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○地域保健対策の推進に関する基本的な指針の一部を改正する告示について

(平成一二年五月一七日)

(健医発八五四号・障第三八二号・健政発第六一三号・生衛発第八七六号・医薬発第五二二号・社援第一二〇四号・老発第四八八号・児発第五一二号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省保健医療局長・厚生省大臣官房障害保健福祉部長・厚生省健康政策局長・厚生省生活衛生局長・厚生省医薬安全局長・厚生省社会・援護局長・厚生省老人保健福祉局長・厚生省児童家庭局長通知)

今般、地域保健法(昭和二二年法律第一〇一号)第四条第四項の規定に基づき、平成一二年三月厚生省告示第一四三号をもって、標記について告示されたが、この趣旨は左記のとおりであるので、この趣旨を踏まえつつ、所要の取組を進めるとともに、貴管下市町村、関係団体及び関係機関等に対する周知徹底方をお願いする。

第一 改正の趣旨

平成六年に保健所法の改正により成立した地域保健法に基づき、同年一二月に、地域保健対策の推進に関する基本的な指針(平成六年一二月厚生省告示第三七四号。以下「基本指針」という。)が定められ、これに基づいて、新しい地域保健対策の推進が図られてきたところである。

しかしながら、基本指針の告示後、阪神・淡路大震災等の地域住民の生命、健康の安全に影響を及ぼすおそれのある事態(いわゆる「健康危機」)が頻発して、地域の保健衛生部門による健康危機管理の在り方が問題となったこと、ノーマライゼーションの推進、地域住民に対する精神的ケアの重要性が増大したこと、介護保険制度が平成一二年度から実施されたことに伴い、同制度の円滑な実施のために、介護保険、介護予防、健康づくり等に係るサービスを住民が必要なときに適切に提供できる体制を整備することが必要となっているが、そのために地域保健部門が取り組むべき役割が問題となったこと等、地域保健対策を巡る状況に著しい変化を生じていることから、このような状況に対応した地域保健対策の基本的な在り方を示すため、今般、基本指針について必要な改正を行ったものである。

第二 地域における健康危機管理体制の確保について

一 都道府県、市町村等の取組

第一の六及び第六の一において、都道府県及び市町村等が、地域における健康危機管理体制の確保のために取り組むべき事項として規定したもの及びその趣旨等は、次のとおりであること。

(一) 健康危機管理を適切かつ迅速に行うためには、地方公共団体の保健衛生部門と警察、消防等のその他の部門、他の地方公共団体を含む関係機関及び関係団体との連携及び調整が確保された健康危機管理体制を構築することが必要であること。

(二) 健康危機は、日時、場所を問わず発生しうる性質のものであるので、健康危機管理を迅速かつ適切に行うためには、各地方公共団体の保健衛生部門は、休日、夜間の対応を含め、健康危機管理に際して担うべき役割をあらかじめ明確化しておくべきこと。

(三) 健康危機管理は迅速かつ適切に行われなければならず、技術的かつ専門的事務であるので、その体制としては、健康危機情報が一元的に迅速かつ適切に管理されたトップダウン的なものとするべきこと。そのために必要な情報通信手段の整備について配慮すること。また、地域の健康危機管理体制の管理責任者には、保健所長が望ましいこと。

(四) 健康危機管理体制を明確にするため、健康危機管理のための手引書を作成しておくべきこと。なお、都道府県は、作成に当たって、当該手引書を、都道府県レベルにおける広域的なものと地域レベルにおけるものの双方について作成することが必要であること。そして、前者は、都道府県の保健衛生主管部局が中心となって、後者は二次医療圏を管轄する保健所が中心となって、それぞれ関係地方公共団体及び関係部局等と連携をとりながら作成するべきこと。また、市町村においても手引書を整備することが望ましいこと。手引書の作成に当たっては、地方公共団体において策定するべき都道府県防災計画等の計画との整合性を保つ必要性があること。

当該手引書には、平時からの健康危機情報の収集体制の整備、関係機関との連携体制の強化、健康危機発生時の情報収集体制及び対応体制の迅速な確立等について記載することが望ましいこと。

