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○厚生労働省の公共用地の取得に伴う損失補償基準

(平成十年六年二十九日)

(厚生省訓第三十七号)

厚生省の公共用地の取得に伴う損失補償基準を次のように定める。

目次

第一章 総則(第一条―第七条)

第二章 土地等の取得に係る補償

第一節 土地の取得に係る補償(第八条―第十一条)

第二節 土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償(第十二条―第十五条)

第三節 建物、土石砂れき、漁業権等の取得又は消滅に係る補償(第十六条―第二十四条)

第三章 土地等の使用に係る補償(第二十五条―第二十八条)

第四章 土地等の取得又は土地等の使用により通常生ずる損失の補償

第一節 移転料等(第二十九条―第三十八条)

第二節 立木補償(第三十九条―第四十三条)

第三節 営業補償(第四十四条―第四十六条)

第四節 農業補償(第四十七条―第五十条)

第五節 漁業権等の消滅又は制限により通常生ずる損失の補償(第五十一条―第五十三条)

第六節 残地等に関する損失の補償(第五十四条・第五十五条)

第七節 その他通常生ずる損失の補償(第五十六条―第六十条)

第五章 土地等の取得又は土地等の使用に伴うその他の措置(第六十一条―第六十三条)

第六章 事業の認定を受けた起業地に係る補償(第六十四条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この訓令は、厚生労働省所管の事業に必要な土地等の取得又は土地等の使用に伴う損失の補償の基準を定め、もって事業の円滑な遂行と損失の適正な補償の確保を図ることを目的とする。

(定義等)

第二条 この訓令において「土地等」とは、土地、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第五条に掲げる権利、同法第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件及び同法第七条に掲げる土石砂れきをいう。

2 この訓令において「土地等の取得」とは、前項に掲げる土地、物件及び土石砂れきの取得並びに同項に掲げる権利の消滅をいう。

3 この訓令において「土地等の使用」とは、第一項に掲げる土地及び物件の使用並びに同項に掲げる権利の制限をいう。

4 この訓令において「土地等の権利者」とは、土地等の取得、又は土地等の使用に係る土地等に関して権利を有する者、第一項に掲げる土石砂れきの属する土地に関して権利を有する者及び当該土地、当該権利の目的となっている土地又は当該土石砂れきの属する土地にある物件に関して権利を有する者をいう。

5 この訓令において「権利」とは、社会通念上権利と認められる程度にまで成熟した慣習上の利益を含むものとする。

(補償額算定の時期)

第三条 土地等の取得又は土地等の使用に係る補償額は、契約締結の時の価格によって算定するものとし、その後の価格の変動による差額については、追加払いしないものとする。

(補償を受ける者)

第四条 損失の補償は、第五章に規定する場合を除き、土地等の権利者に対してするものとする。

(個別払いの原則)

第五条 損失の補償は、各人別にするものとする。ただし、各人別に見積ることが困難であるときは、この限りでない。

(損失補償の方法)

第六条 損失の補償は、原則として、金銭をもってするものとする。

2 土地等の権利者が金銭に代えて土地又は建物の提供、耕地又は宅地の造成その他金銭以外の方法による給付を要求した場合において、その要求が相当であり、かつ、真にやむを得ないものであると認められるときは、事情の許す限り、これらの給付を行うよう努めるものとする。

(特殊な土地に対する損失の補償)

第七条 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)等により指定された特殊な土地等の取得又は土地等の使用の場合において、この訓令の規定によりがたいときは、その実情に応じて適正に補償するものとする。

第二章 土地等の取得に係る補償

第一節 土地の取得に係る補償

(土地の補償額算定の基本原則)

第八条 取得する土地(土地の附加物を含む。以下同じ。)に対しては、正常な取引価格をもって補償するものとする。

2 前項の場合において、当該土地に移転すべき建物その他の物件があるときは、当該物件がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。

3 第一項の場合において、土地を取得する事業の施行が予定されることによって当該土地の取引価格が低下したと認められるときは、当該事業の影響がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。

(土地の正常な取引価格)

第九条 前条の正常な取引価格は、近傍類地(近傍地及び類地を含む。以下同じ。)の取引価格を基準とし、これらの土地及び取得する土地について、次の各号に掲げる土地価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。

