添付一覧
○海難等の事故による行方不明者である夫に係る母子福祉年金の受給手続について
(昭和三四年一〇月二七日)
(年発第二三四号)
(各都道府県知事あて厚生省年金局長通知)
漁撈作業中において海中に転落した夫の死体が未発見であるため死亡届が提出されず戸籍簿上死亡による除籍がなされていない場合において、その妻についての母子福祉年金の取扱につき疑義がある向があるが、かかる海難事故及び風水害、火災その他の事故によつて行方不明の者については、左記による海上保安官署等の取調官公署の行う戸籍法第八十九条に規定する報告に基いて、同法第十五条の規定によつて市町村長が戸籍簿上死亡の記載をして除籍されることとなつているので、とりあえず、当該受給権者に対し所要の手続方を周知させて戸籍上の処理がなされた後において、裁定請求を行わせるよう然るべく取り計われたい。
なお、遺族からの海上保安官署その他の取調官公署への死亡認定願の手続要領及び当該事故に必要とされる認定資料等の具体例の詳細については、関係省庁と連絡のうえ通知する予定であるので申し添える。
記
1 海難については、別添の「死亡認定事務取扱規程」により海上保安官署によつて死亡が認定なされるものであること。
なお、右の死亡認定は、船員法第十九条の適用を受けない三〇噸未満の漁船に係る海難についてもなされることとなつており、また、死亡認定は海難発生の時から三箇月以上を経過したものについて行われるものであるが、この期間内においても遺族からの死亡認定の願出ができることとされていること。
2 陸上における事故についての取扱先例は、別記のとおりであること。
記
○ 死体が発見されないため死亡届に診断書又は検案書を添附することができないので、死亡を証する書面を添附して届出があつた場合の死亡届は、死亡発生地の市町村長に対し届出をさせるのが相当である。従つて、人口動態調査令に基いて作成される死亡票も、死亡発生地の市町村長がこれを作成するのが相当である。
(昭和二十五年六月八日附字戸発第七一三号山口地方法務局船木支局管内戸籍寄留事務協議会長照会、同年七月六日附民事甲第一、八二五号民事局長回答)
左記事例につき、死亡届に診断書又は検案書を添附してはないが、他の添附書類により死亡の事実を確認し得るとき監督法務局長の許可を得て受理した場合の死亡票は人口動態調査令第二条第三項同施行細則第一条第四項の規定により本籍地の市町村長が作成すべきであると考えますが聊か疑義がありますので禀伺致します。
記
1 炭鉱没或は爆発のため死体の収容不可能の場合
2 河川又は海洋に投身自殺した者で死体の発見できない場合
3 噴火口内に投身自殺して死体の引揚ができない場合
4 大火災にて焼死し遺骨の発見できない場合
回 答
いずれも事件発生地の市町村長に死亡届をさせ、死亡票は死亡届を受理した市町村長が作成するのが相当である。
○ 洪水の際誤つて激浪にまきこまれそのまま行方不明となつた者が、その後二箇年間を経過し、なお死体を発見できない場合の戸籍の処理方。
(昭和二十五年八月十五日附日記戸第二、〇〇〇号静岡地方法務局長照会、同年九月五日附民事甲第二、四二六号民事局長回答)
管内庵原郡松野村長から、数年前の洪水の際流木を拾うため、川の中程まで泳ぎ出て激流にまき込まれそのまま行方不明となり現在まで約二か年間捜索したがついに死体を発見することができず、死亡したものと認められるとの左記書面を添附した死亡届の受否につき当局に指示を求めて来たのでありますが、右は前橋司法事務局長照会昭和二十二年十二月四日民事甲第一、七一七号貴官御回答の趣旨に準じ、死亡届の受理を認容して差し支えありませんか。他に類似の事案も二、三ありますので御意見を御伺い申し上げます。
