アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○精神保健法等の一部を改正する法律の施行について

(平成六年三月一四日)

(健医発第二八一号)

(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)

精神保健法等の一部を改正する法律(平成五年法律第七四号。以下「改正法」という。)の施行については、別途本日付け厚生省発健医第五一号をもって厚生事務次官より通達されたところであるが、改正法の施行に当たっては、特に左記に掲げる事項に十分留意の上、関係制度の円滑な実施につき遺憾なきを期されるとともに、貴管下市町村を含め関係者、関係団体に対する周知方につき配慮されたい。

第一 精神障害者の定義に関する事項

精神保健法においては、従来、精神障害者の定義を「精神病者(中毒性精神病者を含む。)、精神薄弱者及び精神病質者」と規定し、精神に障害のある者を包括的に捉えて同法の施策の対象とされてきたところであるが、今日、精神医学上の用語法においては、現行定義規定では精神に障害のある者を包括的に表現するものとして適当でないことに鑑み、今般、同法における精神障害者の定義規定が見直され、「精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質その他の精神疾患を有する者」とされたこと。

なお、今般の定義規定の改正は、現行の定義規定を精神医学上の用語に合わせて見直すものであり、従来の定義規定による対象範囲と変わるものではないこと。

第二 精神障害者地域生活援助事業に関する事項

精神障害者地域生活援助事業は、地域において共同生活を営むのに支障のない精神障害者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において食事の提供、相談その他の日常生活上の援助を行うものであり、今後における精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る上で重要な事業であること。このため、今後、精神障害者地域生活援助事業の積極的な普及を図ることが必要であり、同事業の実施は、地域においてきめ細かく推進することが必要であることから、社会福祉法人、医療法人等の民間が主体となって事業を実施するよう積極的に働きかけを行う必要があること。これにより、改正後直ちに地方公共団体自らが事業を実施するものではないこと。特に、市町村については、行政需要及び財政状況等を勘案の上、自主的な判断に基づき精神障害者地域生活援助事業を実施できるものであり、画一的に事業の実施を求めるものではないこと。一方、民間における取組みが不十分である地方公共団体においては、これを補完する取組みが必要であること。

なお、国は、従来どおり、精神障害者地域生活援助事業を実施できるものであること。

第三 地方精神保健審議会に関する事項

今般、地方精神保健審議会において、精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業の実情等を踏まえた調査審議を可能とするため、新たに、同審議会の委員及び臨時委員に「精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業に従事する者」が追加されたが、「精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業に従事する者」については、精神障害者社会復帰施設、精神障害者地域生活援助事業を行う施設等において訓練、指導等の業務に従事する者であること。

第四 保護者に関する事項

「保護義務者」は、精神障害者の身近にあって、適切な医療及び保護の機会を確保し、きめ細かく精神障害者の権利・利益を擁護するためのものであるが、今般、他の保健医療制度等における名称との均衡に配慮し、その名称が「保護者」とされたこと。なお、今般の改正によって、改正前の保護義務者の機能に変更はないものであること。

また、保護者に対し、保健・医療・福祉の各分野における支援を促進するため、今般、保護者に関し、入院措置の解除された精神障害者を引き取るに当たり必要があるときは、当該精神病院若しくは指定病院の管理者又は当該精神病院若しくは指定病院と関連する精神障害者社会復帰施設の長に対し、当該精神障害者の社会復帰の促進に関し、相談し、及び必要な援助を求めることができることとされたこと。

さらに、保健所長は、入院措置の解除された精神障害者と同居する保護者等については、必要に応じ、精神保健に関する業務に従事する職員又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市の長が指定した医師をして、精神保健に関する相談に応じさせ、及びこれらの者を訪問し精神保健に関する適当な指導をさせなければならないこととされたこと。

