添付一覧
○老人医療の受給者に係る診療報酬明細書の点検調査等について
(昭和五八年四月二五日)
(衛老計第三二号)
(各都道府県老人保健主管部(局)長あて公衆衛生局老人保健部計画課長通知)
標記については、昭和五七年一○月八日衛老第三号厚生省公衆衛生局老人保健部長通知「老人保健法における医療について」により指示されたところであるが、その積極的かつ的確な実施により医療費の適正な支出を確保するため、診療報酬明細書の点検調査等事務処理要領を次のとおり定めたので、管下市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対する格段の指導を願いたい。
なお、この要領は、標準的な事務処理の要領を定めたものであるので、点検調査等の実施に当たつては、適切な実施計画を策定するとともに、この要領に準拠して市町村の実情に応じ創意工夫を加えること等により効率的な実施に努めるよう、併せて格段の指導を願いたい。
また、要領の第六により、市町村から都道府県老人保健主管課に連絡があつた場合においては、都道府県保険課、国民健康保険課等保険医療機関等に対する指導監督主管部(局)への通報等適切な措置を講ずるよう配意願いたい。
診療報酬明細書の点検調査等事務処理要領
第一 点検調査対象診療報酬明細書等及び点検調査時期
老人医療の受給者に係る診療報酬明細書及び調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)は、原則として、毎月全件について点検を行い、必要に応じ調査すること。
なお、レセプトは、原則として、都道府県社会保険診療報酬支払基金等から市町村に提出される前に、老人医療の受給者が加入する医療保険各法の保険者(以下「保険者」という。)においても点検されることとなつているが、市町村(老人保健担当課)においては、保険者における点検の有無にかかわらず点検、調査を実施するものであること。
第二 診療(調剤)報酬請求内訳書等とレセプトの照合
都道府県社会保険診療報酬支払基金又は国鉄共済組合の各支部から診療(調剤)報酬請求内訳書、連名簿及びレセプトの提出があつたとき並びに都道府県国民健康保険団体連合会から診療(調剤)報酬請求内訳書、老人医療費請求受給者別一覧表及びレセプトの提出があつたときは、その都度、それぞれ必要な照合を行うこと。
なお、符合しないときは、都道府県社会保険診療報酬支払基金、国鉄共済組合の各支部又は都道府県国民健康保険団体連合会(以下「審査支払機関」という。)に連絡し、必要な措置を講ずること。
第三 レセプトの点検及び抽出
レセプトは、次により点検し、必要なものを抽出すること。
一 受給者資格等の点検
受給者台帳との照合等により、次のいずれかに該当するものを抽出すること
(一) 市町村番号の記載もれ又は他の市町村の市町村番号のもの
(二) 受給者番号の記載もれ又は該当する者のいない受給者番号のもの
(三) 保険者番号、被保険者証、被保険者手帳の記号、番号の記載もれ又は該当する者のいない記号、番号のもの
(四) 氏名の記載もれ又は該当する者のいない氏名のもの
(五) 受給者資格喪失後のもの
(六) その他受給者資格の有無について疑義があるもの
二 給付発生原因の点検
関係資料との照合等により、次のいずれかに該当するもの又はその疑いがあるものを抽出すること。
(一) 給付制限に係るもの
ア 法第三七条(自己の故意の犯罪行為又は故意の疾病、負傷)
イ 法第三八条(闘争、泥酔又は著しい不行跡による疾病、負傷)
ウ 法第三九条(医療に関する指示に従わないとき)
エ 法第四○条(法第四三条の規定による求めに応ぜず又は答弁を拒んだとき)
(二) 法第四一条(第三者行為)に係るもの
(三) 法第四二条(不正利得等)に係るもの
(四) その他(不当利得等)に係るもの
三 重複請求の点検
次のいずれかに該当するもの等重複請求のもの又はその疑いがあるものを抽出すること。
(一) 同一保険医療機関等から、同一人について同月分のレセプトが二枚以上重複して請求されているもの。(ただし、総合病院の入院外診療において各診療科ごとにレセプトを作成できる場合、歯科診療及び歯科診療以外の診療を併せて行う保険医療機関等において歯科及び歯科以外の診療科ごとにレセプトを作成できる場合、入院及び入院外ごとにレセプトを作成できる場合は除く。)
(二) 総合病院における同一の傷病について、各診療科ごとに初診時基本診療料が算定されているもの、入院中の患者が別の傷病で他の診療科で診療を受けた場合に初診時基本診療料、再診時基本診療料が算定されているもの等診療報酬が重複して請求されているもの。
四 重複受診の点検
同一人について、二以上の保険医療機関等からの同一又は類似の疾病による同月分のレセプトがあるもの、同一人について多数の保険医療機関等からの同月分のレセプトがあるもの等について、療養上の指導が必要であると考えられるものを抽出すること。
