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○老人福祉法の施行について

(昭和三八年七月一五日)

(発社第二三五号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生事務次官通達)

老人福祉法は、昭和三八年七月一一日法律第一三三号をもつて公布され、これに伴う老人福祉法の施行期日を定める政令(昭和三八年政令第二四六号)老人福祉法施行令(昭和三八年政令第二四七号)及び老人福祉法施行規則(昭和三八年厚生省令第二八号)も、それぞれ制定公布され、昭和三八年八月一日から施行されることとなつたが、老人福祉施策は、今後の老齢人口の増加のすう勢にかんがみても、益々その重要性が高まるものであり、国民のこの問題に対する関心も極めて大きいので、特に次の事項に留意して、この法律の施行に関する諸般の体制をすみやかに確立し、所要の事務処理を的確に行なうとともに、市町村その他関係機関等に対しその周知徹底を図り、この法律の目的達成に遺憾のないようにいたされたく、命によつて通達する。

第一 法律制定の趣旨

戦後における老人の生活は、社会環境の著しい変動、私的扶養の減退等により不安定なものとなり、さらに老齢人口の増加の傾向と相まつて一般国民の老人問題への関心はとみに高まり、老人福祉のための対策の強化が強く要請されている現状である。

このような状況に対応して、老後における所得保障の体制を整えるため、既に昭和三四年には国民年金法が制定されたのであるが、さらに進んで児童福祉法、身体障害者福祉法等に対応すべき老人福祉法を制定し、老人福祉に対する社会的責任の存在を明らかにすることが各方面から要望されてきたのである。

一方、老人福祉対策は、この関連するところが極めて広範囲にわたる関係もあつて、法制上区々にわたり、かつ、必ずしも十分でない現状にあるので、この際単一の法律を制定し、可能な限りこれを総合的に体系化し、その強化拡充を図ることが老人福祉の向上のために極めて緊要であることにかんがみ、本法の制定を見るに至つたものである。

第二 一般的事項

一 法律の目的について

本法の目的は、従来必ずしも明確でなかつた老人福祉に関する原理を法律上規定することによつて、老人福祉に関する国及び地方公共団体の施策並びに老人及び一般国民の心構えについていわば指標を与えるとともに、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置として、健康診査、老人ホームへの収容、老人福祉施設の整備等の具体的な施策を実施し、もつて老人の福祉を図ることにあること。

二 基本的理念について

(一) 老人は、社会に対する貢献者として敬愛されるべきであること、及び老人が、程度の差こそあれ老齢に伴う身体的、精神的なハンデイキヤツプを有するものであるため、生活の健全性を損われ、又は精神的な安らかさを害されるおそれがあるので、この点を保障することを老人福祉の眼目としているものであること。

(二) 老人自身に対し、およそ健康の保持は本人の努力に負うところが大きいが、特に老人の場合は心身の変化が急激であるので、その心身の変化を自覚しつつ、健康の保持に努め、さらに、老人が多年の間に習得した知識と経験とが社会にとつても貴重なものであり、また老人の健全な生活の保持のためにもこれを社会に役立たせるよう努めるべき旨を要請しているものであること。

(三) (二)に対応して老人の心身の健康の保持及び貴重な知識と経験を活用させるため、老人の希望及び能力に相応する範囲内で適当な仕事その他の社会的活動に参与する機会が与えられるべきことを社会一般に要請しているものであること。

(四) これらの基本的理念については、ひろく国民一般に周知徹底を図る必要があること。

三 老人福祉増進の責務について

(一) 本法第四条において、国及び地方公共団体は、老人の福祉を増進する責務を有することが明定されたが、これは、老人の福祉を私的扶養のみに委ねることなく社会共同の責任において増進することを宣言した極めて意義の大きい規定であつて、このような任務に基づいて、国及び地方公共団体は、この法律に規定する具体的な福祉施策はもとより、保健、医療、所得、労働、住宅、公租公課等に関する施策を講ずるに当たつては、その施策を通じて、本法第二条及び第三条に規定された基本的理念が具現されるように配慮しなければならないものであること。

