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○母子福祉年金における養子縁組関係の認定について

(昭和三五年五月二八日)

(年福発第一八六号の二各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省年金局福祉年金課長通知)

標記の件について、別紙甲号栃木県衛生民生部長の照会に対し、別紙乙号のとおり回答したので、御了知ありたい。

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〔別紙甲号〕

母子福祉年金における養子縁組関係の認定について

(昭和三五年三月一七日 国年第一六三七号)

(厚生省年金局福祉年金課長あて 栃木県衛生民生部長照会)

夫死亡後事実上の父との養子縁組に係る左記事案について、法第八十二条第一項第二号に抵触するものとして直ちに受給権がないものと認定してよろしいか、疑義がありますので、御回答下さるよう照会いたします。

1 戸籍に係る事実

(1) 母子福祉年金裁定請求者たるA(大正三年七月二十日生)はBと婚姻し、昭和十七年七月二十八日所轄役場に届出、同十九年九月十九日夫Bと協議離婚届出を為したるのち、Bの実弟Cと同二十年八月二十三日婚姻し、所轄役場に届出を為した。

しかるのちAはCとの間に長男Dを昭和二十一年三月一日に、二男Eを同二十八年七月三十日に出生した。

夫Cは昭和二十九年九月十六日死亡した。

(2) 裁定請求者たるAは夫C死亡当時まで嫡出でない子(女)であつたが、昭和三十四年九月四日父F(明治十九年八月十五日生)によつて認知されると共に、同日父Fと養子縁組を為し、父Fの戸籍に入籍した。

(参考) 裁定請求者Aの母Gと、父Fとは戸籍上婚姻関係はなく、又父Fに戸籍上他の配偶者は全くない。

2 当方の意見

本事案についてみると、仮に

(1) Aの母GとFとが法律婚であり、Aは両者の子であるとすれば、Aは当初からFの嫡出子であり、養子縁組の問題は起らなく、又

(2) Aの母GとFとが法律婚であるが、Aは母Gの子であつて、Gが連子をして来た場合にあつては、AとFは直系姻族関係になり養子縁組を行つても受給権は存続するものである。

(3) 本件については、Aの母GとFとが事実婚関係であつたが故に生じた問題であり、さらに、認知された親との直系血族間の養子縁組が行われたという特異の要素を含んでいるものである。

(4) 以上のことにより、本件については(1)(2)の例との均衡からしても、受給権は存続させるべきものと思料するが、その場合の解決策としては、次のような事が考えられる。

(イ) 養子縁組による受給権消滅の例外として、直系姻族との養子縁組を認めているが、これを直系血族にまで拡張すること。

ただし、これについては養子縁組が新たな扶養関係の成立を推定しているものという立て前からするならば、果して他人との養子縁組と祖父母等との養子縁組と何程の差異があるかという議論になるのであり、また何よりも現行法の解釈からしてこれは不可能である。

(ロ) 現行法の立て前に立つてこれを解釈するものとすれば、本件の如き例においては「直系姻族」に準ずるものとして、拡張解釈を行うことが考えられる。すなわち、Aの母GとFとは事実上婚姻関係にあつたものであることを基礎とし、AとFとは事実上直系姻族と同様の関係にあつたものと解釈して、この両者の養子縁組関係を認めていこうとする方法である。(特に本件においては、Fは他に正妻はなく、かつFはAを認知している関係上、Aと母GとFとの事実上婚姻関係は相当の確信をもつて認定できるものである)。

〔別紙乙号〕

(昭和三五年五月二八日 年福発第一八六号)

(栃木県衛生民生部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)

本年三月十七日国年第一、六三七号をもつて照会のあつた標記設例については、左記理由等に基づき、条理上、法第八十二条第一項第二号の適用がないものと解すべきであるので、御了知ありたい。

