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○老人保健施設の施設及び設備、人員並びに運営に関する基準の施行について

(昭和六三年一月二〇日)

(健医老第九号)

(各都道府県知事あて厚生省保健医療局老人保健部長通知)

老人保健法(昭和五七年法律第八〇号。以下「法」という。)第四六条の八第一項から第三項までの規定に基づく老人保健施設の施設及び設備、人員並びに運営に関する基準(以下「基準」という。)については、昭和六三年一月四日厚生省令第一号をもって公布され、本日施行されたところであるが、本基準は、老人保健施設の整備、運営が適正に行われることを目的とするものであるから、基準の運用に当たっては、次の事項に留意の上、指導監督に万全を期されたい。

第一 基準の性格

(1) 本基準は、老人保健施設がその目的を達成するために必要な最低限の基準を定めたものであり、老人保健施設の開設者は、常にその施設、設備及び運営の向上に努めなければならないこと。

(2) 基準を満たさない場合には、法第四六条の六第一項の規定による開設許可は受けられず、また、運営開始後、基準を下回るに至った場合、法第四六条の一二の規定による設備の使用制限等、法第四六条の一三の規定による管理者の変更命令又は法第四六条の一四の規定による業務運営の改善命令等の対象となり、これらの命令に従わない場合には法第四六条の一五第一項の規定により許可を取り消すことができるものであること。

第二 基本方針

基準第一条は、老人保健施設の基本方針を規定したものであり、老人保健施設の施設及び設備、人員並びに運営の各般にわたってこの基本方針が生かされることが望まれること。

第三 施設及び設備に関する事項

1 一般原則

(1) 老人保健施設の施設及び構造設備については、本基準のほか、建築基準法、消防法等の関係規定を遵守するとともに、日照、採光、換気等について十分考慮したものとし、入所者等の保健衛生及び防災につき万全を期すこと。

(2) 老人保健施設の環境及び立地については、入所者等の療養生活を健全に維持するため、ばい煙、騒音、振動等による影響を極力排除するとともに、交通、水利の便等を十分考慮したものとすること。

2 規模

老人保健施設の規模については、基準上特に定めはないが、各地域(例えば広域市町村圏)の要介護老人等、特別養護老人ホームの入所定員、病院の病床数等を踏まえて見込まれるその地域の需要を考慮したものでなければならないこと。したがって、他の地域からの利用を数多く想定した大規模施設の設置は適切でないので、入所定員及び通所定員については適正配置の観点から十分指導されたいこと。

3 施設に関する基準

(1) 基準第二条第一項各号に掲げる施設(設置の義務づけられているもの)については、次の点に留意すること。

ア 機能訓練室、談話室、食堂、レクリエーション・ルーム及び通所者のためのデイ・ルームを区画せず、一つのオープンスペースとすることは差し支えないが、入所者等に対する施設療養その他のサービスの提供に支障を来さないよう全体の面積は各々の施設の基準面積を合算したもの以上とすること。

イ 施設の兼用については、各々の施設の利用目的に沿い、かつ、入所者に対する施設療養その他のサービスの提供に支障を来さない程度で認めて差し支えないものであること。したがって、談話室とレクリエーション・ルームの兼用並びに洗面所と便所、洗濯室と汚物処理室が同一の区画にあること等は差し支えないこと。

(2) 各施設については、基準第二条第二項に定めるもののほか、次の点に留意すること。

ア 療養室

療養室に洗面所を設置した場合に必要となる床面積及び収納設備の設置に要する床面積は、基準面積に含めて差し支えないものであること。

イ 診察室

医師が診察を行うのに適切なものとすること。

ウ 機能訓練室

(ア) 機能訓練室の床面積は、入居者等の定員一人当たり一m2以上とすること。

(イ) 老人保健施設で行われる機能訓練は、理学療法士又は作業療法士の指導下における運動機能やADL(日常生活動作能力)の改善を中心としたものであるので、これに必要な器械・器具を備えること。

エ 談話室

(ア) 談話室の床面積は、入所定員一人当たり〇・五m2以上とすること。

(イ) ソファー、テレビその他の教養娯楽設備等を備えること。

オ 食堂

食堂の床面積は、入所定員一人当たり二m2以上とすること。ただし、平成四年九月三〇日までに開設許可を受けた老人保健施設の施設については、なお従前の例による。なお、通所者に食堂を利用させる場合には、これに加え、通所者が利用できる十分な広さを確保すること。