(五) 手引書の実効性を確保するため、健康危機管理に従事する人材を育成するとともに、健康危機管理のために必要な機器の整備を図ること。また、手引書に記載された関係機関等の役割等について関係者の共通認識を確保するため、手引書に基づいた訓練等を行うべきこと。

(六) 健康危機の際には、行政のみでは対応できる人材等が不足することが予想されるので、ボランティア等との連携を図ることが必要であるほか、健康危機による被害者及び健康危機管理に従事した者は精神的なケアを必要とすることが多いので、これらの対策を講ずることが必要であること。

(七) 都道府県は健康危機管理において、救急医療体制の整備、健康危機情報の収集、分析及び提供等を行う必要があること。

(八) 政令市及び特別区は、健康危機管理において、保健所等の関係機関及び都道府県との連携を図るほか、地方衛生研究所の充実等による検査機能の充実強化を図る必要があること。

(九) 市町村は、健康危機管理において、法令に基づく対応を行うほか、住民に対して、健康被害予防のための健康危機情報の提供を行う必要があること。なお、政令市及び特別区を除く市町村は、都道府県の設置する保健所に対して、健康危機情報を伝達し、その指示等に基づく対応を行う必要があること。

二 保健所における取組

第二の一の二の(五)において、保健所が健康危機管理において特に担うべき事項として規定したもの及びその趣旨等は、次のとおりであること。

(一) 健康危機の発生に備えて、平時から、地域の保健医療の管理機関として、地域医療の提供状況を把握し、関係機関及び関係団体と調整を行い、地域における医療提供体制の確保に努めること。特に保健医療情報の集約及びそれに基づく対応方策の総合調整を行う体制を確保する必要があること。

(二) 健康危機発生時には、健康被害者の生命に関わる情報の収集及び提供、健康被害者に対する適切な保健医療の確保のための支援措置、関係機関が連携した活動を行うための総合調整等を図ること。

(三) 健康危機発生後においては、健康危機発生時の対応及び結果について、科学的根拠に基づき評価を行い、それを公表するとともに、その成果を将来の施策に反映させること。

三 地方衛生研究所における取組

第四の二及び三において、地方衛生研究所が健康危機管理等に関して取り組むべき事項について定めた趣旨は、次のとおりであること。

(一) 地方衛生研究所は、地域における健康危機管理に当たって、科学的かつ技術的側面からの支援を行うこと。このため、その施設及び機器の整備を図るほか、平時からの調査及び研究の充実による知見の集積並びに研修の実施等による人材の育成を図ることにより、地域における中核的に試験検査機関としての機能強化を図ること。

(二) 地方衛生研究所は、平時から、国立試験研究機関若しくは他の地方衛生研究所又はその他の関連機関との連携体制を構築することにより、単独の地方衛生研究所では対応できないような健康危機等に対応するための相互支援体制を強化すること。さらに、休日及び夜間においても適切な対応を行えるような体制を整備すること。

第三 介護保険制度の円滑な実施のための取組について

一 市町村及び都道府県における取組

第一の四において、介護保険制度の円滑な実施のために、市町村及び都道府県が取り組むべき事項として規定したもの及びその趣旨等は、次のとおりであること。

(一) 介護保険制度の円滑な実施のためには、介護保険法(平成九年法律第一二三号)施行後の高齢者対策が、介護保険、老人保健福祉、地域保健等の関連部局の密接な連携の下に一体的、連続的に展開される必要があること。

(二) 老人保健対策の展開に当たっては、生活習慣が異なる個々の高齢者の健康状態に応じた健康づくり対策を強化し、また、要介護状態等とならないために転倒予防、閉じこもり予防等の対策を強化し、高齢者が主体的に健康づくりに取り組むことを支援する保健活動を強化すること。

(三) 地域において、要介護状態等にある高齢者はもとより、要介護認定の対象とはならないが在宅生活を継続する上で何らかの支援を必要とする高齢者を早期に発見して、必要なサービスを適切に提供するための総合調整を行うこと。

(四) 個々の高齢者のニーズを把握することにより、既存のサービスでは充足できない新たなニーズを把握した場合には、これを充足するためのサービス提供体制を開発し、地域におけるサービスを必要なときに適切に提供するための地域ケアシステムづくりを推進すること。

