添付一覧
○損害賠償に関する疑義について
(昭和三七年五月一八日)
(保険発第四九号の二各都道府県民生部(局)長(大分県を除く。)あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)
標記について、別府市長から別紙1のとおりの照会があり、これに対して、別紙2のとおり回答したから了知されたい。
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(別紙1)
(昭和三六年一〇月二四日 別国保第四九六号)
(厚生省保険局国民健康保険課長あて 別府市長照会)
自衛隊の不法行為により発生した交通事故に伴う損害賠償について、次の点に疑義があるので至急御教示願いたい。
記
1 事故が発生した場合、自衛隊では損害賠償額審査委員会(仮称)において、双方の過失の程度をあらゆる角度から審査し、この委員会の結論をもつて被害者と接衝、被害者の過失相当額を損害賠償額から控除することの了解のもとに和解契約を締結しているようであるが、ある事故で仮に自衛隊に一〇分の八、被害者に一〇分の二の過失があつたとした場合、保険者が国民健康保険法第六十四条第一項の規定に基き代位取得する損害賠償額は次のいずれかの解釈により取扱いすべきか。
イ 自衛隊では病気が完全に治ゆした後に和解契約の締結を行ない賠償額を支払うことにしているので、保険者側から見た場合、常に保険給付をした後に和解が成立、賠償額が支払われることになるが、保険者が代位取得すべき権利の消滅する時点は被保険者に賠償額が支払われたときであり、かつ、保険者の代位取得した後の被保険者の意思表示は保険者の取得した損害賠償請求権に何ら効力を及ぼさない。従つて、保険者の代位取得する額は総医療費の五割の額。
ロ 被害者の過失が一〇分の二あつたと云うことは、和解契約または賠償額の支払時点には関係なく、事故発生当時より既に賠償と云う問題が起り得なかつたものであるので、被害者の過失分については一般疾病と同様保険者と被保険者の双方で夫々負担すべきものであり、保険者が代位取得する額は総医療費の一〇分の八の内五割の額。
(総医療費の一〇分の四に相当する額)
2 陸上自衛隊損害賠償規則第四十一条の規定には、賠償受領権者との間に和解契約を締結後賠償金を支払うことと規定されているが、被保険者の損害賠償請求権が消滅すれば当然それ以後は保険者の第三者に対する損害賠償請求権の代位取得と云うことは起り得ないものであり、かつ、国保法第六十四条の規定は損害賠償請求権が存在する限り法律上当然に代位取得されるものであるから、自衛隊側が保険者に対し陸上自衛隊損害賠償規則に基き和解契約の締結を求めても保険者としては締結の必要はないものと思われる。
また契約を締結するとした場合は、地方自治法第九十六条の規定により議会の議決が必要となつてくると思われるが、この点の取扱い如何。
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(別紙2)
(昭和三七年五月一八日 保険発第四九号)
(大分県厚生部長あて 厚生省保険局国民健康保険課長回答)
標記について、貴管下別府市長から別紙のとおり照会があつたが、これに対する当課の回答は、左記のとおりであるので、この旨照会者に通知されたい。
記
1 国民健康保険法第六十四条第一項の規定により保険者は、保険給付の価額の限度において被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得するものであるから、照会の場合保険者が代位取得する損害賠償請求額は、総医療費の五割に相当する額である。
2 保険者の損害賠償の請求に対し、陸上自衛隊が陸上自衛隊損害賠償規則第四十一条の規定による和解契約の締結を求めた場合においても、保険者は、その締結に応ずべき法律上の義務はないものであり、和解契約の締結に応じないことを理由に陸上自衛隊が損害賠償の支払いを拒む場合においては、保険者は、損害賠償の支払いを訴求しうることは、もちろんのことであること。
なお、当該和解契約を締結することについて議会の議決を要するものであることについてはお見込のとおりであること。