添付一覧
○高齢者の生きがいと健康づくり推進事業について
(平成元年一〇月一九日)
(老福第一八七号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省大臣官房老人保健福祉部長通知)
明るい活力ある長寿社会の実現に向けて、高齢者が家庭・地域・企業等社会の各分野において、それまで培った豊かな経験と知識・技能を活かし、生涯を健康で、かつ生きがいをもって社会活動ができるよう、高齢者、青壮年、婦人等社会の各層における高齢者観についての意識改革を図るとともに、社会の各分野において高齢者の社会活動が活発に展開されるよう
1 高齢者の社会活動についての国民の啓発
2 高齢者のスポーツ活動、健康づくり活動及び地域活動等を推進するための組織づくり
3 高齢者の社会活動の振興のための指導者等育成事業の推進
等の事業を実施することとしている。また、その推進母体として中央に「長寿社会開発センター」を、都道府県に「明るい長寿社会づくり推進機構」を整備し、併せて、試行的市町村を指定し、高齢者の生きがいと健康づくり推進事業の具体的な実践活動の展開を図るものである。
本事業の実施及び運営に当たっては、次によることとしたので了知のうえ、以下の個々の事業を適正に実施するとともに相互の連携を図り、本事業が一事業として総合的に展開されるよう特段のご配慮を願いたい。
また、貴管下市町村に対し、本事業の趣旨の周知と適正な事業の実施について十分指導願いたい。
1 都道府県明るい長寿社会づくり推進機構事業運営要綱
(1) 目的
高齢者の生きがいと健康づくりを推進するため、関係団体・機関の参加と協力のもとに、高齢者の社会活動についての高齢者、青壮年、婦人等社会の各層及び家庭、地域、企業等社会の各分野における意識改革、高齢者のスポーツ活動、健康づくり活動及び地域活動等を推進するための組織づくり並びに高齢者の社会活動の振興のための指導者等育成事業を総合的に実施し、高齢者の社会活動の振興を図ることを目的とする。
(2) 実施主体
本事業の実施主体は、原則として財団法人とする。
ただし、都道府県高齢者教養講座、娯楽等事業(いわゆる老人大学校運営事業)の実施については、都道府県は、当該財団法人に委託して実施することができるものとする。
(3) 明るい長寿社会づくり推進機構運営協議会(以下「運営協議会」という。)の設置
ア 明るい長寿社会づくり推進機構(以下「推進機構」という。)には、運営協議会を設置するものとする。
イ 運営協議会は、次の団体等に広く参加を呼びかけ組織するものとする。
(ア) 都道府県社会福祉協議会、都道府県老人クラブ連合会、都道府県医師会等福祉・保健・医療関係団体
(イ) 都道府県厚生年金受給者協会等年金受給権者団体
(ウ) 連合自治会、青年会議所ブロック協議会、都道府県青年団協議会、都道府県婦人団体連絡協議会、都道府県公民館連合会等地域団体
(エ) 都道府県体育協会、都道府県レクリエーション協会等スポーツ関係団体
(オ) 新聞社、テレビ局、ラジオ局等マスコミ関係機関
(カ) 都道府県商工会議所連合会、シルバーサービス関係団体及び都道府県農業協同組合中央会等経済団体等
(キ) 学識経験者
(ク) 都道府県民生・衛生部局等関係部局、都道府県教育委員会、市長会、町村会等行政関係機関
(ケ) その他、本事業を推進するため適当と認められる個人又は団体等
ウ 運営協議会は、本事業の実施に関する企画、立案を行うとともに、運営協議会の構成団体等は傘下組織を含めて、事業の実施に当たり必要な協力を行うものとする。
なお、必要に応じ運営協議会の下部組織として専門部会を置くものとする。
(4) 事業の内容
ア 高齢者の社会活動についての啓発、普及
(ア) 推進機構及び運営協議会構成団体等が発行する機関誌、パンフレット、ビデオ及びテレビ・ラジオ等マスコミを利用した広報活動
(イ) 高齢者、青壮年、婦人等社会の各層に応じた啓発普及用指導書の作成とその活用
(ウ) 向老期の者に対する研修・講座の開催
(エ) シンポジウム及び優良活動事例発表会の開催
