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○養護老人ホーム及び特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準の施行について

(昭和四一年一二月一六日)

(社老第一四九号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省社会局長通知)

老人福祉法第一七条第一項の規定に基づく養護老人ホーム及び特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(以下「基準」という。)の施行については、昭和四一年八月二六日付社第一八六号をもって厚生事務次官から通知されたところであるが、基準の運用に当たっては、さらに次の事項に留意のうえ、指導監督の万全を期されたい。

第一 一般的事項

1 基本方針

基準第二条(基本方針)は、養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム(以下「老人ホーム」という。)が入所者の福祉を図るために必要な方針について総括的に規定したものであること。

なお、「健全な環境」とは、当該老人ホームが、敷地の衛生及び安全等について定めた建築基準法第一九条、第四三条及び同法施行令第一二八条の規定に定める要件を具備するとともに、入所者の生活を健全に維持するために、ばい煙、騒音、振動等による影響、交通、水利の便等を十分考慮して設置され、かつ、その設備が入所者の身体的、精神的特性に適合していることをいうものであり、「適切な処遇」とは、給食、健康管理、衛生管理、生活指導等における役務の提供や設備の供与が入所者の身体的、精神的特性を考慮して適切に行なわれることをいうものであること。

2 構造設備の一般原則

基準第三条(構造設備の一般原則)は、老人ホームの構造設備の一般原則について定めたものであり、老人ホームの配置、構造及び設備が本基準及び建築基準法等の関係諸規定に従うとともに日照、採光、換気等について十分考慮されたものとし、もって入所者の保健衛生及び防災の万全を期すべきことを趣旨とするものであること。

3 設備の専用

基準第四条(設備の専用)は、老人ホームに設け又は備えられる設備が必要に応じ直ちに使用できる状態になければならないので、原則としてこれらを当該老人ホームの専用とすべきこととしたものであるが、同一敷地内に他の社会福祉施設が設置されている場合等であって、当該老人ホームの効果的な運営と入所者に対する適切な処遇が確保される場合には、入所者が日常継続的に使用する設備以外の調理室等の設備は、その一部についてただし書を適用して差し支えないこととしたものであること。

4 職員の資格要件

基準第五条(職員の資格要件)は、施設長及び生活指導員について、その有すべき資格を定めたものであるが、このうち、「同等以上の能力を有すると認められる者」とは、社会福祉施設等に勤務し又は勤務したことのある者、国又は地方公共団体において社会福祉に関する職務にたずさわったことのある者等であって、その者の実績等から一般的に、施設長にあっては老人ホームを適切に管理運営する能力を有すると認められる者、生活指導員にあっては入所者の生活の向上を図るため適切な指導を行なう能力を有すると認められる者をいうこと。

なお、寮母、調理員等については、資格の定めはないが、これら職員についてもそれぞれの職務を遂行する熱意と能力を有する者をもって充てること。

5 職員の専従

基準第六条(職員の専従)は、職員の他の職業との兼業を禁止する趣旨のものではないが、入所者の処遇の万全を期するために老人ホームの職員は当該施設の職務に専念すべきこととしたものであること。したがって、老人ホームは、職員の採用及び事務分掌を決定するに当たっては、この点に留意すること。

なお、ただし書の規定は、直接入所者の処遇に当たる生活指導員、寮母及び看護婦(准看護婦)(以下、「直接処遇職員」という。)については適用すべきでなく、また、その他の職員についても同一敷地内に設置されている他の社会福祉施設に兼ねて勤務する場合等であって、兼務によっても入所者の処遇に支障をきたさない場合に限り適用すること。また、同一施設内における職種間の兼務については、施設長が医師である等特別の事情があり、かつ、入所者の処遇に支障をきたさない場合にのみ認められるものであること。

6 管理規程

基準第七条(管理規程)は、老人ホームの効果的な運営と入所者に対する適切な処遇を確保するためすべての老人ホームに次に掲げる事項を明示した規程の制定を義務づけたものであること。

(1) 施設の目的及び運営の方針

(2) 職員の定数、区分及び職務内容

(3) 入所者に対する処遇方法

(4) 入所者の守るべき規律

(5) その他施設の管理についての重要事項

7 非常災害対策

(1) 基準第八条(非常災害対策)は、入所者の身体的、精神的特性にかんがみ、火災等の非常災害に際して必要な諸設備の整備及び避難、救出訓練の実施等その対策の万全を期さなければならないこととしたものであること。

(2) 「消火設備その他の非常災害に際して必要な設備」とは、消防法第一七条の規定に基づく消防用設備等(同法第一七条の二第一項又は第一七条の三第一項の規定が適用される老人ホームにあっては、それぞれの技術上の基準に基づく消防用設備等)及び風水害、地震等の災害に際して必要な設備をいうこと。