カ 浴室

入浴に全面的な介助を必要とする者に必要な特別浴室については、その出入りに当たってストレッチャー等の移動に支障を生じないよう構造設備上配慮すること。

キ サービス・ステーション

看護・介護職員が入所者のニーズに適切に応じられるよう、療養室のある階ごとに療養室に近接して設けること。

ク 調理室

食器、調理器具等を消毒する設備、食器、食品等を清潔に保管する設備並びに防虫及び防鼠の設備を設けること。

ケ 汚物処理室

汚物処理室は、他の施設と区別された一定のスペースを有すれば足りること。

コ 通所者のためのデイ・ルーム

デイ・ルームの床面積は、通所定員一人当たり二m2以上とすること。

サ その他

(ア) 焼却炉、浄化槽、その他の汚物処理設備及び便槽を設ける場合には、療養室、談話室、食堂、調理室及び通所者のためのデイ・ルームから相当の距離を隔てて設けること。

(イ) 床面積を定めない施設については、各々の施設の機能を十分に発揮し得る適当な広さを確保するよう配慮すること。

(ウ) 薬剤師が老人保健施設で調剤を行う場合には、薬剤師法の規定により、調剤所が必要となること。

(3) 基準第二条第三項は、同条第一項に定める各施設が当該老人保健施設の用にもっぱら供するものでなければならないこととしたものであるが、老人保健施設と病院、診療所又は特別養護老人ホーム等の社会福祉施設(以下「病院等」という。)とが併設される場合(同一敷地内にある場合、又は公道をはさんで隣接している場合をいう。以下同じ。)に限り、次に掲げるところにより、同条第三項ただし書が適用されるものであるので、併設施設(老人保健施設と併設される病院等をいう。以下同じ。)と施設を共用する場合の運用に当たっては留意すること。

ア 次に掲げる施設については、併設施設との共用は認められないものであること。

・療養室

・談話室

・サービス・ステーション

・洗面所

・便所

イ アに掲げる施設以外の施設は、老人保健施設と併設施設双方の施設基準を満たし、かつ、当該施設の余力及び利用計画からみて両施設の入所者等の処遇に支障がない場合に限り共用を認めるものであること。具体的には、次のとおり取り扱うこと。

(ア) 診察室の共用

診察室の共用は、一の診療科において、二以上の診療室を有する病院又は診療所の当該診療科の一の診療室について、原則として老人保健施設の入退所の判定のための診察を行う場合であって、利用計画により、併設施設側の利用に支障がない場合に限り認められるものであること。

(イ) 機能訓練室の共用

併設の病院との機能訓練室の共用は、利用計画により、病院側の利用を阻害することなく、かつ、老人保健施設の入所者が機能訓練を行うことができるような広さを有する機能訓練室に限り認められるものであること。なお、併設の特別養護老人ホームと機能訓練室を共用することは原則として認められないこと。

(ウ) 食堂の共用

併設施設と老人保健施設の入所者等の食事時間を調整して共用することは好ましくないので、同時に利用できるような広さを有する場合に限り認められるものであること。

(エ) 浴室の共用

利用計画により、併設施設の入所者等の入浴に加え、老人保健施設の入所者が週二回以上入浴できる場合に限り認められるものであること。

(オ) その他の施設の共用

その他の施設については、入所者等の数やその状況等の実態を踏まえて、老人保健施設と併設施設双方の入所者等の処遇に支障がない場合に限り共用を認められるものであること。

ウ 共用する施設についても老人保健施設としての許可を与えることとなるので、例えば、併設の病院と施設を共用する場合には、その共用施設については医療法上の許可と老人保健施設の許可とが重複するものであること。

(4) 設置が義務づけられている施設のほか、家族相談室、ボランティア・ルーム、家族介護教室は、老人保健施設の性格等からみて設置が望ましいので、余力がある場合には、その設置につき配慮すること。

4 構造設備

老人保健施設の構造設備については、基準第三条に定めるもののほか、次の点に留意すること。

(1) 耐火構造

老人保健施設の建物のうち療養室、談話室、食堂、浴室、レクリエーション・ルーム、便所等入所者等が日常継続的に使用する施設(以下「療養室等」という。)を有するものについては、建築基準法第二条第九号の二に規定する耐火建築物としなければならないこと。ただし、療養室等を二階以上の階及び地階のいずれにも設けていない建物については、同条第九号の三に規定する準耐火建築物とすることができること。

(2) エレベーター

老人保健施設の入所者等が寝たきり老人等介護を必要とする老人であることから、療養室等が二階以上の階にある場合は、屋内の直通階段及びエレベーターの設置を義務づけたこと。

