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指定老人訪問看護の事業及び指定訪問看護の事業の会計・経理準則注解

(注一) 重要性の原則の適用について(第三条第二項、第四項及び第一六条)

指定老人訪問看護の事業及び指定訪問看護の事業(以下「事業」という。)の会計・経理は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、事業の会計・経理が目的とするところは、事業の経営成績と財政状態に関し、関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用される。

重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。

(一) 消耗品、消耗器具備品、その他の貯蔵品等のうち、重要性の乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる。

(二) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。

(三) 引当金のうち、重要性の乏しいものについては、これを計上しないことができる。

(四) たな卸資産の取得原価に含められる引取費用、買入事務費、移管費、保管費等の付随費用のうち、重要性の乏しいものについては、取得原価に算入しないことができる。

(五) 分割返済の定めのある長期の債権又は債務のうち、期限が一年以内に到来するもので重要性の乏しいものについては、固定資産又は固定負債として表示することができる。

(注二) 重要な会計方針の開示について(第三条第四項及び第五項)

財務諸表には、重要な会計方針を注記しなければならない。

会計方針とは、事業が損益計算書及び貸借対照表の作成に当たって、その財政状態及び経営成績を正しく示すために採用した会計処理の原則及び手続き並びに表示の方法をいう。会計方針の例としては、次のようなものがある。

(一) 有価証券の評価基準及び評価方法

(二) たな卸資産の評価基準及び評価方法

(三) 固定資産の減価償却方法

(四) 繰延資産の処理方法

(五) 引当金の計上基準

(六) 費用、収益の計上基準

代替的な会計基準が認められていない場合には、会計方針の注記を省略することができる。

(注三) 重要な後発事象の開示について(第三条第四項)

財務諸表には、損益計算書及び貸借対照表を作成するまでに発生する重要な後発事象を注記しなければならない。

後発事象とは、貸借対照表日後に発生した事象で、次期以降の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすものをいう。

重要な後発事象を注記事項として開示することは、当該施設の将来の経営成績及び財政状態を理解するための補足情報として有用である。

重要な後発事象の例としては、次のようなものがある。

(一) 火災、出水等による重大な損害の発生

(二) 多額の増資又は減資、重要な組織の変更及び多額の借入金の繰上償還

(三) 施設の譲渡又は譲受

(四) 重要な係争事件の発生又は解決

(注四) 注記事項の記載方法について(第三条第四項)

重要な会計方針に係る注記事項は、損益計算書及び貸借対照表の次にまとめて記載する。

なお、その他の注記事項についても、重要な会計方針の注記の次に記載することができる。

(注五) 資本取引と損益取引の区別について(第三条第三項)

資本剰余金は資本取引から生じた剰余金であり、利益剰余金は損益取引から生じた剰余金、すなわち利益留保額であるから、両者が混同されると事業の経営成績及び財政状態が適正に表示されないことになる。従って、例えば、資本助成を目的とする国庫等補助金、指定寄付金、債務免除益等の資本剰余金と、利益の留保より生じた利益剰余金を区別して表示する。

(注六) 継続性の原則について(第三条第五項)

事業会計上継続性が問題とされるのは、一つの会計事実について二つ以上の会計処理の原則及び手続きの選択適用が認められている場合である。

このような場合に、指定老人訪問看護事業者又は指定訪問看護事業者が選択した会計処理の原則及び手続きを毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難にし、この結果、事業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らせることになる。

従って、いったん採用した会計処理の原則及び手続きは、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。

なお、正当な理由によって、会計処理の原則及び手続きに重要な変更を加えたときは、これを当該財務諸表に注記しなければならない。

(注七) 保守主義の原則について(第三条第六項)

事業の会計・経理は、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理をしなければならないが、過度に保守的な会計処理を行うことにより、事業の経営成績及び財政状態の真実な報告をゆがめてはならない。

(注八) 事業損益計算について(第七条、第八条第一号及び第九条)

事業において、指定老人訪問看護又は指定訪問看護の提供は一体的に認識して取り扱われる。このため、給与費、材料費、経費、研修費等は事業収益に直接的に対応する事業費用として、これを一括して事業収益から控除して事業利益を表示する。

この点において売上高から売上原価を控除して売上総利益を表示し、さらにこの売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して営業利益を表示するのとは異なる。

(注九) 経過勘定項目について(第七条第一号)

(一) 前払費用

前払費用は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。

すなわち、火災保険料、賃借料等について一定期間を前払いした場合に、当期末までに提供されていない役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。

(二) 前受収益

前受収益は、一定の契約に従い継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。

すなわち、受取利息、賃貸料等について一定期間分を予め前受した場合に、当期末までに提供されていない役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。前受収益は、かかる役務の提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。

