添付一覧
○精神保健法の一部を改正する法律の施行について
(平成七年六月一六日)
(健医発第七八三号)
(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)
精神保健法の一部を改正する法律(平成七年法律第九四号。以下「改正法」という。)の施行については、別途本日付け厚生省発健医第一九〇号をもって厚生事務次官より通知されたところであるが、改正法の施行に当たっては、特に左記に掲げる事項に十分留意の上、関係制度の円滑な実施に期されるとともに、貴管下市町村を含め関係者、関係団体に対する周知方につき配慮されたい。
記
第一 精神障害者福祉の法制化等に関する事項
一 精神障害者の福祉の考え方について
今回の法律改正では、精神障害者の福祉を法体系上位置付けて、精神保健と精神障害者福祉を総合的に推進する法律とし、法律名も「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下略称として「精神保健福祉法」を用いる。)に改めたものである。
精神保健は、精神障害者を精神疾患を有する者としてとらえ、保健医療の観点から、精神障害の予防、治療、リハビリテーションを図るものであるが、精神障害者の福祉は、精神障害による日常生活又は社会生活上の能力障害やそれに伴うハンディキャップに着目して、自立生活の援助あるいは社会参加の促進のために必要な援助を行うものである。
また、このような援助を行うことによって、障害を持ちながらもできるだけ健常者と同じような生活を送れるようにしようという考え方は、ノーマライゼーションの考え方にかなうものである。
これまでは、精神保健とりわけ精神医療を中心に施策を推進してきたものであり、昭和六二年の改正で、精神障害者の社会復帰の促進を精神保健法に位置付けているが、これは精神保健対策の範囲にとどまるものであったものである。
社会復帰の促進は、リハビリテーションとしてとらえれば保健医療施策であり、また、精神障害者が疾患と障害を合わせ持ちながら地域で暮らせるように援助を行うという点では福祉的な面も有するものであり、そのため、これまでも、精神障害者社会復帰施設は、医療法人と社会福祉法人のどちらもが設置経営できることとしてきたところである。今般の改正では、さらに、福祉的な性格が明確な「自立と社会参加の促進のために必要な援助」を法律上位置付け、精神保健及び精神障害者福祉の両面を総合的に行う法律として、精神保健福祉法に改めたものである。
二 精神障害者の定義との関係について
従来の精神保健法第三条の「この法律で「精神障害者」とは、精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。」という定義は、精神障害者を精神疾患を有する者(mentally disordered)という医学的な概念でとらえており、保健医療施策におけるとらえ方である。
一方、障害者基本法第二条では、「この法律において「障害者」とは、身体障害、精神薄弱又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。」とし、精神障害者を能力障害に着目した概念でとらえているが、この意味での精神障害者(mentally disabled)は、生活能力の障害やハンディキャップに着目して援助を行うという福祉施策におけるとらえ方である。
精神疾患に着目した精神障害者概念の方が、この能力障害に着目した精神障害者概念よりも、ごく軽度の精神疾患や、短期的な精神疾患を含み、対象者の範囲が広いため、精神保健福祉法における定義規定は、現在の定義のまま改正を行わなかったものであるが、精神障害者の保健福祉施策の推進に当たっては、このような精神障害の概念における疾患と障害の区別、あるいは、精神障害における疾患と障害の二面性に留意されたいこと。
なお、精神薄弱者については、本法では、精神医療に関する規定については、精神薄弱者を精神障害者に含めて適用しているが、第六章(保健及び福祉)及び第七章(精神障害者社会復帰促進センター)の規定においては、精神障害者から精神薄弱者を除くものと規定(第四五条第一項)しているところであるので、併せて留意されたいこと。
三 精神障害者福祉の実施体制について
今般の改正で、精神障害者の福祉を法制化したものであるが、保健医療施策は保健衛生部局・機関で、福祉施策は民生福祉部局・機関で行うという一律の区別を行うことは適切でなく、精神障害者は、疾患を有する患者であると同時に、障害を有する障害者であるため、精神保健施策と精神障害者福祉施策は、密接な関連をもって行うことが適当であり、具体的な実施体制については、各地方自治体の自主的判断によるものであるが、例えば、当面、これまで精神保健施策を担ってきた保健所等において精神障害者福祉施策についても一体的に担っていくとともに、生活保護行政や他の障害者行政等を担っている福祉事務所等の福祉の機関との連携を図っていくことが適切であること。
四 精神保健福祉施策における市町村の役割について