(3) 階段

階段の傾斜は緩やかにするとともに、手すりは原則として両側に設けること。

(4) 廊下

ア 廊下の幅は、内法によるものとし、手すりを含むものであること。

イ 手すりは、原則として両側に設けること。

ウ 中廊下は、廊下の両側に療養室等又はエレベーター室のある廊下をいうこと。

(5) 入所者等の身体の状態等に応じた施設療養その他のサービスの提供を確保するため、車椅子、ギャッヂベッド、ストレッチャー等を備えること。

(6) 家庭的な雰囲気を確保するため、木製風のベッド、絵画、鉢植え等の配置や壁紙の工夫等に配慮するとともに、教養・娯楽のための本棚、音響設備、理美容設備等の配置に努めること。

(7) 車椅子等による移動に支障のないよう床の段差をなくすよう努めること。

(8) 老人保健施設と病院等の施設を同一建物として建築する場合は、表示を明確にすること、壁や廊下の色等を変えること等により施設の区分を明確にすること。ただし、老人保健施設と病院等にそれぞれ専用の入口が設けられている場合については、それぞれに通じる建物の玄関、ホール、階段、エレベーター、廊下等は共用できるものであること。

(9) 同一階に、病院等と老人保健施設とが共存するものは原則として認められないこと。ただし、病院等又は老人保健施設の入所者等が直接利用しない施設はこの限りでないこと。

(10) 基準第三条第七号に定める「消火設備その他の非常災害に際して必要な設備」とは、消防法第一七条の規定に基づく消防用設備等及び風水害、地震等の災害に際して必要な設備をいうこと。

5 病床転換に係る老人保健施設の特例等

(1) 次に掲げる建物を転用して開設される老人保健施設(以下「病床転換に係る老人保健施設」という。)の施設及び構造設備(当該転用に係る部分に限る。)については、平成九年一月二〇日から平成一二年一月一九日までの経過措置として、一定の特例が設けられたこと。

ア 基準施行の際現に医療法第七条第一項の開設許可を受けている病院又は診療所の建物(基準施行の際現に存する建物及び基本的な構造設備が完成している建物に限るものであり、基準の施行後増築された部分や新築された建物は含まない。)

イ 基準施行の際現に存する診療所(医療法第七条第一項の開設許可を受けなければならないものを除く。ウにおいて同じ。)の建物(基本的な構造設備が完成しているものを含む。)

ウ 診療所の用に供しようとする建物であって、基準施行の際現に存するもの(基本的な構造設備が完成しているものを含む。)

(2) 特例の内容については、廊下の幅を基準に適合させることが建物の構造上の理由により困難な場合には、医療法上の基準を満たしていれば足りるものとするが、可能な範囲内での廊下幅の拡張、デイ・ルームの配置その他の方法により、入所者等の療養生活に支障がないよう配慮しなければならないものとするものであること。

(3) 病院又は診療所の建物を老人保健施設に転用するに当たっては、建物単位で一括して転用することが望ましいこと。

第四 人員に関する事項

老人保健施設の職員にはそれぞれの職務を遂行する熱意と能力を有する者を充てることが老人の福祉の向上を図る観点から極めて重要であること。また、基準第四条の運用に当たっては、次の点に留意すること。

1 医師

(1) 医師は、老人の保健医療に関し、相当な学識経験と熱意を有する者を充てること。

(2) 医師の員数については、一人の医師が一日につき当該老人保健施設における常勤職員の一日の勤務時間に相当する時間だけ勤務した場合を一として算定して、基準第四条第一項第一号の規定を適用すること。

(3) 老人保健施設においては、常勤の医師が一人以上配置されていなければならないこと。したがって、入所者数一〇〇人未満の老人保健施設にあっても常勤の医師一人の配置が確保されていなければならないこと。また、例えば、入居者数一五〇人の老人保健施設にあっては、常勤の医師一人のほか、常勤医師〇・五人に相当する非常勤医師の配置が必要となること。ただし、前段に規定する老人保健施設(以下「基本型老人保健施設」という。)の開設者が当該老人保健施設と一体として運営するものとして開設する老人保健施設(以下「分館型老人保健施設」という。)においては、当該分館型老人保健施設と一体として運営される基本型老人保健施設に配置されている医師が配置されるときに限り、非常勤職員をもって充てても差し支えないこと。例えば入所者三〇人の分館型老人保健施設にあっては、〇・三人分の勤務時間を確保すること。

(4) (3)にかかわらず、病院又は診療所(医師について老人保健施設の人員基準を満たす余力がある場合に限る。)と併設されている老人保健施設にあっては、必ずしも常勤の医師の配置は必要でないこと。したがって、複数の医師が勤務する形態であっても、それらの勤務時間を合計して基準に適合すれば差し支えないこと。ただし、このうち一人は、入所者等全員の病状等を把握し施設療養全体の管理に責任を持つ医師としなければならないこと。