イ 都道府県健康福祉祭(高齢者のスポーツ・健康づくり・福祉等の総合イベント)の開催
ウ 全国健康福祉祭の参加選手の選考及び派遣
エ 高齢者スポーツ団体等高齢者関係団体の育成及び連絡・調整
オ 都道府県高齢者教養講座、娯楽等事業(いわゆる老人大学校運営事業)の実施及び都道府県下における同様の事業との連絡・調整
カ 高齢者による各種作品等の流通促進に関する事業
キ 高齢者の生きがいと健康づくり総合推進試行的市町村事業への協力・支援
ク 関係団体・機関との連絡・調整
ケ 生きがい健康づくり推進協力員(コーディネーター)の養成・研修
コ 高齢指導者(シニアリーダー)の養成・研修、認定、登録及び高齢指導者制度の普及、啓発等
サ 高齢者の生きがいと健康づくり活動に関する情報収集、提供及び調査・研究
シ 高齢者を対象として民間事業者が行う各種のサービス及び事業に関する調査・研究
ス その他、本事業として適当と認められる事業
(5) 事業の実施に当たっては、次のことに留意するものとする。
ア 推進機構には、都道府県や関係団体との密接な連携のもとに、この事業を総合的に進めていく強力な指導力を発揮できる人材を確保すること。
イ 長寿社会開発センターが実施する事業との連携、調整等を図り、事業の一定の水準の確保、向上及び効果的、効率的実施に努めること。
ウ 都道府県社会福祉協議会、都道府県老人クラブ連合会等運営協議会の構成団体と共同で実施するなど、協力体制を整備するとともに、各種住民参加型非営利活動団体の協力はもとより、幅広く都道府県民の参加と協力が得られるよう配慮するものとすること。
2 高齢者の生きがいと健康づくり総合推進試行的市町村事業運営要綱
(1) 目的
高齢者の生きがいと健康づくり活動を、保健福祉分野における他の事業のほか、生涯学習に係る事業や農山漁村等それぞれの市町村が持つ地域特性を生かした事業とも連携し、幅広い視野で一体的に実施する事業を試行的に実践することにより、高齢者が生涯を通じ、健康で生きがいを持ちながら家庭・地域・企業等社会の様々な領域で、心豊かに生活のできる社会基盤を確立するとともに、新たな高齢者の生きがいと健康づくり活動の推進とその普及に資することを目的とする。
(2) 実施主体
本事業の実施主体は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)であって、厚生大臣の指定する市町村とする。ただし、本事業の一部を市町村老人クラブ連合会に委託することができるものとする。
(3) 総合推進事業会議(以下「推進会議」という。)の設置
ア 本事業を実施する市町村には、推進会議を設置するものとする。
イ 推進会議は、市町村のほか次の団体等に広く参加を呼びかけ組織するものとする。
(ア) 市町村老人クラブ連合会、市町村社会福祉協議会、医師会、住民参加型非営利活動団体等福祉・保健・医療関係団体
(イ) 厚生年金受給者友の会等年金受給権者団体
(ウ) 自治会、青年会議所、青年団、婦人会、公民館、ロータリークラブ、ライオンズクラブ等地域団体
(エ) 市町村体育協会、市町村レクリエーション協会等スポーツ関係団体
(オ) 商工会議所、農業協同組合等地域の経済団体等
(カ) 学識経験者
(キ) 福祉事務所、保健所、教育委員会等行政機関
(ク) その他本事業を推進するため適当と認められる個人又は団体等
ウ 推進会議は、本事業についての総合的な企画、立案を行うとともに、事業間の連絡調整、事業の進行管理及び事業実施上の各段階における評価とそれに基づく事業の見直し、改善等を行うものとする。
なお、推進会議構成団体等は、事業の実施に当たり協力するものとする。
(4) 事業の内容
本事業は、次に掲げる高齢者の生きがい・健康づくりに関する基本事業(以下「基本事業」という。)のほか、別に通知する活力ある地域づくりに資する関連事業(以下「地域づくり関連事業」という。)及び生きがい・社会参加活動の推進に資する関連事業(以下「社会参加関連事業」という。)をもって構成するものとする。