1 養子縁組の基本をなす関係は、養親が養子の生計を維持することであるので、受給権者たる母が養子となつているときは、その母とその子がともに母の養親によつて生計を維持されているとみるべきであつて、その母と子との間には生計維持関係がなく、従つて、その母については、母子福祉年金の受給権は発生しないものとしたのが法第八十二条第一項第二号の規定の一般的な趣旨である。しかしながら、受給権者たる母がその直系姻族たる亡夫の父母等の養子となる場合においては、右のような場合と軌を一にすべきものではない。即ち、母子が亡夫によつて生計を維持されていたという場合は、亡夫と世帯を共にしたようなその父母等も亡夫によつて生計維持されていたのが通常であり、また、このような事情がないとしても、亡夫を中心とした親族間の情誼等に基づいて亡夫の父母等と受給権者たる母とが養子縁組をする場合は、かかる身分関係をもつて直ちに生計関係を擬制することは適当でないので、右に述べた一般的な趣旨が除外されて規定されている次第である。

しかして、受給権者たる母が「直系姻族以外の者」の養子となるのは、傍系血族、傍系姻族又は親族以外の者の養子となるのが通例であり、本法もこの場合を想定して規定したものであつて、照会設例のように一親等の直系血族たる父母の養子となるようなことは、観念的にはありうるとしても、本法の規定の先例とした厚生年金保険法第六十三条第一項第三号の場合の事例に徴してもなかつたので実際上は存在しないとの考えに立つたのであるが、その結果、文理上は直系血族も「直系姻族以外の者」に含まれると解される余地を生じたものである。しかしながら、直系血族たる父母は直系姻族よりも更に一層密接な関係があり、かつ、本項第二号の立法理由に照らしても特にこの場合を直系姻族との場合に比し厳格に取り扱う理由に乏しいのでかかる結論に達したものであること。

2 実子を養子とすることができるのは、照会設例の場合のような嫡出でない実子を認知しても子の父母同志の婚姻が何等かの事情で不可能であるため、子は民法第七百八十九条の規定によつて準正されることがないような場合及び実子でありながら何等かの事情で認知できないような場合に限られるものであり、これに対し、戸籍の異同にかかわらず、自己の日本国民である嫡出子や養子を更に養子とすることはできないものであることに留意されたいこと(別紙取扱先例参照)。

別紙 取扱先例

○自己の嫡出子又は養子を更に養子とすることは認められない。

(昭和二十三年一月十三日民事甲第一七号各司法事務局長あて民事局長通達)

十七 自己の嫡出子又は養子を更に養子とすることは、戸籍を同じくすると否とにかかわらず、新法施行後は認められない。

○昭和二十三年民事甲第一七号通達一七項中「養子」とあるのは、「自己の養子」の意である。

(昭和二十三年二月十七日戸第一七号松山司法事務局長照会、同年十月十五日民事甲第二〇七号民事局長回答)

読売新聞社発行の司法省民法調査室解説新民法早わかり附法律相談二四頁及び三五頁によれば、他家にある自己の嫡出子でも自己の養子とすることができるよう見受けられるが、これは昭和二十三年一月十三日付民事甲第一七号民事局長通達一七によつてこれを認められないと解すべきであるか。又同通達一七にいわゆる養子を更に養子とするとは、例えば他家の養子となつている自己の嫡出子を更に自己の養子とするような場合を指すものと解すべきか。

回 答

前問については貴見の通り。後問については、自己の養子を更に養子とする場合を指すのである。

○離婚復籍した台湾人は、内地在籍中に出生した自己の嫡出子を養子として差し支えない。

(昭和二十三年三月十一日日託戸第一一一号神戸司法事務局長照会、同年四月十六日民事甲第四五〇号民事局長回答)

七 台湾省に本籍ある者の男子が、日本内地人乙と入夫婚姻後入夫離婚したが、更にその者が(甲台湾人と乙日本内地人)婚姻して乙は台湾の本籍に入つたのでありますが、入夫婚姻中に甲乙間に生れた丙丁を甲乙が養子にしたいとの申出があります。この場合、民法によれば(通達一七参照)嫡出子を養子にできないことになつていますが、地域が異なる場合はその適用なく、養子とすることができますか。右養子ができなければ、民法第七百九十一条によつて入籍はできるでしょうか。

なお、台湾人が内地人を養子にしたり、或は入籍したりする場合は、すべて改正民法の要件だけでたりますか。

回 答

七 所問の場合、養子となることは差し支えないと解する。なお、台湾人の身分行為については、改正民法の適用がない。