○国民健康保険の保険料(税)収納率向上対策の推進について
(平成三年五月一七日)
(保険発第四九号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)
国民健康保険の保険料(税)収納率(以下「収納率」という。)向上対策の推進については、平素格段の御努力をいただいているところであるが、最近における全国平均収納率は、徐々に向上してきているものの、中・長期的にみると低水準に止まっており、この傾向が続くことは国民健康保険制度の運営上重大な影響を来すものである。
また、被保険者相互の負担の公平を図る見地からも収納率の維持向上を図る必要があり、各保険者の収入面における積極的な経営努力が求められるところである。
このため、今後一段と収納率向上対策を推進することとし、特に都市部のうち収納率の低い市及び収納率が年々低下している市町村を中心に、別添1の「収納率向上特別対策実施要領」に基づき保険者の実態に即した対策を策定し、収納率の向上が図られるよう、貴管下保険者の指導に遺憾のないよう配慮されたい。
なお、この収納率向上対策を積極的に推進するため、別添2の「平成三年度国民健康保険保険料(税)収納率向上特別対策事業の助成について」により引き続き助成を行うこととしたので、事務手続に遺憾のないよう取り扱われたい。
別添1
「収納率向上特別対策実施要領」
1 基本方針
国民健康保険の健全財政の維持強化を図るため、平成三年度及び四年度の二年間にわたり、国民健康保険の事業運営の最重点事項の一つとして、都市部を中心とした収納率の低調な市町村において収納率向上対策を強力に推進するための特別対策を実施するものとする。
2 特別対策実施保険者
次の(1)、(2)又は(3)に該当する保険者について、重点的に収納率向上特別対策を実施するものとする。
(1) 都市部で平成元年度収納率が九三%未満の保険者及びその他の保険者のうち収納率が全国平均又は都道府県平均以下の保険者
(2) 収納率が年々低下している保険者
(3) 保険者規模からみて収納率の向上が必要と認められ、かつ、特別対策の実施を積極的に希望する保険者
3 収納率低下原因の分析
収納率の低下原因を集中的に検討する体制を早急に確立し、保険料(税)の賦課、徴収等の実態を、被保険者の所得階層別、業種別、地域別、年齢階級別等の区分により調査し、それぞれの区分における滞納原因を検討のうえ、現行徴収体制の問題点を把握すること。
4 収納率向上計画の策定
収納率向上特別対策の実施期間は、原則として二年間とし、3の分析の結果を基に、収納率向上のための年次計画(平成三年度及び四年度)を策定すること。
年次計画には次の事項を盛り込むものとする。
① 年度毎の目標収納率の設定
② 収納率向上のための具体的対策
なお、②の具体的対策の参考となるよう、別紙にこれまで各地の市町村において行われ一定の成果を上げた対策を列記したので、各保険者においては、別紙の項目を参考にするとともに、各保険者の実態に応じた対策及び目標収納率達成可能な対策を策定すること。
5 具体的対策の実施
4で策定した年次計画に基づき、目標収納率達成に向けて、鋭意対策を実施すること。
6 都道府県における指導
(1) 保険者が収納率向上計画を策定するに当たっては、年間を通じて効果的な対策が取り組まれるよう十分な協議を行うとともに、適切な指導を行うこと。
(2) 前記収納率向上特別対策の実施状況を常時把握し、年次計画が確実に実施されるよう指導すること。
別紙
収納率向上のための具体的対策(参考例)
1 徴収体制の整備
(1) 全庁体制による滞納者一掃体制(滞納整理本部の設置、収納率向上強化月間の設定、収納率向上のための特別班の編成等)を確立する。
(2) 職員による休日・夜間の戸別徴収を行い、特に昼間不在者に対する納付相談・指導及び徴収を行う。
(3) 保険税を税務担当課において徴収している市町村においては、国保主管課の職員についても休日・夜間に徴収する体制を確立する。
(4) 徴収職員の増員を図り、徴収体制を強化する。
(5) 嘱託徴収員の採用又は増員を図り、被保険者宅をきめ細かく巡回訪問及び休日・夜間訪問して保険料(税)を納期限に納付する体制を確立する。
(6) 滞納世帯について、例えば地域別、滞納額別等保険者の実情に応じた方法で滞納原因を分析し、その結果を基に徴収体制を整備する。
(7) 長期にわたり滞納の続いている滞納者については、何度も戸別訪問する体制を確立する。
2 口座振替の拡大
(1) 納付組織未加入者、特に昼間不在者に対し口座振替の利用を強力に勧奨する。
(2) 口座振替の勧奨について徹底した広報を行い口座振替の拡大を図る。
3 納付組織の育成強化
(1) 納付組織の設立、強化を推進する。
(2) 納付組織に対して、制度の趣旨等に関する教育の徹底を図る。