(五) 介護給付等の対象となるサービスの質の確保及び向上を図り、介護保険に係るサービスの円滑な提供に資するよう、介護保険事業者等に対して必要な調査を行うとともに、サービスの質を確保するための適切な助言を行うこと。

(六) 要介護状態を的確に把握できる調査員の確保や適正な介護認定審査を行うことは、要介護等認定の公平性を保つ上で重要であることから、要介護等認定に係る人材に対しての継続的な研修を行う等により、その人材の質の確保を行うこと。

(七) 市町村及び保健所においては、介護保険制度に関する相談、苦情等により高齢者の様々な情報が収集されるが、これらの情報を整理し、適切な情報を関係部局に提供すること等により、介護保険に係るサービスのみでなく、保健、医療、福祉サービスの質を向上させるための活動を強化すること。

なお、第一の四においては、地域保健対策として介護保険制度の円滑な運用のための取組について新たな指針を示したが、高齢者に対する地域保健対策は介護保険、介護予防と一体的な対策として位置づけることが、地域の健康レベルを維持、向上する上でも重要であり、この点について特に十分な認識が必要であること。

二 関連施策との連携に関する基本的事項

また、第五の三において、介護保険制度の円滑な実施のため、関連施策との連携に関する基本的事項として規定したもの及びその趣旨等は、次のとおりであること。

(一) 市町村の保健部局は、介護保険制度の円滑な実施のため、介護保険部局との連携を密接に図り、介護保険事業と老人保健福祉事業とを有機的かつ連続的に運用すること。

具体的には、要介護状態となった要因を分析し、これを介護予防や健康づくり事業にいかすこと、要介護認定手続や介護相談等を通して、複雑な問題を持つ高齢者や、健康問題を有するが要介護状態にないと判定された高齢者等を早期に把握し、適切な保健、医療、福祉サービスの提供をする地域ケアシステムづくりを推進すること並びに高齢者の生涯を通じた健康づくり対策、要介護状態等にならないための予防対策及び自立支援対策等を強化することが必要であること。

(二) 都道府県の保健部局は、都道府県内の介護保険、介護予防等の関連部局や関係団体と十分に連携を図り、都道府県介護保険事業支援計画と整合性を保った都道府県老人保健福祉計画を策定し、その推進を図るとともに、市町村に対しては都道府県内の保健、医療、福祉サービスの実施状況等に関する情報を提供し、市町村が介護保険、介護予防、健康づくり等の事業を円滑に運営できるように支援すること。

(三) 都道府県の設置する保健所は、市町村が介護保険事業計画を円滑に実施できるよう、その推進に対して必要な支援を行うとともに、介護保険に係るサービス資源等について市町村間の広域的な調整及び開発等に対して支援を行うこと。

(四) 政令市及び特別区の保健部局は、市町村の保健部局の役割に加え、都道府県の設置する保健所の役割のうち、保健、医療、福祉サービスの実施状況等に関する情報を収集し、その総合化を行うとともに、地域ごとの特徴等について分析し、関係部局に対してこれらの情報提供等を行うこと。

第四 ノーマライゼーションの推進及び精神的ケアに対するニーズの高まりについて

一 ノーマライゼーションの推進及び精神的ケアに対するニーズの高まりを踏まえて、第二の一の二の保健所の運営に関する事項として、障害者保健福祉等の推進に関する事項を追加したこと。

二 第三の一の人材の確保として、精神保健福祉士について、都道府県はその継続的な確保に努めることとし、市町村はその人的資源を最大限活用するものとしたこと。

第五 「二一世紀における国民健康づくり運動(健康日本二一)」の推進等について

一 第一の七として、科学的な根拠に基づく地域保健対策の推進を明確化するとともに、地域における健康問題に対して適切かつ効果的に対処するため、都道府県及び市町村は、地域住民の健康を阻害する要因を科学的に明らかにしてその対策を図るとともに、疫学的な調査等を行うことにより、地域保健対策の評価等をし、その評価等に基づいて新たな施策の企画及び実施を行うべきこととしたこと。

