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○精神保健法第一七条の二に規定する精神医療審査会について

(昭和六三年五月一三日)

(健医発第五七四号)

(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)

精神衛生法等の一部を改正する法律(昭和六二年法律第九八号)による改正後の精神保健法(昭和二五年法律第一二三号)第一七条の二に規定する精神医療審査会については、同法及び同法施行令(昭和二五年政令第一五五号)第二条の二に規定する事項のほか、その運営に関し必要な事項(以下「その他事項」という。)について精神医療審査会が定めることとされているところであるが(同令第二条の二第一○項)、今般、精神医療審査会がその他事項を定めるに当たつて参考となる事項及び審査会の事務手続き上参考となる事項を、「精神医療審査会運営マニュアル」として、別添のとおり定めたので、その適正な運営を期されたい。

なお、精神医療審査会においては、精神医療の観点を中心としつつも、適正な医療及び保護を確保するためには患者本人の意思によらない入院や行動の制限等を行わなければならない場合があるという精神医療の特殊性を踏まえ、総合的な観点から入院継続の適否等の審査を行うことが必要であることにかんがみ、「法律に関し学識経験を有する者」をその委員とすることとしたものであり、その具体的な任命に当たつては、公平な判断を期待しうる立場にある者を充てるとの観点に立つて、各都道府県における司法関係者の意見を十分調整した上、裁判官の職にある者、検察官の職にある者、弁護士、五年以上大学(学校教育法による大学であつて大学院の付置されているものに限る。)の法律学の教授又は助教授である者のうちから行うこととされたい。

別添

精神医療審査会運営マニュアル

Ⅰ 基本理念

精神医療審査会(以下「審査会」という。)は、精神障害者の人権に配慮しつつその適正は医療及び保護を確保する観点から新たに設けられたものであり、この運営に当たつては、公正かつ迅速な対応が必要とされるものである。したがつて、審査会の委員はその学識経験に基づき独立してその職務を行うとともに、審査会は、ここに示す運営マニュアルの考え方に沿つて審査会運営規則を定め、適切な運営を確保しなければならないものとする。

Ⅱ 審査会について

審査会の所掌

(一) 合議体を構成する委員を定めること。

合議体を構成する委員を定めるに当たつては、委員の事故等の場合に臨時に合議体を構成する予備的な委員を、あらかじめ他の合議体の委員(合議体を構成しない委員を含む。)のうちから定めておくものとする。この場合、具体的な委員を定める方法のほか、予備的な委員を定める方法を定めておくこともできるものとする。ただし、委員の数は全体で一五名を超えることはできない。

(二) 審査会の運営に関する事項のうち、精神保健法施行令(昭和二五年政令第一五五号)に規定されているもの以外の事項であつて審査に必要な事項を定めること(例えば、複数の合議体が設けられている場合、それぞれの案件を取り扱うシステムを事前に定めておくこと等)。

Ⅲ 合議体について

一 合議体の所掌等

(一) 個別の審査の案件に関してはすべて合議体において取り扱うものとする。

(二) 審査を取り扱つた合議体において決定された審査結果をもつて、審査会の審査結果とする。

(三) 複数の合議体を設けて審査会を運営する場合においては、あらかじめ定められた方法により選定された合議体により審査の案件を取り扱うものとする。なお、個別の案件の審査に関して、複数の合議体による合同審査などは行わないものとする。

二 定足数

合議体は、精神障害者の医療に関し学識経験のある者のうちから任命された委員、法律に関し学識経験を有する委員のうちから任命された委員及びその他の学識経験を有する者のうちから任命された委員がそれぞれ一人出席すれば議事を開き、議決することができるが、できる限り合議体を構成する五人の委員により審査を行うものとする。

三 議決

合議体の議事は出席した委員(合議体の長を含む。)の過半数で決するものとされているが、可否同数の場合においては、次回の会議において引き続き審査を行うか、又は、他の合議体において審査するかの方法によるものとする。

四 関係者の排除

(一) 合議体を構成する委員(以下「委員」という。)が、次に掲げるもののいずれかに該当するときは、当該審査に係る議事に加わることができない。

(1) 委員が、当該審査に係る入院中の者(以下「当該患者」という。)が入院している精神病院の管理者であるとき。

(2) 委員が、当該患者に係る直近の定期の報告に関して診察を行つた精神保健指定医(入院後、定期の報告を行うべき期間が経過していない場合においては、当該入院に係る診察を行つた精神保健指定医)であるとき。

