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○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正等(精神保健指定医関係)について

(平成一二年三月三一日)

(障第二四六号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知)

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律(平成一一年法律第六五号)の施行については、別途平成一二年三月二八日障第二〇八号当職通知により通知されているところであるが、精神保健指定医に関する事項については、平成一二年四月一日から施行されることとされている。

これに関連し、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則及び精神保健福祉士法施行規則の一部を改正する省令(平成一二年厚生省令第四九号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第二九条の二の二第三項の規定に基づき厚生大臣が定める行動の制限を定める件(平成一二年三月厚生省告示第九六号)及び精神保健法第三七条第一項の規定に基づき、厚生大臣が定める処遇の基準を定める件の一部を改正する件(平成一二年三月厚生省告示第九七号)が公布され、それぞれ平成一二年四月一日から施行されることとされたところであり、これらの法令の内容及び留意していただきたい点は、左記のとおりであるので、関係者及び関係機関に対する周知方につき配慮されたい。

第一 基本的な考え方

精神保健指定医は、精神医療において患者本人の意思にかかわらない入院医療や身体的拘束などの一定の行動制限の必要性の判定等の権限を有しており、精神障害者の人権に配慮した適正な精神医療を行う中心的存在であり、その職務は極めて重要な位置づけとなっている。

今般、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二五年法律第一二三号。以下「法」という。)等の改正により、精神保健指定医が負うべき責任及び義務等が追加された。

精神保健指定医、都道府県及び指定都市精神保健担当部局、関係医療機関等においては、今回の改正内容を十分理解し、人権に配慮した適正な精神医療の一層の確保に努めるものとする。

第二 精神保健指定医の職務等に関する事項

一 職務停止処分に関する事項(法第一九条の二第二項関係)

精神障害者の人権に配慮した適正な精神医療を確保する精神保健指定医の役割は益々増大してきており、その適正な職務執行が求められている。精神保健指定医に係る処分は、これまで「指定の取消し」のみであったため、その対象となる者は著しく重大な法律違反を犯した者に限定されていたが、精神保健指定医の適正な職務執行を担保するためにも、今後はよりきめ細やかな処分を行っていく必要があることから、新たに、期間を定めて精神保健指定医としての業務を停止する「職務停止処分」が創設された。

これに関連し、都道府県知事及び指定都市市長(以下「都道府県知事等」という。)は、精神保健指定医が指定の取消し又は職務停止処分に該当すると認めるときは、その旨を厚生大臣に通知することができるものとされたので、都道府県知事等においては、精神病院に対する実地指導などを通じてその実情把握に努められたい。

二 職務の追加に関する事項

(一) 任意入院による入院が行われる状態にないかどうかの判定(法第一九条の四第一項関係)

法第三三条第一項及び第三三条の四第一項の改正により、医療保護入院及び応急入院の要件が明確化されたことに伴い、精神保健指定医は、診察の結果精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者を医療保護入院又は応急入院させる場合には、当該精神障害のために第二二条の三の規定による入院が行われる状態にないかどうかを判定する職務が追加された。

当該判定を行うに当たっては、人権に配慮した適正な精神医療を確保するためには、本人の同意に基づいた入院が行われるよう努めることが極めて重要であることに十分留意のうえ適正に実施しなければならない。

(二) 措置入院及び医療保護入院等のための移送に際し行動の制限を必要とするかどうかの判定(法第一九条の四第二項第二号)

法第二九条の二の二第三項及び第三四条第四項の創設により、都道府県知事等は、措置入院及び医療保護入院等のための移送を行うに当たって、その指定する精神保健指定医の診察の結果に基づき、本人の医療又は保護に欠くことのできない限度において、厚生大臣が定める行動の制限((精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第二九条の二の二第三項の規定に基づき、厚生大臣が定める行動の制限を定める件平成一二年三月厚生省告示第九六号)において身体的拘束が定められたところ。なお、当該告示は、法第三四条第四項において準用する場合を含む。)を行うことができることとされた。