第五 医療施設における相談・援助に関する事項

今般、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る観点から、精神病院その他の精神障害の医療を提供する施設の管理者は、当該施設において医療を受ける精神障害者の社会復帰の促進を図るため、その者の相談に応じ、その者に必要な援助を行い、及び保護者等との連絡調整を行うよう努めなければならないこととされたが、「精神障害の医療を提供する施設」には、精神病院のほか、精神科を標榜する診療所が含まれるものであること。

第六 精神障害者社会復帰促進センターに関する事項

精神障害者の社会復帰の一層の促進を図るため、厚生大臣の指定法人として、精神障害者社会復帰促進センター(以下「センター」という。)が設けられたこと。

今般の改正においては、センターの業務の円滑な運営を確保するため、精神病院その他の精神障害の医療を提供する施設の設置者、精神障害者社会復帰施設の設置者及び精神障害者地域生活援助事業を行う者は、センターの求めに応じ、センターが精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練及び指導等に関する研究開発等の業務を行うために必要な限度において、センターに対し、精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練及び指導に関する情報又は資料で厚生省令で定めるものを提供することができることとされたが、「精神障害の医療を提供する施設」には、精神病院のほか、精神科を標榜する診療所が含まれるものであること。また、精神障害の医療を提供する施設の設置者、精神障害者社会復帰施設の設置者及び精神障害者地域生活援助事業を行う者がセンターの求めに応じて行う資料又は情報の提供は、法令に基づく守秘義務の範囲内において行われるものであること。このため、厚生省令で定める情報又は資料は、精神障害者の社会復帰の促進を図るための相談並びに訓練及び指導に関する情報又は資料、並びにこれらの相談並びに訓練及び指導を受けた精神障害者の性別、生年月日及び家族構成並びに状態像の経過に関する情報又は資料(個人を識別できるものを除く。)に限られるものであること。

第七 仮入院に関する事項

今般、精神障害者等の人権を擁護する観点から、近年における精神科の診断技術の向上を踏まえ、仮入院の期間の限度が三週間から一週間に改められたこと。

このため、改正法の施行後においては、仮入院による診断を一週間以内に実施し、その後は、当該者の退院又は他の入院形態への移行を円滑に実施するよう徹底を図られたいこと。

第八 法定施設外収容禁止規定に関する事項

精神保健法第四八条の法定施設外収容禁止規定は、旧精神病者監護法(明治三三年法律第三八号)における私宅監置制度及び旧精神衛生法における保護拘束制度の廃止に伴い、その趣旨を入念的に明らかにするために規定されてきたところであるが、今日においては、本規定は当初の目的を達成したものであり、一方で、本規定が誤解されて運用されていることが指摘されていることから、今般、削除されたものであること。

なお、精神障害者の不当な拘束については、今後とも、刑法(明治四〇年法律第四五号)の監禁罪の適用がありうるものであること。

また、病院等の管理者は、臨時応急の場合を除いて、精神障害者を精神病室でない病室に収容しないこととする医療法施行規則(昭和二三年厚生省令第五〇号)第一〇条の取扱いには変更はないものであること。

第九 大都市の特例に関する事項

大都市の特例については、平成八年四月一日から実施されることとされたところであるが、事務委譲の範囲等を定める政令については、追って、各都市の実情等を踏まえながら、制定する予定であること。

第一〇 精神障害者の資格制限の緩和に関する事項

今般、精神障害者であることを絶対的欠格事由としている栄養士の資格等について、精神科における治療技術の向上、医薬品の開発の進展等を踏まえ、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る観点から、相対的欠格事由とされたこと。

各都道府県及び市町村においては、今般の法改正の趣旨を踏まえ、精神障害者に係る資格制限及び利用制限に関しては、必要最小限とするべく、関係条例、規則等の見直しを行うよう、特段の配慮をされたいこと。

第一一 その他

これまで通知している本職通知のうち、「保護義務者」とあるのは、改正法の施行日(平成六年四月一日)より、「保護者」と読み替えるものであること。