添付一覧
○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第一二条に規定する精神医療審査会について
(平成一二年三月二八日)
(障第二〇九号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知)
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律(平成一一年法律第六五号)による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二五年法律第一二三号)第一二条に規定する精神医療審査会については、同法及び同法施行令(昭和二五年政令第一五五号)第二条に規定する事項のほか、その運営に関し必要な事項(以下、「その他事項」という。)について精神医療審査会が定めることとされているところであるが(同令第二条第一〇項)、今般、精神医療審査会がその他事項を定めるに当たって参考となる事項及び審査会の事務手続き上参考となる事項を、「精神医療審査会運営マニュアル」として、別添のとおり定め、平成一二年四月一日より適用することとしたのでその適正な運営を期されたい。
なお、精神医療審査会においては、適正な医療及び保護を確保するためには患者本人の意思によらない入院や行動の制限等を行わなければならない場合があるという精神医療の特殊性を踏まえ、医療の提供及び人権の擁護の観点から入院継続の適否等の審査を行うことが必要である。
よって、当該審査会委員のうち、「法律に関し学識経験を有する者」の任命に当たっては、公平な判断を期待しえる立場にある者を充てるとの観点に立って、司法関係者の意見を十分調整した上、裁判官の職にある者、検察官の職にある者、弁護士、五年以上大学(学校教育法による大学であって大学院の付置されているものに限る。)の法律学の教授又は助教授である者のうちから行うこととされたい。
おって、「精神保健法第一七条の二に規定する精神医療審査会について(昭和六三年五月一三日健医発第五七四号厚生省保健医療局長通知)」は平成一二年三月三一日をもって廃止する。
別添
精神医療審査会運営マニュアル
Ⅰ 基本理念
精神医療審査会(以下「審査会」という。)は、精神障害者の人権に配慮しつつその適正な医療及び保護を確保するために、精神病院に入院している精神障害者の処遇等について専門的かつ独立的な機関として審査を行うために設置されたものである。したがって、審査会の運営に当たって、都道府県知事、審査会委員、その他関係者は、審査会の設置の主旨を踏まえ、公平かつ迅速な審査を行う等、精神障害者の人権擁護のために最大限の努力を払わなければならない。
なお、精神障害者の保健医療福祉業務に従事する関係者は、わが国の精神病院において、深刻な人権侵害の事例が依然として発生している事を真摯に受け止め、日頃から精神障害者の人権擁護に配慮しつつ業務を行うことが求められるが、特に審査会は、精神障害者の人権擁護の礎として、委員の学識経験に基づき独立して、かつ積極的にその職務を行うとともに、ここに示す運営マニュアルの考え方に沿って審査会運営規則を定め、適切な運営を確保しなければならないものとする。
Ⅱ 審査会について
審査会の所掌
(1) 合議体を構成する委員を定めること。
合議体を構成する委員を定めるに当たっては、委員の事故等の場合に臨時に合議体を構成する予備的な委員を、あらかじめ他の合議体の委員(合議体を構成しない委員を含む。)のうちから定めておくものとする。この場合、各合議体ごとに具体的な委員を定めておくこと、また審査会全体としてあらかじめ予備的な委員を定め、対応する順番を定めておくこと等、委員の事故のあった場合の対応方法を講じておくものとする。
(2) 審査会に設置すべき合議体の数については、退院等の請求等の審査が迅速(請求等があってから概ね一か月以内)かつ適切に行われるよう設置しなければならない。
(3) 審査会の運営に関する事項のうち、精神保健法施行令(昭和二五年政令第一五五号)に規定されているもの以外の事項であって審査に必要な事項をあらかじめ定めること(例えば、複数の合議体が設けられている場合、それぞれの案件を取り扱うシステムを事前に定めておくこと等)。
Ⅲ 合議体について
1 合議体の所掌等
(1) 個別の審査の案件に関してはすべて合議体において取り扱うものとする。
(2) 審査を取り扱った合議体において決定された審査結果をもって、審査会の審査結果とする。