(3) 「非常災害に対する具体的計画」とは、消防法施行規則第三条に規定する消防計画及び風水害、地震等の災害に対処するための計画をいうこと。

なお、この場合、消防計画の樹立及びこれに基づく消防業務の実施は、消防法第八条の規定により防火管理者を置くこととされている老人ホームにあっては、その者に行なわせること。また、防火管理者を置かなくてもよいこととされている老人ホームにおいても防火管理者又は火気・消防等についての責任者を定め、その者に消防計画の樹立等の業務を行なわせること。

なお、老人ホームにおける火災の防止等については、昭和六二年九月一八日社施第一〇七号社会局長、児童家庭局長連名通知「社会福祉施設における防火安全対策の強化について」等により別途通知しているので留意すること。

8 帳簿の整備

基準第九条(帳簿の整備)は、老人ホームの日日の運営及び財産並びに入所者の処遇の状況等に関する一切の事実を正確に記録し、つねに当該老人ホームの実情を適確に把握するため、少なくとも次に掲げる帳簿を備えなければならないこととしたものであること。

なお、社会福祉法人が整備すべき会計経理に関する帳簿については、昭和五一年一月三一日社施第二五号社会局長、児童家庭局長連名通知「社会福祉施設を経営する社会福祉法人の経理規程準則の制定について」により別途通知しているので留意すること。

(1) 管理に関する帳簿

ア 事業日誌

イ 沿革に関する記録

ウ 職員の勤務状況、給与等に関する記録

エ 条例、定款及び施設運営に必要な諸規程

オ 重要な会議に関する記録

カ 月間及び年間の事業計画表及び事業実施状況表

キ 関係官署に対する報告書等の文書綴

(2) 入所者に関する帳簿

ア 入所者名簿

イ 入所者台帳(入所者の生活歴、処遇に関する事項その他必要な事項を記録したもの)

ウ 処遇日誌

エ 献立その他給食に関する記録

オ 入所者の健康管理に関する記録

(3) 会計経理に関する帳簿

ア 収支予算及び収支決算に関する書類

イ 金銭の出納に関する帳簿

ウ 債権債務に関する帳簿

エ 物品受払に関する帳簿

オ 収入支出に関する帳簿

カ 資産に関する帳簿

キ 証拠書類綴

9 経理の原則

老人ホームの運営に伴う収入及び支出は、経営主体である地方公共団体又は社会福祉法人の予算に必ず計上し、会計経理に当っては、収支の状況を明らかにするとともに、すべて生活費と事務費とを厳密に区分し、原則として、生活費を事務費に流用してはならないこと。

第二 規模及び設備に関する事項

1 規模

(1) 老人ホームの規模は、当該老人ホームの効果的な運営及び入所者に対する処遇の適正を期するために、常時五〇人以上(離島、山村、過疎地域又は厚生大臣が定める大都市及び人口の集中の特に著しい都市の区域に設置する特別養護老人ホームであって、五〇人以上の人員を入所させることができる規模を有しないものにあっては、常時三〇人以上)を入所させ得る規模を有すべきこととしたものであること。

(2) 厚生大臣が定める大都市及び人口の集中の特に著しい都市の区域は、次の区域であること。

ア 東京都(特別区の存する区域に限る。)の区域

イ 地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二五二条の一九第一項の指定都市の区域

ウ 首都圏整備法(昭和三一年法律第八三号)第二条第一項の首都圏の区域、近畿圏整備法(昭和三八年法律第一二九号)第二条第一項の近畿圏の区域及び中部圏開発整備法(昭和四一年法律第一〇二号)第二条第一項の中部圏の区域のうち公表された最近の国勢調査の結果による人口が五〇万人以上又は一平方キロメートル当たりの人口が四〇〇〇人以上の市の区域

(3) なお、法第一五条の規定により老人ホームを設置し又は設置の認可をする際の入所定員は、当該老人ホームの有する規模をこえてはならず、また、五〇人未満(離島、山村、過疎地域又は厚生大臣が定める大都市及び人口の集中の特に著しい都市の区域に設置する特別養護老人ホームであって、五〇人以上の人員を入所させることができる規模を有しないものにあっては、三〇人未満)としてはならないこと。

2 設備の基準

(1) 養護老人ホームの建物のうち、居室、静養室、食堂等入所者が日常継続的に使用する設備を有するものについては建築基準法第二条第九号の二に規定する耐火建築物又は同条第九号の三に規定する準耐火建築物としなければならないこと。

