アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○介護老人保健施設における防火、防災対策について

(昭和六三年一一月一一日)

(老健第二四号)

(各都道府県知事あて厚生省大臣官房老人保健福祉部長通知)

介護老人保健施設は、病弱な寝たきり老人等災害時に特に配慮を要する者を入所対象としており、火災を始め各種の災害に備えた十分な防災対策及び災害発生時の適切、迅速な避難・誘導等の措置を講ずる必要があることから「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成一一年厚生省令第四〇号)及び「介護老人保健施設の施設及び設備、人員並びに運営に関する基準の施行について」(平成一二年三月一七日老企第四四号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)により防災対策に万全を期するよう指導を願つているが、今般、別紙のとおり「介護老人保健施設における防火、防災対策要綱」を制定したので、了知の上関係機関に対し周知し、消防機関等と連携を図つて指導されるよう御配意願いたい。

なお、この通知については消防庁と協議済みであるので念のため申し添える。

別紙

介護老人保健施設における防火、防災対策要綱

第一 目的

介護老人保健施設は、病弱な寝たきり老人等災害時に自力避難が困難な者を入所対象としていること等施設に特有な事情を考慮し、各種の災害に備えた十分な防災対策を講ずる必要がある。このため、この要綱を制定する。

第二 火災予防対策

一 管理者の責任

(一) 介護老人保健施設の管理者(以下「施設長等」という。)は、施設管理の最高責任者として火災発生の防止につき、万全の措置を講ずるよう努めること。

(二) 施設長等は、施設、設備の不備により火災の発生又は拡大することのないよう建築基準法令及び消防法令等に規定する防火関係規定を遵守するとともに、施設、設備等が十分機能するよう管理されているか常時点検を行うこと。

(三) 施設長等は、防火管理者を定め消防計画の作成等防火管理上必要な業務を行わせること。

二 火気取扱いの注意

(一) 火気の取扱いについては、職員及び入所者、通所者等に対して注意を喚起し、火災発生の防止に努めること。

特に、喫煙については、指定された場所での喫煙を励行させること。

(二) 各部署について火元責任者を定め、火災の予防に努めること。

(三) 着火原因とならないよう療養室等での放射型又は自然対流形石油ストーブ等の使用は原則として禁止し、ストーブ類を使用する場合には、強制排気形のストーブと同等以上の火災安全性を有する器具の使用を図ること。

三 寝具類等の防炎化の推進

既に法令で一定の防炎化、難燃化が義務付けられている壁、天井等の内装や、カーテン、じゆうたん等の調度類の他、寝具類、寝衣類についても防炎性能を有するものとするよう努めること。

第三 消防計画、防火訓練等

一 防火管理者

(一) 施設長等は、必要な資格を有し、介護老人保健施設において防火管理上必要な業務を適切に遂行することが出来る管理的又は監督的な地位にある者を防火管理者として選任し、所轄消防署長等に届け出ること。また、解任するときも同様とすること。

(二) 防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは必要に応じて施設長等の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならないこと。

(三) 防火管理者は、消防計画を作成し、又はこれを変更するときは、所轄消防署長等に届け出るとともにこれに基づいて、消火、通報及び避難の訓練を定期的に実施すること。

二 消防計画に定めるべき事項

(一) 消防計画に定めるべ事項は、次のとおりとする。

ア 自衛消防の組織に関すること。

イ 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること。

ウ 消防用設備等の点検及び整備に関すること。

エ 避難通路、避難口、安全区画、排煙又は防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること。

オ 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること。

カ 入所者等の定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること。

キ 防火上必要な教育に関すること。

ク 消火、通報及び避難の訓練の実施に関すること。

ケ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難・誘導に関すること。

コ 防火管理について消防機関との連絡に関すること。

サ 増築、改築、移転、修繕又は模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者又はその補助者の立会いその他火気の使用又は取扱いの監督に関すること。

シ その他防火対象物の防火管理に関し必要な事項

(二) 大規模地震対策特別措置法に基づき地震防災対策強化地域として指定された地域に所在する介護老人保健施設の防火管理者は、前記(一)の消防計画に次に掲げる事項を定めること。

