添付一覧
○国民年金法に関する疑義回答について(その十五)(抄)
(昭和三五年六月一七日)
(年福発第二〇三号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省年金局福祉年金課長通知)
最近における各都道府県よりの照会に対する標記回答について、別紙のとおり写を送付するから御了知のうえ、事務処理上の参考とされたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(別紙1)
○無医地区以外の特殊な状況下になされた申立書による裁定請求の取扱について
(昭和三五年三月一四日)
(35国第一〇四六号)
(厚生省年金局福祉年金課長あて岐阜県厚生部国民年金課長照会)
さきに貴職より通達のあつた離島僻地等無医地区における障害福祉年金受給権者の取扱については、御指示どおり一応申立書により裁定請求書を受理し、医師の派遣あるいは、身体障害者福祉法による巡回診査更生相談等の機会を利用し処置したところであるが、今回左記理由により廃疾認定診断書の作成困難なものがあり、特殊なケースとして障害の状態が一見明確な場合に限り(全盲、先天性全聾、両上下肢切断等)廃疾に関する申立書のみにより裁定、障害福祉年金を支給し、後日適当な時期をみて医師を派遣するか又は近傍の専門医の診断を受けさせ廃疾程度を認定し裁定するよう取り扱つてよろしいか。
なお、後日においても医師の診断を受けることが不可能と認められる場合には、医師をして受給権者を監察せしめその所見による医師の証明書によつて裁定するよう取り扱つてよろしいか。
記
一 該当者年齢性別
1 昭和十年生れ 二四歳 男性
2 昭和四年生れ 三一歳 男性
一 診断書作成困難な理由
両者共先天性全聾にしてやや精神障害があり、家族以外の誰にも全く面接せず、且つ屋内に籠居就床し医師の診断を受けるべく再三勧誘したところ、家族は勿論役場吏員等周囲の者に相手かまわず、俄然狂暴性を発揮し暴力をもつて医師の診断を拒否する状態にて困却の末、申立書により裁定請求をするに至つたものであります。
(昭和三五年四月三〇日 年福発第一四六号)
(岐阜県厚生部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)
本年三月十四日三五国第一、〇四六号をもつて照会のあつた標記については、障害福祉年金の受給権の裁定は、あくまで医師の確実な診断に基づき、廃疾の程度が国民年金法別表一級に該当するものと認定しえたときでなければ行なうことはできないものであるから、受給権者の単なる申立書に基づいて行なうことは無論のこと、受給権者が医師の正式な診断を拒否する限り、裁定することはできないので、遺憾のないようされたい。
(別紙4)
○福祉年金の支給に関する疑義について
(昭和三五年四月一六日)
(滋国発第一〇六号)
(厚生省年金局福祉年金課長あて滋賀県厚生部国民年金)
(課長照会)
福祉年金の支給に関し左の事項の取扱について疑義がありますので御教示下さい。
記
問1 母と子の生活の状況その他が左のような場合において、男には法律上の妻があり、母の婚姻関係は成立し得ないものと認められるが、現在事実上婚姻関係にあるものも母子福祉年金の受給権がないものとされていることに鑑み、この事例についても事実婚があるものとして、その母は受給権がないものと解して差支えありませんか。
母子の生活状況 五年前に夫と死別し、その夫との間に五人の子(母子福祉年金の支給および加算の対象の子四人)がある母が、夫の死亡後、妻(法律婚)および子四人のある男と交際する中二人の子(認知はなく母の子として入籍されている。)をもうけている。当初その男は母の家族とは別居していたのであるが、昨年八月の風水害により男の住宅が倒壊したため、その倒壊した住宅の古材をもつて母の住宅の増築を行い、その増築した部分に男の家族全員が居住している。なお、食生活は両世帯の家族の全員が同一としている。
母子の生計の状況 両世帯の家族の生計は同一であつて、母および男はそれぞれ屑物商を営み、それぞれが収入のあつたときにその収入を両世帯の生計費に充当し、共同した生計が行われている。なお、母の世帯は生活保護法による生活扶助を受けている。
家族の状況
母子の家族 母、死亡した夫の子四人(外に子一人他府県に出稼中であるが未成年であり母子に対する仕送りはない。)および夫の死亡後出生した子二人計七名
男の家族 男、その妻および子四人(義務教育中)計六名