(三) 未払費用

未払費用は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対して、いまだその対価の支払いが終わらないものをいう。

すなわち、支払利息、賃借料、賞与等について、債務としてはまだ確定していないが、当期末までに既に提供された役務に対する対価は、時間の経過に伴い、既に当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用はかかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。

(四) 未収収益

未収収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、既に提供した役務に対して、いまだその対価の支払を受けていないものをいう。

すなわち、受取利息、賃貸料等について債権としてはまだ確定していないが、当期末までに既に提供した役務に対する対価は、時間の経過に伴い既に当期の収益として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、未収収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による未収金とは区別しなければならない。

(注一〇) 事業外損益について(第七条、第八条第二号及び第一〇条)

事業本来の活動以外の原因から生ずる経常的な収益及び費用。例えば、財務上の収益、費用、投資損益、長時間、休日及び時間外に係る老人訪問看護事業損益及び訪問看護事業損益、物品販売損益などをいう。なお、財務上の収益、費用には、他会計からの補助金、負担金等若しくは他会計に対する補助金、負担金等は含まれない。

(注一一) 特別損益について(第七条、第八条第三号及び第一二条)

特別損益に属する項目には次のような項目がある。

(一) 臨時損益

ア 固定資産売却損益

イ 転売以外の目的で取得した有価証券の売却損益

ウ 災害による損失

(二) 前期損益修正

ア 過年度における引当金の過不足修正額

イ 過年度における減価償却の過不足修正額

ウ 過年度におけるたな卸資産評価の修正額

エ 過年度償却済債権の取立額

なお、臨時損益、前期損益修正に属する項目であっても金額の僅少なもの又は、毎期経常的に発生するものは、事業外損益計算に含めることができる。

(注一二) たな卸資産の評価損について(第二〇条第一号)

事業に要する材料等のたな卸資産の時価が取得原価より著しく下落した場合の評価損は、低価基準の適用、品質低下、陳腐化、有効期限の超過等その理由にかかわらず、事業外費用として表示しなければならない。

(注一三) 実現主義の適用について(第九条第三号)

事業収益に対する実現主義の適用に当たっては、サービス提供基準に従い、指定老人訪問看護サービス又は指定訪問看護サービスが提供され請求可能となった時点をもって収益を認識する。

(注一四) 法人税等の追徴税額等について(第一四条)

法人税等の更正決定等による追徴税額及び還付税額は、税引前当期純利益に加減して表示する。この場合、当期の負担に属する法人税等額とは区別することを原則とするが、重要性の乏しい場合には、当期の負担に属するものに含めて表示することができる。

(注一五) 将来の期間に影響する特定の費用について(第一六条第四号及び第一九条第一号ウ)

「将来の期間に影響する特定の費用」とは、既に代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用をいう。

これらの費用は、その効果が及ぶ数時間に合理的に配分するため、経過的に貸借対照表に繰延資産として計上することができる。

(注一六) 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について(第一九条第一号及び第二号)

事業未収金、受取手形、前払金、買掛金、支払手形、預り金等の当該指定老人訪問看護事業者又は指定訪問看護事業者の事業活動により発生した債権及び債務は、流動資産又は流動負債に属するものとする。ただし、これらの債権のうち、特別な事情によって一年以内に回収されないことが明らかなものは、固定資産のうちのその他の資産に属するものとする。

貸付金、借入金、差入保証金、当該指定老人訪問看護事業者又は指定訪問看護事業者の事業活動外の活動によって発生した未収金、未収金等の債権、債務で貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払いの期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払いの期限が一年を超えて到来するものは、その他の資産又は固定負債に属するものとする。

現金、預金は、原則として、流動資産に属するが、預金については貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に期限が到来するものは、流動資産に属するものとし、期限が一年を超えて到来するものは、その他の資産に属するものとする。

所有有価証券のうち、証券市場において流動するもので、短期的資金運用のために一時的に所有するものは、流動資産に属するものとし、証券市場において流通しないもの若しくは長期的に所有するものは、その他の資産に属するものとする。

前払費用については、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に費用となるものは、流動資産に属するものとし、一年を超える期間を経て費用となるものは、その他の資産に属するものとする。

未収収益は、流動資産に属するものとし、未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする。

指定老人訪問看護材料、指定老人訪問看護消耗器具備品等のたな卸資産は、流動資産に属するものとし、指定老人訪問看護事業者又は指定訪問看護事業者がその事業目的を達成するために所有し、かつ、加工若しくは売却を予定しない財貨は、固定資産に属するものとする。

