「① 精神疾患の病名」

手帳の交付を求める精神疾患の病名を記載し、病名に対応するICDコード(F00~F99,G40のいずれかを2桁もしくは3桁)を付記記載するものとする。

2 「② 初診年月日」

手帳の交付を求める精神疾患について、初めて医師の診療を受けた日(初診日)の記載で、診断書が初診日から6か月以上経過した時点のものであることを明らかにし、精神障害により日常生活又は社会生活への活動制限又は参加制約を受けている期間を明確にするための情報である。その精神疾患について前医による治療経過がある場合には、前医の初診日を記載することになる。前医の初診日を確認することは困難なこともあるが、このような場合には、問診により記載する。

なお、初診日の記載が「診療録で確認」したものか、「本人又は家族等の申し立て」によるものかの別についても明らかにする。

3 「③ 発病から現在までの病歴及び治療の経過、内容」

精神障害の程度を総合的に判定するためには、精神疾患(機能障害)の状態や能力障害(活動制限)の状態の確認に基づいた精神障害の程度の総合的判定が必要であるが、そのためには、これまでの病歴や治療経過の他に生活の状況、障害福祉サービスの利用状況等さまざまな情報が有用である。

推定発病時期については、最初に症状に気づかれた時期を原則とするが、発達障害等明らかに出生直後からの問題に付随した場合は、出生時を推定発病時期と記入する。高次脳機能障害の場合は、発症の原因となった疾患の発症日を記入する。

4 「④ 現在の病状、状態像等」

診断書記入時の現症についての記載欄である。この欄には、診断書記入時点のみでなく、概ね過去2年間に認められたもの、概ね今後2年間に予想されるものも含めて記載する。

該当する状態像および症状の番号を○で囲む。

5 「⑤ ④の病状・状態像等の具体的程度、症状、検査所見等」

精神医学的見地から疾患(機能障害)の状態を具体的に記載する。また、当該状態像を裏付けるのに必要な検査やその検査所見及びその実施日を記載する。なお、病状等で検査施行が不可能な場合にはそれも記載する。

6 「⑥ 生活能力の状態」

能力障害(活動制限)の状態の確認のために必要な情報の記載欄。「1 現在の生活環境」については、診断書記入時点での状況を○で囲む。また、施設等に入所している場合には、施設名を記入する。

「2 日常生活能力の判定」欄及び「3 日常生活能力の程度」欄については、保護的な環境(例えば、病院に入院しているような状態)でなく、例えばアパート等で単身生活を行った場合、又は入所や在宅で家族と同居であっても支援者や家族がいない状況での状態を想定し、そのような場合での生活能力について、年齢相応の能力で判断し、記載する。また、現時点のみでなく、これまでおおむね2年間に認められ(高次脳機能障害の場合は現疾患発症以降に生活能力の低下が生じたことを確認する)、また、おおむね今後2年間に予想される生活能力の状態も含めて判定し記載する。

「2 日常生活能力の判定」欄は、(1)~(8)の各項目について自ら進んでできるかどうか、あるいは適切にできるかどうかについて判定し、それぞれ該当するものを○で囲むこと。この欄の(1)~(8)の各項目について以下に解説する。

・ 「(1) 適切な食事摂取」、「(2) 身辺の清潔保持、規則正しい生活」

洗面、洗髪、排泄後の衛生、入浴等身体の衛生の保持、更衣(清潔な身なりをする)清掃等の清潔の保持について、あるいは、食物摂取(栄養のバランスを考え、自ら準備して食べる)の判断等について自発的に適切に行うことができるかどうか、助言、指導、介助等の援助が必要であるかどうか判断する。

身体疾患がある場合に、例えば、「食事の摂取ができない」というような身体障害に起因する能力障害(活動制限)を評価するものではない。また、調理、洗濯、掃除等の家事の能力や、子どもや配偶者の世話をする等社会的役割の能力を評価するものではない。

・ 「(3) 金銭管理と買い物」

金銭を独力で適切に管理(必ずしも金銭が計画的に使用できることを意味しない)し、自発的に適切な買い物ができるか、援助が必要であるかどうか判断する。(金銭の認知、買い物への意欲、買い物に伴う対人関係処理能力に着目する。)

