添付一覧
○指定都市の事務処理の特例に関する件
(昭和三一年八月二四日)
(自乙行発第二五号)
(発総第二七号・発書第七二号神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県各知事及び各指定都市市長あて自治庁次長・厚生・建設事務次官連名通達)
今般地方自治法の一部を改正する法律(昭和三一年法律第一四七号。以下「改正法」という。)及び地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律(昭和三一年法律第一四八号)が次に掲げる政令とともに昭和三一年九月一日から施行されることとなり、大阪市、名古屋市、京都市、横浜市及び神戸市については、指定都市として、行政事務の処理に関し特例が設けられることとなつた。
一 地方自治法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和三一年政令第二五二号)
二 地方自治法施行令の一部を改正する政令(昭和三一年政令第二五三号)(以下「改正令」という。)
三 地方自治法第二五二条の一九第一項の指定都市を指定する政令(昭和三一年政令第二五四号)
四 地方自治法の一部を改正する法律及び地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律の施行に伴う関係政令等の整理に関する政令(昭和三一年政令第二六五号)
大都市に関する制度のあり方については、従来種々の論議が展開されてきたが、特に地方自治法制定後においては、特別市設置の問題に論議が集中されてきたところである。しかしながら、現行府県制度の下において特別市を設置することは適当とは認め難く、差し当つては大都市に対し事務配分を行うことになり関係府県との間の調整を図り、大都市行政の合理的且つ能率的処理を確保し、住民の福祉の増進を図ることが最も適切な措置であるとの見地に立ち、今回、同趣旨の地方制度調査会の答申に則り、社会福祉、保健衛生、都市計画、建築等市民生活に直結した行政事務を大都市に移譲し、併せて行政監督に関する特例を設けるとともに、特別市に関する規定を削除することとされた。右の措置により懸案の大都市問題については、現行府県制度の下においては、今般の措置をもつて一応の解決をみたものである。
事務移譲に当つては、左記事項に御留意の上、その準備に遺憾なきを期し、事務引継が円滑に行われるよう格別の配意をするとともに、改正法の趣旨に則り、今後の行政運営の全般にわたつて従来の行きがかりに囚われず、相互の連絡協調について特に意を用い、地方自治の円滑なる運営と関係住民の福祉の向上を期せられたい。
第一 総括的事項
一 政令で指定する人口五〇万以上の市(以下「指定都市」という。)又は指定都市の市長その他の機関は、左に掲げる事務の中都道府県又は都道府県知事その他の都道府県の機関が法律又はこれに基く政令の定めるところにより処理し又は管理し及び執行することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令の定めるところにより、処理し又は管理し及び執行することができるものとされたこと(地方自治法(以下第一総括的事項中「法」という。)二五二の一九ノ、児童福祉法五九の四、民生委員法二九、身体障害者福祉法四三の三、生活保護法八四の二、母子福祉資金の貸付等に関する法律一八、伝染病予防法二八ノ二、寄生虫病予防法七ノ二、食品衛生法二九の三、墓地、埋葬等に関する法律一九の三、興行場法七の二、旅館業法九の二、公衆浴場法七の二、結核予防法六九、土地区画整理法一三六の二、屋外広告物法八の二、建築基準法九七の二)。
一 児童福祉に関する事務
二 民生委員に関する事務
三 身体障害者の福祉に関する事務
四 生活保護に関する事務
五 行旅病人及び行旅死亡人の取扱に関する事務
六 母子福祉資金の貸付等に関する事務
七 伝染病の予防に関する事務
八 寄生虫病の予防に関する事務
九 食品衛生に関する事務
一〇 墓地、埋葬等の規制に関する事務
一一 興行場、旅館及び公衆浴場の営業の規制に関する事務
一二 結核予防に関する事務
一三 都市計画に関する事務
一四 土地区画整理事業に関する事務
一五 屋外広告物の規制に関する事務
一六 建築基準行政の実施に関する事務