(3) 委員が、当該患者の保護義務者等であるとき。

「保護義務者等」とは、次の者をいう。

・ 精神保健法(昭和二五年法律第一二三号、以下「法」という。)第三三条第一項の同意を行つた保護義務者

・ 法第三三条第二項の同意を行つた扶養義務者

・ 法第三四条の同意を行つた後見人、配偶者又は親権を行う者、その他その扶養義務者

(4) 委員が、当該患者の配偶者又は三親等内の親族であるとき。

(5) 委員が、当該患者の法定代理人、後見監督人又は保佐人であるとき。

(6) 委員が、当該患者又はその保護義務者等の代理人であるとき。

(二) 議事に加わることができない委員であるかどうかの確認については次によるものとする。

(1) (一)―(1)・(2)については、精神病院の管理者(以下「病院管理者」という。)又は精神保健指定医である委員について、あらかじめ所属先の(あるいは診察を行つている)精神病院の名称を申し出てもらい、都道府県において、あらかじめ確認するものとする。(合議体別に地域を分けて担当する等により、できるだけ議事に加わることができない委員が生じないように工夫するものとする。)

(2) (一)―(3)~(6)については、個別の患者の審査ごとに、委員からの申し出により確認するものとする。

(三) 委員は、前記(1)~(6)に掲げるもののほか、当該患者と特別の関係がある場合には、それを理由に議事に加わらないことができる。

五 合議体の審査は非公開とする。

Ⅳ 退院等の請求の処理について

一 退院等の請求受理について

(一) 請求者

法第三八条の四に定める者及びその代理人とする。ただし、代理人は弁護士とする。

(二) 請求方法

書面を原則とする。ただし、止むを得ない事情がある場合には、口頭による請求も認められるものとする。

(三) 請求者に対する確認等

都道府県知事は、当該患者が当該病院に入院していること及び請求を行つた者の意思を確認するものとする。また、代理人による請求の場合には、代理権を有することを証する書面を確認するものとする。

二 都道府県知事の行う事前手続きについて

(一) 当該請求を受理したことの関係者への通知

都道府県知事は、速やかに当該請求を受理した旨を請求者、当該患者、保護義務者等及び病院管理者に対し、書面又は口頭により連絡するものとする。ただし、保護義務者等にあつては直ちに連絡先が判明しない場合は、この限りでない。

(二) 都道府県知事の行う事前資料の準備

ア 都道府県知事は、当該患者に関する資料として、以下の書類のうち、請求受理の直近一年以内のものについては当該書類を合議体へ提出できるよう準備するものとする。

(1) 法第二七条に基づく措置入院時の診断書

(2) 法第三三条第四項に基づく届出

(3) 法第三八条の二に基づく定期の報告

(4) 法第三八条の四に基づく退院等の請求に関する資料

イ 都道府県知事は、法第三三条第一項の同意が適正に行われているか、同条第四項に基づく届出が適正に行われているかなど手続的事項については、事前にチェックし、整理表を作成するなどにより、審査の便宜を図るものとする。

ウ また、同一人から同一趣旨の請求が多数ある場合には、審査の円滑な運営ができるよう、事前に十分整理しておくものとする。

三 合議体での審査等について

(一) 合議体での審査

ア 審査を行う委員(一名以上、少なくとも一名は精神医療に関して学識経験を有する委員とする。)は、以下に示した者に面接の上、当該請求に関しての意見聴取を行うものとする。ただし、当該請求受理以前六か月以内に意見聴取を行つている場合においては、この限りでない。また、当該患者の保護義務者等については、遠隔地に居住している等やむを得ない事情にある場合には、書面の提出をもつて面接に代えることができる。

(1) 当該患者

(2) 請求者

(3) 病院管理者又はその代理人

(4) 当該患者の保護義務者等

イ 代理人から意見聴取を行う場合には、当該意見聴取に関して代理権を有することを確認するものとする。

ウ 意見聴取を行うに当たつて、あらかじめ用紙をアに掲げる者に送付し、記載を求めておくものとする。

エ 次の(二)―イによる意見陳述の機会のあることを面接の際にアに掲げる者に対し、伝えなければならない。

オ アの意見聴取は、審査を迅速に実施する観点から合議体での審査に先だつて行うことができる。この場合、意見聴取を行う委員については、あらかじめ定めておくことができる。

(二) 合議体での審査に関するその他の事項

ア 意見聴取について

審査に当たつては、必要に応じて関係者から意見の聴取を行うことができる。

イ 関係者の意見陳述について

請求者、病院管理者若しくはその代理人及び合議体が認めたその他の者は、合議体の審査の場で意見を陳述することができる。なお、請求者が当該患者である場合には、(一)による意見聴取により十分意見が把握できており、合議体が意見聴取をする必要がないと認めた場合にはこの限りでない。

ウ 合議体における資料の扱いについて

合議体における資料については、これを開示しないものとする。

エ 都道府県知事に対する報告徴収等の要請について

審査を行うに当たつて、特に必要と認める場合には都道府県知事に対して、法第三八条の六に基づく報告徴収等を行うことを要請し、その結果について報告を求めることができる。