問2 昭和三十四年分の所得税に関し国民年金法に基く福祉年金の支給停止の基準となる金額を定める政令により扶養義務者の扶養親族が五人未満のときは、その数に応じてその所得税額が定められているが、その扶養親族がないとき、たとえば老齢又は障害福祉年金の受給権者の所得税額が所得税法第八条に定める額(五万円)をこえるため所得税の計算においては扶養親族とされないものであつて、その扶養義務者にその他の扶養親族もないときは、扶養義務者と受給権者との間に生計維持関係はないものと認定し、法第六十六条第五項の適用はないものと認定して差支えありませんか。なお、差し支えないとすれば、受給権者が扶養義務者の所得税法第八条に定める扶養義務者とされないときは、常にその間に生計維持関係はないものと認められるので、従前の通達の趣旨との関連においてお尋ねします。
(昭和三五年五月一九日 年福発第一七七号)
(滋賀県厚生部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)
本年四月十六日滋国発第一〇六号をもつて照会のあつた標記について、左記のとおり回答する。
記
1 問1については、母はその男との間に事実婚関係にあるということはできないので、母子福祉年金の受給権はあるものと認定すべきものであること。
なお、夫の死亡後その男との間に生まれた子二人は年金額の加算の対象とはならないこと。
2 問2については、本年四月二十五日年福発第一四三号各都道府県民生主管部(局)長あて小職通知「扶養義務者の所得税法上の扶養親族がいない場合における法第六十六条第五項に規定する福祉年金の支給停止の基準となる金額について」により了知されたいこと。
(別紙6)
○国民年金法の疑義について
(昭和三五年三月二四日)
(35国年発(本)第三号)
(厚生省年金局福祉年金課長あて長崎県民生労働部長照会)
標記の件について、左記事項取扱上疑義を生じましたので至急御指示願いたく御照会します。
記
1 国民年金法第八十二条第一項第二号に云う直系姻族とは、母子福祉年金の受給権が発生する夫の直系尊族のみの取扱いと解すべきが妥当と考えられるが、民法上では、同法第七百二十八条第二項に基づき、姻族関係終了の意志表示として姻族関係終了届を届出ない限り再婚しても、前夫及び後夫双方の血族共に姻族関係が存在するとも解されるので何れによつて取扱つたらよいか。
2 妻が実子を出生と同時に、妻又は夫の親の子として入籍した場合(法的には虚偽の届出をしたこととなる)戸籍変更の審判が行われない限り、当該妻の子として取扱うことはできないと考えるが如何。
なお、妻の実子として取扱うとした場合、之を裏付ける根拠は何によるべきか。
3 男Aが戸籍法上の妻BにCの養子となる縁組を委託し戦地に赴いたが、その手続前にAが死亡(一八・一二・二七)したため、Bは他男Dと再婚した。
その後Dも死亡(二九・九・一一)したので、Bは前夫Aの委託を履行した場合、母子福祉年金の受給権はB及びDの関係に於いて発生するが、CがBの直系姻族以外の場合、A又はBとCとの養子縁組(委託確認)の効力がAの死亡日に遡及するか否かで、法第八十二条第一項第二号該当の有無を論ずることとなるので、次の事例の取扱いについて御指示下さい。
イ A及びBが共に養子となるCとの縁組委託確認の届出を行つた場合
ロ BがCと養子縁組をし、その後Aのみの委託確認届出を行つたが、現にA及びBが共にする戸籍変更がなされていない。
(昭和三五年五月三〇日 年福発第一八七号)
(長崎県民生労働部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)
本年三月二十四日三五国年発(本)第三号をもつて照会のあつた標記について、左記のとおり回答する。
記
1 照会事項の1については、後段お見込のとおり解すべきこと(別紙1 取扱先例その(1)参照)。
2 照会事項の2については、お見込みのとおり、妻の子として取り扱うことはできないものであること。
なお、子の身分関係についての客年十月七日年福発第一三三号各都道府県民生主管部(局)長あて小職通知「国民年金法に関する疑義回答について(その六)」別紙9の回答左記13は、本件照会のように自然血族であるが、出生の当初から戸籍上親子として記載されていない場合を想定しているものであり、本年三月八日年福発第七六号貴職あて小職回答にかかる設例のように、戸籍に記載されている者を正規の手続をもつて他に養子縁組をした場合と趣を異にするものであるので、御留意ありたいこと(客年十月二十六日年福発第一八〇号各都道府県民生主管部(局)長あて小職通知「国民年金法に関する疑義回答について(その八)」別紙13の回答参照)。