なお、兼務の医師については、日々の勤務体制を明確に定めておくこと。

2 看護婦及び准看護婦並びに介護職員

(1) 看護婦及び准看護婦並びに介護職員(以下「看護・介護職員」という。)の員数の算定に際し、入所者の数を三・六で除して得た結果端数を生じた場合には、切り上げるものとすること。したがって、例えば、入所者数一〇〇人の施設では、二八人以上の配置が必要となること。

(2) 看護・介護職員は、直接入所者等の処遇に当たる職員であるので、当該老人保健施設の職務に専ら従事する常勤職員でなければならないこと。ただし、業務の繁忙時に多数の職員を配置する等により業務の円滑化が図られる場合は、次の条件を満たす限り、その一部に非常勤職員を充てても差し支えないこと。

ア 常勤職員である介護・看護職員が(1)によって算定される員数の七割程度確保されていること。

イ 常勤職員に代えて非常勤職員を充てる場合の勤務時間数が常勤職員を充てる場合の勤務時間数以上であること。

(3) 看護・介護職員(入所者の処遇に当たるものに限る。)の総数内における看護婦及び准看護婦と介護職員の配分は標準であること。

3 相談指導員

(1) 相談指導員は、保健医療及び社会福祉に関する相当な学識経験を有し、次に掲げるような入所者等に対する相談指導の業務を行うのにふさわしい常勤職員を充てること。

ア 入所者等及び家族の処遇上の相談

イ 生活・行動プログラムの作成

ウ レクリエーション等の計画、指導

エ 市町村との連携

オ ボランティアの指導

(2) 相談指導員の員数の算定に際し、入所者数を一〇〇で除した結果端数を生じた場合には、切り上げるものとすること。例えば、入所者数一二〇人の老人保健施設では常勤の相談指導員二人の配置が必要であること。ただし、分館型老人保健施設においては、基本型老人保健施設に配置されている相談指導員が配置されるときに限り、非常勤職員をもって充てて差し支えないこと。例えば入所者三〇人の分館型老人保健施設にあっては、〇・三人分の勤務時間を確保すること。

4 理学療法士又は作業療法士

(1) 理学療法士又は作業療法士の員数については、1の(2)に準じた取扱いとすること。

(2) 理学療法士又は作業療法士については、病院等と兼務する職員や非常勤職員をもって充てても差し支えないが、例えば入所者数五〇人の老人保健施設にあっては、〇・五人分の勤務時間を確保すること。

5 栄養士

栄養士は、一人以上の常勤職員の配置が望ましいが、栄養指導等の業務に支障がない場合には、兼務職員又は非常勤職員をもって充てても差し支えないこと。

6 薬剤師、調理員、事務員等

(1) 薬剤師、調理員、事務員等については、老人保健施設の設置形態等の実情に応じた適当数を配置すること。

(2) 薬剤師の員数については、入所者の数を三〇〇で除した数以上が標準であること。

(3) 調理員等については、併設施設との職員の兼務や業務委託を行うこと等により適正なサービスを確保できる場合にあっては配置しない場合があっても差し支えないこと。

7 老人保健施設デイ・ケアに係る看護・介護職員等の員数

老人保健施設デイ・ケアを実施するため、基準第四条第二項に規定する所定の員数の介護職員、相談指導員及び理学療法士又は作業療法士を配置すること。

8 入所者数及び通所者数

(1) 員数の算定の基礎となる入所者数又は通所者数は、前年度の平均値とするが、この場合、平均値は、前年度の各月末日における入所者数又は各月の最後のデイ・ケアの実施日における通所者数をそれぞれ合算し運営月数で除して得た数とすること。

(2) 新規開設、再開又は定員の変更に際しては推定数によることとするが、当該推定数は、定員の九五%とすること。

9 兼務、非常勤

(1) 基準第四条第三項ただし書の規定により併設施設との職員の兼務を認められるのは、老人保健施設とその併設施設双方の人員に関する要件を満たすとともに、兼務によって入所者等の処遇に支障を来たさない場合に限るものであること。

(2) 兼務及び非常勤職員の勤務については、あらかじめ計画された勤務表により行うこと。

第五 運営に関する事項

老人保健施設の運営については、基準第五条から第一七条に定めるもののほか、次によること。

なお初老期痴呆により痴呆の状態にある者(以下「初老期痴呆患者」という。)については、本通知によるもののほか、「老人保健施設において施設療養を受ける初老期痴呆患者に係る療養費の取扱いについて」(平成三年一二月二〇日保発第九一号・老健第一一六号)によるものとすること。

1 開設者の管理等

第五条は開設者の管理及び管理者について規定したものであるが、その運用については次の点に留意すること。

(1) 基準第五条第一項のただし書は、開設者の長期間の傷病又は出張等特別な事情がある場合に限り適用すること。

(2) 老人保健施設の管理者は、当該老人保健施設を適切に管理運営することに専念できるものを充てることとし、他の病院等を管理することは、原則として認められないこと。なお、基準第五条第二項のただし書は、これらの施設が併設施設の場合等であって管理上支障を生じない場合に限り適用すること。