(二) 老人福祉増進の責務は、国及び地方公共団体にとどまらず、老人の生活に直接影響を及ぼす事業を営む者についても要請されているものであるから、その趣旨については、あらゆる機会を通じて関係者に対し周知徹底を図る必要があること。

四 老人の日について

老人の日は、従来「としよりの日」の運動が民間運動として全国的に相当普及しているので、このような実態に立脚して設定されたものであつて、国及び地方公共団体は、老人の日の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならないものとされたが、この事業の実施に当たつては、その趣旨が十分具現されるよう留意すること。

第三 老人福祉指導主事、福祉事務所、保健所及び民生委員に関する事項

一 老人福祉の業務に従事する社会福祉主事について

(一) 本法第六条に規定する老人福祉の業務に従事する社会福祉主事(以下「老人福祉指導主事」という。)は第一線機関において老人福祉行政を進展させる中核となるものであるから、その職務に真に適当な者を充てられたいこと。

(二) 老人福祉指導主事は、各福祉事務所に必ず設置しなければならないことが法定されているので、すみやかにその充足を図られたいこと。

(三) 老人福祉指導主事に対しては、個人指導、研修会等により訓練を行ない、その資質の向上を図るよう配意されたいこと。

二 福祉事務所について

(一) 福祉事務所(社会福祉事業法附則第七項の規定に基づき置かれた組織を含む。)は、従来、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法及び精神薄弱者福祉法のいわゆる福祉四法に定める事務をつかさどるところとされていたが、今後は本法を加えて福祉五法に定める事務をつかさどるところとなるものであること。

(二) 本法第一一条第一項から第三項までの規定による措置に関する事務は、福祉事務所長に委任されたいこと。

(三) 福祉事務所においては、(二)によつて所長に委任された事務のみでなく、老人福祉に関する事情把握、相談、調査、指導等の業務を自主的かつ積極的に実施するよう指導されたいこと。

三 保健所について

保健所法第二条が改正され、老人の衛生に関する事項につき、指導及びこれに必要な事業を行なうべきものであることが明定されるとともに、これに対応して本法においても老人福祉に関する部面における保健所の主要な業務を具体的に明示する規定が置かれたが、これは、老人の保健衛生については、母性、乳幼児の場合と同様、その心身の特殊性にかんがみ特別の配慮が必要であるとの趣旨に基づくものであるから、管下保健所に対し、この趣旨を徹底し、積極的な活動が行なわれるように配慮すること。

四 民生委員について

民生委員に対しては、本法において、特に民生委員の協力に関する規定が置かれた趣旨にかんがみ、福祉の措置の対象となる老人の発見及び実施機関への通告、老人の生活状態の調査、福祉に欠ける老人の生活指導等が活発に行なわれるよう指導すること。

第四 福祉の措置に関する事項

一 健康診査について

健康診査の措置は、傷病の早期発見を通じて老人の健康の保持に資することを意図したものであるが、管下市町村長に対しては、この措置の対象者が多数にのぼり、しかも心身に特殊性を有するものであることを考慮し、効率的かつ適切に実施するとともに、事後の必要な指導が的確に行なわれるよう指導すること。

二 老人ホームへの収容等について

(一) 本法第一一条第一項から第三項までに定める老人ホームへの収容、養護受託者への委託等の措置は、福祉に欠ける老人を対象としてその福祉を図るために行なう援護措置であつて、当面、老人福祉対策のうち極めて緊要なものであり、また、本法に規定する具体的施策の中核ともいうべきものであるが、これらの措置を適切に行なうためには、措置を要する老人の把握が確実に行なわれる必要があるので、関係行政機関、民生委員等の協力体制を確立しておくとともに、国民一般に対してもこの制度の周知徹底を図つておくこと。

なお、養護受託者に老人を委託する措置に関しては、いやしくも労働力の搾取とみられるような事例が発生しないよう特に留意すること。

(二) 施設に収容され又は養護を委託された老人の死亡に際し、施設等をして葬祭を行なわせる場合においても、その費用に充当すべき遺留金品の処分は、措置の実施機関自らが行なうものであることに留意し、その適正を期すこと。

