添付一覧
○老人保健法等の一部を改正する法律の施行について
(平成三年一〇月四日)
(厚生省発老第六〇号)
(各都道府県知事、各指定都市市長あて厚生事務次官通知)
老人保健法等の一部を改正する法律(平成三年法律第八九号)は、本日公布されたところであるが、改正の趣旨及び内容は次のとおりであるので、十分御了知の上、管下市町村、関係団体、関係機関等に周知徹底を図るとともに、適切な指導を行い、その実施に遺憾なきを期されたく、命により通知する。
第一 改正の基本的考え方
本格的な高齢社会に向けて、国民が健やかで安心して老後の生活を送ることができるよう、老人の保健、医療及び福祉にわたる総合的な施策の充実を図っていくことが重要な課題となっており、政府としては「高齢者保健福祉推進十か年戦略」の策定をはじめとして様々な施策の推進を図っているところである。
今般の改正は、このような状況を踏まえ、老人保健の分野において適切な看護及び介護に係るサービスを提供するとともに、老人人口の増加に伴い老人医療費の増大が見込まれる中で、国や地方も、老人自身も、制度を支える現役世代もその費用の負担を適切に分かち合い、制度の長期的安定を図る観点から、①老人訪問看護制度の創設、②介護に着目した公費負担割合の引上げ、③一部負担金制度の見直し等を行うものである。
第二 主要な改正事項の内容等
Ⅰ 老人保健法関係
一 基本的理念に関する事項
国民が、年齢、心身の状況等に応じ、老後における健康の保持を図るための適切な保健サービスを受ける機会を与えられる場として、職域又は地域と並び家庭を位置付けたこと。
二 老人保健審議会に関する事項
老人保健審議会は、厚生大臣の諮問に応じ、老人保健に関する重要事項として、この法律の規定による一部負担金及び拠出金並びに老人保健施設に関する事項を調査審議することが明示されたこと。
三 一部負担金の額の改定
老人と現役世代との負担の均衡、医療機関以外の施設や在宅の老人との負担の均衡、前回改定以来四年以上経過していること、高齢者の生活実態等を勘案し、定額負担制を維持しつつ必要な受診を抑制しない範囲で一部負担金の額を改定することとされたこと。その概要は以下のとおりであること。
(一) 一部負担金の額を次のように改めること。
|
平成三年度及び四年度 |
平成五年度及び六年度 |
外来 |
一月 九○○円 |
一月 一、○○○円 |
入院 |
一日 六○○円 |
一日 七○○円 |
なお、医療を受ける者が老齢福祉年金受給者であって、その属する世帯の主たる生計維持者が市町村民税非課税等であるものである場合の入院一部負担金の額は、現行どおり二か月を限度として一日につき三○○円であること。
(二) 将来にわたり一部負担の水準を維持して、老人と現役世代との間の負担の均衡が確保されるよう、平成七年度以降の一部負担金の額については、総務庁において作成する年平均の全国消費者物価指数の伸び率を指標として、(一)(なお書を含む。)の一部負担金の額を改定する措置が法定されたこと。
四 老人訪問看護制度の創設
心身の機能の低下した状態にある在宅の老人に対する総合的なケアの体制を整備するため、在宅の老人が都道府県知事の指定する老人訪問看護事業を行う者から看護サービスを受けたときには、老人訪問看護療養費を支給する制度を導入することとされたこと。その概要は以下のとおりであること。
(一) 老人訪問看護事業の定義
疾病、負傷等により、寝たきりの状態等にある老人(主治の医師が必要と認めたものに限る。)に対し、その者の家庭において看護婦等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助(保険医療機関等、特定承認保険医療機関等又は老人保健施設により行われるものを除く。以下「老人訪問看護」という。)を行う事業をいうものであること。
(二) 老人訪問看護療養費の支給
ア 市町村長は、老人医療受給対象者が都道府県知事の指定する者(以下「指定老人訪問看護事業者」という。)から当該指定に係る事業所により行われる老人訪問看護(以下「指定老人訪問看護」という。)を受けたときは、老人訪問看護療養費を支給すること。
イ 老人訪問看護療養費の額は、当該指定老人訪問看護につき平均老人訪問看護費用額(指定老人訪問看護に要する平均的な費用の額をいう。)を勘案して厚生大臣が定める基準により算定した費用の額から、指定老人訪問看護の利用の状況、外来一部負担金の額その他の事情を勘案して厚生大臣が定める額を控除した額とすること。
また、指定老人訪問看護を受けた老人は、指定老人訪問看護事業者に対し、当該厚生大臣が定める額(利用料)を支払うものとすること。
ウ イの基準を定めようとするときは、あらかじめ中央社会保険医療協議会の意見を聴くものとすること。
(三) 指定老人訪問看護事業者の指定
ア (二)のアの指定は、老人訪問看護事業を行う者の申請により、事業所ごとに行うこと。
イ 都道府県知事は、当該申請者が地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生大臣が定める者でないとき、当該申請に係る事業所の従業者が(五)のアの厚生省令で定める基準等を満たしていないとき又は申請者が(五)のイの運営に関する基準に従って適正な老人訪問看護事業の運営ができないと認められるときには、指定をしてはならないこと。
(四) 指定老人訪問看護事業者の責務
指定老人訪問看護事業者は、(五)のイの運営に関する基準に従い、老人の心身の状況等に応じて自ら適切な指定老人訪問看護を提供しなければならないこと。
(五) 事業の基準
ア 指定老人訪問看護事業者は、事業所ごとに、厚生省令で定める基準に従い厚生省令で定める員数の従業者を有しなければならないこと。