ア 大規模地震対策特別措置法第二条第一三号に規定する警戒宣言が発せられた場合における自衛消防の組織に関すること。

イ大規模地震対策特別措置法第二条第三号に規定する地震予知情報及び警戒宣言の伝達に関すること。

ウ 警戒宣言が発せられた場合における避難誘導に関すること。

エ 警戒宣言が発せられた場合における施設及び設備の点検及び整備その他地震による被害の発生の防止又は軽減を図るための応急対策に関すること。

オ 大規模な地震に係る防災訓練の実施に関すること。

カ 大規模な地震による被害の発生の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報に関すること。

三 消火、通報及び避難の訓練の実施

(一) 年二回以上消火及び通報訓練を実施し、消防機関への早期通報、消火器及び屋内消火栓設備等の消防用設備等の使用方法について職員に徹底させること。

(二) 年二回以上避難訓練を実施すること。避難訓練の実施に際しては、入所者等の病状、心身の状況を踏まえ訓練であることを周知するとともにできるだけ入所者等の参加を求め、実地に訓練し、非常時には迅速かつ安全に避難を行えるようその体制を確立すること。

なお、夜間の災害の発生に際しては一層の混乱が予想されることから年一回は夜間の訓練若しくは夜間の発災を想定した訓練を実施するよう努めること。

(三) 消火、通報及び避難の訓練の実施に当たつては、あらかじめ、その旨を消防機関に通報するとともに、消防機関及び地域の消防組織等の指導、協力を得るよう努めること。

四 消防機関等との連携、協力体制等

(一) 消防計画の作成、避難訓練の計画、実施等介護老人保健施設の防火安全対策に関して、消防機関の指導を受ける等定期的な連絡体制を確保しておくこと。

(二) 職員の宿舎は極力同一の敷地又は近隣に設ける等、非常時の職員の動員体制の確保を図ること。

(三) 火災発生時における消火、避難等の迅速な対応、入所者の円滑な一時収容等が可能となるよう、近隣に所在する病院、社会福祉施設等との相互間の連携を図るとともに、地域住民及びボランティア組織等とも日常の連携を密にし、緊急の場合の応援、協力体制を確保しておくこと。

第四 消防機関への早期通報、初期消火

一 火災が発生した場合は、消防機関への早期通報が極めて重要であるので、非常通報装置を整備している施設も含め、平素から消防機関への通報の方法及び機器の点検について全職員に周知させるとともに、通報訓練の実施を通じて消防機関への早期通報の習慣を身に付けさせること。

なお、非常通報装置は、極力設置するものとすること。

二 自動火災報知設備が作動した場合は、直ちに出火場所を確認すること。自動火災報知設備と直結した非常通報装置が設置されている施設で自動火災報知設備の作動が非火報災によるものと確認された場合は、その旨消防機関に直ちに通報すること。

三 火災の発生の場合は、直ちに、関係者へ連絡し、避難・誘導、通報等の措置を講ずるとともに消火器、屋内消火栓設備等を使用して初期消火に努めること。

四 出火室の戸については、煙の拡散を防ぐために、出火室の避難及び初期消火行動終了後直ちに閉鎖すること。

第五 避難・誘導、搬送体制

一 日常の入所者の実態把握

火災等の非常事態に即応するため、平素から入所者等の実態把握に努め、入所者等の心身の状態等に応じた避難・誘導、搬送の体制を確立しておくこと。

二 自力避難が困難な者等への配慮

自力避難が困難な入所者の療養室はできる限り一階部分とするなど避難の容易な階に設けること。

やむを得ず高い階に収容する場合には火災発生の危険が少なく、避難の容易な場所とするとともに、非常時に際しどのような避難経路や方法により避難救出するかを消防計画で明確に定めておくなど特別の配慮をすること。

