添付一覧
○老人性痴呆疾患療養病棟の施設整備基準について
(平成三年六月二六日)
(健医発第八一九号)
(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)
老人性痴呆疾患対策の推進については、かねてから特段の御配慮を煩わしているところであるが、今般、別添のとおり「老人性痴呆疾患療養病棟の施設整備基準」を定め、平成三年度から適用することとしたので、本基準の運用により、適正かつ円滑な整備を図られたく通知する。
なお、貴管下の市町村、医療法人等の関係機関に対しては、貴職から通知するようお願いする。
また、老人性痴呆疾患療養病棟の新設に伴い、従来の老人性痴呆疾患専門治療病棟を老人性痴呆疾患治療病棟に名称変更することとした。ついては、昭和六三年七月五日付健医発第七八五号本職通知「老人性痴呆疾患専門治療病棟及び老人性痴呆デイ・ケア施設整備基準について」中「老人性痴呆疾患専門治療病棟」とあるのは「老人性痴呆疾患治療病棟」に改めるので、併せて通知する。
〔別添〕
老人性痴呆疾患療養病棟施設整備基準
第一 老人性痴呆疾患療養病棟
一 老人性痴呆疾患療養病棟の目的は、精神症状や問題行動を有しているにもかかわらず、寝たきり等の状態にない痴呆性老人であって、自宅や他の施設で療養が困難な者に対し、これを入院させることにより、精神科的医療とケアを提供するものであること。
二 老人性痴呆疾患療養病棟を有する医療機関は、痴呆性老人に関する相談、短期入院及び家族に対する在宅療養の指導等を実施し、地域に密接した施設として機能するよう努めるとともに、地域の医療機関、保健所及び社会福祉施設等と十分に連携を保つものであること。
第二 施設及び設備に関する事項
一 一般原則
(一) 老人性痴呆疾患療養病棟の施設及び構造設備については、本基準のほか、医療法、建築基準法、消防法、老人精神病棟に関する公衆衛生審議会の意見、精神病院建築基準(昭和四四年衛発第四三一号公衆衛生局長通知)等の関係規定を遵守するとともに、日照、採光、換気、清潔、事故防止等につき十分考慮したものとし、入院患者の保健衛生及び安全・防災等につき万全を期すること。
(二) 老人性痴呆疾患療養病棟の環境及び立地については、入院患者の入院生活を健全に維持するため騒音、振動等による影響を極力排除すること。
(三) 本基準は、老人性痴呆疾患療養病棟がその目的を達成するために必要な基準を定めたものであり、当該施設の開設者は、常にその施設、設備及び運営の向上に努めること。
二 施設規模
(一) 病棟は、六〇床を上限とすること。
(二) 病棟の面積は、病室以外に生活面のスペースを必要とするので、共通部分を含めて、一床当たりおおむね二五平方メートル(平成一三年三月一日に既に存するものにあっては、おおむね二三平方メートル)程度とすること。
三 施設整備
(一) 病室
ア 個室から四床まで(既存施設の病床転換によるものにあっては、六床まで)とし、適宜必要な場所に手すりを設けること。
イ 患者一人当たりの床面積は、六・四平方メートル(平成一三年三月一日に既に存するものにあっては、個室以外の病室についてはおおむね六平方メートル、個室については六・三平方メートル)以上とすること。
(二) 入所・家庭復帰訓練病室
ア 病室は、個室とし、床面積は一人当たり一〇平方メートル以上とすること。
イ 家族等が宿泊できるようにすること。
ウ 家族等の利用を勘案して便所及び手洗い設備を室内又は隣接した場所に設けることが望ましいこと。
エ 一時的に入院する短期入院病室と兼ねることができるものとすること。
オ 入所・家庭復帰訓練病室は、必要に応じて設けることができることとする。
(三) 重度の身体的合併症病室
ア 酸素吸入装置及び、吸引装置を設けること。
イ ナースステーションに隣接して設けること。
(四) 生活機能維持室
ア 六〇平方メートル以上の面積を有すること。
イ 生活機能維持のため運動療法、作業療法等を行うに必要な専用のリハビリテーション機器等を備えること。
ウ 同一施設内に老人性痴呆疾患療養病棟の入院者のための生活機能維持室として利用できる室(六〇平方メートル以上とする。)がある場合は、これを兼用することができる。ただし、共有する病床の数に応じて適当な面積を有すること。
なお、この場合における二(二)の規定の適用については、生活機能維持室部分を六〇平方メートルとして算定すること。
(五) デイルーム
保有病床数一床当たり面会室を含めおおむね二平方メートル以上の面積を有すること。
(六) 食堂
ア テーブル、椅子、食器等については、老人性痴呆患者が使用するに当たって、危険等がないように配慮すること。
イ デイルームと兼用が可能であること。
(七) 浴室
ア 老人性痴呆患者の入浴に適した構造・設備を有すること。
イ 浴室は、看護婦等が入浴の介助をする必要がある場合を考慮してできるだけ広めにすること。
(八) 便所
ア 便所は、適当な広さを有し、男女別に設けるとともに、手すり等を設けること。
イ 汚物洗浄用の温水シャワーを付設することが望ましいこと。
(九) 廊下
ア 両側に病室がある廊下の幅は、内法を二・七メートル(大学附属病院(特定機能病院及び精神病床のみを有する病院を除く。)並びに内科、外科、産婦人科、眼科及び耳鼻いんこう科を有する一〇〇床以上の病院にあっては二・一メートル)以上、その他の廊下の幅は内法をおおむね一・八メートル以上とすること。ただし、両側に病室がある場合は廊下を一部分幅を拡張し通路空間に変化を持たせる(アルコーブ)こと。
イ 入院患者の安全を確保するため、段差を設けないようにするとともに、手すり及び常夜灯を設けること。
ウ 既存施設の病床転換による老人性痴呆疾患療養病棟の廊下にあっては、ア及びイの規定にかかわらず、両側に病室がある廊下の幅は、内法を一・六メートル以上、その他の廊下の幅は内法を一・二メートル以上とすること。
(一〇) 面会室
家族と面談するのに必要な広さを有すること。
(一一) その他
いわゆる保護室は必ずしも必要としないこと。
四 構造設備の基準
(一) 老人性痴呆疾患療養病棟は、原則として一階に設置することとし、二階以上の場合は、エレベーターを設置するほか、病棟内水平避難の確保及び避難階又は地上に通ずる避難に有効な直接階段を設けること。
(二) 建築基準法第二条第九号の二に規定する耐火建築分とし、消防法第一七条の規定に基づく消防用設備等を設置すること。
(三) 空気調和設備等により、施設内の適温の確保に努めるとともに、換気による臭気対策に配慮すること。
(四) 床材は、滑りにくく衝撃吸収性が高いものを使用すること。
(五) 窓には、いわゆる鉄格子を設置しないこと。
(六) 高さが簡単に調節できる寝台(ギャッジベッド)、車椅子、ストレッチャー等の設備を必要数確保すること。