二 「二一世紀における国民健康づくり運動(健康日本二一)」の地域における推進を図るため、第二の一の二の(六)において、保健所は、地域における健康情報の収集、分析等を行うとともに、二次医療圏ごとの地方計画の策定及び市町村の地方計画の策定に関与する等、住民の健康づくりを住民とともに推進する環境整備の拠点としての機能を強化する必要があるものとしたこと。また、その際は、学校保健、職域保健等との連携及び協力の強化を図るべきものとしたこと。

第六 保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する事項

一 最近の地域における健康危機管理体制の確保の重要性が増大していることにかんがみ、第二を、保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項とし、その内容的整理を図ったこと。

二 介護保険法施行法(平成九年法律第一二四号)第五八条により、地域保健法第五条第二項が改正され、都道府県の設置する保健所の所管区域について、二次医療圏と介護保険法第一一八条第二項第一号に定める区域とを参酌して設置することとされたことにより、第二の一の一の(一)について所要の規定の整備を図ったこと。

三 政令指定都市における健康危機管理体制の充実及び各行政区間における保健サービスの公平性の確保のために、第二の一の一の(二)として、政令指定都市における保健所の設置の在り方について、地域の特性を踏まえるとともに、住民が受けることができるサービスの公平性が確保されるようにすべきものとしたこと。

第七 地域保健対策を担う人材の確保及び資質の向上について

一 人材の確保について

(一) 地域保健対策は、専門的、技術的性質を有しており、その推進のためには、専門技術職員の確保が重要であるので、第三の一の二において、地域保健法施行令(昭和二三年政令第七七号)第五条に規定する専門技術職員の確保に努めるものとしたこと。

(二) 地域における健康危機管理体制の充実のためには、特に医師の確保並びにその適正な配置及び育成が重要であるので、第三の一の一及び二において、医師の確保が必要であり、かつ、その配置に当たっては、専任の保健所長を置くことにより、医師が複数保健所を兼務する状態の解消を図るほか、一つの保健所には複数の医師を配置すること等の適切な措置を講じるよう努めるものとしたこと。

(三) 地域保健対策は専門的、技術的性質を有するので、第三の一の三において、市町村においても、専門技術職員を確保し、又は活用するものとしたこと。

二 人材の資質の向上

(一) 地域保健関係職員が地域の健康問題に的確に対応できるように、その資質の向上を図ることが重要であることから、第三の二の一において、都道府県等は、そのための研修を企画するとともに、重複した研修を調整し、研修を効果的に実施するために、研修を一元的に行う体制を整備することが望ましいこととしたこと。

(二) 第三の二の二において、地域保健関係職員について実施すべき研修として、当該専門分野の研修に加えて、それぞれの地域の健康問題に対する施策を総合的に立案する等の企画調整能力を高めるための研修を加えたこと。

また、従来、基本指針において、「ケア・コーディネーション」に資する研修等について定めていたが、「ケア・コーディネーション」の概念が多義的であることにかんがみ、「ケア・コーディネーション」の概念を、「保健、医療及び福祉の連携の下で最適なサービスを総合的に提供するための調整を行う」ことと明確化したこと。

(三) 第三の二の三において、都道府県は、市町村の求めに応じ、都道府県の設置する保健所と市町村との人事交流等の実務研修を実施するとともに、都道府県及び市町村の職員の研修課程を定め、保健所、地方衛生研究所等との間の職員研修上の役割分担を行って、研修の推進に努めることとしたこと。

(四) 第三の二の四において、都道府県は、その設置する保健所において、市町村職員及び保健医療福祉従事者に対する研修を実施するとともに、町村の職員が研修を受講する際には、保健事業の実施に支障が生じないように、当該保健所において必要な人的支援を行うこととしたこと。

第八 地域住民との連携及び協力

地域保健対策を推進するためには、行政機関のみならず、地域のボランティア又は住民グループとの連携の必要性が増大していることにかんがみ、第六の二において、保健所においても、地域住民との連携及び協力に努めるものとしたこと。

第九 その他

地域保健法施行令第九条第一項の規定による同意に係る同条第二項の整備計画は、基本指針第二の一の一に定めたとおりであること。また、これは、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二五〇条の二第一項の基準であること。

厚生大臣の当該同意についての同法第二五〇条の三第一項に規定する標準的な期間は、一月であること。