一 宅地 位置、形状、地積等画地の状態、街路の状態、公共施設、商業施設等の状態、供給処理施設等の状態、土地の利用に関する規制、制約、自然的環境等

二 農地 地味、水利、消費地との距離その他の農業立地条件、収益性等

三 林地 土質、地勢、消費地との距離、林道等の整備の状態、その他の林業立地条件、収益性等

四 その他の土地 当該土地の種別に応じて必要と認められるもの

2 前項の場合において基準とすべき近傍類地の取引価格については、取引が行われた事情、時期等に応じて適正な補正を加えるものとする。

3 地代、小作料、借賃等の収益を資本還元した額、土地所有者が当該土地を取得するために支払った金額及び改良又は保全のために投じた金額並びに課税の場合の評価額は、第一項の規定により正常な取引価格を定める場合において、参考となるものとする。

4 第一項の規定により正常な取引価格を定める場合においては、一般の取引における通常の利用方法に従って利用し得るものとして評価するものとし、土地所有者がその土地に対して有する主観的な感情価値及び土地所有者又は特定の第三者がその土地を特別の用途に用いることを前提として生ずる価値は、考慮しないものとする。

(地価公示区域における土地の正常な取引価格算定の準則)

第十条 地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号)第二条第一項の都市計画区域内の土地を取得する場合において、前条の規定により当該土地の正常な取引価格を決定するときは、同法第六条の規定により公示された標準地の価格を規準としなければならない。

(所有権以外の権利の目的となっている土地に対する補償)

第十一条 土地に関する所有権以外の権利の目的となっている土地に対しては、当該権利がないものとして前三条の規定により算定した額から次節の規定により算定した当該権利の価格を控除した額をもって補償するものとする。

第二節 土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償

(土地に関する所有権以外の権利の補償額算定の基本原則)

第十二条 消滅させる土地に関する所有権以外の権利に対しては、正常な取引価格(一般的に譲渡性のないものについては、土地の正常な取引における当該権利の有無による土地の価格の差額)をもって補償するものとする。

2 第八条第三項の規定は、前項の場合について準用する。

(地上権、永小作権及び賃借権の正常な取引価格)

第十三条 地上権、永小作権及び賃借権に係る前条の正常な取引価格は、近傍類地に関する同種の権利の取引価格を規準とし、当該同種の権利の目的となっている土地及び消滅させる権利の目的となっている土地の価格並びに当該同種の権利及び消滅させる権利に係る地代、小作料又は賃借、権利金、権利の存続期間その他の契約内容、収益性、使用の態様等を総合的に比較考量して算定するものとする。

2 第九条第二項から第四項までの規定は、前項の規定により地上権、永小作権又は賃借権の正常な取引価格を定める場合について準用する。

(使用貸借による権利に対する補償)

第十四条 使用貸借による権利に対しては、当該権利が賃借権であるものとして前条の規定に準じて算定した正常な取引価格に、当該権利が設定された事情並びに返還の時期、使用及び収益の目的その他の契約内容、使用及び収益の状況等を考慮して適正に定めた割合を乗じて得た額をもって補償するものとする。

(占有権)

第十五条 占有権に対しては、補償しないものとする。

第三節 建物、土石砂れき、漁業権等の取得又は消滅に係る補償

(建物等の取得に係る補償の基本原則)

第十六条 取得する建物その他の土地に定着する物件(以下「建物等」という。)に対する補償については、第一節に規定する土地の取得に係る補償の例による。

(建物その他の工作物の取得に係る補償)

第十七条 近傍同種の建物その他の工作物の取引の事例がない場合においては、前条の規定にかかわらず、取得する建物その他の工作物に対しては、当該建物その他の工作物の推定再建設費を、取得時までの経過年数及び維持保存の状況に応じて減価した額をもって補償するものとする。

(立木の取得に係る補償)

第十八条 近傍同種の立木の取引の事例がない場合においては、第十六条の規定にかかわらず、取得する立木に対しては、次の各号に掲げる額をもって補償するものとする。

一 用材林の立木であって、伐期未到達のもので市場価格のあるものについては、伐期における当該立木の価格の前価額と現在から伐期までの純収益(粗収入から経営費(自家労働の評価額を含む。)を控除した額をいう。以下同じ。)の前価合計額との合計額

二 用材林の立木であって、伐期未到達のもので市場価格のないものについては、第四十条第一項第二号イ又はロによる額

三 薪炭林の立木の幹及び枝条部であって、伐期未到達のもので市場価格のあるものについては、伐期における当該幹及び枝条部の価格の前価額と現在から伐期までの純収益の前価合計額との合計額