3 照会事項の3のイについては、前夫A及び妻BがともにCの養子となる縁組委託確認の審判に基づいて行なわれた養子縁組の効力は、戸籍上の届出によつてAの戦死のときにさかのぼつて生ずるものであるので、BはAの死亡と時を同じくしてCの養子となつたことにより、法第八十二条第一項第二号にいう「夫の死亡後に養子となつた場合」に該当しないので、Bに受給権はあるものであること。
右に反し、BがA及び後夫Dの死亡後、単独でCの養子となつた後、Aが養子縁組に関する委託確認の審判に基づいてCの養子となつた場合のように、本来民法第七百九十五条の規定により夫婦はともに養子縁組をしなければならないにかかわらず委託確認審判という特殊な事情によつて夫婦別個に養子縁組が行なわれた場合は、Aの養子縁組の効力は戸籍上の届出によつて戦死のときにさかのぼつて生ずるものであるが、Bの養子縁組の効力はその届出のときから生ずるものであるので、照会事項の3のロに掲げる設例の場合、BはDの死亡後、直系姻族以外のCの養子となつたこととなり、同号の規定に該当し、受給権は発生しないものであること。
なお、設例のロによれば、「BがCと養子縁組をし、その後Aのみの委託確認届出を行なつたが、現にA及びBがともにする戸籍変更がなされていない。」とあるが、照会別添の戸籍謄本の写では養子Aと養女Bは、同日付で両者ともにCの養子となる縁組の届出が行なわれたようにも見受けられるので、この点、委託確認の審判書等に基づき検討のうえ、慎重に処理されたいこと(別紙取扱先例その(2)及び昭和十五年法律第四号参照)。
別紙
取扱先例その(1)
○前婚の姻族関係を継続したままで、再婚することは自由である。
(昭和二十三年三月十七日戸第六〇号)
(札幌司法事務局長照会、同年四月二十一日民事甲第六五八号民事局長回答)
姻族関係終了の届出は、専らその者の自由意志に属し、姻族関係を消滅せしめずして、婚方の氏を称しつつ転婚し得るものと解するが、先般家事審判法普及のための座談会のラジオ放送の際、右転婚及び配偶者死亡による実方へ復氏の場合は、必ず姻族関係終了届をしなければならないよう聴取せられたが、前記解釈は誤りでしようか。
回答
前段貴見のとおり
○生存配偶者が再婚しても、前の婚姻による姻族関係は消滅しない。
(昭和二十三年二月十三日日記第六五号)
(広島司法事務局長照会、同年四月二十日民事甲第二〇八号民事局長回答)
婚姻によつて氏を改めた者が、婚姻解消後更に婚姻をしたときは、前婚によつて生じた姻族関係は消滅するか。
回答
配偶者の死亡によつて婚姻が解消したときは、生存配偶者が更に婚姻しても、戸籍法第九十六条の届出をしなければ、前の婚姻による姻族関係は終了しない。
取扱先例その(2)
○夫甲死亡後遺妻乙が丙丁夫婦の養子となつてその戸籍に入つた後、亡甲と丙丁間に縁組届出の委託確認の審判があつた場合の取扱
(昭和二十七年十一月二十四日付日記第三、三五二号)
(高松法務局長心得照会、同年十二月二十七日付民事甲第九〇八号民事局長回答)
別紙事案につきいずれにより処理するのが相当でしようか、至急何分の御教示願いたくお伺いする。
別紙
A戸籍の甲男は昭和二十年七月二十七日戦死したので、遺妻乙女は昭和二十三年四月二十日B戸籍の丙丁の養子となり、次で分籍して戊男と妻の氏を称する婚姻によりC戸籍を編製した。その後、B戸籍の丙丁とA戸籍甲男との、養子縁組に関する委託確認の審判があつた場合、その届出並びに戸籍の処理について
甲説 委託確認の審判書を添附して、養親たる丙丁と、受託者から養子縁組の届出をなさしめる。
遺妻は亡夫とともに縁組をする必要はない。
理由 遺妻の乙女については、亡夫甲男の養子縁組に関する委託確認を得てその届出がなされる場合、夫の死亡により婚姻解消後であつても、妻に氏の変動なく、先夫の戸籍に在籍する場合には昭和二十七年七月十五日日記第二三号福岡県大橋村長照会に対する同年八月二日民事甲第一、一四六号回答により遺妻もともに、縁組の当事者とならなければならないが、本件のごとく、夫婦の婚姻が解消後、夫の確認による縁組の届出前、妻は既に単独で縁組の届出がなされ、亡夫と氏を異にした場合にありては、妻は亡夫の委託による縁組届の当事者としてともに届け出ることを要しないと解するのが相当である。
右の場合養父母の身分事項欄