2 管理規程

基準第六条は、老人保健施設の適正な運営及び入所者等に対する適切な施設療養その他のサービスの提供を確保するため、次に掲げる事項を内容とする規程の制定を義務づけたものであること。

ア 施設の目的及び運営の方針

イ 職員の定数、職種及び職務内容

ウ 入所者等の定員

エ 入所者等に対する施設療養その他のサービスの内容

オ 入所者等の守るべき事項

カ 非常災害対策

キ その他施設の管理に関する重要事項

3 勤務体制の確保等

基準第七条は、入所者等に対する適切な施設療養その他のサービスの提供を確保するため、職員の勤務体制等を規定したものであるが、このほか、次の点について留意すること。

(1) 職員の毎月の勤務体制及び職務内容を定めること。

(2) 夜間の安全の確保及び入所者のニーズに対応するため、看護・介護職員による夜勤体制を確保すること。

(3) 休日、夜間等においても医師との連絡が確保される体制をとること。

(4) 基準第七条第二項は、施設療養が職員以外の者、例えば、付添い看護者によって代替されて行われるべきでない旨を規定したものであること。

(5) 老人保健施設を地域に開かれたものとするため、入所者等の話し相手として、また、レクリエーション等の実施に際し、積極的にボランティアの参加を求めるよう努めること。

(6) 基準第七条第三項は、老人保健施設の各職種にわたって、統一した運営方針のもとに施設療養その他のサービスの提供を行い、かつ、その向上を図るため、計画的に職員の研修の機会を確保するよう努めるものとしたものであること。

4 定員の遵守

基準第八条は、入所者に対する適切な施設療養その他のサービスの提供を確保するため、療養室に入所定員を超えて入所させてはならない旨明記したものであること。また、療養室以外の場所に入所させてはならないこと。

5 非常災害対策

(1) 基準第九条は、老人保健施設の入所者等の特性に鑑み、非常災害に際して必要な具体的計画の樹立、避難、救出訓練の実施等の対策に万全を期さなければならないこととしたものであること。

(2) 「非常災害に関する具体的計画」とは、消防法施行規則第三条に規定する消防計画及び風水害、地震等の災害に対処するための計画をいうこと。なお、この場合、消防計画の樹立及びこれに基づく消防業務の実施は、消防法第八条の規定による防火管理者に行わせること。

6 衛生管理等

基準第一〇条は、老人保健施設の設置目的に鑑み必要最低限の衛生管理等を規定したものであるが、このほか、次の点に留意すること。

(1) 老人保健施設は、食中毒及び伝染病の発生を防止するための措置、鼠族、昆虫の駆除方法及び栄養改善の具体的方法等について、必要に応じ保健所の助言、指導を求めるとともに、密接な連携を保つこと。

(2) 医薬品の管理については、当該老人保健施設の実情に応じ、地域の薬局の薬剤師の協力を得て行うことも考えられること。

(3) 空地調和設備等により施設内の適温の確保に努めること。

7 市町村との連携

(1) 基準第一一条は、老人保健施設が地域社会に根ざした施設として運営されていくためには、施設の利用や運営に関して市町村(特別区を含む。以下同じ。)と密接な連携がとれていることが必要であることから、市町村に設けられた高齢者サービス調整チームとの連携等に努めることとしたものであること。

(2) 老人保健施設は市町村等との協力の下に、入所者の家族等に対し、一定期間後に家庭での療養への移行の必要性があること、できるだけ面会に来ることが望ましいこと及び退所後の在宅介護の方法等について十分説明し理解を求めるよう努めなければならないこと。

8 協力病院

基準第一二条は、老人保健施設の入所者等の病状の急変等に対応するため、あらかじめ一以上の協力病院を定めておくとともに、歯科医療の確保の観点からあらかじめ協力歯科医療機関を定めておくよう努めなければならない旨規定したものであること。なお、その選定に当たっては、必要に応じ、地域の関係団体の協力を得て行われるものとするほか、次の点に留意すること。

(1) 協力病院は、老人保健施設から自動車等による移送に要する時間がおおむね二〇分以内の近距離にあること。

(2) 当該病院が標榜している診療科名等からみて、病状急変等の事態に適切に対応できるものであること。

(3) 協力病院に対しては、入所者等の入院や休日夜間等における対応について円滑な協力を得るため、あらかじめ必要な事項を取り決めておくこと。

9 入退所

(1) 基準第一三条第一項は、老人保健施設の入所の対象者は、別紙1「老人保健施設の入所者の範囲」により、その身体の状況及び病状に照らし施設療養の提供が必要な老人を入所させるものであることを定めていること。