記
1 大洪水の際流木を拾うため川の中程まで泳ぎ流水にまき込まれそのまま行方不明となり、二箇年間捜索したるも全く死亡したものとみなすとの村長、駐在所巡査、目撃者、親戚の者の証明書
2 事件本人は右の事実により死亡したものと認め、戒名を附し(仮)葬儀を営みたることの親族及び僧侶の証明書
回 答
貴見の通り取り扱つて差し支えないものと思考する。
(註) 実例編死亡及び失踪(旧)の(一〇四)参照。
○ 生きうめになつた事実を現認した者が九歳の学童である場合は、その者の現認証及び警察官の状況調査書等を添附させた上、監督庁の許可を得て死亡届を受理する。
(昭和二十四年九月二十、二十一日山形地方法務局管内第二十九回新庄地区管内戸籍事務協議会決議)
左記の場合死亡届を如何にするか。
地すべりのため埋没した事は周囲の状況から推して確実なるも埋没を現認したる者は無能力者(九歳の学童で埋没した子と同級生である)たる子供であるが他に確実なる現認を証明する者が居らない、尚死体の発掘が絶望である。
決 議
その子供の現認証及び警察官よりの状況調書等を添附させて指示を受ける。
○ 戦時中空襲により死亡したにもかかわらず、戸籍上の手続が未済である者の処理方
(昭和二十五年岡山地方法務局管内戸籍事務協議会決議)
一六い 戦時中空襲により死亡した旨の当時の目撃者ではないが、その者の配偶者、父母および子から事実に相違ない旨の証明書を添附した死亡届は受理できないか。
ろ 右事例の場合に、戦時中外地に居住していた者が内地に引揚後、その者の父母および子が内地の空襲の際に死亡した旨を当時の目撃者である知人の者から聞くことができたが、目撃者は現在所在不明であるとき、右引揚者が死亡届書(±)欄の届出人の資格以外で、その旨の書面を添附して届出た場合は、受理してよいか。
は 戦時中空襲による戦災死者で、未だ戸籍消除未済の者は、現在でも戸籍法第八十九条により、その取調をした官庁又は公署と連絡して、死亡地の市町村長へ死亡の報告をして貰うより外途はないか。
決 議
い 意見の通り。
ろ 受理できない。
は 意見のとおり。ただし、失踪宣告の手続によることができる。
○ 河川の決壊又は山津波等のため行方不明となり生存の見込のない者に関する戸籍の取扱
(昭和二十八年七月二十五日付日記第二、九一〇号和歌山地方法務局長照会、同年八月三日付民事甲第一、三二八号民事局長回答)
水難による行方不明者の戸籍事務取扱方について
本月十八日の当県下水害による河川の堤防決壊又は山間部落の山崩れ等により地理的にみて流失又は埋没したことが明らかであり、且つ次の状況により死亡が推定される場合であります。
即ち、有田川については、川岸附近の家屋が激流に流されたため、多数の人が屋上に上り急流を下つた結果同川口に残つた唯一の橋りように家屋及び人が激突(頭部その他を橋に突当てた者大部分ある趣)し、水中に没した模様であります。
また、山村にあつては山津波により土砂が崩れ落ち天然ダムが何箇所もできた状態で、右山崩れのため人家が土中深く埋没した部落(役場を含む)もあり発掘の見込なき旨の報告に接しています。
前記事案について、遺族から死亡の申出あつた場合も、警察官公署が戸籍法第八十九条による死亡報告をすることができないものと解されますが、県下の被害状況を推定するとき、前記行方不明者が相当数に上り且つ、管内市町村からその取扱方につき照会があるので特にお伺いする次第であります。
