添付一覧
○新寝たきり老人ゼロ作戦総合推進事業の実施について
(平成一〇年三月三一日)
(老発第二二八号)
(各都道府県知事あて厚生省老人保健福祉局長通知)
標記については、高齢者の寝たきり状態を予防するために、新・高齢者保健福祉推進十か年戦略において「新寝たきり老人ゼロ作戦」を推進しているところである。
このため、寝たきり老人ゼロを目指し地域の高齢者等に対して積極的な普及啓発活動等を行うことにより、新寝たきり老人ゼロ作戦をより効果的、効率的に展開することとし、別紙のとおり「新寝たきり老人ゼロ作戦総合推進事業実施要綱」を定め、平成一〇年四月一日から適用することとしたので、通知する。
なお、本要綱の趣旨を十分御理解の上、本事業の一層の推進に特段の御努力をお願いする。
おって、平成四年四月一三日老健第八七号「健康診査管理指導等事業実施要綱の全部改正について」は、平成一〇年三月三一日限り廃止する。
別紙
新寝たきり老人ゼロ作戦総合推進事業実施要綱
第一 事業の目的
高齢者の寝たきり状態を予防するために、「新寝たきり老人ゼロ作戦」を推進しているところである。
このため、寝たきり老人ゼロを目指し地域の高齢者等に対して積極的な普及啓発活動等を行うとともに、市町村が在宅脳卒中患者に対する適切な保健福祉サービスの実施を図るための脳卒中情報システム事業を行うほか、地域におけるリハビリテーションに関する調整、相談、指導等を行うための調整員を養成することにより、保健事業がより効果的、効率的に実施されることを目的とする。
第二 事業の実施主体
都道府県とする。
第三 寝たきり老人ゼロ作戦等普及啓発推進事業
一 趣旨
寝たきり老人ゼロを目指し、老人の寝たきり状態を予防するための保健事業を始めとする各種施策をより効果的に展開するために、関係部局及び市町村並びに関係団体等との連携を図り、地域の高齢者やその家族等に対して「寝たきりは予防できる」ことについて積極的な普及啓発活動等を行うことにより、新寝たきり老人ゼロ作戦等の一層の推進を図るものである。
二 寝たきりゼロ推進本部の設置
(一) 都道府県は、衛生主管部(局)長、民生主管部(局)長、市町村長、保健所長、福祉事務所長、教育委員会、医師会・看護協会、地域住民組織、老人クラブ等のそれぞれの代表者、保健婦(士)、報道関係者及びその他事業の推進に必要と認められる者を構成員とする「寝たきりゼロ推進本部」を設置し、本事業の効果的、効率的な推進を図るものとする。
(二) 寝たきりゼロ推進本部は、本事業の推進を図るため、会議(以下「推進会議」という。)を開催し、積極的な運営を行うものとする。
(三) 推進会議は、年六回程度開催するものとする。
三 事業内容
(一) 都道府県内の実情を十分把握した上で、寝たきり老人ゼロに向けた今後の推進方策について企画、立案及び事業の実施効果について分析等を行う。
(二) 市町村、保健所等に対し寝たきり老人ゼロの推進に必要な指導、助言を行い、効果的、効率的な事業実施に向けての支援を行う。
(三) 住民に対し寝たきり老人ゼロ推進のための広報紙、パンフレット、ポスター、ビデオその他の広報媒体等を通じ、寝たきり老人ゼロ推進対策の普及・啓発を行うとともに、保健事業の重要性に対する住民の意識の高揚を図る。
(四) 寝たきり老人ゼロ推進のための住民大会、講演会等各種行事を通じ、寝たきり老人ゼロ推進対策の普及・啓発を行うとともに、保健事業の重要性に対する住民の意識の高揚を図る。
(五) その他地域の実情に合わせて、新寝たきり老人ゼロ作戦の推進のために必要な普及・啓発事業等を実施する。
四 事業実施上の留意事項
本事業の実施に当たっては次の事項に留意し事業を実施するものとする。
(一) 保健・福祉・医療関係部局との連携を図り、効果的な事業の推進を図る。
(二) 地域の住民組織及び老人クラブ並びに保健・福祉・医療の関係団体等を通じ、施策の充実を図る。
第四 脳卒中情報システム事業
一 趣旨
寝たきり予防対策を効果的に推進するため、医療機関から保健所等に提供される脳卒中患者の診療情報等を基に、市町村がこれら在宅脳卒中患者に対する適切な保健福祉サービスの実施を図るための脳卒中情報システム事業を行うものである。
二 脳卒中委員会の設置
都道府県は、保健・医療・福祉の関係者から構成する「脳卒中委員会」(以下「委員会」という。)を設置するものとする。
(一) 委員会の構成
委員会は、保健所、医師会、学識経験者及び脳卒中情報システム事業にかかわる専門家等によって構成するものとする。
(二) 委員会の運営
委員会は、次の事項について審議し、その結果を都道府県知事に報告するものとする。
ア 成人病予防対策を効果的、効率的に推進するため、脳卒中患者の登録を実施するとともに、医療機関から保健所等に提供される脳卒中患者の診療情報等を基に、市町村がこれら在宅脳卒中患者に対する適切な保健福祉サービスの実施を図ることを目的とした脳卒中情報システム事業の実施について、情報提供件数、早期訪問の実施状況、適切な保健福祉サービスの選定・提供等の観点から評価を行う。
イ その他脳卒中情報システム事業の評価に必要な事項を検討する。