なお初老期痴呆患者の入所等に当たっては、当該者が初老期痴呆により痴呆の状態にある旨を確認する必要があること。

(2) 同条第二項は、必要とする介護の程度が重い老人の入所を拒否することを禁止するものであること。

(3) 同条第三項は、基準第一条(基本方針)を踏まえ、入所者の家族等に対し、退所の判定によっては、家庭での療養へ移行する必要性があること、できるだけ面会に来ることが望ましいこと等の説明を行うとともに、入所者に対して適切な施設療養が提供されるようにするため、入所者の病歴、家族の状況等の把握に努めるべきことを規定したものであり、例えば、老人保健施設入所前に、当該老人保健施設と特別の関係にある保険医療機関等において病状等の把握を目的とした各種検査を恒常的に行うことを認めているものではないことに留意するとともに、これらの入所者に関する記録は、基準第二七条の規定に基づき保存しておくこと。なお、「特別の関係」とは、開設者が同一の場合その他の「「特別の関係にある保険医療機関等」の取扱いについて」(平成一〇年三月一六日保険発第三二号・老健第四二号)に規定する関係をいうものであること(以下同じ。)。

(4) 同条第四項は、入所申込者の病状からみて、その病状が重篤なために老人保健施設での対応が困難であり、病院又は診療所での入院治療が必要であると認められる場合には、適切な病院又は診療所を紹介しなければならないとされたものであること。

(5) 同条第五項は、入所者について、その病状及び身体の状態に照らし、定期的に退所できるかどうかについて検討しなければならないこととされたものであること。医師、看護婦、相談指導員等の協議による判定は、入所後三月以内に行うこと。また、退所の判定は病状及び身体の状態に応じて適宜実施すべきものであるが、協議による判定は、少なくとも三月ごとには行うこと。これらの定期的な判定の経過及び結果は記録しておくとともに、基準第二七条の規定に基づきその記録は保存しておくこと。

(6) 同条第六項は、入所者の退所に際しての、本人又は家族等に対する家庭での介護方法等に関する適切な指導、病院又は診療所の医師に対する情報提供及び市町村等の在宅サービスの提供主体等との連携について規定したものであること。これに対しては、退所時情報提供、退所時指導、退所時老人訪問看護指示及び退所時在宅療養情報提供として施設療養費が設けられたものであること。また、退所が可能になった入所者の退所を円滑に行うために、相談指導員が中心となって、市町村、保健所、老人訪問看護ステーション及び民間の在宅サービスの提供主体等と十分連携を図ること。この場合、特に市町村に設けられるサービス調整チームとの連携について十分配慮すること。

(7) 同条第七項は、入退所の判定に当たっては、入所者に対し適切な施設療養を提供する体制をとるとともに、退所者についてのケアの継続を図るため医師、看護婦、相談指導員等の職員の協議により対応するよう努めることとされたものであること。入退所の判定については、その経過及び結果を記録しておくとともに、基準第二七条の規定に基づきその記録は保存しておくこと。

(8) 同条第八項は、通所申込者及び通所者についても第一項から第三項まで、第五項及び第七項の規定を準用することとしたものであること。

10 受給資格の確認

受給資格の確認は、入所又は通所の開始に当たって、入所又は通所申込者が老人医療の受給資格者であることを健康手帳の医療受給者証により確かめなければならない旨規定したものであること。

11 施設療養の記録の記載

入所又は通所の開始に際して、次のとおりその記録を健康手帳の医療に係るページに記載しなければならないこと。なお、健康手帳の医療に係るページの様式については、昭和六三年三月一九日厚生省告示第八五号(健康手帳の医療の受給資格を証するページ及び医療の記録に係るページの様式を定める件の一部を改正する件)により、その備考欄を改正し、この内容を規定したこと。

① 「医療機関名、所在地・電話」の欄には、老人保健施設の名称、所在地及び電話番号を記載すること。

② 「外来・入退院年月日」の欄には、通所開始年月日又は入退所年月日を記載すること。

12 文書の交付

老人保健施設は、入所者を保険医療機関等(医科に係るものに限る。)に通院させる場合には老人保健施設の入所者であることを示す文書を交付しなければならないこととされたこと。

13 通知

基準第一七条は、老人保健施設が、入所者等に対する施設療養費の支給が不適当であると認める場合であって市町村長に通知しなければならない事由を列記したものであること。

14 施設療養の取扱方針及び診療の方針

施設療養の取扱方針及び診療の方針の規定において、特に留意すべきことは次のとおりであること。

(1) 施設療養は、入所者等の心身の状態を踏まえ、妥当適切に行うこととされたこと。特に療養上の目標を設定し、漫然かつ画一的に行われることがないようにすること。なお、入所者については、計画的な看護・介護計画をたてていることが望ましいこと。