(三) 都道府県知事への審査結果の通知

審査会は、審査終了後速やかに都道府県知事に対して、次に示した内容の結果を通知するものとする。

ア 退院の請求の場合

(1) 引き続き現在の入院形態での入院が必要と認められる。

(2) 他の入院形態への移行が適当と認められる。

(3) 入院の継続の必要は認められない。

前記通知には理由の要旨を付するものとする。

なお、別途、審査結果に付して、都道府県知事に対して参考意見を述べることができる。(例えば、三か月後に知事による実地審査が望ましい等)

イ 処遇の改善の請求の場合

(1) 請求のあつた――に関する処遇は適当と認める。

(2) 請求のあつた――に関する処遇は適当でない。

なお、別途、審査結果に付して、都道府県知事に対して参考意見を述べることができる。(例えば、病院管理者の採るべき措置の例示等)

四 都道府県知事の行う事後処理について

(一) 請求者等に対する結果通知

都道府県知事は、三―(一)―アに掲げる者に対して、速やかに審査の結果及びこれに基づき採つた措置を通知するものとする。

(二) 資料及び記録の保存

審査の資料及び議事内容の記録については、少なくとも三年間は保存するものとする。

(三) その他の事項

合議体での審査の結果、退院等の請求が適当との判断がなされた場合、都道府県知事は概ね一か月以内に、当該病院管理者が採つた措置を確認するものとする。

五 その他退院等の請求の審査に関して必要な事項

(一) 退院等の請求の審査中に、請求者から請求を取り下げたいとの申し出が書面又は口頭により都道府県知事になされた場合又は当該患者が病院から退院した場合は、都道府県知事はこれを審査会に報告し、これにより審査は終了する。

(二) 退院等の請求が都道府県知事になされた場合、当該患者の入院形態が他の入院形態に変更された場合であつても、その請求は入院形態にかかわらず有効とみなして審査手続きを進めるものとする。

(三) 都道府県知事は、請求を受理してからおおむね一か月、やむをえない事情がある場合においてもおおむね三か月以内に請求者に対し、審査結果を通知するよう努めるものとする。

(四) 処遇の改善の請求のうち、当該請求が法第三六条又は第三七条に基づく厚生大臣の定める処遇の基準その他患者の人権に直接係わる処置に関する請求以外の請求である場合には、前記手続きのうち、二―(二)、三―(一)、(二)ア、イを省略し、直ちに審査を行うことができる。

(五) 退院の請求がなされた場合においても、合議体における審査の結果、処遇の改善が必要と判断された場合には、その旨都道府県知事に通知するものとする。

六 当面の暫定措置について

法施行後一年の間においては、退院等の請求が多数なされ、これらすべてに面接による意見聴取を行うことによつて、全体の処理が著しく遅滞するおそれがある場合には、面接による意見聴取を行わないことができるものとするが、この場合においては、あらかじめ三―(一)―アに掲げる者に対して、書面により意見の聴取を行わなければならない。

Ⅴ 定期の報告等の審査について

一 審査を行う合議体について

審査会に複数の合議体が構成されている場合には、報告を病院別に整理し、当該審査に当たつて関係者である委員の属する合議体での審査を事前に可能な限り避けることに留意して、当該審査を行う合議体を定めるものとする。また、複数の合議体が構成されていない場合においても、事前に病院別に報告を整理する等、審査が円滑に行われるよう、配慮するものとする。

なお、入院時の届出の審査に当たつては直近の合議体で審査を行う等、迅速かつ適切な処理を行うよう留意するものとする。

二 合議体での審査等について

(一) 審査会は、当該審査を行う合議体の委員に対して事前に当該審査資料を送付し、検討を依頼することができる。

(二) 関係者の排除

審査するにあたつては、当該報告の関係者である委員はその審査に関与してはならない。

(三) 意見の聴取

ア 合議体の審査に当たつて必要な場合には、都道府県知事に対し、法第三八条の六の規定に基づく実地審査を行うよう依頼することができる。また、特に必要と認める場合においては、当該病院管理者、当該患者及びその他の者に対し、意見を聴くことができる。

イ 入院が適当でないと判断する場合においては、当該病院管理者の意見を聴かなければならない。

(四) 審査結果の都道府県知事への通知

審査会は、審査終了後速やかに都道府県知事に対して、次に示した内容の結果を通知するものとする。

(1) 現在の入院形態での入院が適当と認められる。

(2) 他の入院形態への移行が適当と認められる。

(3) 入院の継続の必要は認められない。

(五) 資料及び記録の保存

審査の資料及び議事内容の記録については、少なくとも三年間は保存するものとする。

三 都道府県知事からの病院管理者等への通知

(一) 現在の入院形態が適当と審査会が判断した場合

病院管理者等に対して、その旨通知するに及ばない。

(二) 他の入院形態への移行が適当と審査会が判断した場合及び入院の継続は必要ないと審査会が判断した場合

都道府県知事は、審査結果に基づき必要な措置を行うとともに、当該患者、保護義務者等及び病院管理者に対し、審査の結果及びこれに基づき採つた措置を通知するものとする。