なお、霊安室等入所者が日常継続的に使用することのない設備のみを有する建物であって、居室、静養室等のある主たる建物から防災上支障がないよう相当の距離を隔てて設けられるものについては、必ずしも耐火建築物又は準耐火建築物としなくてもよいこと。

(2) 特別養護老人ホームの建物は、入所者が身体的、精神的に著しい障害を有する者であることにかんがみ、入所者の日常生活のために使用しない附属の建物を除き耐火建築物としなければならないこと。ただし、入所者の日常生活に充てられる居室、静養室、食堂、浴室及び機能回復訓練室を二階以上の階及び地階のいずれにも設けていない建物については、準耐火建築物とすることができること。

(3) 特別養護老人ホームに設けられる設備のうち、居室、静養室、食堂、浴室及び機能回復訓練室は、三階以上の階に設けてはならないこと。ただし、基準第一八条第四項各号に定める要件を具備する場合には、この限りでないこと。

(4) 老人ホームの設備は、当該老人ホームの運営上及び入所者の処遇上当然設けなければならないものであるが、同一敷地内に他の社会福祉施設が設置されている場合等であって、当該施設の設備を利用することにより老人ホームの効果的な運営が図られ、かつ、入所者の処遇に支障がない場合には、入所者が日常継続的に使用する設備以外の調理室等の設備について、その一部を設けないことができることとしたこと。なお、老人ホームが利用する他の施設の当該設備については、本基準に適合するものでなければならないこと。

(5) 静養室、食堂、便所等面積又は数の定めのない設備については、それぞれの設備のもつ機能を十分に発揮し得る適当な広さ又は数を確保するよう配慮すること。

なお、老人ホームの基準面積については、社会福祉施設整備費に対する国庫負担(補助)の取り扱いとして別途通知しているので留意すること。

(6) 居室及び静養室の「収納設備等」とは、押入れ(これに代わるものとして設置したタンス等を含む。)、床の間、踏込みその他これらに類する設備をいうこと。

(7) 老人ホームにおける廊下の幅は、入所者の身体的、精神的特性及び非常災害時における迅速な避難、救出の確保を考慮して定められたものであること。

なお、「中廊下」とは、廊下の両側に居室、静養室等入所者の日常生活に直接使用する設備のある廊下をいうこと。

廊下の幅については、基準に定めるほか、建築基準法施行令第一一九条の規定が適用されるので、養護老人ホームにあっては留意すること。

(8) 傾斜路

特別養護老人ホームに設置する傾斜路は、入所者の歩行及び輸送車、車椅子等の昇降並びに災害発生時の避難、救出に支障がないようその傾斜はゆるやかにし、表面は、粗面又はすべりにくい材料で仕上げること。

なお、居室等を三階以上の階に設ける場合であって、入所者の処遇に適したエレベーターを設け、かつ、建築基準法施行令第一二三条第三項に定める特別避難階段の構造を有する二以上の階段を設ける場合には傾斜路を設けないことができること。

(9) 調理室

食器、調理器具等を消毒する設備、食器、食品等を清潔に保管する設備並びに防虫及び防鼠の設備を設けること。

(10) 汚物処理室

汚物処理室は、他の設備と区別された一定のスペースを有すれば足りるものであること。

(11) 焼却炉、浄化槽その他の汚物処理設備及び便槽を設ける場合には、居室、静養室、食堂及び調理室から相当の距離を隔てて設けること。

第三 職員に関する事項

1 職員数

(1) 直接処遇職員については、基準第一二条第二項及び第一九条第二項の定めるところによりそれぞれ必要な総数(老人保護措置費の国庫負担の算定基礎とされる直接処遇職員の総数が基準に定める総数を上回る場合には、算定基礎に示される総数)を確保すること。総数内における各職種の配置については、各施設の実情に応じて定めることとなるが、老人保護措置費の国庫負担の算定基礎として示される職員数を参考として、入所者の処遇に支障がないよう必要な配置を行うこと。

(2) (1)の直接処遇職員の数は、常時勤務する者で確保することが原則であるが、繁忙時に多数の職員を配置すること等により、入所者処遇の向上が図られる場合で、次の条件を満たす場合には、その一部に非常勤職員を充てても差し支えないこと。

① 常勤職員である直接処遇職員の総数が(1)によって算定される総数の八割以上であること。

② いずれの職種においても常勤職員が一名以上配置されていること。

③ 常勤職員に代えて非常勤職員を充てる場合の勤務時間数が常勤職員を充てる場合の勤務時間数を上回ること。

(3) 直接処遇職員以外の職員については、事務員等基準に規定されていない職種を含め、老人保護措置費の国庫負担の算定基礎として示される職員数を参考とし、施設の実態に応じて入所者の処遇に支障がないよう必要な配置を行うこと。