これまで、精神保健行政は、都道府県、保健所を中心に行ってきたが、医療中心の行政から、社会復帰や福祉施策にその幅を広げるにつれて、近年、身近な市町村の役割が大きくなっており、平成六年一二月の地域保健法に基づく基本指針においても、精神障害者の社会復帰対策のうち、身近で利用頻度の高いサービスは、市町村保健センター等において、保健所の協力の下に実施することが望ましいとされているところである。
今回の改正では、第四六条において、都道府県とともに市町村についても、精神障害についての正しい知識の普及に努めなければならないとの規定を設けるとともに、第四七条においては、保健所を設置する市又は特別区について、都道府県と同様に相談指導等の実施を義務づけるとともに、その他の市町村についても、相談指導等の実施に関し努力義務規定を設けたところであるが、これらの規定は、市町村は社会復帰施設を設置することができるとの従来からの規定(第五〇条)とあいまて、市町村の役割を法律上明確に位置付けるものである。
今後は、精神保健福祉法や地域保健法及び障害者基本法の趣旨を踏まえて、きめ細かい対応を要する分野については、市町村が積極的に取り組めるよう条件整備を進めていくことが必要である。
五 精神障害者の保健福祉施策の計画的推進について
障害者基本法第七条の二では、都道府県及び市町村は、障害者計画を策定するように努めなければならないと規定しており、また、本年五月一一日には、内閣総理大臣官房内政審議室長から各都道府県知事あてに「市町村の障害者計画策定に関する指針について」の通知もなされたところであり、精神障害者の保健福祉施策も含め、計画の策定及び推進に努められたいこと。
第二 精神障害者の保健福祉施策の充実及び適正な精神医療の確保に係る法改正事項関係
一 精神保健福祉センターに関する事項
精神保健センターを精神保健福祉センターに改称し、精神障害者の福祉に関する事務を加えたところであるが、その取扱いについては、別途、「精神保健センター運営要領」(昭和四四年三月二四日衛発第一九四号公衆衛生局長通知)の改正により示す予定であること。
二 地方精神保健福祉審議会に関する事項
地方精神保健審議会を「地方精神保健福祉審議会」に改称し、精神障害者の福祉に関する事項及び精神障害者保健福祉手帳の申請に関する事項を審議事項に加え、委員及び臨時委員の要件に、精神障害者の福祉に関し学識経験のある者等を加えるとともに、委員の定数の上限を一五人以内から二〇人以内に引き上げたところであるが、これはあくまでも定数の上限の改正であり、これにより直ちに委員の定数増が求められるというものではなく、各都道府県における実情に応じて判断されたいこと。
また、今般の改正で、都道府県知事が精神障害者保健福祉手帳の申請に対して決定を行うに当たっては、地方精神保健福祉審議会の意見を聴かなければならないこととしたが、これは、現在の通院公費負担医療制度において、判定を同審議会で行うこととしているものと同趣旨であること。
従って、昭和六三年四月六日付け健医発第四三三号各都道府県知事宛て当職通知(精神衛生法等の一部を改正する法律の施行について)の第三で示したものと同様、当該審議に従事する委員の数及び審議方法については、都道府県の自主的判断によるものとするが、例えば、同審議会に部会を設けるなどの方法によることも可能であり、通院公費負担医療の判定と同じ部会で併せて行うなどの方法によることも差し支えないものであること。
三 精神保健福祉相談員に関する事項
精神保健福祉相談員は、現行第四二条の精神保健相談員を改正したものであり、その業務や知識経験の要件に精神障害者の福祉を明記する改正を行ったが、これまでも、実質的にそのような運用がされてきているものであるから、現行の精神保健相談員をそのまま改正後の精神保健福祉相談員として差し支えないこと。
なお、精神保健福祉相談員の設置については、精神保健福祉法の成立の趣旨を踏まえつつ、都道府県の実情に応じた判断によって行われたいこと。
四 精神障害者保健福祉手帳に関する事項
精神障害者保健福祉手帳については、現在、交付等の手続き、判定基準、手帳の様式等について検討を進めているところであり、今後、関連の省令改正等を行い、一〇月一日を目途に手帳の交付事務を開始する予定であること。
五 地域精神保健福祉施策に関する事項
第四六条の正しい知識の普及の規定については、精神障害者の社会復帰や生活の自立と社会参加を促進していくためには、精神障害者に対する社会的な誤解や偏見を取り除いて、精神障害に対する正しい知識の普及や、地域住民の関心と理解を深めていくことが極めて重要であり、そのための施策推進に一層努められたいこと。
また、第四七条の相談指導等については、改正前の第四三条の規定が、精神障害者であるが措置入院されなかったもの等を対象に行う訪問指導等であったのに対し、精神障害者やその家族等に対する精神保健及び精神障害者福祉に関する幅広い相談指導の規定に改めたものであり、また、改正前の規定は保健所長の事務として規定されていたものを、保健所に限らず、一般的に都道府県及び市町村の事務として規定したものであり、その推進に一層努められたいこと。
なお、第四九条の施設及び事業の利用の調整等の規定は、第四七条の相談指導のうちの一部を特記したものであり、第四九条では「保健所長は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた精神障害者から求めがあったときは、」と規定しているが、保健所に限らず、また、手帳の交付を受けた者に限らず、利用の調整等の事務を行うことができることは当然のことであること。