(研修会懇談会の開催)
(3) 組合未加入者に対する加入の推進を図る。
4 資格証明書の発行等
(1) 滞納世帯に対して、資格証明書の発行を行い、保険料(税)の納付を促す。
(2) 滞納世帯に対して、通常に比べ更新又は検認の期間が短い被保険者証の発行を行うなど、被保険者証の交付方法の工夫を行い、更新時において保険料(税)の徴収または納付の確約を行わせる。
5 滞納処分等の強化
(1) 滞納整理強化期間を設ける等集中的に滞納処分を実施する。
(2) 滞納者の滞納状況を日頃から掌握し、それに基づき滞納処分を積極的に行う。
(3) 滞納者に対する差押え等を強化する。
(4) 滞納整理事務組合を設立する。
6 納付回数の増
(1) 納付回数を増加することにより一期当りの保険料(税)を少額にし、納付しやすくする。
(2) 滞納者については、特に毎月告知する体制を確立する。
7 納期毎の納付書送付
納期毎に納付書を送付することにより納め忘れ等による滞納を防止する。
8 休日・夜間の電話催告
昼間不在者に対し、休日・夜間の電話催告を継続的に実施する体制を確立する。
9 被保険者証の更新時、現金給付支払時における納付督励等
(1) 被保険者証の更新・検認時及び現金給付申請・支払時において、制度の趣旨の説明、支払履行の確認及び徴収を行う。
(2) 被保険者証の更新に当たり、滞納世帯に対しては窓口交付の方法を用い、併せて納付督励を行う。
10 広報活動の強化
(1) 納期毎に「保険料(税)の納付月であること」を広報し、納め忘れ等による滞納防止を図る。
(2) 住民に対し、保険料(税)の納付を促すようなPR(広報誌の発行、テレビ・ラジオ・ビデオの活用、けん垂幕、看板、ポスター、標語募集又は広報車等)を行い、納付意欲の高揚及び滞納防止を図る。
(3) 毎月定期的に日曜及び休日に納付相談窓口を開設し、単身者、共働き世帯等昼間不在者からの徴収を円滑にする。
(4) 保険料(税)の納付意識の維持・向上のためには、それがむだなく、かつ効果的に活用されることが前提であり、収納率の向上のためのPRにあわせ、医療費適正化等についても並行して周知徹底を図る。
別添2
平成三年度国民健康保険保険料(税)収納率向上特別対策事業の助成について
1 助成の対象となる事業
助成の対象となる事業は、国民健康保険法第三条第一項に規定する市町村及び特別区(以下「保険者」という。)が平成三年度に実施する国民健康保険保険料(税)収納率向上特別対策事業とすること。
2 助成の対象となる保険者の選定
助成の対象となる保険者は、別添1の収納率向上特別対策実施保険者の中から次の要件のいずれかに該当する保険者について、都道府県の推せんに基づいて選定するものとする。
なお、推せんに当たっては、原則として別表の基準以上の収納率向上を目標として積極的に取り組む保険者を選定すること。
(1) 収納率向上対策に特に熱心である保険者であること。
(2) 収納率向上対策の内容が斬新で他の市町村のモデルとなる保険者であること。
(3) 当該都道府県の中心的存在である比較的大規模の保険者であること。
(4) 平成元年度~平成二年度まで収納率向上特別対策事業(第三次)に対し助成が行われていた保険者にあっては、平成二年度目標収納率を達成した保険者、又は、平成二年度目標収納率を達成していない保険者にあっては、次の(ア)又は(イ)に該当する保険者であること。
(ア) 二か年すべての収納率が前年度に比べ向上している保険者。
(イ) 平成二年度実績が平成元年度目標収納率を超えている保険者。
3 交付額
(1) 収納率向上特別対策に対する助成は、特別調整交付金により交付するものであること。
(2) 平成三年度の収納率向上特別対策に係る交付額は、平成三年四月一日現在における当該保険者の被保険者数が三千人未満であるときは二〇〇万円、三〇〇〇人以上五〇〇〇人未満であるときは三〇〇万円、五〇〇〇人以上一万人未満であるときは五〇〇万円、一万人以上五万人未満であるときは八〇〇万円、五万人以上一〇万人未満であるときは一二〇〇万円、一〇万人以上であるときは一五〇〇万円とすること。
4 申請手続
この交付金の交付の申請は、次により行うものとすること。
(1) 交付の対象となる収納率向上特別対策事業については、事業の円滑な実施を図るため、年度当初に予備申請を行うものとし、その申請を行おうとする保険者は、別紙様式1及び2を作成し都道府県に提出すること。
(2) 都道府県は、各保険者から提出された事業実施計画のうち推せんに値すると認められるものについて、別紙様式3を作成し当該計画に係る別紙様式1及び2を添付のうえ提出すること。
なお、提出日は平成三年五月十七日保険発第四八号通知の別添「国民健康保険調整交付金保険料(税)収納率向上特別対策事業実績報告説明聴取日程表」の期日とし、同日において実施計画聴取を行うものとする。