(4) 施設内における調理業務を委託する場合には調理員を置かないことができること。なお、調理業務を委託する場合には、別途示す基準に従うこと。

2 機能回復訓練指導員

機能回復訓練指導員は、理学療法士又は作業療法士をもって充てることが望ましいが、当分の間、当該老人ホームの職員のうち、看護婦、あん摩マッサージ指圧師の資格を有する者等で機能回復訓練等の業務に関する熱意と能力を有する適当な職員をもって機能回復訓練指導員に充て、医師の指示の下にこれら業務を行なわせて差し支えないこと。

第四 処遇に関する事項

1 給食

(1) 給食は、食品の種類及び調理方法について、入所者の身体的特性に適合したたんぱく質、ビタミン等の栄養素が確保されるよう考慮して行なうとともに、つねに入所者の身体的状況及び嗜好の把握に努め、これらを十分考慮して行なうこと。

(2) 調理は、あらかじめ作成された献立に従って行なうとともに、その実施の状況を明らかにしておくこと。

なお、病弱者に対する献立については、医師の指導を受けること。

(3) 調理及び配膳に当たっては、食品衛生法施行規則別表第六の上欄に掲げる事項に留意して衛生的に行なうこと。

2 健康管理

(1) 養護老人ホームは、入所者の健康管理に努めること。

なお、養護老人ホームが行う入所者に対する健康診断は、各人の身体的状況等を考慮のうえ、平成四年四月一三日老健第八六号大臣官房老人保健福祉部長通知「保健事業実施要領の全部改正について」別添「保健事業実施要領」に定める基本健康診査の検査項目に準じて行うこと。

(2) 特別養護老人ホームは、入所者が身体的、精神的に著しい障害を有する者であることにかんがみ、つねに健康の状況に注意し、疾病の早期発見、予防等健康保持のための適切な措置をとるよう努めること。

(3) 職員については、労働安全衛生規則第五〇条又は地方公共団体の実施する方法に従って健康診断を行うこと。

(4) 定期的に調理に従事する職員の検便を行うこと。

3 衛生管理

(1) 水道法の適用されない小規模の水道についても、市営水道、専用水道等の場合と同様、水質検査、塩素消毒法等衛生上必要な措置を講ずること。

(2) 老人ホームは、つねに施設内外を清潔に保つとともに、毎年一回以上大掃除を行なうこと。

(3) 老人ホームは、食中毒及び伝染病の発生を防止するための措置、族、こん虫の駆除方法、栄養改善の具体的方法等について必要に応じて保健所の助言、指導を求めるとともにつねに密接な連係を保つこと。

4 医療

(1) 特別養護老人ホームは、入所者が身体的、精神的に著しい障害を有するため入院治療等を必要とする場合が極めて多いことにかんがみ、これらの者に対する医療的処遇を円滑に行なうことができる一以上の協力病院をあらかじめ定めておくこと。

(2) 特別養護老人ホームは、入所者の医療的処遇の万全を期するため当該医務室について入所施設を有しない診療所として医療法第七条第一項の規定に基づく都道府県知事の許可を得ること。

なお、養護老人ホームにおいても、特別養護老人ホーム同様当該医務室を、入所施設を有しない診療所として都道府県知事の許可を得るよう指導すること。

5 生活指導等

(1) 基準第一七条第一項の規定は、常時必要な指導を行ない得る態勢をとることにより、積極的に入所者の生活の向上を図ることを趣旨とするものであること。

なお、指導に当たっては、管理規程に従うべきことは勿論であるが、さらに入所者の年齢、性別、性格、生活歴及び心身の健康状態等を考慮して個別的な処遇方針を定めることが適当であること。

(2) 老人ホームは、入所者の生活意欲の増進等を図るため、その身体的、精神的条件に応じた減退機能の回復訓練又は機能減退防止のための訓練に、つねに参加できるようその機会を与えるとともに、日常生活及びレクリエーション行事の実施等に当たっても、その効果を配慮すること。

(3) 生活指導等に当たっては、いたずらに入所者を強制し自由を拘束することとならないよう留意すること。

第五 経過規定に関する事項

基準附則第二項の規定が適用される設備については、可及的速やかに基準に適合するよう整備すべきであり、都道府県、指定都市においても施設の実態を把握し、これに基づく改善整備計画を樹立するとともに、改善計画について指導の徹底を図ること。また、児童福祉施設最低基準等の一部を改正する省令(昭和六二年厚生省令第一二号)附則第四条の規定が適用される老人ホームについても以上に準じた指導を行うこと。