指定都市又は指定都市の市長その他の機関が処理し又は管理し及び執行すべき事務については、地方自治法施行令(以下第一総括的事項中「令」という。)並びに関係政令及び勅令の定めるところによるものであること(地方自治法施行令一七四の二六1から5まで、一七四の二七、一七四の二八1から7まで、一七四の二九1から4まで、一七四の三〇、一七四の三一、一七四の三二1から6まで及び8、一七四の三三1から3まで、一七四の三四から一七四の三六まで、一七四の三七1から4まで、一七四の三八から一七四の四一まで、児童福祉法施行令一八の二、民生委員法施行令一二、身体障害者福祉法施行令一一、生活保護法施行令一〇の二、行旅病人死亡人等の引取及び費用弁償に関する件一、母子福祉資金の貸付等に関する法律施行令一九、伝染病予防法施行令一三、食品衛生法施行令九、結核予防法施行令九の二、都市計画法施行令三一、土地区画整理法施行令七七、建築基準法施行令一四四)。指定都市又は指定都市の市長その他の機関は、移譲された事務を法令に従い自らの責任において合理的且つ能率的に処理すべきことはいうまでもないが、その事務の処理が都道府県内の他の区域における同種の事務処理との間にいちじるしい不均衡を生ずることのないようその調和について特に留意されたいこと。これがため、指定都市及び都道府県相互間における常時の密接な連絡協力体勢の樹立については、従前以上格段の努力が要請させられること。なお、指定都市の市長が国の機関として処理する行政事務については、地方自治法及び関係法令の規定により従前通り都道府県知事及び主務大臣の指揮監督を受けるものであること。
二 指定都市又は指定都市の市長その他の機関がその事務を処理し又は管理し及び執行するに当つて、法律又はこれに基く政令の定めるところにより都道府県知事の許可、認可、承認その他これらに類する処分を要し、又はこれらの事務を処理若しくは管理及び執行について都道府県知事の改善、停止、制限、禁止その他これらに類する指示その他の命令を受けるものとされている事項で政令で定めるものについては、政令の定めるところにより、これらの許可、認可等の処分を要せず、若しくはこれらの指示その他の命令に関する法令の規定を適用せず、又は都道府県知事の許可、認可等の処分若しくは指示その他の命令に代えて、主務大臣の許可、認可等の処分を要するものとし、若しくは主務大臣の指示その他の命令を受けるものとされたこと(法二五二の一九2)。これに伴い、五大都市行政監督に関する法律は廃止されたこと(改正法附則2)。
政令においては、原則として、指定都市又は指定都市の市長その他の機関に移譲されることとなる事務に関するもの及びこれに類するもの並びに従来五大都市行政監督特例により定められていたものについて、特例が定められたものであること(令一七四の二六6、一七四の二八8、一七四の二九5、一七四の三二7及び8、一七四の三三4、一七四の三七5、一七四の四二)。本項の規定による行政監督の特例は、改正法施行と同時に適用されるものであること。なお、報告、通報等所謂非権力的関与と称されるもの及び国の機関委任事務についての一般的指揮監督権については、従前どおりであること。
三 改正法の施行により指定都市の区域内についてもつぱら指定都市又は指定都市の市長その他の機関のみが処理し、又は管理し、及び執行することとなる事務については、指定都市又は指定都市の市長その他の機関は、昭和三一年一一月一日から当該事務を処理し、又は管理し、及び執行するものとされ、これがため、当該指定都市を包括する都道府県又は当該都道府県知事その他の当該都道府県の機関は、当該事務に系る書類、帳簿その他の物件で引継を必要とするものを同日までに指定都市又は指定都市の市長その他の機関に引き継がなければならないものとされたこと(改正法附則9改正令附則3)。なお、費用負担に関する改正規定も一一月一日から適用されるものであること。事務の引継に当つては、当該事務に係る書類、帳簿の外、当該事務の用に供していた財産その他の物件等の措置につき、相互に密接な連絡のもとに、周到な準備を整え、一一月一日以後における指定都市又は指定都市の市長その他の機関がその事務を行うに支障ないように措置されたいこと。特に財産その他の物件については、事務の移譲により新に指定都市が必要となるものであつて都道府県が必要としなくなる施設等については、協議により指定都市に移譲し、或いは貸与することとする外、指定都市が新な施設の設置を必要とするものについては、それが設置されるまでの間都道府県の施設を共用する等行政機能の低下を招来することのないよう特に留意されたいこと。又、指定都市においては、移譲された事務を処理するに必要な条例規則その他の規程の制定、予算の追加更正等の一切の措置についても、一一月一日までに完了の上、同日以後における事務処理に遺憾なきを期せられたいこと。