三 老人家庭奉仕員による世話について

老人家庭奉仕員を派遣する事業は、当面、収容の措置等の事務と異なり、国の委任事務とはされていないが、早急に全国的に普及することが期待されているので、管下市町村が積極的にこの事業を実施するよう指導されたいこと。

四 老人福祉の増進のための事業について

(一) 地方公共団体は、老人の心身の健康の保持に資するため、教養講座、レクリエーシヨンその他ひろく老人が自主的かつ積極的に参加することができる事業を実施するように努めなければならないこととされているが、これが実施に当たつては、各地域の実情に応じて創意工夫をこらし、効率的かつ積極的に行なわれたいこと。

(二) 地方公共団体は、老人クラブ、社会福祉協議会、青年団、婦人会等がいわゆるボランテイア活動として行なう老人福祉事業に対しても適当な援助をするように努めなければならないこととされているが、その援助に当たつては、民間活動としての特性を損うことのないよう留意し、最も効果的な実施を図ること。

第五 老人福祉施設に関する事項

一 老人福祉施設の整備について

老人福祉施設については、積極的な整備拡充が必要であるが、特に特別養護老人ホームについては、この施設への収容の措置を要する老人が少なくないと認められる現状にかんがみ、各都道府県とも緊急に設置を図られたいこと。

二 養護老人ホーム等の認可その他の監督について

(一) 養護老人ホーム又は特別養護老人ホームの設置の認可は、当該施設が本法第一七条第一項の基準に適合するものであるほか、設置者が社会福祉法人である場合にあつては、当該施設を設置するために必要な経済的基礎が確実であるものについて行なうこと。

(二) 本法第一五条第二項、第一六条、第一八条及び第一九条に規定する都道府県知事の権限は、市町村の設置する養護老人ホーム又は特別養護老人ホームについては当該市町村を包括する都道府県知事が、社会福祉法人の設置するこれらの施設についてはその所在地の都道府県知事又は指定都市の長が、それぞれ行なうものであるから留意されたいこと。

第六 費用に関する事項

本法制定の趣旨及び本法第四条の規定の趣旨にかんがみ、地方公共団体においては、この法律に規定する国の委任事務の実施に要する費用はもとより、ひろく老人福祉を増進する事業に要する費用に関し、積極的に十分な予算措置を講ずるよう特に留意されたいこと。

第七 有料老人ホームに関する事項

有料老人ホームに対し届出の義務が課されたことについては、管下の該当施設に周知徹底を図り、届出が励行されるよう配意するとともに、常に管下の各有料老人ホームの状況を把握しておくこと。

なお、有料老人ホームの設備、運営に関する勧告については、公正かつ慎重に行なうこと。

第八 地方社会福祉審議に関する事項

(一) 本法附則により、社会福祉事業法及び身体障害者福祉法の一部が改正され、都道府県及び指定都市に設置されていた地方身体障害者福祉審議会が廃止され、同審議会が行なつていた業務は、新たに設置されることとなつた地方社会福祉審議会(以下「審議会」という。)が処理することとなること。

(二) 審議会には、身体障害者の福祉に関する事項を調査審議するため、身体障害者福祉専門分科会を設け、同専門分科会のうちに、身体障害者の障害程度の審査に関する調査審議のため、審査部会を設けることとなること。

(三) 審査部会に属すべき委員及び臨時委員には、眼科に関する医療、耳鼻いんこう科に関する医療、整形外科に関する医療、中枢神経に関する医療、脳神経外科に関する医療及び内科に関する医療を担当するそれぞれの医師を任命すること。

(四) 審議会が都道府県知事又は指定都市の市長から諮問されて、身体障害者の障害程度について認定する場合には、その認定事務の高度の専門技術的性格にかんがみ、審議会全員の審議にかけることなく、審査部会の決議をもつて、審議会の決議とすることができることとなつているので、当該事務の能率的な処理を図るため、この制度が十分に活用されるようにされたいこと。

(五) 審議会には、身体障害者福祉専門分科会を置くほか、必要に応じ各種の専門分科会を置くことができることとなつているが、差し当たり、老人福祉専門分科会を設置するとともに、精神薄弱者福祉専門分科会等についても、その設置について特段の配慮をされたいこと。