妻丁(夫丙)とともに甲(昭和年月日死亡)を養子とする縁組届出確認の裁判により昭和年月日届書提出(印)
養親の戸籍中養子甲の身分事項欄
丙同人妻丁の養子となる縁組届出昭和年月日附確認の裁判により受託者丙丁届書提出年月日受付郡村番地甲戸籍より入籍(印)
昭和年月日死亡(印)
養子甲の実方戸籍については、市町村長は職権により消除した戸籍を回復し、甲の身分事項欄に
丙同人妻丁の養子となる縁組届出昭和年月日附確認の裁判により受託者丙丁届書提出年月日受附郡村番地丙戸籍に入籍につき除籍(印)
と記載する。
乙説 遺妻乙は、丙丁及び受託者とともに縁組の当事者として届け出なければならない。
理由 甲男の委託による縁組の届出は、市町村長の受理により、死亡の時に届出があつたものとみなされるので、死亡と同時に丙丁の養子たる身分を取得する。しかして、縁組は夫婦はともにしなければならないことを原則とし、夫婦各別の縁組は認められないところであるから、甲男の縁組があつたとみなされその効力が発生する際において、甲男の妻たる身分を有していた乙女は、右縁組の届出前、自己の行為により身分に変動を来しておる場合であつても、亡夫とともに縁組の当時者として届出をなし、単独になしたる丙丁との養子縁組に関する事項は戸籍訂正手続により訂正すべきである。
戸籍の処理については、養父母の身分事項欄は
妻丁(夫丙)とともに甲(昭和年月日死亡)同人妻乙を養子とする縁組届出確認の裁判により昭和年月日届書提出(印)
養子甲の身分事項欄
妻乙とともに丙同人妻丁の養子となる縁組届出昭和年月日附確認の裁判により受託者丙丁届書提出年月日受附郡村番地甲戸籍より入籍(印)
昭和年月日死亡(印)
養親の戸籍中単独縁組入籍した乙の身分事項欄
夫甲とともに養子となる縁組届出確認の裁判により昭和年月日届書提出月日入籍(印)
昭和年月日夫甲死亡(印)
と記載する。
甲の実方戸籍中甲の身分事項欄
妻乙とともに丙同人妻丁の養子となる縁組届出昭和年月日附確認の裁判により受託者丙丁届書提出月日受附郡村番地丙戸籍に入籍につき除籍(印)
同上単独縁組除籍された乙の身分事項欄
夫甲とともに養子となる縁組届出確認の裁判により昭和年月日届書提出月日除籍(印)
昭和二十七年(家)第三二四号
[様式ダウンロード]
回答
甲説によつて処理するのが相当と思考する。
委託又ハ郵便ニ依ル戸籍届出ニ関スル件
(昭和十五年三月二十三日法律第四号)
第一条 戸籍届出ノ委託ヲ為シタル後届出人死亡シ其ノ死亡後其ノ委託ニ基キ届書ノ提出アリタル場合ニ於テハ届出人カ戦時又ハ事変ニ際シ戦闘其ノ他ノ公務ニ従事シ自ラ戸籍ノ届出ヲ為スコト困難ナルニ因リ其ノ委託ヲ為シタルモノナルコトニ付裁判所ノ確認アリタルトキニ限リ戸籍吏其ノ届書ヲ受理スルコトヲ得
② 前項ノ届書ニハ其ノ事由ヲ記載シ且前項ノ確認アリタルコトヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
第二条 前条第一項ノ確認ハ受託者ノ申立ニ依リ届出人ノ最後ノ住所地ヲ管轄スル区裁判所ニ於テ非訟事件手続法ニ依リ之ヲ為ス
② 前項ノ申立ヲ却下シタル裁判ニ対シテハ利害関係人モ亦抗告ヲ為スコトヲ得
第三条 第一条ノ規定ニ依ル届書ノ受理アリタルトキハ届出人ノ死亡ノ時ニ届出アリタルモノト看做ス
第四条 届出人ノ生存中郵送シタル戸籍ノ届書ハ其ノ死亡後ニ於テモ戸籍吏之ヲ受理スルコトヲ得
② 前条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
附 則
① 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム(注昭一五・四・一施行)
② 本法施行前届出人ノ死亡後委託ニ依ル戸籍ノ届出ノ受理セラレタルモノアル場合ニ於テハ本法施行後利害関係人ハ其ノ委託ニ付裁判所ニ確認ノ申立ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第二条及第三条ノ規定ヲ準用ス
③ 裁判所前項ノ確認ノ申立ヲ却下シタルトキハ遅滞ナク届出事件ノ本人ノ本籍地ノ戸籍吏ニ其ノ旨ヲ通知スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ戸籍法第三十九条第一項及第二項ノ規定ヲ準用ス
④ 第四条第二項ノ規定ハ届出人ノ生存中郵送シタル戸籍ノ届書カ本法施行前届出人ノ死亡後受理セラレタル場合ニモ之ヲ適用ス
(別紙8)
○母子福祉年金額改定の取扱いについて