四 指定都市に移譲される事務に従事している都道府県の職員でもつぱら指定都市の区域内に系る事務に従事していると認められるものは、事務の引継とともに、都道府県において正式任用されていた者にあつては、引き続き指定都市の相当の職員に正式任用され、都道府県において条件附採用期間中であつた者にあつては、引き続き条件附で指定都市の相当の職員となるものとされたこと(改正法附則10)。職員がもつぱら指定都市の区域内に係る事務に従事しているかどうかは、(1)事務の引継に伴い、指定都市へ移管されることとなる都道府県の施設に勤務していること及び(2)担当区域が指定都市の区域であることの二点を基準として、個々の職員について具体的に認定されるべきものであるが(改正令附則4)、当該認定は事務の引継に際しその時までの当該職員の勤務の態様を基礎とし客観的になされるべきものであること。今回の措置は、移譲事務の円滑なる引継とその遂行を期さんがため特に設けられたものである趣旨にも鑑み、当該職員にとつて著しく不利益な結果を招来するようなことのないよう次に掲げるように給料、退職手当、恩給、退職年金等につき法令上種々の特別の規定が設けられているが、運用上も将来にわたり特に留意されたいこと。
(一) 指定都市の職員となるべき者が受けるべき給料の額が、指定都市の職員となる際その者が従前都道府県において受けていた給料の額に達しないこととなる場合においては、その調整のため、指定都市は、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、手当を支給するものとされたこと(改正法附則11、改正令附則5)。
(二) 政令で定めるところにより、その選択によつて、府県の退職手当を受け、又は受けないことができるものとし、指定都市は、都道府県の退職手当を受けない者について、その者が都道府県の職員として在職した期間を当該指定都市の職員としての在職期間に通算する措置を講ずるものとされたこと(改正法附則12、改正令附則6)。
(三) 恩給法の一部を改正する法律(昭和二二年法律第七七号)附則第一○条の規定の適用又は準用を受ける者については、その職員が移譲事務に従事する間に限り、これに恩給法の一部を改正する法律(昭和二二年法律第七七号)附則第一○条の規定が準用されるものとされたこと(改正法附則13)。
(四) (三)に該当する場合を除き、その者の退職年金又は退職一時金の支給に関するその者の在職期間については、都道府県及び指定都市は、相互にその者の在職期間を通算する措置を講ずるものとされたこと(改正法附則14)。
五 昭和三一年一一月一日において現に効力を有する都道府県知事その他の都道府県の機関が行つた許可、認可等の処分その他の行為又は同日において現にこれらの機関に対し行つている許可、認可等の申請その他の行為で、同日以後において指定都市の市長その他の機関が管理し、及び執行することとなる事務に系るものは、同日以後においては、指定都市の市長その他の機関の行つた許可、認可等の処分その他の行為又はこれらの機関に対して行つた許可、認可等の申請その他の行為とみなされるものであること(改正令附則7)又、昭和三一年九月一日において現に効力を有する都道府県知事が指定都市又は指定都市の市長その他の機関に対して行つた許可、認可等の処分で、同日以後においては主務大臣が行うこととなるものは、同日以後においては、主任大臣の行つた許可、認可等と処分とみなされるものであること(改正令附則8)。
六 今回の事務移譲に伴い新たに指定都市又は指定都市の市長が行うこととなつた事務の処理の具体的要領は、従前都道府県又は都道府県知事が行つていた例により行うことを原則とするものであり、都道府県知事に対し関係者より従来通知された諸事項を参照されたいが、その運営の細目及び事務引継に関する具体的措置については、別途関係省庁より通知されることがあるものであること。
第二 個別的事項
一 児童福祉に関する事務
(一) 指定都市又は指定都市の市長その他の機関が処理することとなる事務の範囲は、都道府県の設置する児童福祉施設に対する最低基準実施の監督(児童福祉法(以下本項において「法」という。)四六)、訴願(法五九)及び保母試験に関する事務(児童福祉法施行令(以下本項において「令」という。)一三)を除き、法上のすべての事務であること。従つて、児童相談所の設置(法一五)及び教護院の設置(法三五1及び令一○)も新たに指定都市に義務づけられるものであるとともに、指定都市の設置する児童福祉施設に対する都道府県の負担(法五四)、指定都市の支弁する法第五一条第一号の費用に対する都道府県の負担等は行われなくなること(地方自治法施行令一七四の二六1から5まで)。