精神保健指定医は、移送の手続において法第二九条の二の二第三項及び第三四条第四項に規定する行動の制限を行ことが必要と判断したときは、精神障害者の移送に関する事務処理基準(平成一二年三月三一日障第二四三号当職通知。以下「移送に関する事務処理基準」という。)に基づき、その症状等必要な事項を診察記録票に記載するとともに、行動の制限を行うに当たっては、精神保健指定医は行動の制限を受ける者に対して行動の制限を行う旨及びその理由を知らせるよう努めなければならない。

(三) 医療保護入院及び応急入院のための移送を必要とするかどうかの判定(法第一九条の四第二項第四号)等

法第三四条の創設により、都道府県知事等は、その指定する精神保健指定医の診察の結果に基づき、医療保護入院及び応急入院のための移送を行うことができることとされた。

医療保護入院及び応急入院のための移送を必要とするかどうかの判定は、精神保健指定医が居宅等に直接出向いて、その場で要否を判定するものとされており、居宅において診察を行う場合には、移送に関する事務処理基準に基づき保護者、扶養義務者、同居の親族等の協力を得て行うものとし、保護者等が存在しない場合には、措置入院の手続きをとる必要があると認められない限りは本人の了解を得ないで居宅で診察することはできないものとされている。

また、診察を行った精神保健指定医が、患者の症状から緊急に医療を提供した場合には、診察記録票に①医療を提供したときの症状、②提供した医療の内容、③医療を提供した年月日及び時刻を記載し、その後行われる搬送に同行しなければならない。

(四) 定期の報告及び退院等の請求に基づき必要に応じて行う診察(法第一九条の四第二項第五号)(精神医療審査会関係)

法第三八条の三第三項及び第三八条の五第四項の改正により、精神医療審査会は、定期病状報告及び退院等の請求を審査するに当たって、必要があると認めるときは、請求者の同意を得て委員(精神保健指定医に限る。)に診察させることができることとされた。

その実施に当たっての手続については、今般定められる精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第一二条に規定する精神医療審査会について(平成一二年三月二八日障第二〇九号本職通知)の別添「精神医療審査会運営マニュアル」を参照されたい。

(五) 精神保健福祉手帳の返還時の診察(法第一九条の四第二項第八号)

法第四五条の二第四項の創設により、都道府県知事等は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者について、その指定する精神保健指定医の診察の結果、政令で定める状態がなくなったと認めるときは、手帳の返還を命ずることができることとされた。

その実施に当たっての手続については、今般、「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」(平成一二年三月三一日障第二四五号本職通知)において一部改正された「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」を参照されたい。

三 診療録記載義務の拡充等に関する事項(法第一九条の四の二、第三七条第一項、第五七条第一項第一号)

精神保健指定医の職務について、患者に対する医療提供の記録である診療録への記載を義務づけ、都道府県知事等の報告徴収の際に検証可能にすること等により、精神障害者の人権に配慮した適正な精神医療を確保するため、精神保健指定医が法第一九条の四に規定されている職務のうち、公務員として行う職務以外の職務を行った際には、その旨及び診察結果等を診療録に記載する義務が創設された。

具体的な記載義務事項については、法施行規則に定められており、新たに追加された主な内容は次の通りである。

・ 措置入院者の措置症状消失の判定時(法第二九条の五)

・ 医療保護入院の判定時(法第三三条)

・ 応急入院時の判定時(法第三四条)

・ 措置入院者の定期病状報告(法第三八条の二)

・ 医療保護入院者の定期病状報告(法第三八条の二)

・ 措置入院者の仮退院の判定時(法第四〇条)

また、行動の制限の判定(法第三六条)時には、当該行動の制限を解除した日時を診療録に記載しなければならないものとされた。なお、行動の制限を行うに当たっては、その旨及び理由を当該患者に告知した旨を診療録等に記載しておくことが望ましい。