(3) 複数の合議体を設けて審査会を運営する場合においては、あらかじめ定められた方法により選定された合議体により審査の案件を取り扱うものとする。なお、個別の案件の審査に関して、原則として単一の合議体により審査を行うものとする。
(4) 都道府県知事が審査会の審査結果を通知した後、通知を受けた患者等から退院等に関して同様の内容と判断される請求がなされ、かつ都道府県知事が審査会で審査を行う必要があると判断した場合、当該請求の直近の審査を行った合議体を除いた単一又は直近の審査を行った合議体を含めた複数の合議体による合同審査を行うことができることとする。
2 定足数
合議体は、精神障害者の医療に関し学識経験のある者のうちから任命された委員、法律に関し学識経験を有する委員のうちから任命された委員及びその他の学識経験を有する者のうちから任命された委員がそれぞれ一人出席すれば議事を開き、議決することができるが、できる限り合議体を構成する五人の委員により審査を行うものとする。
3 議決
合議体の議事は出席した委員(合議体の長を含む。)の過半数で決するものとされているが、可否同数の場合においては、次回の会議において引き続き審査を行うか、又は、他の合議体において審査するかの方法によるものとする。
4 関係者の排除
(1) 合議体を構成する委員(以下「委員」という。)が、次に掲げるもののいずれかに該当するときは、当該審査に係る議事に加わることができない。
① 委員が、当該審査に係る入院中の者(以下「当該患者」という。)が入院している精神病院の管理者又は当該精神病院に勤務(非常勤を含む。)している者であるとき。
② 委員が、当該患者に係る直近の定期の報告に関して診察を行った精神保健指定医(入院後、定期の報告を行うべき期間が経過していない場合においては、当該入院に係る診察を行った精神保健指定医)であるとき。
③ 委員が、当該患者の保護者等であるとき。
「保護者等」とは、次の者をいう。
・ 精神保健法(昭和二五年法律第一二三号。以下「法」という。)第三三条第一項の同意を行った保護者
・ 法第三三条第二項の同意を行った扶養義務者
・ 法第三四条の同意を行った後見人、配偶者又は親権を行う者その他その扶養義務者
④ 委員が、当該患者の配偶者又は三親等内の親族であるとき。
⑤ 委員が、当該患者の決定代理人、後見監督人又は保佐人であるとき。
⑥ 委員が、当該患者又はその保護者等の代理人であるとき。
(2) 議事に加わることができない委員であるかどうかの確認については次によるものとする。
① (1)①・②については、精神病院の管理者(以下「病院管理者」という。)又は精神保健指定医である委員について、あらかじめ所属先(あるいは診察を行っている)精神病院の名称を申し出てもらい、都道府県において、あらかじめ確認するものとする(合議体別に地域を分けて担当する等により、できるだけ議事に加わることができない委員が生じないように工夫するものとする。)。
② (1)③~⑥については、個別の患者の審査ごとに、委員からの申し出等により確認するものとする。
(3) 委員は、前記①~⑥に掲げるもののほか、当該患者と特別の関係がある場合には、それを理由に議事に加わらないことができる。
(4) 審査会は、当該審査に当たって関係者である委員の属する合議体での審査を事前に可能な限り避けることに留意して、当該審査を行う合議体を定める等の配慮を行うこととする。
5 合議体の審査は非公開とする。ただし、審査結果が報告された後は、精神障害者の個人情報以外の情報については公開することを原則とする。
Ⅳ 退院等の請求の処理について
1 退院等の請求受理について
(1) 請求者
法第三八条の四に定める者及びその代理人とする。ただし、代理人は弁護士とするが、精神病院に入院中の者が請求する場合で、弁護士を代理人に選任することが困難な場合は、弁護士でない者を代理人とすることができる。
(2) 請求方法
書面を原則とする。ただし、精神病院に入院中の患者が請求する場合で、当該患者が口頭(電話を含む。)による請求の受理を求めるときはそれを認めるものとする。
(3) 請求者に対する確認等
都道府県知事は、当該患者が当該病院に入院していること及び請求を行った者の意思を確認するものとする。ただし、その確認により請求者の請求の意思が制限を受けないよう配慮するものとする。また、代理人による請求の場合には、代理権を有することを証する書面を確認するものとする。
2 都道府県知事の行う事前手続きについて
(1) 当該請求を受理したことの関係者への通知