また、行為嗜癖に属する浪費や強迫的消費行動について評価するものではない。

・ 「(4) 通院と服薬」

自発的に規則的に通院・服薬を行い、病状や副作用等についてうまく主治医に伝えることができるか、援助が必要であるか判断する。

・ 「(5) 他人との意思伝達・対人関係」

1対1の場面や集団の場面で、他人の話を聞き取り、自分の意思を相手に伝えるコミュニケーション能力、他人と適切につきあう能力に着目する。

・ 「(6) 身辺の安全保持・危機対応」

自傷や危険から身を守る能力があるか、危機的状況でパニックにならずに他人に援助を求める等適切に対応ができるかどうか判断する。ただし、行為嗜癖的な自傷をもって「身を守れない」とするものではない。

・ 「(7) 社会的手続や公共施設の利用」

行政機関(保健所、市町村等)、障害福祉サービス事業その他各種相談申請等の社会的手続を行ったり、公共交通機関や公共施設を適切に利用できるかどうか判断する。

・ 「(8) 趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」

新聞、テレビ、趣味、娯楽、余暇活動に関心を持ち、地域の講演会やイベント等に自発的に参加しているか、これらが適切であって援助を必要としないかどうか判断する。

「3 日常生活能力の程度」欄では、日常生活能力について該当する番号を選んで○で囲むこと。この欄の(1)~(5)のそれぞれの障害の程度を例示すると、おおむね以下の通りである。

・ 「(1) 精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる。」

精神障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることができる。

・ 「(2) 精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける。」

例えば、一人で外出できるが、やや大きい(非日常的な)ストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である。デイケアや障害福祉サービス事業等を利用する者、あるいは保護的配慮のある事業所で、雇用契約による一般就労をしている者も含まれる。日常的な家事を本人が必要とする程度に行うことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。身辺の清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。引きこもりがちではない。自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切にはできないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。生活環境等に変化の少ない状況では病状の再燃や悪化が起きにくい。日常的な金銭管理はおおむねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。

・ 「(3) 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。」

例えば、付き添われなくても自ら外出できるものの、日常的なストレスがかかる状況が生じた場合にあっても対処することが困難である。医療機関等に行く等の習慣化された外出はできる。また、デイケアや障害福祉サービス事業等を利用することができる。食事をバランス良く用意する(必ずしも調理が上手にできることを意味しない)等の本人自身のための家事を行うために、助言や援助を必要とする。身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。社会的な対人交流は乏しいが引きこもりは顕著ではない。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。日常的な金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。生活環境等に変化があると病状の再燃や悪化を来しやすい。

・ 「(4) 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする。」

例えば、親しい人との交流も乏しく引きこもりがちである。自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容がほとんど常に不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事で、病状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理は困難であることから自ら行えない。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちであることから、日常生活全般にわたり常時援助を必要とする。

・ 「(5) 精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできない。」

例えば、入院患者においては、院内の生活に、常時援助を必要とする。在宅患者においては、医療機関等への外出を自発的にできず、付き添いが必要である。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付け等の家事や身辺の清潔保持も行えず、常時の援助をもってしても、自発的には行えない。

7 「⑦ ⑥の具体的程度、状態等」

生活能力の状態について、⑥に追加して具体的に記述することがあれば、ここに記載する。

8 「⑧ 現在の障害福祉等のサービスの利用状況」

日常生活、就学、就労等の場面において、現に援助を受けている状況にある場合にあっては、どのような援助(援助の種類や提供者)をどの程度(援助の量)提供されているかについて具体的に記載すること。

また、年齢相応の能力が障害されていることで援助を要する状況につき具体的に記載すること。

9 「⑨ 備考」

①~⑧欄の記載事項の他に精神障害の程度の総合判定に参考になると思われることがあれば、本欄に記入すること。

Ⅲ 診断書の記入例

診断書の記入例を別添に示す。

記入例1

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記入例2

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記入例3

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記入例4

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