また、入所者の状況に応じて、閃光形警報装置、点滅形又は誘導音装置付誘導灯等を設置することが望ましいこと。

三 避難・誘導、搬送要領

(一) 別記「避難・誘導、搬送の要領」を参考に計画を立て、避難訓練を実施すること。

(二) 避難器具の設置場所と使用方法を職員及び入所者等に周知しておくとこと。

四 区画の形成

火災発生の場合、出火場所を含む防火区画及びそれに隣接する区画を構成する防火戸は、自動的に閉鎖する構造のものであつても、それぞれの区画の避難状況等を考慮して、できるだけ早く手動で閉鎖すること。

五 応急体制

火災時の負傷者等の応急手当のできる体制を確立しておくこと。

第六 休日、夜間における防火安全対策

一 留意事項

休日、夜間における火災は、職員の配置が希薄となること等からその対応如何によつては死亡事故を含む大災害になり易いので、初期消火に努めるとともに、避難・誘導、搬送体制を中心として特に留意し対応すること。

二 夜間防火管理責任者の配置と事務引継ぎの徹底

夜間防火管理責任者(防火管理者が不在の場合の代行者)を配置し、防火管理者との事務引継ぎを徹底すること。

三 夜間巡視の励行

夜間入所者等の不在となる所も含め、定間的に夜間巡視を行うこと。

四 夜間における施錠管理

夜間使用しないリネン室、倉庫等は、出火防止対策の強化を図るため、施錠等を励行すること。

第七 建築物の防火上の構造等

介護老人保健施設の構造設備については介護保険法及び介護老人保健施設の施設及び設備、人員並びに運営に関する基準の外、建築基準法令及び消防法令による規制を受けているので、その設置に当たつては、これらの関係法令を遵守すること。

なお、次の点にも特段の配慮をされたいこと。

(一) 避難・誘導、搬送活動及び消火活動を円滑に行うことができるようにするためのバルコニーの設置。

(二) 車椅子等による円滑な避難の障害となる床の段差、傾斜及び溝の除去。

(三) 延燃防止対策としての小屋裏又は天井裏に達する間仕切り壁の設置及び防煙対策としての防煙垂れ壁の設置。

第八 火災以外の防災対策

地震等に対する防災対策は、二次災害である火災の予防も含め避難・誘導等の基本は防火対策と同様であるので避難訓練等の実施に当たつては、地震等により災害の発生も想定して行う等十分留意すること。

別記

避難・誘導、搬送の要領

一 入所者等に出火場所を知らせる。

二 出火場所にもつとも近い部屋、階から避難・誘導、搬送を開始する。

三 自力避難が困難な者はストレッチャー、車椅子、毛布等で搬送する。

四 誘導の際、火煙が迫るときは、這うようにし、ハンカチ、タオル等で鼻、口をおおわせる。ときには屋内消火栓の水で援護注水する。なお、防煙アスク等の備え付けが望ましい。

五 避難・誘導、搬送に際してはエレベーターを使わない。

六 出火階の下方にある者は屋内階段等により誘導する。

七 出火階の者はまず出火点から離れた方向の避難階段又は避難器具の設置場所に誘導、搬送し下方へ脱出させる。

なお、出火点直近の屋内階段や避難器具の設置場所に誘導、搬送してはならない。

八 出火階より上階層の者は、避難階段周辺に火煙がなく、下方へ容易に避難できるときは下方に誘導、搬送する。下方に誘導、搬送が困難なときは屋上又は避難器具の設置場所に誘導、搬送し、下方へ脱出させる。

九 屋上に誘導、搬送した者は、屋上の屋外階段や避難器具を利用して、地上に降下させる。

一○ 避難・誘導の際には、混乱を生じないように注意し、携帯用マイク等を使用し、常に大声ではつきりと指揮・命令する。

一一 避難するときには、屋内でスリッパを履かせないようにする。

一二 入所者等がいつたん、避難したのち、再び物を取りに戻るようなことを制止する。

一三 防火戸の閉鎖に際しては、出火点付近に残留者がいないかどうか十分確認する。

一四 廊下の電灯は、できる限り多く点灯する。

一五 火災により停電することを考慮し、懐中電灯を携帯する。

一六 避難・誘導、搬送をしたのちは、直ちに人員の確認を行う。