四 薪炭林の立木の幹及び枝条部であって、伐期未到達のもので市場価格のないものについては、第四十一条第一項第二号イ又はロによる額

五 薪炭林の台木については、第四十一条第一項第三号による額

六 果樹等の収穫樹については、第四十二条第二項第一号又は第二号による額

七 竹林については、当該竹林の平均年間純収益を資本還元した額

(建物等に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償)

第十九条 消滅させる建物等に関する所有権以外の権利に対する補償については、前節に規定する土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償の例による。

(土石砂れきの取得に係る補償)

第二十条 取得する土地収用法第七条に掲げる土石砂れきに対しては、正常な取引価格をもって補償するものとする。

2 前項の正常な取引価格は、近傍類地に属する土石砂れきの取引価格を基準とし、これらの土石砂れき及び取得する土石砂れきの品質その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。

(漁業権等の消滅に係る補償)

第二十一条 消滅させる漁業権、入漁権その他漁業に関する権利(以下「漁業権等」という。)に対しては、当該権利を行使することによって得られる平年の純収益を資本還元した額を基準とし、当該権利に係る水産資源の将来性等を考慮して算定した額をもって補償するものとする。

(鉱業権、租鉱権又は採石権の消滅に係る補償)

第二十二条 消滅させる鉱業権、租鉱権又は採石権に対しては、正常な取引価額をもって補償するものとする。

2 近傍同種の鉱業権又は租鉱権の取引の事例がない場合においては、前項の規定にかかわらず消滅させる鉱業権又は租鉱権に対しては、次の各号に掲げる額をもって補償するものとする。

一 操業している鉱山の鉱業権については、次の算式により算定した額

a×(1/(s+(r/((1+r)n-1))))-E

a 鉱山が毎年あげうる純収益(純収益算定の基礎となる原価には、起業費の減価償却費を含まないものとする。)

s 報酬利率

r 蓄積利率

n 可採年数(可採年数を決定する場合には、確定鉱量、推定鉱量及び予想鉱量の合計額(鉱量計算についてはJISによる。)を基礎とする。)

E 今後投下されるべき起業費の現在価額

二 未着手のまま据置期間のある場合の鉱山の鉱業権については、次の算式により算定した額

(1/(1+r)m)×a×(1/(s+(r/((1+r)n-1))))-E

m 据置期間

a、s、r、n及びE 前号に定めるとおりとする。

三 開坑後予定収益を生ずるまでに期間のある場合における鉱業権については、次の算式により算定した額

a×(((1+r)n-1)/(r+s((1+r)n+m-1)))-E

m 補償時から予定収益を生ずるまでの期間

a、s、r、n及びE 前二号に定めるとおりとする。

四 探鉱中の鉱山又は未着手の鉱山であって、鉱量が不明であり、かつ、将来の収益が不確定のものにおける鉱業権については、その鉱区に投下された適正な費用を現価に換算した額

五 租鉱権については、前各号に準じてそれぞれ算定した額

3 近傍同種の採石権の取引の事例がない場合においては、第一項の規定にかかわらず消滅させる採石権に対しては、前項に準じて算定した額をもって補償するものとする。

(温泉利用権の消滅に係る補償)

第二十三条 消滅させる温泉利用権に対しては、正常な取引価格をもって補償するものとする。

2 近傍類似の温泉利用権の取引の事例がない場合においては、前項の規定にかかわらず、消滅させる温泉利用権に対しては、次の各号に掲げる額をもって補償するものとする。

一 源泉に関する権利については、次の算式により算定した額。ただし、分湯している場合においては、次号に掲げる額を控除するものとする。

鉱泉地の基本価格(A)×湧出量指数(B)×温泉地指数(C)×修正計数(P)

(A)、(B)及び(C)は、固定資産税評価基準に定めるところによるものとし、(P)は当該鉱泉地の立地条件等を考慮して適正に決定する。

二 分湯された権利については、前号の評価額を基準として分湯量の割合及び分湯条件等を考慮して適正に算定した額。

三 未利用の温泉利用権であって、将来利用される見込みがあり、かつ、その収益が不確定なものについては、その温泉利用権に関し投下された適正な費用を現価に換算した額。

(水を利用する権利等の消滅に係る補償)