さらに、診療録記載義務については、罰則規定(一〇万円以下の過料)も創設されている。診療録の記載に当たっては、記載が義務づけられている事項を十分留意の上、漏れなく記載すること。

四 任意入院者の開放処遇の制限に関する事項について(法第三七条第一項)

精神保健法第三七条第一項の規定に基づき、厚生大臣が定める処遇の基準を定める件の一部を改正する件(平成一二年三月厚生省告示第九七号)により、任意入院者は、原則として、開放的な環境での処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇をいう。以下「開放処遇」という。)を受けるものである旨が定められた。

しかしながら、任意入院者ではあるが、本人の医療及び保護を図る観点から、その症状からみて、開放処遇を制限しなければならない場合が生じることも想定される。任意入院者の開放処遇の制限を行うに当たっては、精神保健指定医以外の医師により、開放処遇の制限が行われた場合には、精神保健指定医はおおむね七二時間以内に診察しなければならないこととされているなど、当該告示に規定されている「基本的な考え方」、「対象となる任意入院者に関する事項」及び「遵守事項」に十分留意し行わなければならない。

五 入院中の者の処遇改善のための努力義務に関する事項(法第三七条の二)

精神保健指定医については、自らの職務に関してだけでなく、病院全体の入院中の者の適正な処遇の確保について努力することが求められていることを明らかにするため、精神保健指定医がその勤務する病院において、入院中の者の処遇等に関し、法に違反する事例を発見した場合には、その旨を病院内の処遇について責任を有する病院管理者に報告すること等により、当該管理者により入院中の者の処遇の改善のために必要な措置が講じられるように努めなければならないこととされた。

精神保健指定医は、入院中の者の個別の適正な処遇の確保を直接担当することから、その勤務する病院内における入院中の者の不適切な処遇について、最も把握しやすい立場にある。法においては、その処遇についての責任を有するのは病院の管理者であるが、精神保健指定医についても、病院内における不適切な処遇について是正されるよう、最終的な管理責任を負う病院管理者に対し報告するなどにより、積極的に関与すべきである。

第三 精神保健指定医の研修制度に関する事項

一 研修課程の改正(規則別表関係)

精神障害者の人権に配慮した医療及び保護の一層の確保を図るため、「精神保健福祉関係法規及び精神保健福祉行政」について、その研修内容の一層の充実を図るための所要の改正が行われた。

なお、法第一八条第一項及び法第一九条第一項に規定するいずれの研修についても、その合計研修時間数には変更は生じていない。

第四 その他

一 精神保健指定医の証の更新等に係る事務取扱要領に関する事項

精神保健指定医の証の更新、記載事項の変更その他の指定後の諸手続については、「精神保健指定医の証の更新等に係る事務取扱要領について(平成八年三月二一日健医精発第二〇号厚生省保健医療局精神保健課長通知)」により行われてきたところであるが、今般、精神保健指定医の職務停止処分が創設されたことに伴い、期間を定めてその職務の停止を命ぜられたときは、住所地の都道府県知事等を経由して精神保健指定医の証を厚生大臣に返納しなければならないこととされる旨の一部改正を行うこととしている。

二 精神保健指定医の指定取消しに当たっての聴聞手続き等に関する事項

法第一九条の二の規定に基づく精神保健指定医の指定取消し処分に係る行政手続法(平成五年法律第八八号)第一三条の規定に基づく聴聞の実施に当たっては、「精神保健指定医の指定取消しに当たっての聴聞手続き等について(平成九年七月三〇日障精第一二二号厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)」の別添「精神保健指定医の指定取消し処分に係る聴聞実施要領」により行われてきたところであるが、今般、精神保健指定医の職務停止処分が創設されたことに伴い、職務停止に関する聴聞も当該実施要領の対象とされる旨の一部改正を行うこととしている。