(二) 法第二七条、第二七条の二、第二八条等の権限を指定都市の市長が行うこととなるため、この権限を行うための家庭裁判所との交渉もすべて指定都市の市長が行うこととなるので、少年法中所要の規定は、指定都市の市長に対し適用されることとなつたこと(地方自治法施行令一七四の二六1)。
(三) 要保護児童の入所措置権等が指定都市の市長に委譲されることとなつたが、適正な入所措置の確保のため、特に指定都市においては、都道府県と密接な連絡をとり、混乱を生じないよう留意されたいこと。特に、児童相談所等の設置、運営は、入所措置権等の行使と密接不可分の関係にあるものであるから、児童相談所等についての機構の整備に努めること。
(四) 指定都市又は指定都市の市長その他の機関が事務を処理するに当つて都道府県知事の処分等を要しないものとして規定されたものは、指定都市の設置する児童福祉施設に対する都道府県知事の認可、廃止の承認等の処分(法三五、2、3及び5)のみであること(地方自治法施行令一七四の二六6)。従つて、法第五三条の二の規定による指定都市に対する実地調査については、なお従前どおり都道府県知事が行うことができるものであること。
二 民生委員に関する事務
民生委員に関する事務については、従来民生委員法に基き、都道府県、都道府県知事又は民生委員審査会が行うものとされていた事務はすべて、指定都市にあつては、それぞれ指定都市、指定都市の市長又は指定都市が設置する民生委員審査会において行われることとなつたこと(地方自治法施行令一七四の二七)。
三 身体障害者の福祉に関する事務
(一) 指定都市又は指定都市の市長その他の機関が処理することとなる事務の範囲は、技術的援助及び助言(身体障害者福祉法。(以下本項において「法」という。)九の二4及び5)、身体障害者更生相談所の設置(法一一)、身体障害者更生援護施設の設置(二七2)及び訴願の裁決(法四二)に関する事務以外の法上のすべての事務であること。また、指定都市が身体障害者更生援護施設又は養成施設を設置又は附置する場合の認可権限は、都道府県知事から厚生大臣に移つたのであるが、これらの施設の設置についての費用は、都道府県の負担はなくなり、国が二分の一を負担し、他の二分の一は指定都市が支弁することになつたこと(地方自治法施行令一七四の二八1、2、4、6、7)。
(二) 地方身体障害者福祉審議会については、指定都市にも設置の義務が課せられ、また、身体障害者更生相談所については、指定都市においても設置することができることとなつたこと(地方自治法施行令一七四の二八3、5)。
四 生活保護に関する事務
(一) 指定都市又は指定都市の市長が処理することとなる事務の範囲は、都道府県の設置する保護施設に対する運営の指導等(生活保護法(以下本項において「法」という。)四三1、四四及び四八3)及び不服申立の決定等(法六四から六六まで)に関する事務以外の法上のすべての事務であること(地方自治法施行令一七四の二九1、2、4)。
(二) 指定医療機関については、特に必要がある場合においては、都道府県知事も法第五四条の規定に基いて指定医療機関に対して報告の徴収又は立入検査を行う権限が留保されることとなつた(地方自治法施行令一七四の二九3)が、これは、法の性質上、監督的立場を考慮して特に認められたものであるので、これが運営に当つては、都道府県知事と指定都市の市長は、相互に緊密な連繋を保持するよう十分に留意されたいこと。
(三) 都道府県立以外の保護施設の認可及び指導監督等は、指定都市の市長の処理する事務となつたが、この事務の処理は、法運用の全般に影響するところが大きいので、保護に関する事務全般との関連において、常に統一的、広域的見地からその運用に遺憾なきを期せられたいこと。
五 母子福祉資金の貸付等に関する事務