(昭和三五年四月二二日)
(35年発第二一二号)
(厚生省年金局福祉年金課長あて福岡県民生部長照会)
左記事例のように法第六十一条にいう義務教育を一五歳に達する以前に終了し、当該事由をもつて、年額改定の届出があつたときは法第六十三条第三項第二号の規定に該当するものとして年金額改定の処理を行なつて差支えないものと考えられますが、学校教育法に基づく義務教育就学年齢前に就学したものについては、卒業後も義務教育の年齢にあることをもつて法第六十三条第三項第二号の改定理由に該当しないものとも考えられますので、この取扱いについて御教示願います。
記
加給の子の生年月日 昭和二十年六月八日
同右の子の義務教育終了年月日 昭和三十五年三月十一日
(備考) 加給の子の出生について戸籍記載事項に「昭和三十五年一月三十日届出とあり
母子福祉年金額改定の取扱について
(昭和三五年六月一六日 年福発第一九一号)
(福岡県民生部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)
本年四月二十二日年発第二一二号をもつて照会のあつた標記については、設例の如く、子が学校教育法による義務教育就学年齢前に就学したため、通常の状態において義務教育を終了すべき学年(一五歳に達する日の属する学年)の末日以前においてすでに義務教育を終了した場合にあつては、通常の状態において義務教育を終了すべき学年の末日までは、母子福祉年金支給の対象となる子と認められるものであるので、設例の場合は、法第六十三条第三項第二号に該当しないものとして年金額を改定する必要はないので御了知ありたい。
(別紙9)
○労働基準法による障害補償について
(昭和三五年四月二二日)
(発国第一七一号)
(厚生省年金局福祉年金課長あて宮崎県民生労働部国民年金課長照会)
両下肢完全麻痺のため一級該当と認定された受給権者の廃疾の原因となつた事故が業務上であるため、雇傭主と受給権者及び労働基準監督署三者話合の上一五万円を月五〇〇〇円、三〇回の分割払として雇傭主が支払うことに決定したが(別紙申立書の通り)その後雇傭主は、事業に失敗し一回の支払も行わずに行方不明となり現在まで放置され、その間再三労働基準監督署に懇請したが別紙写の通りの回答を受けたのみで未解決の状態であります。
役場吏員からの連絡によれば
本人は現在、症状が悪化し危篤の状態にあるとのことでありますがこの様な場合法第三十六条に規定されている「給付を受けることができるときは」に該当するか否か疑義を生じましたので御教示下さい。
別紙
事実申立書
本籍地 椎葉村大字下福良五九五番地
甲斐澄夫
使用者 諸塚村在住村部徳市
右の者昭和三十三年七月初めに諸塚村発電工事に使用する石取場の人夫として雇用され作業中、同年十月二十七日作業中落下し別紙診断書の通り負傷し直ちに諸塚診療所へ収容手当したるも全快せず現在も就床中である。私としても作業中の事である為災害補償について相手方に請求せるも保険にも加入しおらず、又使用者としても補償する能力もなく私としても非常に困つたのでありますが数回に亘り相手方に請求せずも応ぜず私は延岡労働基準局へ相談し基準局より取り立て補償して戴く様依頼せるも相手方が応ぜず治療薬のみ相手方が支持する様話合す然るに私としても一生不具と成つた澄夫の事を考えると医師代のみでは如何にしても今後の澄夫の生活問題もあつて再三基準局へ出頭し相手方へ請求方依頼し、昭和三十四年一月、基準局、私、相手、三者の話合で一か月金五〇〇〇円宛今年三月より向う三〇か月間支持する契約を致したのでありますが、現在に至るも一回も支払無く契約を履行せず現在では共の使用者であつた村部徳市(諸塚村在住中であつたが十月始め転出し現在行方不明である附近の人の話では妻方面へ行つたとの事であるが住所不明)不在の為現在では請求も出来ず私の考えでは相手の現在の経済状況からして支払不能であると思われますので右申し立てします。
基準局、私、村部氏、三者の契約は昭和三十四年三月分より月五〇〇〇円宛向う三〇か月金一五万円也支払するとの契約を今年の一月にしたのであります。
右の通り事実申立てます。
昭和三十四年十一月三十日
甲斐澄夫
実父 甲斐勝四郎
宮崎県知事 黒木博 殿
諸塚村塚原村部徳市のことについて
(昭和三五年四月一二日 延岡基署発第一九七号)
(椎葉村長あて 延岡労働基準監督署長通知)
さきに当署職員を通じ要請がありました甲斐澄夫の生活保護法適用に関する村部徳市の災害補償能力について左記の通りお知らせします。