第二十四条 消滅させる河川の敷地又は流水、海水その他の水を利用する権利に対しては、当該権利の態様及び収益性、当該権利の取得に関して要した費用等を考慮して適正に算定した額をもって補償するものとする。

第三章 土地等の使用に係る補償

(土地の使用に係る補償)

第二十五条 使用する土地(空間又は地下のみを使用する場合における当該土地を除く。以下この条において同じ。)に対しては、正常な地代又は借賃をもって補償するものとする。

2 第八条第三項の規定は、前項の規定により正常な地代又は借賃を定める場合について準用する。

3 第一項の正常な地代又は借賃は、使用する土地及び近傍類地の地代又は借賃に、これらの土地の使用に関する契約が締結された事情、時期等及び権利の設定の対価を支払っている場合においてはその額を考慮して適正な補正を加えた額を基準とし、これらの土地の第九条の規定により算定した正常な取引価格、収益性、使用の態様等を総合的に比較考量して算定するものとする。

(空間又は地下の使用に係る補償)

第二十六条 空間又は地下の使用に対しては、前条の規定により算定した額に、土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額をもって補償するものとする。

2 前項の場合において、当該空間又は地下の使用が長期にわたるときは、同項の規定にかかわらず、第九条の規定により算定した当該土地の正常な取引価格に相当する額に、当該土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額を一時払いとして補償することができるものとする。

(建物等の使用に係る補償)

第二十七条 使用する建物等に関する補償については、第二十五条に規定する土地の使用に係る補償の例による。

(権利の制限に係る補償)

第二十八条 第二十一条から第二十四条までに規定する権利の制限に対しては、当該権利が消滅するものとしてそれぞれそれらの規定により算定した額に当該権利の制限の内容等を考慮して適正に定めた割合を乗じて得た額をもって補償するものとする。

第四章 土地等の取得又は土地等の使用により通常生ずる損失の補償

第一節 移転料等

(建物等の移転料)

第二十九条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地等に建物等(立木を除く。以下この条から第三十一条までにおいて同じ。)で取得せず、又は使用しないものがあるときは、当該建物等を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償するものとする。この場合において、建物等が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、当該建物等の所有者の請求により、当該建物等の全部を移転するのに要する費用を補償するものとする。

2 建物等の移転に伴い木造の建築物に代えて耐火建築物を建築する等の建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)その他の法令の規定に基づき必要とされる既設の施設の改善に要する費用は、補償しないものとする。

(移転困難な場合の建物等の取得)

第三十条 建物等を移転することが著しく困難であるとき又は建物等を移転することによって従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、当該建物等の所有者の請求により、当該建物等を取得するものとする。

(移転料多額の場合の建物等の取得)

第三十一条 建物等を移転させるものとして第二十九条の規定により算定した補償額が第十六条の規定により算定した当該建物等の価格をこえるときは、当該建物等を取得することができるものとする。

(動産移転料)

第三十二条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い移転する動産に対する補償については、第二十九条前段に規定する建物等の移転に係る補償の例による。

(仮住居等の使用に要する費用)

第三十三条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地にある建物又は取得し、若しくは使用する建物に現に居住する者がある場合において、その者が仮住居を必要とするものと認められるときは、通常仮住居の使用に要する費用を補償するものとする。

2 土地等の取得又は土地等の使用に伴い移転する動産を他に一時保管する必要があると認められるときは、その保管に通常要する費用を補償するものとする。

(家賃減収補償)

第三十四条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物の全部又は一部を賃貸している者が当該建物を移転することにより移転期間中賃貸料を得ることができないと認められるときは、当該移転期間に応ずる賃貸料相当額から当該期間中の管理費相当額及び修繕費相当額を控除した額を補償するものとする。

(借家人に対する補償)

第三十五条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物の全部又は一部を現に賃借りしている者がある場合において賃借りを継続することが著しく困難となると認められるときは、その者があらたに当該建物に照応する他の建物の全部又は一部を賃借りするために通常要する費用を補償するものとする。

2 前項の場合において、従前の建物の全部又は一部の賃借料があらたに賃借りする建物について通常支払われる賃借料相当額に比し著しく低額であると認められるときは、賃借りの事情を総合的に考慮して適正に算定した額(賃借料相当額の差額の2年分以内)を補償するものとする。

(改葬の補償)

第三十六条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い墳墓について改葬を行うときは、通常改葬に要する費用を補償するものとする。

(祭し料)