おって、療養上の目標についても、診療録等に記録しておくこと。

(2) 老人保健施設の医師は、常に入所者の病状や心身の状態の把握に努めること。特に、診療に当たっては的確な診断をもととし、入所者に対して必要な検査、投薬、処置、注射等を妥当適切に行うこと。

また痴呆性老人及び初老期痴呆患者(以下「痴呆性老人等」という。)の取扱いについては、次の各号に掲げる事項に特に留意すること。なお、老人保健施設への入所が予定されている者に対しては、当該老人保健施設と特別の関係にある保険医療機関等が入所日以降分の投薬を行うことは認められていないこと。

ア 老人保健施設は、痴呆性老人等に安定した療養環境を提供するため、痴呆性老人等を入所させる場合にあっては、痴呆性老人等の処遇に通じた職員が一貫して対応するよう努めなければならないこと。

イ 痴呆性老人等の心身機能の維持・回復の観点から、痴呆性老人等の入所に当たっては一律の分離処遇は行ってはならないこと。

ウ 問題行動が著しいため看護・介護に相当の困難を伴い、かつ一般の老人と混合して処遇することが他の入所者の療養生活に好ましくない影響を与える痴呆性老人等を入所させる場合には、痴呆専門棟に入所させることが適切であること。

15 必要な医療の提供が困難な場合の措置等

(1) 老人保健施設の入所者に対しては、施設の医師が必要な医療を行うこととなっているが、基準第二〇条第一項で規定しているとおり、入所者の病状からみて当該老人保健施設において自ら必要な医療を提供することが困難であると認めた場合は、協力病院その他の病院又は診療所への収容のための措置を講じたり、又は往診や通院により他の医師の対診を求める等により入所者の診療について適切な措置を講じなければならないとされたこと。

(2) 特に、入所者の病状が急変した場合などのように入院による治療を必要とする場合には、協力病院等の病院へ速やかに入院させることが必要であること。

(3) 老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)については、別紙2のとおりとなっているので留意すること。

16 機能訓練

老人保健施設の入所者に対する機能訓練は、医師、理学療法士又は作業療法士の指導のもとに計画的に行うこと。

特に、目標を設定し、定期的に評価を行うことにより、効果的な機能訓練が行えるようにすること。

なお、機能訓練は入所者一人について、少なくとも週二回程度行うこと。

17 看護及び介護

看護及び介護は、老人保健施設の重要な業務であるので、勤務時間割(ローテーション)表に添って、適切に行うこと。

18 食事等

基準第二三条は、入所者等に対する食事その他の生活サービスについて規定したものであり、その運用に当たっては、次の点に留意すること。

(1) 入所者等の食事は栄養面に配慮するとともに、その身体の状態、病状及び嗜好を考慮したものとすること。

(2) 調理は、あらかじめ作成された献立にしたがって行うとともに、その実施状況を明らかにしておくこと。

(3) 食事時間は適切なものとし、夕食時間は午後五時以降とすること。

(4) 入所者の清潔を保つため、入浴又は清拭については、一週間に二回以上行うこと。

(5) 入所者等のおむつの交換については、適切に行うこと。なお、おむつはできるだけとりはずすよう努力することが望ましいこと。

(6) レクリエーション等の行事については、あらかじめ計画表を作成し、入所者等が積極的に参加できるよう工夫すること。

19 老人保健施設デイ・ケア

(1) 基準第二四条は、老人保健施設が地域に開かれた施設として、在宅の寝たきり老人等やその家族等に対する支援機能を果たすため、積極的に通所の方法によるデイ・ケアを行う必要がある旨を規定したものであるが、その運用に当たっては、個々の通所者の状況、心身の状態等に応じたプログラムを作成し、このプログラムに従って必要な機能訓練等の施設療養、レクリエーション等を行い、定期的にその評価を行うとともに、併せて通所者の求めに応じ、食事・入浴サービスを提供するものとし、来所時から帰所時まで通所者一人一日当たり六時間(痴呆性老人ナイト・ケアを行う場合は午後四時以降の来所時から帰所時まで四時間、デイ・ケアと痴呆性老人ナイト・ケアを同一日に行う場合は通算して一〇時間)実施すること。なお、通所者がデイ・ケア又は痴呆性老人ナイト・ケア実施中に併設保険医療機関等を受診することはできないこと。

おって、通所者の希望により長時間老人保健施設デイ・ケアを実施して差し支えないこと。

(2) 基準第一三条第八項に規定しているとおり、老人保健施設の通所の対象者は、別紙1「老人保健施設の入所者の範囲」を準用するものであること。

(3) 当分の間、平成四年四月一日現在において次のいずれかに該当する老人保健施設については、基準第二条第一項、第四条及び第二四条の規定はなお従前の例によるものとすること。