回 答
行方不明者については、左記の通り先例(昭和二十二年十一月十二日日記第一、二三八号前橋司法事務局長代理照会、同年十二月四日民事甲第一、七一七号民事局長回答)に準拠して取り扱つて差しつかえない。
1 死亡診断書又は死体検案書に代え、左記のような証明書を添附して戸籍法第八十七条所定の者から死亡の届があつたときは、監督の局の長の指示を得て受理する。
(1) 事件本人は遭難直前までその家屋に現住していたが、山津波のため家屋が倒壊埋没し又は洪水のため流失し、生存の見込のないことの近隣の証明書
(2) 事件本人は、右災害のため死亡したものと認め、葬儀を営んだことの親族及び僧侶の証明書
2 戸籍法第八十七条所定の死亡届義務者がない場合、市町村長は前項の証明書類に基き監督の局の長の許可を得て職権で死亡の戸籍記載をする。
○ 洪水のため遭難したが、死体の発見されない者の戸籍の取扱
(昭和二十八年八月二十九日付日記戸第二、三五〇号熊本地方法務局照会、同年九月十一日付民事甲第一、六一〇号民事局長回答)
本年六月二十六日の当県下大洪水によつて数百名の死者を出したるも死体いまだ発見されないもの相当数あり、しかも夜間の洪水のため死者の大部分については遭難現認者なく、死亡届出に支障を来しておりますが、右の場合前橋司法事務局長代理間合せに対する昭和二十二年十二月四日付民事甲第一、七一七号貴官回答の趣旨に準じ取扱い差しつかえありませんでしようか。
回 答
引用の先例の趣旨により取扱つて差しつかえない。なお、七月二十五日付和法戸日記第二、九一〇号和歌山地方法務局長照会に対する八月三日付民事甲第一、三二八号本官回答を参照されたい。
○ 洪水のため溺死したと認められる者の死体が発見されず、死亡現認者は一四歳の無能力者一人のみで、他に死亡を確認すべき資料がない場合の戸籍の取扱
(昭和二十七年十一月八日、九日、十日広島県戸籍事務協議会決議)
1 洪水の際誤つて橋から転落して溺死したものであることは確実であるが、死体が発見されずこれを確認したものは無能力者(同級生で一四歳)のみで、他に確実な現認を証明する者がない場合、その子の現認書のみで死亡届出ができるか。
決 議
問意の通り。その受理については法務局の指示による。
○ 数年来行方不明となつていた者が、他人から殺害されたものとして刑事判決があつたが、死体が海中に投棄されたため発見されない場合の取扱
(昭和三十年十一月二十二日付戸発第七三二号山口地方法務局長照会、同年十二月五日付民事(二)発第五九三号民事局第二課長回答)
当庁管内戸籍事務協議会における決議事項の施行認可に当つて、次の諮問についていささか疑義がありますので、何分の御指示を得たく、末尾に小職の卑見を附して御伺いいたします。
記
3 数年来行方不明の者が実は他人から殺害され、死亡と看做される場合(犯人の自白により、他の犯罪と併合審理の結果一応裁判所の有罪判決があつたが、死体は夜中海中に投棄されたため発見されていない)、戸籍法第八十九条の適用があるか。
(決) 適用なし。多数意見
適用あり。少数意見
右に対する小職の卑見としまして、
問題の3については、
多数意見を相当とする。
回 答
3 貴見のとおりであるが、所問のような場合は、殺害された者の本籍地市町村長は、戸籍法第四十四条第三項、同法第二十四条第二項及び第三項の規定により、死亡の記載をするのが相当である。
○ 炭坑爆発により死亡した者につき死体を発見しない場合には取調をした官公署から死亡報告をすることができる。