(一) 母子福祉資金の貸付等に関する法律中都道府県又は都道府県知事が行う事務は、すべて指定都市又は指定都市の市長が処理することとされたので、本年一一月一日以後指定都市の区域内の住民に対する貸付は、指定都市が行うものであること(地方自治法施行令一七四の三一)。これに伴い、本年一一月一日現在において現に効力を有する都道府県知事の貸付の決定で指定都市の区域内に住所を有するものに係るものは指定都市の市長の行つた貸付の決定とみなされ、以後その者に継続して貸し付けることとなり、本年一○月三一日現在指定都市の区域内に住所を有している者に系る都道府県の債権は、当該指定都市に譲渡されることとなり、以後指定都市においてはその者から償還を受けることとなること(地方自治法施行令附則7、9、10)。なお、この法律の施行は、財源、機構が充足されていなければ所期の効果をあげえないものであるから、指定都市においては、貸付に必要な財政措置等を一一月一日までに行うべきこと。
なお、指定都市に譲渡される母子福祉資金に関する債権の価格及び支払条件については、別途通知するところによられたいこと。
(二) 母子相談員であつて、本年一一月一日現在その担当区域が指定都市の区域である者については、自動的に指定都市の職員となるが、勤務状態、給与等において指定都市の他の職員と不均衡にならないよう特に配意されたいこと。
六 伝染病の予防に関する事務
(一) 伝染病予防法(以下本項において「法」という。)中都道府県、都道府県知事又は都道府県の吏員が処理し管理し及び執行することとされている事務は、疑似症に対する同法の適用(法二2)、市町村がすべき事務の代執行(法二七)及び訴願の裁決(法二八)に関する事務を除き、原則として、指定都市、指定都市の市長又は指定都市の吏員が処理し管理し及び執行することとするとともに(地方自治法施行令一七四の三二1)法第十五条から第一七条ノ二までに規定する措置についても、従来の都道府県知事の指示を要することなく自らの判断に基いて積極的にそれらの措置を講ずることができることとし、(地方自治法施行令一七四の三二7)、また、都道府県知事が疑似症に対して法を適用しない場合においても指定都市の市長は、その判断により法を適用することができること(地方自治法施行令一七四の三二3)とし、併せて、これらの改正に伴う費用負担に関する規定の整理を行つたものであること。而して、指定都市の市長は、改正規定に基き事務を管理し及び執行したとき又は措置を講じたときは、直ちにその旨を都道府県知事に通知することとされたこと(地方自治法施行令一七四の三二8)。
(二) 然しながら、一度発生した伝染病は相当広汎にわたり、かつ、急速に伝播して行くおそれが大きいことからする予防事務の特殊性に鑑み、都道府県知事及びその機関は、伝染病が指定都市の区域と他の市町村の区域の両地域にわたつてまん延し、又はまん延する虞のある場合において、これが予防のため必要に応じ、指定都市の区域内においても法第一八条の規定による検疫及び第一九条の規定による予防の措置を講ずることができることとし、この場合には都道府県知事又はその機関は、あらかじめ指定都市の市長又はその機関にその旨を通知しなければならないものとしたこと(地方自治法施行令一七四の三二2)、また、同法第一五条から第一七条ノ二までに規定する措置についても、特に必要があるときは、これらの措置を講ずべきことを都道府県知事が指示することができることとしたこと。
(三) 以上の改正の趣旨は、伝染病予防措置の緊急かつ適正な実施を第一次的には指定都市において実施させることとするとともに、併せて予防措置権者が都道府県知事と指定都市の市長に二分されることにより、伝染病予防の広域的処理にあやまりなきよう、特に両者の連絡協力方法を義務づけたものに外ならないので、この点十分に留意ありたいこと。
七 食品衛生、興行場、旅館業及び公衆浴場に関する事務
食品衛生法第二○条の規定による基準の設定に関する事務、興行場法第三条第二項、旅館業法第四条第二項及び第五条第三号並びに公衆浴場法第二条第三項及び第三条第二項の規定による条例の制定に関する事務を除き、食品衛生に関する事務並びに興行場、旅館及び公衆浴場の営業の規制に関する事務は、指定都市又は指定都市の市長が処理し又は管理し及び執行することとなつたこと。この場合指定都市においては、食品衛生法第二○条の規定により都道府県知事が定めた基準並びに興行場法第三条第二項、旅館業法第四条第二項及び公衆浴場法第三条第二項の規定により都道府県の定めた基準に、それぞれ規則又は条例をもつて、更に指定都市の区域における必要な制限を附加する基準を定めることができることとなつたが、この附加基準の制定については、指定都市の区域における特殊事情から都道府県知事又は都道府県の定めた基準により更に強い制限を設けることが必要とされる場合であつて、かつ、その附加しうる範囲は必要最少限度に限られるべきであること(地方自治法施行令一七四の三四及び一七四の三六)。なお、附加基準の制定にあたつては、すでに都道府県知事又は都道府県において定めた基準と矛盾を来すことのないよう、事前に十分当該都道府県と協議の上調整を図られたいこと。