第三十七条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い神社、仏閣、教会等の宗教上の施設を移転し、又は墳墓について改葬を行うときは、移転又は改葬に伴う供養、祭礼等の宗教上の儀式に通常要する費用を補償するものとする。

(移転雑費)

第三十八条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物等を移転する場合において、移転先の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、広告費、移転旅費その他の雑費を必要とするときは、通常これらに要する費用を補償するものとする。

2 前項の場合において、当該建物等の所有者及び借家人が就業できないときは、第四十五条、第四十八条及び第五十二条に規定するものを除き、それらの者が就業できないことにより通常生ずる損失を補償するものとする。

第二節 立木補償

(立木の移植補償)

第三十九条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地に立木がある場合において、これを移植することが相当であると認められるときは、堀起し、運搬、植付け等の移植に通常必要とする費用及び移植に伴う枯損等により通常生ずる損失(収穫樹にあっては、移植に伴う減収による損失を含む。)を補償するものとする。

(用材林の伐採補償)

第四十条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地に用材林の立木がある場合において、これを伐採することが相当であると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 伐期未到達立木で市場価格のあるものについては、伐期における当該立木の価格の前価額と現在から伐期までの純収益の前価合計額との合計額から、当該立木の現在価格を控除した額

二 伐期未到達立木で市場価格のないものについては、伐採除却に通常要する費用相当額とそれぞれ次に掲げる額との合計額から、伐採により発生した材料の価格を控除した額

イ 人工林については、現在までに要した経費の後価合計額から、現在までの収益の後価合計額を控除した額

ロ 天然生林については、伐期における当該立木の価格の前価額

2 通常妥当と認められる伐採方法、伐採時期等を選定できないことによって伐採搬出に要する費用が増加し、又は木材価格が低下すると認められるときは、当該増加額又は当該低下額に相当する額をもって補償するものとする。

(薪炭林の伐採補償)

第四十一条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地に薪炭林の立木がある場合において、これを伐採することが相当であると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 伐期未到達立木の幹及び枝条部で市場価格のあるものについては、伐期における当該幹及び枝条部の価格の前価額の現在から伐期までの純収益の前価合計額との合計額から、当該幹及び枝条部の現在価格を控除した額

二 伐期未到達立木の幹及び枝条部で市場価格のないものについては、伐採除却に通常要する費用相当額とそれぞれ次に掲げる額との合計額から、伐採により発生した材料の価格を控除した額

イ 人工林については、現在までに要した経費の後価合計額から、現在までの収益の後価合計額を控除した額

ロ 天然生林については、伐期における当該幹及び枝条部の価格の前価額

三 薪炭林の台木については、将来の各伐期における純収益の前価合計額

2 薪炭林の立木を伐採する場合においては、前条第二項の規定を準用する。

(果樹等の収穫樹の伐採補償)

第四十二条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地に果樹等の収穫樹がある場合において、これを伐採することが相当であると認められるときは、当該立木の正常な取引価格と伐採除却に要する費用相当額との合計額から伐採により発生した材料の価格を控除した額を補償するものとする。

2 近傍同種の果樹等の収穫樹の取引の事例がない場合においては、前項の規定にかかわらず、果樹等の伐採については、伐採除却に要する費用相当額と次の各号のいずれかに掲げる額との合計額から、伐採により発生した材料の価格を控除した額を補償するものとする。

一 未収益樹については、現在までに要した経費の後価合計額

二 収益樹については、残存効用年数に対する純収益の前価合計額

(竹林の補償)

第四十三条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地に竹林がある場合において、これを移植することが相当であると認められるときは、第三十九条に準じて算定した額を補償するものとする。

2 前項の場合において、これを伐採することが相当であると認められるときは、当該竹林の正常な取引価格と伐採除却に要する費用相当額との合計額から伐採により発生した材料の価格を控除した額を補償するものとする。

3 近傍同種の竹林の取引の事例がない場合においては、前項の規定にかかわらず、当該竹林の平均年間純収益を資本還元した額と伐採除却に要する費用相当額との合計額から伐採により発生した材料の価格を控除した額を補償するものとする。

第三節 営業補償

(営業廃止の補償)

第四十四条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 免許を受けた営業等の営業の権利等が資産とは独立に取引される慣習があるものについては、その正常な取引価格