第三 公費負担医療制度の改正関係
一 公費負担医療制度の改正事項
従来、精神医療の措置入院及び通院医療の公費負担制度については、公費優先の仕組みとしてきたところであるが、今般、保険優先の仕組みに改め、平成七年七月診療分から適用することとしたこと。
二 措置入院の公費負担に関する事項
(一) 保険優先の取扱いについての基本的な考え方
現行では、一旦、全額公費負担とした上で、所得に応じた費用徴収(〇円~全額徴収の一七段階)の部分について、医療保険制度を適用する。従って、最終的な自己負担は、健康保険本人であれば費用徴収部分の一割、健康保険家族であれば同二割、国民健康保険であれば同三割となる。
これに対し、改正後は、引き続き公費負担(所得に応じた費用徴収は〇円又は二万円)を行うが、医療保険制度により給付される部分については、公費で負担することを要しないこととすること。なお、最終的な自己負担額は、費用徴収基準の改正により、所得税額一五〇万円以下の者では〇円となり、また、所得税額一五〇万円超の者では二万円となり、患者負担の軽減が図られること。
(二) 費用徴収額の認定について
措置入院患者に係る費用徴収額の認定基準については、昭和三六年一〇月二七日発衛第三五三号厚生事務次官通知により行われてきたところであるが、今般の法改正に伴いこれを廃止し、本日付け厚生省発健医第一八九号厚生事務次官通知により行われることとされたこと。これにより、従来一七段階に細分化されていた費用徴収基準が、二段階に簡素化されるものであること。
なお、昭和六三年一一月一八日健医発第一三二六号各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知「精神保健法による措置入院者の費用徴収額の認定の取扱いについて」は、新しい費用徴収額の認定基準についても適用されるものであること。
(三) 診療報酬請求書の審査及び支払い方法について
措置入院に係る診療報酬請求書の審査及び支払いについては、従前は、国民健康保険の被保険者が措置入院した場合についても、社会保険診療報酬支払基金への委託により行ってきたところであるが、法律改正により保険優先の仕組みとなることから、新たに国民健康保険団体連合会に対しても、措置入院に係る診療報酬請求書の審査及び支払いについて委託契約により行うことが必要となるので、各都道府県知事は、社会保険診療報酬支払基金との契約書及び覚書や、通院公費負担医療についての国民健康保険団体連合会等との契約書及び覚書に準じて契約等を締結すること。
三 通院医療の公費負担に関する事項
(一) 保険優先の取扱いについて
現行では、医療に要する費用の二分の一を先ず公費負担し、残りの部分について、医療保険制度を適用することとしている。従って、最終的な自己負担は、例えば、健康保険本人であれば五%、国民健康保険であれば一五%となっていたところである。
これに対し、改正後は、医療に要する費用の九五%を公費負担することとするが、医療保険制度により給付される部分については、公費で負担することを要しないこととすること。従って、最終的な自己負担額は、医療保険制度の種別にかかわらず、五%に統一されるもの(医療保険制度により給付される部分が医療に要する費用の九五%に満たない場合)であること。
(二) 生活保護の場合の取扱い
生活保護法の医療扶助の適用を受ける者については、精神医療の公費負担がこれに優先して適用されるため、その残り五%の最終的な自己負担部分が医療扶助の対象となること。
(三) 医療保険制度等における自己負担額が五%額より少ない場合の取扱い
老人保健法の適用を受ける者については、同法による一部自己負担額(現在、通院医療は一か月に一、〇一〇円)が、精神保健福祉法による五%の自己負担額より少ない場合(すなわち、老人保健の外来一部負担金を支払うべき日の通院医療費が二万二〇〇円を超える場合)には、精神保健福祉法による公費負担額は生じないものであること。
このほか、国民健康保険法第四三条又は第四四条による一部負担金割合の減額がある場合など、その自己負担額が、医療に必要な費用の五%の額より少ない場合にも、精神保健福祉法による公費負担額は生じないものであること。
(四) 認定の有効期間に関する事項
通院医療費の公費負担に係る認定の有効期間を六か月から二年に改めたこと。
なお、この改正事項の施行日(平成七年七月一日)において、現に認定を受けている者に係る認定の有効期間については、患者票の有効期限の記載を書き替えることなく、全て、申請日より二年間有効なものとして有効期間が自動的に延長されるものであること。
(五) 医師の診断書及びその省略
改正法の第三二条では、新たに、通院医療費の公費負担の申請は、厚生省令で定める医師の診断書を添えて行わなければならない旨の規定を加えたところであるが、この診断書は、従来の医師の意見書であること。
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者については、通院医療の公費負担の申請に当たっては、医師の診断書の提出及び地方精神保健福祉審議会における判定を要しないものとされたこと。