なお、固定資産のうち、残存耐用年数が一年以下となったものも流動資産とせず固定資産に含ませ、また、たな卸資産のうち恒常在庫品として保有するもの若しくは備蓄品として長期間にわたって所有するものも固定資産とせず流動資産に含ませるものとする。

(注一七) 徴収不能引当金、貸倒引当金又は減価償却累計額の控除形式について(第一九条第一号イ及びエ)

徴収不能引当金、貸倒引当金又は減価償却累計額は、その債権又は有形固定資産が属する科目ごとに控除する形式で表示することを原則とするが、次の方法によることも妨げない。

(一) 二以上の科目について、徴収不能引当金、貸倒引当金又は減価償却累計額を一括して記載する方法

(二) 債権又は有形固定資産について、徴収不能引当金、貸倒引当金又は減価償却累計額を控除して残額のみを記載し、当該徴収不能引当金、貸倒引当金又は減価償却累計額を注記して記入する方法

(注一八) 引当金について(第一九条第一号エ及び第二号ア、イ)

将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。

賞与引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、貸倒引当金、医事訴訟損失引当金等がこれに該当する。

発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することができない。

(注一九) 剰余金について(第一九条第三号)

事業に係る純資産額が出資金の額を超える部分を剰余金という。

剰余金は、次のように資本剰余金と利益剰余金とに分かれる。

(一) 資本剰余金

資本助成を目的とする国庫等補助金、指定寄付金等

(二) 利益剰余金

利益を源泉とする剰余金

(注二〇) 減価償却の方法について(第二〇条)

固定資産の減価償却の方法については次のようなものがある。

(一) 定額法

固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法。

(二) 定率法

固定資産の耐用期間中、毎期期首末償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法

(三) 生産高比例法

固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産又は用益の度合に比例した減価償却費を計上する方法。

この方法は、当該固定資産の総利用可能量が物理的に確定でき、かつ、減価が主として固定資産の利用に比例して発生するもの。例えば、自動車等について適用することが認められる。

なお、同種の物品が多数集まって一つの全体を構成し老朽品の部分的取替を繰り返すことにより全体が維持されるような固定資産については、部分的取替に要する費用を収益的支出として処理する方法(取り替え法)を採用することができる。

(注二一) たな卸資産の貸借対照表価額について(第二〇条第一号)

(一) たな卸資産の貸借対照表価額の算定のための方法としては、次のようなものが認められる。

ア 個別法

たな卸資産の取得減価を異にするに従い区別して記録し、その個々の実際原価によって期末たな卸品の価額を算定する方法

イ 先入先出法

最も古く取得されたものから順次払出しが行われ、期末たな卸品は、最も新しく取得されたものとみなして期末たな卸品の価額を算定する方法

ウ 後入先出法

最も新しく取得されたものから順次払出しが行われ、期末たな卸品は、最も古く取得されたものからなるものとみなして期末たな卸品の価額を算定する方法

エ 平均原価法

取得したたな卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末たな卸品の価額を算定する方法

(二) 指定老人訪問看護事業者又は指定訪問看護事業者が製造した事業に供した物品については、適正な原価計算基準に従って、予定価格又は標準原価を適用して算定した原価によることができる。

(注二二) 社債の貸借対照表価額について(第二〇条第二号)

所有する社債については、社債金額より低い価額又は高い価額で買入れた場合には、当該価額をもって貸借対照表価額とすることができる。この場合においては、その差額に相当する金額を償還期に至るまで毎期一定の方法で逐次貸借対照表価額に加算し、又は貸借対照表価額から控除することができる。

(注二三) 債権の貸借対照表価額について(第二〇条第三号)

債権については、債権金額より低い価額で取得したときその他これに類する場合には、当該価額をもって貸借対照表価額とする。この場合においては、その差額に相当する金額を弁済期に至るまで毎期一定の方法で逐次貸借対照表価額に加算することができる。

(注二四) 国庫等補助金等によって取得した資産について(第二〇条第四号及び第六号)

資本助成のための国庫等補助金、指定寄付金等で取得した資産については、国庫等補助金等に相当する金額をその取得原価から控除し圧縮記帳することができる。この場合においては、貸借対照表の表示は次のいずれかの方法によるものとする。

(一) 取得原価から国庫等補助金等に相当する金額を控除する形式で記載する方法

(二) 取得原価から国庫等補助金等に相当する金額を控除した残額のみを記載し、当該国庫等補助金等の金額を注記する方法

なお、非課税対象である指定老人訪問看護事業者の老人訪問看護ステーション又は指定訪問看護事業者の訪問看護ステーションにおいては、かかる国庫等補助金等は、原則として資本剰余金として表示しなければならない。