都道府県知事は、速やかに当該請求を受理した旨を請求者、当該患者、保護者等及び病院管理者に対し、書面又は口頭により連絡するものとする。ただし、保護者等にあっては直ちに連絡先が判明しない場合は、この限りでない。
(2) 都道府県知事の行う事前資料の準備
ア 都道府県知事は、当該患者に関する資料として、以下の書類のうち、請求受理の直近一年以内のものについては当該書類を合議体へ提出できるよう準備するものとする。
① 法第二七条に基づく措置入院時の診断書
② 法第三三条第四項に基づく届出
③ 法第三八条の二に基づく定期の報告
④ 法第三八条の四に基づく退院等の請求に関する資料
⑤ 当該患者の入院する精神病院に対してなされた実地指導に関する資料(実地指導結果及び当該患者に関して診断がなされたときは当該診断結果を示す資料など)
イ 都道府県知事は、法第二二条の三の規定による入院(任意入院)が行われる状態にないとの判定が適正に行われているか、法第三三条第一項の同意が適正に行われているか、同条第四項に基づく届出が適正に行われているかなど手続的事項については、事前にチェックし、整理表を作成するなどにより、審査の便宜を図るものとする。
ウ また、同一人から同一趣旨の請求が多数ある場合には、審査の円滑な運営ができるよう、事前に十分整理しておくものとする。
3 合議体での審査等について
(1) 合議体が行う審査のための事前手続
ア 意見聴取
① 基本的な考え方
審査会は、審査をするに当たって、請求の内容を適切に把握するため法第三八条の五第三項に基づき、退院等の請求をした者及び当該審査に係る入院中の者が入院している精神病院の管理者の意見(代理人を含む。)を聴かなければならないこととする。ただし、当該請求受理以前六か月以内に意見聴取を行っている場合において、重ねて意見聴取を行う必要が乏しいと認められるときは、この限りでない。
② 実施時期
意見聴取は、審査を迅速に実施する観点から合議体での審査に先だって行うことが望ましい。
③ 意見聴取を行う委員
意見聴取を行う委員は二名以上、少なくとも一名は精神医療に関して学識経験を有する委員とする。
なお、意見聴取を行う委員については、あらかじめ定めておくことができる。
④ 意見聴取の方法
面接の上、当該請求に関しての意見聴取を行うことが望ましい。
⑤ その他の対象
合議体は、必要があると認めるときは、同項ア①に規定する者以外の者であっても以下の関係者の意見を聴くことができる。
(ア) 当該患者
(イ) 当該患者の保護者等
⑥ 意見陳述の機会等についての告知
面接の際に審査を行う委員は意見聴取を受ける者に対して、合議体が実際の審査を行うときに意見陳述の機会のあることを知らせなければならない。なお、精神病院に入院中の患者が退院等を請求した場合は、当該患者に弁護士による権利擁護をうける権利のあることを知らせなければならない。
⑦ 保護者等の場合の取扱
請求者が当該患者の保護者等の場合であって、遠隔地に居住しているなどやむを得ない事情にある場合には、書面の提出をもって面接に代えることができる。
代理人から意見聴取を行う場合には、当該意見聴取に関して代理権を有することを確認するものとする。また、当該患者に代理人がいる場合で、代理人が当該患者の面接に立ち会うことを申し出たときは、その立ち会いを認めなければならないものとする。
⑧ 事前の準備
意見聴取を行うに当たって、あらかじめ用紙を面接による意見聴取を受ける者に送付し、記載を求めることができるものとする。
イ 委員による診察について
審査会は、審査をするに当たって、必要に応じて、請求の対象となった入院中の患者の同意を得たうえで、指定医である委員により診察を行うことができる。
ウ 診療録その他の帳簿書類の提出
審査会は、審査をするに当たって、必要に応じて、精神病院の管理者その他関係者に対して調査対象となった入院中の患者の診療録その他の帳簿書類の提出を命じることができる。
(2) 合議体の審査時における関係者からの意見聴取等
ア 関係者からの意見聴取等について
合議体は、審査をするに当たって、必要に応じて以下の関係者に対して意見を求めることができる。
① 当該患者
② 請求者
③ 病院管理者又はその代理人
④ 当該患者の主治医等
⑤ 当該患者の保護者等
また、前記③及び④の者に対しては報告を求めることができる。
イ 審問
合議体は審査をするに当たって、必要に応じて以下の者に対して出頭を命じて審問することができる。
① 病院管理者又はその代理人
② 当該患者の主治医等
③ その他の関係者
ウ 関係者の意見陳述について