ア 老人保健施設を開設する者(イにおいて「開設者」という。)が、法第四六条の六第一項に規定する都道府県知事の許可を受ける場合における当該許可に係る老人保健施設

イ 開設者が老人保健施設に老人福祉法(昭和三八年法律第一三三号)第二〇条の五に規定する特別養護老人ホームを併設し、当該特別養護老人ホームにおいて同法第五条の二第三項に規定する老人デイサービス事業を行う場合における当該老人保健施設

(4) (3)アに掲げる老人保健施設についても、老人保健施設デイ・ケアのためのデイ・ルームを設け、老人保健施設デイ・ケアを行うよう配慮しなければならないこと。

20 利用料

基準第二五条は、入所者等から支払われる利用料の範囲等について規定したものであり、その運用に当たっては、次の点に留意すること。

(1) 利用料は、食費、通所者に係る入浴費、長時間老人保健施設デイ・ケアの実施に伴い必要となる費用及び特別な療養室の提供に伴い必要となる費用並びにおむつ代、理美容代その他の日常生活に要する費用の実費相当額の範囲内とし、管理協力費、共益費等の曖昧な名目での利用料の徴収は行ってはならないこと。

(2) 利用料が徴収できる「特別な療養室」は、個室又は二人室に限るものとすること。なお、特別な療養室の割合については、おおむね五割を上限として適切な範囲となるよう指導されたいこと。

21 掲示

基準第二六条は、入所者等に対し適切な施設療養その他のサービスを提供するため、入所者等の守るべき規律、職員の勤務体制、協力病院及び利用料の明細等を老人保健施設内の見やすい場所に掲示し周知させなければならないこととしたものであること。

22 記録の整備

基準第二七条は、老人保健施設の日々の運営及び入所者等に対する施設療養その他のサービスの提供等に関する事項を記録し、常時当該老人保健施設の状況を適正に把握するため、少なくとも次に掲げる記録を備えておかなければならないものとしたものであること。

(1) 管理に関する記録

ア 事業日誌

イ 職員の勤務状況、給与、研修等に関する記録

ウ 月間及び年間の事業計画表及び事業実施状況表

(2) 入退所の判定に関する記録

ア 入退所判定の経過及び結果

イ 基準第一三条第五項に基づく定期的な判定の経過及び結果

(3) 施設療養その他のサービスに関する記録

ア 入所者等の台帳(病歴、生活歴、家族の状況等を記録したもの)

イ 入所者等のケース記録

ウ 診療、看護、介護、機能訓練等の日誌

エ 診療録等診療に関する記録

オ 献立及び食事に関する記録

(4) 会計経理に関する記録

(5) 施設及び構造設備に関する記録

23 老人保健施設報告

(1) 老人保健施設はその入退所の状況及び職員の状況について、報告しなければならないとされたこと。

(2) 具体的な記載方法等については、別に通知するところによること。

第六 関係主管部局との協議

病院等と併設する場合、病院等の施設と共用する場合、病床転換の場合等については、都道府県における開設許可の事前審査に際して、関係主管部局と十分協議のうえ、取り扱うこと。

別紙1

別紙2

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別表

老人保健施設入所者に係る診療報酬請求の具体的取扱い

算定できるものについては「〇」で、算定できないものについては「×」で示す。

項目

小項目

併設保険医療機関

その他

基本診療料

初診料再診料

×

×

特掲診療料

 

 

 

指導管理等

寝たきり老人退院時共同指導料

×

老人診療情報提供料(B)

×

その他のもの

×

×

在宅医療

往診料

×

その他のもの

×

×

検査

厚生大臣が定めるもの

×

×

その他のもの

画像診断

 

投薬

抗悪性腫瘍剤

その他のもの

×

×

注射

 

×

×

リハビリテーション

厚生大臣が定めるもの

×

×

その他のもの

精神科専門療法

 

×

×

処置

厚生大臣が定めるもの

×

×

その他のもの

手術

厚生大臣が定めるもの

×

×

その他のもの

麻酔

厚生大臣が定めるもの

×

×

その他のもの

放射線治療

 

(注)1 厚生大臣が定めるものは、昭和63年3月19日厚生省告示第78号(厚生大臣が定める検査、リハビリテーション、処置、手術及び麻酔)により規定されているものである。

2 「併設保険医療機関」とは、「併設保険医療機関の取扱いについて」(平成10年3月16日老健第49号)に規定する老人保健施設と同一敷地内にある病院又は診療所その他これに準ずる病院又は診療所をいう。

別記様式