(3) なお、都道府県が推せんする保険者数は、原則として、管内保険者数の一〇パーセント以内とすること。
5 その他
(1) 予備申請に基づく内定通知は、七月中旬に行う予定であること。
(2) 交付決定は、調整交付金の確定時期と同時期に行う予定であるが、その申請方法等については、別途通知するものであること。
(3) 保険者が、事業内容を変更し、又は事業を中止しようとする場合は、速やかに厚生省保険局国民健康保険課長に申し出ること。
別表
目標収納率の基準(2年間の収納率上昇ポイント)
向上目標収納率 |
|||||
1万人未満 |
1万人以上5万人未満 |
5万人以上 |
|||
前年度収納率 |
目標収納率 |
前年度収納率 |
目標収納率 |
前年度収納率 |
目標収納率 |
94%以上 |
(1.00)% 2.00 |
93%以上 |
(0.75)% 1.50 |
92%以上 |
(0.50)% 1.00 |
92%以上94%未満 |
(1.50)% 3.00 |
91%以上93%未満 |
(1.00)% 2.00 |
90%以上92%未満 |
(0.75)% 1.50 |
87%以上92%未満 |
(2.00)% 4.00 |
86%以上91%未満 |
(1.50)% 3.00 |
85%以上90%未満 |
(1.00)% 2.00 |
87%未満 |
(2.50)% 5.00 |
86%未満 |
(2.00)% 4.00 |
85%未満 |
(1.50)% 3.00 |
全国規模別平均収納率(元’) |
% 97.18 |
― |
% 94.64 |
― |
% 92.35 |
(注)( )内は単年度の目標ポイントである。
別紙様式1
別紙様式2
別紙様式3
別紙
別紙様式及び別紙の記載要領
別紙様式1
保険料(税)収納率向上特別対策調書
1 「所得割の算定基礎」及び「賦課方式」の欄は、「国民健康保険事業状況報告書(事業年報)B表(2)」の区分に従い、該当するものを○印で囲むこと。
2 「収納割合」の欄は、全被保険者分について記入すること。
3 各年度の「目標収納率」の欄は、昭和62年5月28日(保険発第44号)課長通知「国民健康保険の保険料(税)収納率向上特別対策の推進について」により収納率向上特別対策を行っている保険者について記入すること。
4 「特記すべき事項」の欄は、各保険者の実情や特殊性及び現行徴収体制の問題点等を記入すること。記入しきれない場合には、別紙(様式又は任意)を使用しても差し支えないこと。
なお、この調書には次の資料を添付すること。(様式は任意)
・徴収事務処理流れ図、事務処理体制及び員数、事務内容
・所得把握状況の実態、所得不明・推計世帯の解消策
・滞納被保険者に係る統計・分析結果
・収納率低下原因の分析結果
別紙様式2
保険料(税)収納率向上特別対策計画書
1 「目標収納率」の欄は、年度毎に%未満第2位まで記入すること。
2 「現行徴収体制等」・「向上計画の内容」の欄は、平成2年度においては平成2年度徴収体制、収納率向上対策事業の内容及び実施期間を記入すること。平成3年度及び4年度においては、「別添」の別紙「収納率向上のための具体的対策(参考例)」等に基づいて継続・新規に行う事業、徴収体制の強化・変更内容及び実施時期・実施期間等を具体的に記入すること。
3 「日数・人員等数」の欄は、平成2年度については日数、件数、延人員の実績を記入すること。
また、平成3年度及び4年度については、それぞれ事業実施計画の内容を具体的に記入すること。
別紙様式3
収納率向上特別対策助成保険者推せん書
1 「該当区分」の欄は、「平成3年度国民健康保険保険料(税)収納率向上特別対策事業の助成について」の「2 交付の対象となる保険者の選定」における(1)~(4)までの該当順番をすべて記入すること。
2 「被保険者数」の欄は、平成3年4月1日現在の全被保険者数を記入すること。
3 「平成2年度収納率」の欄は、全被保険者に係る現年度分の収納率を記入すること。
なお、「収納率」は、%未満第3位を四捨五入して記入すること。
4 「目標収納率」の欄は、年度毎に%未満第2位まで記入すること。
5 「推せんの事由」の欄は、都道府県で該当保険者に対し、よく事情聴取したうえ具体的に記入すること。
なお、この欄には、理事者(市町村長、助役、収入役の三役)の同事業に対する取組方及び方針等についても記入すること。
別紙
保険料(税)収納率向上特別対策調書(集計表)
この集計表は、別添1の「収納率向上特別対策実施要領」に基づき、収納率向上特別対策を平成3年度、4年度において実施する保険者について都道府県が集計して作成すること。
1 「平成2年度収納率」の欄は、全被保険者に係る現年度分の収納率を%未満第3位を四捨五入して記入すること。
2 「目標収納率」の欄は、各年度毎に%未満第2位まで記入すること。