記
村部徳市は過般来の事業に失敗の為め負債累積し生活にも困難を来たしている状態でありますので甲斐澄夫に対する災害補償義務の履行は期待し得ない状態であります。
災害補償のことについて
(昭和三五年四月一二日 延岡基署発第一九七号)
(甲斐澄夫あて 延岡労働基準監督署長通知)
村部徳市の貴殿に対する災害補償義務については事件発生以来当署の支払勧告其の他あらゆる努力にもかかわらず相当年月を経過し尚未解決の状態にあり甚だ遺憾に堪えない次第であります。
しかしながら村部徳市は過般来の事業失敗のため負債累積し主なる財産は全て差押えられている状態でありますので当署が取り得る行政的司法的、処分を以てして解決は困難の状態であります。
よつて貴殿におかれては民事的手続(裁判所に対し支払命令、調停訴えの申立等)を取られるのも一方法と思料しますので御通知します。
労働基準法による障害補償について
(昭和三五年六月一六日 年福発第一九七号)
(宮崎県民生労働部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)
本年四月二十二日発国第一七一号をもつて照会のあつた標記の件については、左記のとおり回答する。
記
法第三十六条に規定する「給付を受けることができるとき」とは、受給権者が労働基準法第七十七条に規定する障害補償の債権を有するときを建前とするが、照会事例の如く、事実上、給付を受けることが不可能であり、かつ、その事実が労働基準監督署長等の証明等により明らかである場合に限つて「給付を受けることができるとき」に該当しないものとして障害福祉年金の支給停止の措置をしなくても差し支えない。しかして、受給権者が障害福祉年金の支給を受けた後において、使用主の住所が判明し、かつ、資力を回復したこと等によつて受給権者が障害補償を受けることができるときは、法第三十六条の規定が遡つて適用されることとなるので、御了知ありたいこと。
(別紙10)
○国民年金法に関する疑義について
(昭和三五年四月二三日)
(国年第一七八一号)
(厚生省年金局福祉年金課長あて熊本県民生労働部長照会)
右のことについて別添のとおり疑義がありますので御教示願います。
なお、疑義(1)については本年六月一日より受給権者が提出する現況の届出でありますので至急御回報下さいますようお願い致します。
おつて、昭和三十五年三月九日付国年第九三二号をもつて照会しました疑義につきましても併せて御教示下さいますようお願いします。
1 福祉年金支給規則(以下「規則」という。)第三条第一項第一号(第十六条第一項第一号及び第二十一条第一項第一号を含む。)の規定により福祉年金裁定請求書に住民票の謄本を添付するのは単に受給権者の住所をこれによつて確認するにとどまらず、(住所確認のみであれば抄本で足りると解される。)扶養義務者の扶養事実の確認、未届の配偶者の確認等をも併せて行なうために必要である(昭和三十四年十月六日年福発第一二六号回答左記2、疑義回答集(その六)別紙9)と解されるが、規則第五条(第十八条及び第二十五条を含む。)の規定によつて提出する福祉年金所得状況届(以下「定時の所得状況届」という。)では住民票の謄本が添付されないので、福祉年金所得状況届の記載事項によつてのみこれ等の事実を確認しなければならないこととなり、初度裁定時に住民票の謄本を添付させた趣旨が貫ぬかれないことになると解されるが定時の所得状況届の際も住民票の謄本を要することとすべきではないか、若しその必要がないものであれば初度裁定時に住民票の謄本を要するとした趣旨は何か。
2 規則第四条第一項又は第三項(第十七条第一項又は第三項を含む。)の規定によつて提出する福祉年金支給停止関係届について当該事実の発生が法第六十六条第四項又は第五項の規定に該当するものであるときは、当該福祉年金支給停止関係届の備考欄にその事実を記載して提出させる(昭和三十四年七月三十一日年福発第一一号回答左記2の(1)、疑義回答集(その一)別紙1及び昭和三十四年九月五日年福発第五〇号回答左記2、疑義回答集(その三別紙2))と指示されているが福祉年金支給停止関係届の備考欄にその事実を記載しても該当者(配偶者又は扶養義務者)の前年分の所得税額についての証明を添付する根拠がない(規則第三条第二項及び第十六条第二項の規定によつては)が前年分の所得税額の証明なしでは支給停止又は支給停止解除の処理ができないのでこの場合福祉年金所得状況届を併せ提出させるか又はむしろ福祉年金所得状況届を提出させることに改むる方が適当ではないか。
