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○診療費請求支払の時効について

(昭和二六年二月七日)

(基業発第六一号)

(厚生省保険局長あて社会保険診療報酬支払基金理事長照会)

標記の件について当基金福岡県支部より別紙写の通り疑義の照会がありましたので、何分の御指示を賜るよう御願い申し上げます。

診療費請求支払の時効について

(昭和二六年一月二九日 福基経第二四〇号)

(社会保険診療報酬支払基金審議室長あて 福岡県社会保)

(険診療報酬支払基金幹事長照会)

首題の件別紙の通り疑義がありますので、本部の御意見を御伺致します。

(別紙)

昭和二十四年八月五日付基収第二六五号理事長より奈良県基金幹事長宛回答要旨によれば

1 保険医より政府に対する標記請求権の時効については、会計法第三十条第二項の規定により五年間行わないことに因つて時効は消滅する。

とありますが、会計法第三十条第一項に「他の法律に規定のないものは」とあるので、第二項末段「ものについてもまた同様とする」との意味は、やはり第一項の「他の法律に規定のないものは」と云う字句を含むものと解釈すべきと思います。従つて、民法第百七十条左に掲げたる債権は、三年間之を行わざるにより消滅す。

一 医師、産婆、薬剤師ノ治術、勤労及ヒ調剤ニ関スル債権

二 〔以下略〕

と明確に三年という規定がある以上はこれによるが正当の様に解釈します。

元来民法では、第百七十条のような特例は別として一般債権は時効十年となつているのを、会計法では五年に短縮してあると解すべきであるに不拘、民法第百七十条で三年とあるものを逆に時効を五年に延長するということは考えられないし、又例えば、健康保険法の保険給付について見れば、時効二年であるのに「他の法律に規定のないものは」ということを無視した解釈から行けば、これも五年と云うことになる如き矛盾が生じる様であります。これから考えて見ますと、民法第百七十条の三年という規定を見落されているのか、それとも此の矛盾を無視されたか何れかではないでしようか。

但し、此の種の時効はあまり問題となることは稀であると思われるが、実際問題としては、

2(1) 保険医にして住所不明等で支払決定せる診療報酬が支払不能のまま領置される場合(古いものに此の実例あり)の時効は、やはり右により三年とすべきと思惟せられるか如何。

(2) 此の場合支払不能となりたるときより時効を起算すべきか、又は申出期限を附したる告示又は公告をなすべきで、その申出期限の翌日より起算すべきものなりや。

(3) 何れにせよ時効満了の場合これを基金の雑収入に繰入れるや、それとも保険者に返還すべきや、返還に対しても時効を適用するや否や。

基金発足以来満三年も近づきつつあり、逐次時効問題が生じるので予め御通牒を煩わし度い。

3 保険医の死亡、行方不明の為支払済の診療費の過誤で戻入不能のものに対しては一定の時期に雑損とすべきであるが、此の一定時期をどう定めるか、これも時効を適用するや否や御伺致し度い。

(昭和二六年三月六日 保険発第四三号)

(社会保険診療報酬支払基金理事長あて 厚生省保険局長)

(回答)

本年二月七日付基業第六一号をもつて御来照の標記の件については、左記によつて了知されたい。

1 保険医が政府に対して有する診療報酬請求権の消滅時効は、会計法第三十条第一項にいわゆる「他の法律」には民法も含まれるものと解されているから、民法第百七十条の規定により、三年間之を行わないことによつて完成するものである。

2 保険医が住所不明等のため、支払決定をした診療報酬が支払不能のまま領置された場合における当該診療報酬請求権は、基金が保険医に対してなした支払の通知が到達したものと認められる日の翌日から起算して三年間之を行わないことによつて消滅する。

3 右によつて診療報酬額は基金の雑収入に受入れるものでなく、保険者から過誤納として取扱、翌月における保険者への請求においてこれを調整すべきものである。

なお、保険医に対する診療報酬の支払が絶対的に支払不能と確認されるに至つた場合には、その消滅時効の完成前と雖も、保険者に対する過誤の調整を要するものと認められる。

4 保険医が死亡又は行方不明等のため、支払済の診療報酬の過誤払額が、基金において絶対的に回収不能と確認されるに至つた場合若しくは民法第百六十七条第一項に規定する十年の消滅時効が完成した場合には、その過払による診療費の負担は事務取扱費の雑費から補填する取扱とすること。

なお、右の場合において保険者に対する過誤の調整は、その過誤の事実が判明した都度これを行うものとすること。