二 機械器具等の資産、商品、仕掛品等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額

三 従業員を解雇するため必要となる解雇予告手当相当額、転業が相当と認められる場合において従業員を継続して雇用する必要があるときにおける転業に通常必要とする期間中の休業手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額

四 転業に通常必要とする期間(二年以内)中の従前の収益相当額(個人営業の場合においては、従前の所得相当額)

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては、第六十三条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。

(営業休止の補償)

第四十五条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 通常休業を必要とする期間中の営業用資産に対する公租公課等の固定的な経費及び従業員に対する休業手当相当額

二 通常休業を必要とする期間中の収益減(個人営業の場合においては、所得減)

三 休業することにより、又は店舗等の位置を変更することにより、一時的に得意を喪失することによって通常生ずる損失額(前号に掲げるものを除く。)

四 店舗等の移転の際における商品、仕掛品等の減損、移転広告費、その他店舗等の移転に伴い通常生じる損失額

2 営業を休止することなく仮営業所を設置して営業を継続することが必要かつ相当であると認められるときは、仮営業所の設置の費用、仮営業であるための収益減(個人営業の場合においては所得減)等並びに前項第三号及び第四号に掲げる額を補償するものとする。

(営業規模縮小の補償)

第四十六条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の規模を縮小しなければならないと認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 営業の規模の縮小に伴う固定資産の売却損、解雇予告手当相当額その他資本及び労働の過剰遊休化により通常生ずる損失額

二 営業の規模の縮小に伴い経営効率が客観的に低下すると認められるときは、これにより通常生ずる損失額

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第六十三条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。

第四節 農業補償

(農業廃止の補償)

第四十七条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常農業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 農具等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額及び解雇予告手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額

二 転業に通常必要とする期間(三年以内)中の従前の所得相当額(法人経営の場合においては、従前の収益相当額)

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第六十三条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。

(農業休止の補償)

第四十八条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常農業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 通常農地を再取得するために必要とする期間中の固定的な経費等

二 通常農地を再取得するために必要とする期間中の所得減(法人経営の場合においては、収益減)

(農業の経営規模縮小の補償)

第四十九条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常農業の経営規模を縮小しなければならないと認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 農業の経営規模の縮小に伴う資本及び労働の過剰遊休化により通常生ずる損失額

二 農業の経営規模の縮小に伴い経営効率が客観的に低下すると認められるときは、これにより通常生ずる損失額

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第六十三条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。

(農業補償の特例)

第五十条 前三条の場合において、現に宅地化が予想される農地等に関して農業補償に相当するものの全部又は一部の額が土地等の正常な取引価格に含まれていると認められるときは、前三条の規定にかかわらず、当該額を前三条に規定する額から控除した額をもって補償するものとする。

第五節 漁業権等の消滅又は制限により通常生ずる損失の補償

(漁業廃止の補償)

第五十一条 漁業権等の消滅又は制限に伴い通常漁業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 漁具等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額及び解雇予告手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額

二 転業に通常必要とする期間(四年以内)中の従前の所得相当額(法人経営の場合においては、従前の収益相当額)

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第六十三条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。

(漁業休止の補償)

第五十二条 漁業権等の消滅又は制限に伴い通常漁業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 通常漁業を休止することを必要とする期間中の固定的な経費等

二 通常漁業を休止することを必要とする期間中の所得減(法人経営の場合においては、収益減)

(漁業の経営規模縮小の補償)

第五十三条 漁業権等の消滅又は制限に伴い通常漁業の経営規模を縮小しなければならないと認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

一 漁業の経営規模の縮小に伴う資本及び労働の過剰遊休化により通常生ずる損失額

二 漁業の経営規模の縮小に伴い経営効率が客観的に低下すると認められるときは、これにより通常生ずる損失額

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第六十三条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。

第六節 残地等に関する損失の補償

(残地等に関する損失の補償)

第五十四条 同一の土地所有者に属する一団の土地の一部若しくは同一の物件の所有者に属する一団の物件の一部を取得し、若しくは使用し、同一の権利者に属する一体として同一目的に供している権利の一部を消滅させ、若しくは制限し、又は同一の土地所有者に属する一団の土地に属する土石砂れきの一部を取得することによって、残地、残存する物件、残存する権利又は当該土石砂れきの属する土地の残地に関して、価格の低下、利用価値の減少等の損失が生ずるときは、これらの損失額を補償するものとする。ただし、事業の施行により生ずる日陰、臭気、騒音その他これらに類するものによる不利益又は損失については、補償しないものとする。