三 事業の実施方法
(一) 脳卒中の登録の方法については、地域の実情を考慮しつつ、関係諸機関の協力を得て決定するものとする。
なお、登録を実施するに当たっては、「脳卒中登録管理ガイドライン」(厚生省循環器病研究委託費による地域における脳卒中の登録と管理に関する研究班、昭和五七年三月)を参考にするものとする。
(二) 収集した情報は個人ごとに整理するとともに患者登録票を作成し、その保管に当たっては個々の患者の秘密が保持されるよう厳重に注意するものとする。
(三) 収集、整理した登録情報に基づき、成人病のり患率、受療状況、生存率等を集計及び解析するものとする。
また、この際、患者登録票と市町村において実施される健康診査を受診した者の全員又はその一部の者の受診結果とを照合することによって、健康診査の死亡率の減少に対する寄与度等を解析し、成人病予防対策の推進に資するものとする。
なお、解析した結果については年ごとにまとめ、関係機関に報告するものとする。
(四) 登録に当たっては、その精度を常に管理し、その向上に努めるものとする。そのため、医療機関等に対し届出体制の整備を依頼するとともに、必要に応じて医療機関等に出張し、情報を採録するものとする。
(五) 保健所は、医療機関から提出された脳卒中患者(以下「対象者」という。)の診療情報等を整理するとともに、対象者の住居地の市町村が同じ情報を受けているか確認し、受けていない場合は、整理した情報を当該市町村に対し速やかに連絡するものとする。
(六) 市町村は、医療機関又は保健所からの対象者の情報を基に、保健・医療・福祉の各担当部門が連携を密にして、対象者に必要な保健福祉サービスを選定し、対象者及びその家族の意向を踏まえた上で、適切なサービスを提供するものとする。
また、保健所が同じ情報を受けているか確認し、受けていない場合は、その情報を速やかに連絡するものとする。
(七) 保健所は、管内市町村における脳卒中情報システム事業の実施状況を取りまとめ、脳卒中委員会に報告するものとする。
四 事業実施上の留意事項
(一) 都道府県は、医療機関、市町村等関係機関と密接な連携を保ちつつ、本事業を実施するものとする。
特に、本事業が効果的に行われるよう市町村に対し適切な指導を行うとともに、医療機関等に対し本事業の趣旨を周知徹底し、積極的な協力が得られるよう努めるものとする。
(二) 本事業の関係者は、対象者のプライバシーの保護に十分留意し、個人情報が部外者に漏洩することがないよう、秘密厳守に徹するものとする。
第五 地域リハビリ調整者養成研修会の開催
一 趣旨
在宅の寝たきり老人等に対して、地域における社会資源を活用しつつ、一人一人の需要及び心身の状況等に応じて最も適していると認められるリハビリテーションサービスを提供するため、地域におけるリハビリテーションに関する調整、相談及び指導等(以下「地域リハビリ・コーディネーション」という。)を行う者(以下「地域リハビリ調整者」という。)を養成するための研修を実施するものである。
二 研修の内容
研修内容は、概ね次に掲げる事項とするが、地域の実情に応じた実務的な研修を実施すること。
(一) 地域リハビリ・コーディネーションに関する基礎的知識の習得
(二) 地域リハビリ調整者の役割
地域リハビリ調整者の役割としては、概ね次のとおりである。
ア 在宅の寝たきり老人等の心身の状況及びリハビリテーションに関する需要の把握、並びに地域における保健・医療・福祉サービスとの連絡・調整
イ 在宅の寝たきり老人等に対する地域住民の理解を深めるための家族会及びボランティア等の地域組織の育成・支援
ウ 地域リハビリ・コーディネーションの観点からみた地域における保健・医療・福祉サービスの実態把握及びその問題点の改善に係る企画・調整
(三) 地域リハビリ・コーディネーションの具体的援助活動の進め方
地域での活動事例等の研究を通した地域リハビリ・コーディネーションの果たす役割及び援助活動方法の習得に関すること。
(四) その他地域リハビリ調整者に必要な知識及び技術
なお、講師については、地域リハビリ・コーディネーションに関する専門的な知識又は技術を有する者を選定すること。
三 受講対象者
受講対象者は、原則として市町村の職員であって、在宅の寝たきり老人等に対する保健又は福祉に関する業務に従事する保健婦(士)、看護婦(士)、理学療法士、作業療法士、社会福祉士及び介護福祉士等とする。
四 受講人員
受講人員は、原則として毎年各市町村一名以上が受講できる適切な規模を設定するものとする。
なお、一回当たりの受講定員の設定に当たっては、交通の利便等を考慮しつつ、研修の実効を上げられるよう配慮すること。
五 研修期間
一回の研修期間は、三日間程度とする。
六 開催場所
都道府県が指定する場所とする。
七 その他留意事項
開催時期の選定に当たっては、受講対象者が参加しやすい時期を考慮して決定すること。
第六 経費負担
都道府県がこの実施要綱に基づき実施する事業に要する経費については、厚生大臣が別に定めるところにより予算の範囲内で国庫補助を行うものとする。