五 診療報酬明細書と調剤報酬明細書の突合
同一人について、同一月に診療報酬の請求と調剤報酬の請求があるもので、調剤報酬の請求に見合う診療報酬(処方せん料)が算定されていないもの、診療月と調剤月との間に時期的な隔たりがあるもの等相互の関係において誤り又は疑義があるものを抽出すること。
六 診療報酬等請求点数等の点検
「老人保健法の規定による医療に要する費用の額の算定に関する基準」(昭和五八年一月厚生省告示第一五号)及びこの基準において準用する「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(昭和三三年六月厚生省告示第一七七号)、「使用薬剤の購入価格(薬価基準)」(昭和五六年五月厚生省告示第七八号)等に基づき、診療報酬及び調剤報酬の算定方法、算定点数について点検し、次のいずれかに該当するものを抽出すること。
(一) 診療報酬又は調剤報酬の算定方法、算定点数に誤り又は疑義があるもの。
(二) 縦計又は横計に誤りがあるもの。
(三) 一部負担金額の誤り又は疑義のあるもの。
七 縦覧点検
保険医療機関等からの請求遅れのもの等も一括して、概ね三カ月分以上のレセプト及び医療費支給分を受給者別に分類し、三及び四に準じて点検し、重複請求、重複受診のもの又はその疑いがあるものを抽出すること。
第四 抽出したレセプトの調査
第三による点検の結果抽出したレセプトは、次により調査すること。
一 受給者資格関係
第三の一により抽出したレセプトについては、保険者又は受給者に対する照会等により確認すること。
二 給付発生原因関係
第三の二により抽出したレセプトについては、保険者、受給者又は保険医療機関等に対する照会等によりその事実関係を確認すること。
なお、第三者行為による被害の届出を受けているもの又はその疑いがあるものについては、保険医療機関等及びその他の関係機関との連携を密にしてその把握に努めるとともに、受給者等に対し照会をし、又は必要に応じ実地調査を行う等によりその実情を確認し、損害賠償請求権の有無を明確にすること。
三 診療報酬等請求点数関係
第三の三、五、六及び七により診療報酬又は調剤報酬の算定方法及び算定点数に関して抽出したレセプトについては、その内容を調査、確認の上、過誤調整扱いにするものを明確にすること。
四 重複受診関係
第三の四及び七により重複受診について抽出したレセプトに関しては、受給者等に対する照会等によりその実情を把握し、受給者に対する指導等の必要性を明確にすること。
第五 事後処理
第四の調査を終えたレセプトは、次により処理すること。
一 過誤調整を行うもの
(一) 誤り又は疑義が確認されたもの(保険者から過誤調整の事由がある旨の連絡があつたものを含む。以下同じ。)で、その事由が保険医療機関等の責に帰すべきものについては、「審査支払機関に対する診療報酬明細書等に係る過誤調整の依頼について」(昭和五八年四月二五日衛老計第三三号本職通知)に定めるところにより、審査支払機関に対して過誤の調整を依頼すること。
(二) 過誤調整を依頼するレセプトについては、必要に応じその写を保管する等により、事後の経過を明確にしておくこと。
二 受給者等からの徴収金の徴収等を行うもの
(一) 不正又は不当の事由が受給者等の責に帰すべきものについては、法第四二条第一項及び第二項の規定に基づく徴収金の徴収又は当該医療に関し支払つた価額の返還に関する事務を行うこと。
(二) 偽りその他不正の行為により医療に関する費用の支払を受けた保険医療機関等については、法第四二条第三項の規定に基づく返還金及び加算金に関する事務を行うこと。
三 第三者行為にかかる求償を行うもの
(一) 交通事故の場合
損害賠償請求権があるものについては「老人保健の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務について」(昭和五八年一月二四日衛老計第六号本職通知)により求償に関する事務を行うこと。
(二) その他の場合
加害者等に対する求償に関する事務を行うこと。
四 療養上の指導を行うもの
第四の四により、療養上の指導が必要であると認められたも
のについては所要の措置を講ずること。
第六 都道府県に対する連絡
レセプトの点検、調査の結果、特に保険医療機関等について調査確認が必要であると思料される場合には、都道府県老人保健主管課に連絡すること。
第七 資料の整備活用
レセプトの点検、調査の結果得られた資料については、法による保健事業の効果的な運営等に活用するように努めること。
第八 レセプトの整理及び保存
レセプトは、概ね一年分程度を受給者別に分類し、必要に応じ容易に取り出して使用することができるようにしておくこと。
なお、レセプトの保存期間は、五年とすること。