八 結核の予防に関する事務
(一) 従業禁止(結核予防法(以下本項において「法」という。)二八)入所命令(法二九)医療費の公費負担(法三五)並びに指定医療機関の指定及び取消等(法三六)に関する事務については、指定都市又は指定都市の市長が処理し又は管理し及び執行することとなつたこと(地方自治法施行令一七四の三七1)。
(二) 指定都市の行う事業の使用者又はその設置する学校若しくは施設の長が行う定期の健康診断、予防接種に要する費用(指定都市の事業の使用者が行う健康診断に要する費用を除く。)及び指定都市の市長が行う一般住民に対する定期の健康診断、予防接種に要する費用については、指定都市の存する都道府県の補助は行われず、直接国庫から三分の一の額について補助が行われることになり、指定都市の区域内に存する国、都道府県又は市町村以外の事業の使用者又は学校若しくは施設の長が行う定期の健康診断、予防接種に要する費用(事業の使用者が行う健康診断に要する費用を除く。)については、指定都市の存する都道府県にかわつて指定都市がその三分の二の額について補助を行うことになつたこと(地方自治法施行令一七四の三七2、3、4)。
(三) 指定都市の区域内において実施された結核予防法に基く健康診断、予防接種については、当該健康診断、予防接種の実施者が当該健康診断、予防接種を行つた場所を管轄する保健所長を経由して指定都市の市長に通報又は報告することになつたこと(地方自治法施行令一七四の三七2)。
(四) 指定都市の市長が行う一般住民に対する定期の健康診断、予防接種については、その実施に際し、都道府県知事の行う指示は適用されないことになつたこと(地方自治法施行令一七四の三七5)。
九 都市計画に関する事務
指定都市の市長は、行政官庁又は都道府県知事が執行する都市計画事業に係る都市計画法施行令第一一条及び第一二条の規定による工作物の新築、改築又は増築等の許可及び同令第一四条の規定による原状回復命令に関する事務を除き、都道府県知事が処理し又は管理し及び執行することとされていた事務を処理することとなつた(地方自治法施行令一七四の三八)が、事務を行うに当つては、特に次の点に留意されたいこと。すなわち、指定都市の市長が、都市計画法施行令第一三条の規定により風致維持の為指定する地区内における工作物の新築等を禁止し又は制限するため規則を制定するに当つては、従来の都道府県知事が定めた規則を参考にし、都道府県内の指定都市以外の区域に適用される都道府県知事が定めた規則との間に不均衡を生ずることがないよう特に配慮されたこと。なお、この規則は、建設大臣の認可を受けて、一○月三○日までに制定すること。
一○ 屋外広告物の規制に関する事務
指定都市又は指定都市の市長は、屋外広告物法第八条の規定による訴願の裁決に関する事務を除き、屋外広告物の規制に関する事務を処理し又は管理し及び執行することとなつた(地方自治法施行令一七四の四○)が、この場合においては、特に次の点に留意されたいこと。すなわち、指定都市が、屋外広告物法第三条から第七条までの規定により、広告物等を制限するため条例を制定するに当つては、従来の都道府県の条例を参考にし、都道府県内の他の区域に適用される都道府県の条例との間に不均衡を生ずることがないよう特に配慮されたいこと。なお、この条例は、一○月三○日までに制定すること。
一一 建築基準行政の実施に関する事務
建築基準法及び同法施行令の規定により都道府県知事たる特定行政庁又は都道府県の建築主事が行うこととされている事務は、指定都市の市長又は指定都市の建築主事が管理し及び執行することとなつた(地方自治法施行令一七四の四一1)が、事務の移譲に当つては、昭和二六年一二月四日付住発第六○六号(各都道府県建築主務部長あて住宅局長通達)の趣旨に沿つて措置されたいこと。
一二 その他指定都市又は指定都市の市長がその事務を処理し又は管理し及び執行するに当つては、水道条例第二一条ノ二の規定に依る職権委任に関する件「トラホーム」予防法、不良住宅地区改良法、公益質屋法並びに社会福祉事業法に規定する一定の都道府県知事の許可、認可等の処分又は改善、停止等の指示その他の命令については、これらの処分を要せず、又はこれらの命令に関する法令の規定はこれを適用しないものとされたこと。