アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○行政不服審査法の施行について

(昭和三七年一〇月二二日)

(発総五八号

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

行政不服審査法は、昭和三七年九月一五日法律第一六○号をもつて公布され、同年一○月一日から施行されたところであり、行政不服審査法の施行に伴う関係法令の整理等を行なう行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(昭和三七年九月一五日法律第一六一号)、行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律の施行に伴う関係政令の整理に関する政令(昭和三七年九月二九日政令第三九一号)及び優生保護法施行規則等の一部を改正する省令(昭和三七年一○月一日厚生省令第四七号)がそれぞれ本年一○月一日から施行されたところである。

行政不服審査法は、訴願法その他の法律によつて運用されてきた不服申立制度が幾多の不備かつ不統一な面を有していたことにかんがみ、その整備と統一を図り、不服申立てに関する一般法として国民の権利利益の救済と行政の適正な運営を確保することを目的として制定されたものであるが、行政不服審査法及びこれに伴う関係法令の整理に関する法令につき、厚生行政に関連して留意すべき主たる事項は次のとおりであるので、十分御了知のうえ、その運用に遺憾なきを期せられたい。

一 不服申立事項について

(一) 行政不服審査法(以下「審査法」という。)は、訴願法の列記主義を改め、一般概括主義を採用し、行政庁の処分に対して広く一般的に不服申立てのみちを開いたこと。この不服申立ての対象となる処分には、人の収容、物の留置等その内容が継続的性質を有する事実行為が含まれるものであるが、さらに行政庁の不作為についての不服申立てをすることができることとしたこと。なお、この一般概括主義の採用に伴い、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(以下「整理法」という。)により、関係法律における不服申立てをすることができる旨の規定は、削除されたこと。

(二) 審査法は、一般概括主義の例外として、第四条各号に不服申立てをすることができない処分を列挙しているが、これらは、慎重な手続で行なわれた処分であり、再考の余地がないもの、他の救済手続によつて処理することが適当であるもの又はその性質上審査法の審査手続によつて処理することが適当でないもの等の性質を有するものであること。また、審査法第四条は、同条各号に掲げる処分以外のものであつても、他の法律において不服申立てをすることができない処分を定めることを認めており、厚生省所有管法律について、同条各号に掲げる処分と同様の性質を有する処分として、食品衛生法第一四条第一項の規定による製品検査の結果、薬事法第四三条第一項の規定による検定の結果等の処分が不服申立てをすることができないものとして整理法により措置されたこと。

二 不服申立ての種類及び不服申立てをすべき行政庁について

審査法は、不服申立ての種類を、審査請求、異議申立て及び再審査請求の三種類のものに法定したこと。

(一) 審査請求

審査請求は、行政庁の処分又は不作為について処分庁以外の行政庁又は不作為に係る行政庁以外の行政庁に対してする不服申立てであり、不服申立てをすべき行政庁は、原則として処分庁又は不作為に係る行政庁の直近上級行政庁であること。ただし、処分についての審査請求をなすべき行政庁につき、関係法令などの特例が定められ、身体障害者福祉法、生活保護法、精神薄弱者福祉法、児童福祉法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法による事務であつて市町村長の権限に属する事務を市町村長がその管理に属する福祉事務所長に委任した場合における当該事務に関する処分についての審査請求は、都道府県知事に対してすることとしたこと。

また、健康保険法等による被保険者の資格、標準報酬若しくは保険給付に関する処分又は保険料その他の徴収金の賦課徴収に関する処分等については、従来どおり社会保険審査官又は社会保険審査会に対して審査請求をすることができることとし、国民健康保険法による保険給付に関する処分等についても、従来どおり国民健康保険審査会に対して審査請求をすることができることとしたこと。なお、国民年金法による給付に関する処分等についての審査請求も、従来どおり社会保険審査官に対してなされることとされているが、不服申立ての対象となる処分に新たに被保険者の資格に関する処分、保険料の追納等に関する処分も加えたこと。

(二) 異議申立て

異議申立ては、行政庁の処分又は不作為について、処分庁又は不作為に係る行政庁に対してする不服申立てであり、処分庁に上級行政庁がないとき及び処分庁が主任の大臣又は外局若しくはこれに置かれる庁の長であるときに認められるほか、審査請求をすることができる処分であつても法律に異議申立てをすることができる旨の特別の定めのある場合には認められており、この場合には原則として、審査請求は、異議申立てについての決定を経た後でなければすることができないこととされていること。

審査請求をすることができる処分であつて、この特定の定めにより、異議申立てもすることができるとされたものは、児童扶養手当の支給に関する処分であること。

(三) 再審査請求

再審査請求は、審査請求の裁決を経た後に行なわれる不服申立てであり、法律又は条例により再審査請求をすることができる旨の定めがあるとき及び処分についての権限委任が行なわれている場合に限り認められるものであるが、厚生省所管法律の相当広範囲にわたつて、整理法により市町村長等の処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、厚生大臣に対して再審査請求をすることができることと規定されたこと。

三 不服申立ての手続について

(一) 審査法は、不服申立期間について、その統一を図り、審査請求期間は、同法第一四条に、異議申立期間は同法第四五条に、再審査請求期間は同法第五三条にそれぞれ規定しているが、この不服申立期間についても、清掃法第七条第二項戦傷病者戦没者遺族等援護法第四○条第一項等において各制度の固有の事情を考慮して特例が定められていること。

(二) 審査法は、不服申立ての手続に関して同法第九条から第五六条までに詳細な規定を設け、すべての不服申立ての手続は、一般法としての同法に規定するところによることとなり、この結果これまでそれぞれの法令において個別に規定されていた手続に関する規定は、整理法等により削除されたこと。なお、社会保険審査官及び社会保険審査会法の手続規定については、整理法により、大巾な整備が行なわれ、健康保険法等に関し、社会保険審査官又は社会保険審査会が取り扱う審査請求及び再審査請求については、行政不服審査法の手続規定の大部分が適用されないこととされていること。

四 教示

審査法は、国民が行政不服審査制度を十分に活用できることを担保するため、教示制度を採用し、行政庁は、不服申立てをすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を教示しなければならない旨を規定したこと。

優生保護法施行規則等の一部を改正する省令により、厚生省令において現に処分の通知書の様式を定められているものについては、当該様式中の教示に関する文言が整備されたが、処分の通知書の様式の定められていないものについても教示制度の設けられた趣旨にかんがみ、当該処分が書面でなされる場合においては、当該書面に附記する等により、原則として書面で行なうこととされたいこと。