3 甲年金を受給している者が乙年金の受給権をも併せ取得して法第二十条の規定によつて乙年金を選択した場合甲年金の支給停止の措置は規則第四条第一項(第十七条第一項及び第二十四条第一項を含む。)の届出又は第三十二条第一項の通知の規定にも規定されていないが何に基いてどのように処理するのか。
4 法第六十六条第三項に規定する夫婦受給の調整について(昭和三十四年十二月二十三日年福発第二一九号福祉年金課長、各都道府県民生主管部(局)長あて通知)記3後段により、「甲がすでに三月期分四〇〇〇円の支払を受けているときは、そのうち調整するべき額の一〇〇〇円を五月期分の内払とみなして五月期分の支払額を五〇〇円と改訂して」処理しているがこの受給権者が三月期分の支払をうけた時五月の支払期以前に死亡した場合は三月期までに調整すべきであつた一〇〇〇円の金額は国の損失となるものと解してよろしいか。
(昭和三五年六月一六日 年福発第一九八号)
(熊本県民生労働部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)
本年四月二十三日国年第一、七八一号をもつて照会のあつた標記について、左記のとおり回答する。
記
1 照会事項の1については、福祉年金支給規則(以下「規則」という。)第五条、第十八条及び第二十五条に定める福祉年金所得状況届の身分関係及び生計維持関係等の審査は、本年四月二十二日年福発第一三八号各都道府県民生主管部(局)長あて小職通知「定時の福祉年金所得状況届の事務処理について」別紙福祉年金所得状況届(定時分)関係事務処理要領(以下「処理要領」という。)第一の2の(1)により市町村における審査の際に住民票の台帳により確認されるものであり、さらに市町村の審査を経た福祉年金所得状況届について都道府県において審理を行なう際に処理要領第二の1の(1)により前年に提出された所得状況届との対照により扶養義務者等の確認を行なうものであり、住民票の添附を必要としないものであること。
なお、右のように定時の福祉年金所得状況届の審査及び審理の段階で身分関係等の所要事項が把握されうる限りにおいては、毎年受給権者が福祉年金所得状況届を提出するに当つて、必ず住民票の謄本を添附させることは、行政庁側の便宜に走るきらいがあるので、適当でない次第であるので、福祉年金制度の本旨にもかんがみ、これらの事情につき十分意を用いられて、本制度の円滑な運営を図られたいこと。
2 照会事項の2については、本年五月十六日年福発第一七四号各都道府県民生主管部(局)長あて小職通知「国民年金法に関する疑義回答について(その十四)」別紙10左記1によつて取り扱うか、又は都道府県において当該市町村に連絡して配偶者又は扶養義務者の所得税額を確認のうえ措置されたいこと。
3 照会事項の3については、規則第四条第一項、第十七条第一項及び第二十四条第一項の各規定は、法に定める支給停止事由の発生については、受給権者の意思表示によらなければ、都道府県において当該受給権者がこれらの支給停止事由に該当したことの事実につき把握できないものであり、事務処理上、当然、これらに関する手続上の規定が必要とされるという趣旨に基づいて設けられたものであり、また、規則第三十三条第一項の規定もこれに対応するものであること。しかして、法第二十条に定める併給選択の場合には、当該福祉年金裁定請求書に添附される福祉年金支給停止関係届の「備考」欄に併給選択関係が記入されるので(「福祉年金の手引」七二頁、九四頁及び一〇〇頁参照)、これらの事情は、都道府県において当然に把握でき、この場合における事務処理は、福祉年金都道府県事務取扱準則第十九条の規定に従い、職権をもつて行なうものであること。
なお、右の福祉年金支給停止関係届の「備考」欄に併給選択関係についての記入がない場合であつても、当該受給権者の年齢等により、当該受給権者が他の福祉年金の受給権者に該当するものと認められるときは、福祉年金受給権者台帳索引票等により突合確認し、既に他の福祉年金の裁定を受けている場合にあつては、受給権者に連絡して併給選択関係について福祉年金支給停止関係届の「備考」欄を補正記入し、もつて二重支給の防止を図られたいこと。
