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○精神疾患による入院患者の適正な処遇等の確保について

(平成一〇年九月二八日)

(健医発第一三〇二号)

(各国立病院・療養所・センター長(精神病床を有する施設長)あて厚生省保健医療局国立病院部長通知)

標記に関し、平成一〇年五月、国立療養所犀潟病院において、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、「精神保健福祉法」という。)に基づく措置入院者が、身体的拘束中に死亡するという事例が発生し、新潟県は、平成一〇年七月及び八月に実地指導を実施した。

この結果、入院患者に対する身体的拘束及び隔離について、精神保健指定医の診察及びそれに基づく指示並びに診療録への記載が不十分な事例が判明したことから、平成一〇年九月二五日に精神保健福祉法第三八条の七第一項の規定に基づき、国立療養所犀潟病院に対して、別添のとおり改善命令等が行われたところである。

このことは、我が国の精神医療に対する社会的信用を損ね、また、国立医療機関としての信頼を失墜させたものであり、誠に遺憾である。

ついては、貴職におかれては、「精神保健福祉法」、「精神保健福祉法施行規則」及び「精神保健福祉法第三七条第一項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準(厚生大臣告示)」等を遵守し、特に左記事項に十分留意の上、入院患者の適正な処遇等の確保に万全を期されるようお願いする。

なお、こうした事例の再発防止のため、精神病床を有する国立病院・療養所について、本省、地方医務(支)局の職員による実地調査を早急に行うこととしているので了知願いたい。

1 入院患者の処遇等に当たって特に留意すべき点

(1) 入院患者の処遇について

① 身体的拘束について

身体的拘束は、制限の程度が強く、また、二次的な身体的障害を生ぜしめる可能性もあるため、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないものとすること。

また、身体的拘束を行うに当たっては、次の事項を遵守すること。

ア 精神保健指定医が診察し、必要と認めた場合に限り行うこと。

イ 当該患者に対して身体的拘束を行う理由を知らせるよう努めるとともに、身体的拘束を行った旨及びその理由並びに身体的拘束を始めた日時を遅滞なく診療録に記載すること。

ウ 身体的拘束を行っている間においては、原則として常時の臨床的観察を行い、適切な医療及び保護を確保すること。

エ 身体的拘束が漫然と行われることがないよう、医師は頻回に診察を行うこと。

② 隔離について

患者の隔離は、症状からみて、本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、隔離以外の方法ではその危険を回避することは著しく困難であると判断される場合に、その危険を最小限に減らし、患者本人の医療又は保護を図ることを目的として行うこと。

また、隔離に当たっては、次の事項を遵守すること。

ア 一二時間を超える隔離を行う場合には、精神保健指定医が診察し、必要と認めた場合に限り行うこと。また、一二時間を超えない場合にあっても、その判断は医師によって行われること。

イ 当該患者に対して隔離を行う理由を知らせるよう努めるとともに、隔離を行った旨及びその理由並びに隔離を始めた日時を遅滞なく診療録に記載すること。

ウ 隔離が漫然と行われることがないように、医師は原則として、少なくとも毎日一回診察を行うこと。

エ 隔離を行っている間においては、定期的な会話等による注意深い臨床的観察と適切な医療及び保護を確保すること。

③ 電話、面会の制限について

電話及び面会に関しては、患者の医療又は保護に欠くことのできない限度での制限が行われる場合があるが、これは、病状の悪化を招き、あるいは治療効果を妨げる等、医療又は保護の上で合理的な理由がある場合であって、かつ、合理的な方法及び範囲における制限に限られるものであり、個々の患者の医療又は保護の上での必要性を慎重に判断して決定すること。

また、制限を行った場合は、その理由を診療録に記載し、かつ、適切な時点において制限をした旨及びその理由を患者及び保護者に知らせること。

(2) 入院時における手続きについて

医療保護入院等の入院手続きについては、精神保健福祉法の規定に基づき適正な処理を行うこと。特に、医療保護入院における保護者の選任については、迅速な手続きが図られること。また、扶養義務者の同意による医療保護入院については、四週間に限られていること。

(3) 報告・届出について

医療保護入院届出等については、精神保健福祉法に都道府県等に対する提出期限が定められているので、その期限を遵守すること。

ア 医療保護入院届及び医療保護退院届については、一〇日以内に報告すること。

イ 措置入院者の定期病状報告については、精神保健福祉法第二九条第一項の規定による入院措置が採られた日の属する月を初月として同月以後の六月ごとに報告すること。

また、医療保護入院者の定期病状報告については、精神保健福祉法第三三条第一項の規定による医療保護入院の措置が採られた日の属する月を初月として同月以後の一二月ごとに報告すること。

ウ 措置入院者の病状消退届については、直ちに報告すること。

2 再発防止に向けての院内体制の見直しについて

今回のような事例が再び起きることのないよう、次の措置を速やかに講じること。

(1) 幹部会議及び管理診療会議等において、本通知の内容について周知徹底を図ること。

(2) 全職員に対し、精神保健福祉法に基づく適正な入院患者の処遇等について啓発するため、別冊子の法令通達関係資料を活用するなどして、研修等を実施すること。

(3) 適正な入院患者の処遇等の確保のため、医師、看護婦間の連携を強化すること。

なお、こうした点も含め、当部において、施設における自己点検手順書を作成し、一一月を目途に配布する予定であること。

(4) 医療保護入院届出等については、医師、病棟看護婦及び医事課(班)の連携を強化し、特に医事課(班)においては、届出整理簿等による管理体制を強化すること。

3 施設への実地調査及び本省への報告について

今回の事例について、本省への報告が二か月もなされていなかったことに鑑み、施設内の連絡体制を整備するとともに、問題となる事案については、地方医務(支)局を経由し、速やかに当部まで報告すること。

別添 略