(残地等に関する工事費の補償)

第五十五条 前条本文の場合において、残地、残存する物件の存する土地、残存する権利の目的となっている土地、当該土石砂れきの属する土地の残地(以下第六十一条において「残地等」という。)、残存する物件又は残存する権利の目的となっている物件に関して、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに通常要する費用を補償するものとする。

第七節 その他通常生ずる損失の補償

(立毛補償)

第五十六条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地に農作物の立毛があるときは、当該立毛の粗収入見込額から当該土地の引渡時以後に通常投下される農業経営費(自家労働の評価額を含む。)を控除した額を補償するものとする。この場合において、当該立毛に市場価格があるときは、当該立毛の現在の処分価格を控除するものとする。

2 前項に掲げる土地に農作物を作付するためすでに費用を投下したときは、当該費用を補償するものとする。

(養殖物補償)

第五十七条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い藻類、魚介類等の養殖物を他に移植することが相当であると認められるときは、その移植に要する経費と移植に伴う減収予想額との合計額を補償するものとする。

2 土地等の取得又は土地等の使用に伴い養殖物を移植することが困難又は不可能なときは、前条の規定に準じて補償するものとする。

(特産物補償)

第五十八条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い松たけ、しいたけ等の特産物を移植することが困難又は不可能なときは、当該特産物を収穫することによって得られる平年の純利益を資本還元した額を補償するものとする。

2 土地等の取得又は土地等の使用に伴い特産物を移植することが相当であると認められるときは、前条第一項の規定に準じて補償するものとする。

(土地等の返還に伴う補償)

第五十九条 使用する土地等を返還する場合において、当該土地等を原状に回復することが必要と認められるときは、当該土地等の原状回復に通常要する費用相当額及び当該土地等の原状回復に通常必要な期間中の地代又は借賃相当額の範囲内で通常生ずる損失額を補償するものとする。

2 使用する土地等を原状に回復することが困難な場合において、返還時の原状のまま引き渡すときは、当該土地等の形質変更、改造等によって生ずる損失を適正に算定した額を補償するものする。

3 第一項の規定による補償額又は前項の規定による補償額は、当該土地等を取得するものとして算定した当該土地等の価格をこえないものとする。

(その他通常生ずる損失の補償)

第六十条 本節及び前六節に規定するもののほか、土地等の取得又は土地等の使用によって土地等の権利者について通常生ずる損失は、これを補償するものとする。

第五章 土地等の取得又は土地等の使用に伴うその他の措置

(隣接土地に関する工事費の補償)

第六十一条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地を事業の用に供することにより、当該土地、当該物件の存する土地、当該権利の目的となっている土地及び当該土石砂れきの属する土地並びに残地等以外の土地に関して、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは、これらの工事をすることを必要とする者に対して、その者の請求により、社会通念上妥当と認められる限度において、これに要する費用の全部又は一部を補償するものとする。

(少数残存者補償)

第六十二条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地を事業の用に供することにより、生活共同体から分離される者が生ずる場合において、これらの者に受忍の範囲をこえるような著しい損失があると認められるときは、これらの者に対して、その者の請求により、個々の実情に応じて適正と認められる額を補償することができるものとする。

(離職者補償)

第六十三条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い、土地等の権利者に雇用されている者が職を失う場合において、これらの者が再就職するまでの期間中所得を得ることができないと認められるときは、これらの者に対して、その者の請求により、再就職に通常必要とする期間(一年以内)中の従前の賃金相当額の範囲内で妥当と認められる額を補償することができるものとする。

第六章 事業の認定を受けた起業地に係る補償

(事業の認定を受けた起業地に係る補償)

第六十四条 土地収用法第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があった起業地に係る土地等で、同法第七十一条(同条の規定を準用し、又はその例による場合を含む。)の規定により補償すべきものに対しては、第二章から第四章までの規定の例により算定した事業の認定の告示の時における当該土地等の価格に土地収用法施行令(昭和二十六年政令第三百四十二号)の例により算定した契約締結の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額をもって補償するものとする。

附 則

この訓令は、平成十年七月一日から施行する。

附 則 (平成一二年厚生省訓第八一号)

この訓令は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の日(平成十三年一月六日)から施行する。

附 則 (平成二八年三月三〇日厚生労働省訓第一四号)

この訓令は、平成二十八年四月一日から施行する。