イ アのほか、指定老人訪問看護の事業の運営に関する基準は、厚生大臣が定めること。
ウ 厚生大臣が、アの厚生省令及びイの運営に関する基準を定めようとするときは、あらかじめ老人保健審議会(ただし、イの運営に関する基準のうち指定老人訪問看護の取扱いに関する部分については中央社会保険医療協議会とする。)の意見を聴かなければならないこと。
五 費用に関する事項
今後の老人問題の中心的課題である介護の重要性に鑑み、介護に着目して公費負担割合を拡大することとし、次に掲げる費用については、公費負担割合を現行の三割から五割に引き上げることとされたこと。
① 老人保健施設療養費
② 看護・介護体制の整った病院(特例許可老人病院のうち入院医療管理料、老人特例一類及び二類並びに一般基準看護の承認を受けたもの)に係る老人入院医療費
③ 老人訪問看護療養費
④ 痴呆性老人の看護・介護体制の整った病院(特例許可を受けた精神病院のうち痴呆患者収容治療料の承認を受けたもの)に係る老人入院医療費
なお、その具体的な費用負担の方式の概要は、以下のとおりであること。
(一) 医療等に要する費用の支弁及び負担
ア 市町村は、医療、特定療養費の支給、老人保健施設療養費の支給及び老人訪問看護療養費の支給(以下「医療等」という。)に要する費用及びこれらの事務の執行に要する費用を支弁すること。
イ 次に掲げるものについては、社会保険診療報酬支払基金が市町村に対して交付する交付金をもつて充てること。
① 医療等(老人医療受給対象者が特例許可老人病院等の病床のうち老人の心身の特性に応じた適切な看護が行われるもの(痴呆の状態にある老人の心身の特性に応じた適切な看護が行われるものを含む。)として政令で定めるものについて受ける入院医療等、老人保健施設療養費の支給及び老人訪問看護療養費の支給(以下「老人保健施設療養費等」という。)を除く。)に要する費用の一○分の七
② 老人保健施設療養費等に要する費用の一二分の六
③ 医療等に関する審査及び支払の事務に要する費用
ウ 国は、老人保健施設療養費等を除く医療等に要する費用についてはその一○分の二を、老人保健施設療養費等に要する費用についてはその一二分の四を負担すること。
エ 都道府県は、老人保健施設療養費等を除く医療等に要する費用についてはその一○分の○、五を、老人保健施設療養費等に要する費用についてはその一二分の一を負担すること。
(二) 保険者の医療費拠出金
ア 概算医療費拠出金の額は、次に掲げる額の合計額とされたこと。
(1) 調整後老人医療費見込額(各保険者ごとの老人医療費見込額に概算加入者調整率を乗じて得た額)に一から老人保健施設療養費等概算率(当該年度の老人保健施設療養費等の見込額の総額を当該年度の老人医療費見込額の総額で除して得た率とする。以下同じ。)を控除して得た率を乗じて得た額の一○分の七
(2) 調整後老人医療費見込額に老人保健施設療養費等概算率を乗じて得た額の一二分の六
イ 確定医療費拠出金の額について、アと同様の改正が行われたこと。
六 研究開発の推進
国は、老人の心身の特性に応じた看護その他の医療、機能訓練等の研究開発及び介護用具等の研究開発の推進に努めなければならないこととされたこと。
七 老人保健施設に関する事項
(一) 老人保健施設に係る利用者の拡大
当分の間、老人以外の者であって初老期痴呆により痴呆の状態にあるものも老人保健施設を利用できることとされたこと。
なお、その際の費用については、医療保険各法の規定により療養費が支給されること。
(二) 老人保健施設の広告制限
老人保健施設の広告制限に関し、所要の規定の整備が行われたこと。
八 その他の事項
その他次の趣旨の規定が設けられたこと。
(一) 三の(二)の規定の適用に当たつて、一部負担金の額が老人の負担能力等を考慮して過大な負担になるおそれが生ずる場合においては、一部負担金の額の改定措置の在り方について総合的に検討が加えられ、その結果に基づき、必要な措置が講ぜられるべきものとされたこと。
また、老人保健制度については、その目的を踏まえ、この法律の施行後の老人保健制度の実施状況、老人医療費の動向、社会経済情勢の推移等を勘案し、給付及び負担の在り方について検討が加えられるべきものとされたこと。
(二) 政府は、老人の心身の特性に応じた適切な医療が行われるよう、医療その他のサービスの質に関する評価方法の研究に努めるとともに、医療に要する費用の額の包括的な算定等当該費用の額の算定の在り方について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされたこと。
(三) 政府は、病院等において行われる付添看護等に関し、老人がその心身の特性に応じこれらの看護とその他の医療を一体的な管理の下に適切に受けることができるよう、必要な施策の推進に努めるものとされたこと。
Ⅱ 老人福祉法関係
国は、老人の心身の特性に応じた介護方法及び介護用具等の研究開発の推進に努めなければならないこととされたこと。
Ⅲ 健康保険法等関係
被保険者等(老人保健法の規定による医療を受けることができる者を除く。)であって初老期痴呆により痴呆の状態にあるものが、老人保健施設について施設療養を受けた場合の療養費の額は、老人保健施設療養費の額を標準として定めることとすること。
船員保険法、国民健康保険法、国家公務員等共済組合法、地方公務員等共済組合法及び私立学校教職員共済組合法においても同様の規定が設けられたこと。
Ⅳ 施行期日
この法律は、平成四年一月一日から施行することとされたこと。ただし、老人保健施設の広告制限に関する部分等については公布の日から、また、老人訪問看護制度並びに公費負担割合の拡大のうち老人訪問看護療養費の支給及び老人性痴呆疾患患者に対する介護に重点を置いた療養に係る部分については平成四年四月一日から施行することとされたこと。