ア 社会の各分野における高齢者の社会活動についての地域住民の啓発普及のための市民講演会等の開催及び広報誌、パンフレット等を活用した広報活動等
イ 高齢者の住民参加型非営利活動、文化伝承活動、三世代交流活動等高齢者の地域活動の振興
ウ スポーツ・娯楽活動、健康増進活動の推進
エ 木工・陶芸・手芸・園芸等の生産・創造活動の振興及びその作品展、販売会等の開催
オ 各種高齢者スポーツ同好会等の育成及び関係団体・機関との連絡・調整
カ 市町村高齢者教養講座、娯楽等の事業(いわゆる老人大学校運営事業)及び中高年者健康生きがい講座の開催
キ 高齢指導者(シニアリーダー)の活用事業
ク その他、本事業として適当と認められる事業
(5) 事業の実施方法等
ア 本事業は、原則として次のいずれかの方法により実施するものとする。
(ア) 基本事業と地域づくり関連事業との一体的実施(以下「健やかで活力ある地域づくり推進事業」という。)
(イ) 基本事業と社会参加関連事業との一体的実施(以下「生きがい・社会参加推進事業」という。)
イ アの方法によることが出来ない場合であっても、地域づくり関連事業又は社会参加関連事業として定めた事業以外の事業を、市町村が基本事業と連携して実施することによって、「健やかで活力ある地域づくり推進事業」又は「生きがい・社会参加推進事業」と同様の事業内容と認められる場合、若しくは基本事業の実施後、三年以内に地域づくり関連事業又は社会参加関連事業が確実に実施されると判断される場合は、基本事業のみでも実施できるものとする。
(6) 事業実施上の留意点
本事業の実施にあたっては、特に次のことに留意するものとする。
ア 本事業は老人クラブ等、地域の元気な高齢者が中心となり、かつ主体的に活動のできる事業となるよう配慮すること。
イ 新たな発想と創意工夫により、学校の空き教室、農林漁業関係施設、さらには地域の優れた人材等、高齢者の生きがいと健康づくり活動につながる既存の「人、物」を有効に活用しながら事業を推進すること。
ウ 保健福祉担当の部局をはじめ、教育、農林水産の関係部局等と定期的に打合せを行うなど緊密に連携し、事業実施のための調整に努めるほか、市町村が実施する各種事業のうち、本事業の推進に関連する事業とも可能な限り連携を図ること。
エ 本事業と推進機構が実施する事業とは相互に密接に関連するものであることから、推進機構との連絡調整を密にするとともに、事業を共同で実施するなど、相互の協力・支援体制を整備すること。
オ 市町村老人クラブ連合会をはじめとする各種団体とは事業を共同で実施するなど、協力体制を確立するとともに、住民参加型非営利団体の協力はもとより、幅広く市町村民の参加と協力が得られるよう配慮するものとする。
なお、本事業が終了した場合においても、推進機構との連携の下で推進会議の継続等本事業の成果の発展的継続に努めるものとする。
(7) 指定期間
本事業の指定期間は二年間とする。
(8) 実施区域
本事業を実施する区域は、原則として市町村(指定都市にあっては行政区)とする。
ただし、事業の一部について必要に応じ複数の市町村が共同で実施したり、当該市町村内の特定の区域において、重点的に実施することを妨げないものとする。
三 高齢者訪問支援活動推進員養成推進試行的事業運営要綱
(1) 目的
高齢者の社会貢献活動への積極的参加と高齢者自身による高齢者援護の推進を図る観点から、地域の高齢者を対象に、主としてひとり暮らし高齢者等の話し相手、家事援助、外出介助等の訪問支援活動の中核となる指導的実践者としての訪問支援活動推進員の養成研修を実施する。
(2) 実施主体
本事業の実施主体は、都道府県・指定都市・中核市老人クラブ連合会等とする。
(3) 対象者
原則として、市区町村老人クラブ連合会等から推薦された六〇歳以上の者で、養成研修終了後に各地域で老人クラブ等の実施するひとり暮らし高齢者等訪問支援活動の指導的実践者となることを希望する者とする。
(4) 事業内容
ア 養成研修は、年六回開催することを標準とする。
イ 一回の養成研修での養成人員は、四〇人程度を標準とする。