請求者、病院管理者若しくはその代理人及び合議体が認めたその他の者は、合議体の審査の場で意見を陳述することができる。なお、請求者が当該患者である場合には、(1)による意見聴取により十分意見が把握できており、合議体が意見聴取をする必要がないと認めた場合にはこの限りでないが、当該患者に弁護士である代理人がおり、当該患者が当該代理人による意見陳述を求めた場合には、合議体は当該代理人に審査の場で意見を述べる機会を与えなければならない。
(3) 合議体での審査に関するその他の事項
ア 都道府県知事に対する報告徴収等の要請について
合議体は、審査をするに当たって、特に必要と認める場合には都道府県知事に対して、法第三八条の六に基づく報告徴収等を行うことを要請すること、及び指定医である合議体委員の同行を求めることができる。また、その結果については、報告を求めることができる。なお、合議体が当該審査の後の一定期間経過後の当該患者の状態確認が必要と判断したときも同じこととする。
イ 合議体における資料の扱いについて
合議体における資料については、これを開示しないものとする。ただし、請求者が当該患者であって弁護士である代理人がいる場合に、その代理人が意見を述べるうえで必要とするときは資料を開示するものとする。
(4) 都道府県知事への審査結果の通知
審査会は、審査終了後速やかに都道府県知事に対して、次に示した内容の結果を通知するものとする。
ア 退院の請求の場合
① 引き続き現在の入院形態での入院が適当と認められること
② 他の入院形態への移行が適当と認められること
③ 合議体が定める期間内に、他の入院形態へ移行することが適当と認められること
④ 入院の継続は適当でないこと
⑤ 合議体が退院の請求を認めない場合であっても、当該請求の処遇に関し適当でない事項があるときは、その処遇内容が適当でないこと前記通知には理由の要旨を付すものとする。
なお、別途、審査会は審査結果について、都道府県知事、当該患者が入院する精神病院の管理者、及び当該患者の治療を担当する指定医に対する参考意見を述べることができる。
イ 処遇の改善の請求の場合
① 処遇は適当と認めること
② 処遇は適当でないこと、及び合議体が求める処遇を行うべきこと
なお、別途、審査結果に対して、都道府県知事に対して参考意見を述べることができる。
4 都道府県知事の行う事後処理について
(1) 請求者等に対する結果通知
都道府県知事は、3(1)ア①及び⑤に規定する者に対して、速やかに審査の結果(請求者に対しては理由の要旨を付す。)及びこれに基づき採った措置を通知するものとする。
(2) 資料及び記録の保存
審査の資料及び議事内容の記録については、少なくとも五年間は保存するものとする。
(3) その他の事項
合議体での審査の結果、退院等の請求が適当との判断がなされた場合、都道府県知事はおおむね一か月以内に、当該病院管理者が採った措置を確認するものとし、当該措置について審査会に報告することとする。
5 その他退院等の請求の審査に関して必要な事項
(1) 退院等の請求の審査中に、請求者から請求を取り下げたいとの申し出が書面又は口頭により都道府県知事になされた場合、又は当該患者が病院から退院した場合は、審査会はそれにより審査を終了する。ただし、特に審査会が取り下げ前または当該患者の退院前の入院等の適否の審査を行う必要があると認めた場合はこの限りではない。
(2) 退院等の請求が都道府県知事になされた場合、当該患者の入院形態が他の入院形態に変更された場合であっても、その請求は入院形態にかかわらず有効とみなして審査手続きを進めるものとする。また、退院の請求には現在受けている処遇の改善の請求を含むものとして取り扱うことができる。
(3) 都道府県知事は、請求を受理してからおおむね一か月、やむを得ない事情がある場合においてもおおむね三か月以内に請求者に対し、審査結果及び理由の要旨を通知するよう努めるものとする。
(4) 処遇の改善の請求のうち、当該請求が法第三六条又は第三七条に基づく厚生大臣の定める処遇の基準その他患者の人権に直接係わる処置に関する請求以外の請求である場合には、前記手続きのうち、2(2)、3(1)、(2)ア、イ、ウを省略し、直ちに審査を行うことができる。
(5) 退院の請求がなされた場合においても、合議体における審査の結果、当該患者の処遇、社会復帰への指導方法、その他当該患者への適切な医療の提供のために合議体が必要と認める措置がある場合には、その旨を都道府県知事に通知するものとする。また、必要に応じて、当該患者が入院する精神病院の管理者、当該患者の治療を担当する指定医、及び当該患者の保護者と協議することができる。
6 電話相談の取扱について