4 照会事項の4については、当該受給権者が最終的に夫婦受給の調整を受けないで死亡した場合であつても、当該受給権者が夫婦受給の調整額として調整されるべきであつた金額については、当然国に対して債務が発生するものであつて、従つて、本件については、本年三月二十五日年庶発第四九号各都道府県国民年金課長あて当局庶務課長通知「福祉年金の過誤払等による返納金債権の取扱について」による返納金として徴収するものであるが、設例の場合のような受給権者が死亡しているときの右返納金の取扱については、別途当局庶務課長から通知される予定であること。
(別紙13)
○事実婚の認定について
(昭和三五年六月二日)
(35国年発(本)第九号)
(厚生省年金局福祉年金課長あて長崎県民生労働部国年金課長照会民)
このことについて、左記事項に疑義を生じましたので、何分の御教示を願います。
記
A子は、昭和十三年六月二十七日、B男と結婚、昭和二十三年四月六日協議離婚をなし別居をしたものである。
然しながら、昭和二十四年二月より再び同棲、入籍することなく、B男の死亡日まで事実婚の状態を継続していた旨申出ているものである。(A子とB男が協議離婚をなすに至つた事情及再び事実婚をなした理由は、別添関係書類写の申立書のとおりである。)かかる事例の如く、協議離婚をした者が、しばらくして事実婚をした場合は、偽装離婚の取扱いとは別に、新たに事実婚がなされたものと認め配偶関係があつたものと認定して差支えないか。
別添
申立書
住所 長崎市上小島町三〇九
氏名 田中菊子
明治四十四年十一月二日生
私は、昭和十二年、亡夫小柳繁一郎と市内今博多町二二で結婚しましたが、当時夫は、市役所に奉職していました。昭和十五年夫は市役所を辞職し、家業の貿易に従事していましたが、戦争の為、貿易も出来ないようになり、家が疎開になつたので、昭和二十年六月古賀村に疎開しました。夫は、昭和二十三年まで、職につこうとせず、家計を少しもみてくれませんので、私は愛想つかし、二月に協議離婚しました。しかし乍ら皮肉なことに同年十一月に長女美津子を分娩いたし間に立つ人があつたので、昭和二十四年二月子供可愛さと扶養のために、市内銀屋町十五の夫のもとに帰り、再び夫婦生活を営むようになりました。当時夫は、労働安定所の失業対策人夫をしており、カユをすするような生活をしていましたし、その後も、その日暮しの状態で再び入籍の手続をしないまま、正直のところ、私は、子供に引かれて、夫死亡まで同棲していました。
昭和二十七年三月市内上小島町三〇九番地に転居し、昭和三十二年六月三十日夫は、同地で死亡しました。
右の通り申立てます。
昭和三十五年四月十八日
右 田中菊子(印)
長崎県知事
佐藤勝也 殿
右の申立の事実に相違ないことを証明します。
昭和三十五年四月十八日
民生委員 峰一雄(印)
長崎市銀屋町 民生委員 小野浅重
長崎市片淵町二ノ三三 猪谷義武(印)
(昭和三五年六月一六日 年福発第二〇一号)
(長崎県民生労働部長あて 厚生省年金局福祉年金課長回答)
本年六月二日三五国年発(本)第九号をもつて照会のあつた標記について、左記のとおり回答する。
記
設例の如く、夫婦が一致した意思をもつて正規に協議離婚し、現実に別個の生活関係にはいつた後、同一当事者がさらに事実婚関係を生じた場合においては、当然当該離婚が実質的にも形式的にも離婚の要件を満しているので偽装離婚として認める余地は全くない。しかして、このような協議離婚後、事実上の婚姻関係にはいつた場合の配偶関係の認定については、前の婚姻関係とは別個に事実婚関係として配偶関係の有無を認定すべきものであるが、設例の場合において、照会別添写の本人の申立書に「正直のところ私は子供に引かされて、夫死亡まで同棲していました」と記載されている点からみれば、両者に夫婦として終生を共にしようという意思はやや薄弱であるとも思料されるが、事実婚関係に入るに至つた事情は通常の夫婦親子の状態を営むことにあつたこと及び住民票が一つであることにより社会的公然性があることが認められるので、事実婚関係があるものとして認定して差し支えないこと。
なお、本年五月十六日年福発第一七四号各都道府県民生主管部(局)長あて小職通知「国民年金法に関する疑義回答について(その十四)」別紙5左記1の回答は、照会別添1写の聴取書によれば、夫婦に別れる意思は全くなく、やむを得ず協議離婚した事例であるため、後記第一五号通達左記1のただし書に該当するものとしたものであつて、本件の場合とは異なるものであること(本年一月十八日年発第一五号各都道府県知事あて当省年金局長通達「国民年金法における配偶関係の認定について」左記1及び3並びに本年四月二十五日年福発第一四五号各都道府県民生主管部(局)長あて小職通知「内縁関係参考判決例について」参照)。