ウ 研修カリキュラムは、別紙を標準とする。
4 高齢者の生きがい促進のための就業支援事業運営要綱
(1) 目的
老人クラブ会員に対し、生きがい促進のための就業希望等の調査を実施し、関係機関の協力のもと当該会員に対する生きがい就業の支援を行い、さらにはその啓発と普及を図ることにより、当該会員に対して就業を通じた生きがいづくり・健康づくりの促進を図る。
(2) 実施主体
本事業の実施主体は、都道府県・指定都市老人クラブ連合会(以下「県老連」という。)とする。
ただし、老人クラブ会員に対する就業希望実態調査については、当該事業の実施を市町村老人クラブ連合会(以下「市老連」という。)へ委託できることとする。
(3) 事業内容
ア 老人クラブ会員に対する就業希望実態調査の実施
県老連は、管下の市町村(指定都市にあっては行政区とする。以下同じ。)の中から一か所を事業対象として指定する。県老連は、当該指定した市老連に加盟している老人クラブの会員に対する就業希望実態調査(以下「就業調査」という。)を実施する。
なお、就業調査の方法・内容等は、次の(ア)~(ウ)を標準とする。
(ア) 調査対象は、指定した市老連に加盟している老人クラブの会員のうち、年齢が六五歳以上でかつ就業を希望する会員とする。標本数はこの中から任意で抽出した五〇〇人を目安とする。
(イ) 調査方法は、原則として郵送によるアンケート方式とする。
(ウ) 調査内容は、以下のとおりとする。
調査対象者の年齢及び性別、生きがい就業希望の有無及び希望する場合はその職種・就業内容、一週間の就業希望日数及び一日の就業希望時間
イ 就業推進のための連絡会議の設置
(ア) 県老連は、シルバー人材センター連合等と共同で就業推進のための連絡会議(以下「連絡会議」という。)を設置する。設置にあたっては、次の団体等に広く参加を呼びかけ組織するものとする。
市老連、都道府県・市区町村老人保健福祉主管課、都道府県職業安定主管課、商工会議所、社会福祉協議会、農業協同組合、生活協同組合等
(イ) 連絡会議は、就業希望調査の結果を踏まえ、次に示す生きがい就業促進のための具体的な実施計画を策定するとともに、関係機関の協力を得て就業先の開拓を行うものとする。
① 就業が期待できる主な業種の選定
② 就業に必要な技能講習の実施期間
③ 就業希望者の受入人員 等
(ウ) 連絡会議は、前記の取り組みにより就業した具体例の事例集を作成する。
ウ 生きがい就業事例集等の活用
具体的な事例集等については、各県老連が毎年実施する各種研修会の教材として活用し、生きがい就業の啓発とその普及に資する。
(4) 事業実施上の留意点
ア 就業を希望する老人クラブ会員のうち、技能講習を希望するものについては、シルバー人材センター連合等において開催している技能講習を受講すること。
イ 特に都道府県職業安定主管課、シルバー人材センター連合等との連携を十分に図り事業の効果的、効率的実施に努めること。
5 長寿社会開発センター及び全国老人クラブ連合会が実施する事業の運営要綱
長寿社会開発センター事業の運営要綱及び本事業に関して全国老人クラブ連合会が都道府県老人クラブ連合会等に対して行う高齢者の生きがいと健康づくり推進指導事業の実施要綱については別途定める。
6 事業実施上の留意事項
本事業の実施に当たっては、中央段階、都道府県段階及び市町村段階のいずれにおいても行政機関及び民間団体がそれぞれの役割を十分果たすとともに、相互に協力し合い、それぞれの機能を最大限に生かすことのできる体制を確保するよう留意するものとする。
別紙
高齢者訪問支援活動推進員養成研修カリキュラム
1 講義 計八時間(各一時間、(3)のみ二時間)
(1) 高齢者訪問支援活動入門
(2) 対人援助の技術
(3) 活動の基礎知識と援助方法
(4) 高齢者福祉・保健・医療
(5) 高齢期の身体と心
(6) 家庭介護の方法
(7) 地域の関係機関とサービス
2 実技 計五時間((1)は三時間、(2)は二時間)
(1) 訪問等の技術
(2) 簡単な家庭介護と救急法