都道府県知事は、精神病院に入院中の患者から電話相談を受けたときは、その内容及び対応を次の回の審査会に報告するものとする。合議体は、当該電話相談のうち口頭による退院等の請求として認めることが適当と判断される事例については、都道府県知事に対して当該電話相談を退院等の請求として受理するよう求めることができる。その場合、次の合議体の審査において当該請求を審査することとする。
Ⅴ 定期の報告等の審査について
1 合議体での審査等について
(1) 合議体が行う審査のための事前手続
ア 資料の送付
審査会は、当該審査を行う合議体の委員に対して事前に当該審査資料を送付し、検討を依頼することができる。
イ 委員による診察
Ⅳ退院の請求の場合の2(1)イに準じる。
ウ 診療録その他の帳簿書類の提出
Ⅳ退院の請求の場合の2(1)ウに準じる。
(2) 合議体の審査時における関係者からの意見聴取等
ア 関係者からの意見聴取等について
合議体は、審査をするに当たって、必要に応じて以下の関係者に対して意見を求めることができる。
① 当該患者
② 病院管理者又は代理人
③ 当該患者の主治医等
イ 審問
Ⅳ退院の請求の場合の2(2)アに準じる。
(3) 合議体での審査に関するその他の事項
ア 入院時の審査の取扱について
入院時の届出の審査に当たっては直近の合議体で審査を行う等、迅速かつ適切な処理を行うよう留意するものとする。
イ 都道府県知事に対する報告徴収等の要請について
審査会は、合議体の審査に当たって必要な場合、及び合議体の審査の結果から必要と認める場合には、都道府県知事に対し、法第三八条の六の規定に基づく実地審査を行うよう要請すること、及びその実地審査について指定医である合議体委員の同行を求めることができる。また、当該精神病院に対して都道府県知事が行う実地指導に指定医である合議体委員の同行を求めることができる。
(4) 審査結果の都道府県知事への通知
審査会は、審査終了後速やかに都道府県知事に対して、次に示した内容の結果を通知するものとする。
① 現在の入院形態での入院が適当と認められること
② 他の入院形態への移行が適当と認められること
③ 合議体が定める期間内に、他の入院形態へ移行することが適当と認められること
④ 合議体の定める期間経過後に、当該患者の病状、処遇等について報告を求めることが適当であること
⑤ 入院の継続は適当でないこと
⑥ 当該患者の入院中の処遇について適当でない事項が認められるときはその処遇内容が適当でないこと
前記通知には理由の要旨を付すものとする。
なお、別途、合議体は、審査結果について、都道府県知事に対する参考意見、及び当該患者が入院する精神病院の管理者又は当該患者の治療を担当する指定医に対する参考意見を述べることができる。
(5) 資料及び記録の保存
審査の資料及び議事内容の記録については、少なくとも五年間は保存するものとする。
2 都道府県知事からの病院管理者等への通知
(1) 審査会の判断が前項(4)①である場合は、病院管理者等に対して、その旨を通知するに及ばない。
(2) 審査会の判断が前項(4)②から⑥の場合は、都道府県知事は、審査結果に基づき必要な措置を行うとともに、当該患者、保護者等及び病院管理者に対し、審査の結果及びこれに基づき採った措置を通知するものとする。
この場合、都道府県知事は、審査会に対し、審査結果に基づいて採った措置の内容及び結果を報告する。
Ⅵ その他
1 実地指導との連携について
審査会は、精神病院に入院中の患者の人権擁護を確保し、その適正な医療及び保護を実現するために、退院等の請求及び定期の報告を審査する責務を負うものであり、審査会は、その責務を全うするために都道府県の実施する精神病院の実地指導と適切な連携をとるものとする。
① 審査会が都道府県の実施する実地指導に同行を求める指定医である委員は、一精神病院につき三名以内とする。
② 都道府県職員は、実施指導を行った際に入院患者から入院の継続又は処遇に関して不適切な実態があることを聴取したとき、当該患者に対して審査会への退院等の請求手続をとることを助言するとともに、その場で請求の意思を明確に述べる者については口頭による請求として受理するものとする。
2 指定医の適正な職務執行の確保について
都道府県知事は審査会の審査の過程において、当該患者の入院する精神病院に勤務(非常勤を含む。)する指定医がその職務に関し不適切な行為を行ったことが明らかとなったときは、その内容等について精査をし、必要に応じて、法第一九条の二第四項に基づき厚生大臣に通知しなければならないこととする。