広島県芦品郡福相村助役伺(大正四年五月二十二日民事第六五号)
1 近時所々ニ於テ炭坑爆発ノタメ変死者数多有之何レモ死体発見不仕何斯者ニ対シ別紙認定書ノ如キ書面ヲ添ヘ死亡届ヲ差出シタル場合受理シ差支無之候哉右ハ失踪宣告ノ手続ニ依ルヘシトノ反対説アルモ失踪宣告ハ多数ノ費用ト日数トヲ要シ当事者ノ迷惑不尠候元来右ノ如キ事変ニ際シ事変後数日若クハ数十日経過後ニ於テ生存者ハ決シテ無之為メニ生存者ヲ死亡者トシテ抹消スル虞無之ト確信仕候万一有之トスルモ戸籍訂正ニ依リ救済ノ途モ有之ニ付旁受理スルヲ正当ト信シ申候如何可有之哉
(別紙)
法務局長回答(大正四年六月十二日民第七八四号)
第一項 死体ヲ発見セサルモ生死不明者ニ非スシテ全ク死亡者タルコトノ顕カニ確認セラルル場合ニ於テ戸籍法第百十九条ノ規定ニ依リ其取調ヲ為シタル官庁又ハ公署ヨリ死亡ノ報告アリタルトキハ之ニ基キ戸籍ノ記載ヲ為スヘク医師ノ認定書ノ如キ書面ヲ添附シタル死亡届ハ之ヲ受理スルコトヲ得ス
○ 同旨
北条区裁判所判事問合(大正五年六月二十四日日記第三一一号)
水難者死体不明ナル場合ニ於テ別紙写ノ如キ証明書ヲ添ヘテ死亡届義務者ヨリ死亡届ヲ為シタルトキハ大正四年二月十九日外務省通商局長ノ照会ニ対スル貴省法務局長回答ノ趣旨ニ依リ該届書ヲ受理スルモ差支無之候哉
(別紙)
法務局長回答(大正五年六月二十九日民第一、〇二四号)
戸籍法第百十九条ニ依リ遭難ノ取調ヲ為シタル官庁又ハ公署ヨリ死亡ノ報告アリタルトキハ之ニ基キテ戸籍ノ記載ヲ為スヘク証明書ヲ添附シタル死亡届ハ之ヲ受理スルコトヲ得サルモ此場合死亡ノ事実ヲ確実ナリト認ムルニ於テハ戸籍法第六十四条ニ依リ第三十九条第三項ノ手続ヲ為シタル上区裁判所ノ許可ヲ得テ戸籍ノ記載ヲ為スヘキ儀ト思考致候
○ 市町村長が水難の取調をした場合には非本籍者については死亡報告をし本籍者については直ちに死亡調書を作り戸籍の記載をする
北海道浦河郡萩伏村長伺(大正四年六月十二日第九七号)
沿海遭難其他河川ニ於テ衆人ノ目前ニテ舟楫転覆等ニ依リ死亡シタルコトハ確証之ヲ認ムルモ死体カ遂ニ発見セサル為メ戸籍法第百十六条ノ届出ヲ為スコト不能ニヨリ従来ハ失踪ノ手続ニ依ラシムルモノトシテ取扱ヒ来リ候処本年二月八日通送第七号外務省通商局長照会ニ対シ同月十九日民第二二四号貴省法務局長御回答ノ要旨ニ依レハ本文ノ場合ニ於テハ非本籍者ニ係ルモノハ本職ヨリ取調ヲ為シタル上之ヲ本籍地市町村長ニ死亡ノ報告ヲ為シ本籍者ニ対シテハ直ニ死亡調書ヲ作リ戸籍ノ抹消手続ヲ為シ可然哉
法務局長回答(大正四年七月十三日民第一、〇二二号)
水難救護法ニ依リ市町村長カ水難ノ取調ヲ為シタル場合ニ於テハ貴見ノ通取扱フヘキ儀ト思考致候
○ 同旨
静岡県榛原郡地頭方村長伺(大正八年十月二日日記第八〇号)
沿海ニ於テ鰹漁発動機船暴風雨ニ遇ヒ船体顛覆シ乗組員全部行方不明トナリ死体等発見セサルモ当時ノ状況及其後今日ニ至ルマテ為シタル取調ニヨリ死亡セシモノト確実ニ之レヲ認ムルコトヲ得斯ノ如キ場合ハ大正四年六月十二日北海道浦河郡萩伏村長稟伺ニ対スル同年七月十三日民第一、〇二二号法務局長御回答ノ趣旨ニ依リ取扱可然トハ存候得共種々取調ニ日数ヲ費シ事件発生後一カ年ヲ経過シ延滞ノ恐アルモ今日ニ於テ非本籍ニ係ル分ハ死亡報告ヲ為シ本籍者ハ死亡調書ヲ作リ戸籍法第百十六条ノ規定ニヨリ抹消手続ヲ為シ可然哉
民事局長回答(大正八年十月十四日民事第四、五五一号)
市町村長カ水難救護法ノ規定ニ依リテ取調ヲ為シタル結果死亡者アルコトヲ認メタルトキハ貴見ノ通リ取扱フヘキモ否ラサル場合ニ於テ死亡確実ト認メタル者ニ付テハ戸籍法第六十四条ノ手続ヲ経ルヲ相当ト思考致候