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○副腎皮質ホルモン、副腎皮質刺戟ホルモン及び性腺刺戟ホルモンの使用基準

(昭和三七年九月二四日)

(保発第四二号)

(各都道府県知事あて厚生省保険局長通知)

目次

第一 副腎皮質ホルモン及び副腎皮質刺戟ホルモンの使用法

内科・小児科領域

外科領域

整形外科領域

産婦人科領域

泌尿器科領域

眼科領域

皮膚科領域

耳鼻咽喉科領域

第二 性腺刺戟ホルモンの使用法

産婦人科

泌尿器科

眼科

耳鼻咽喉科

第一 副腎皮質ホルモン及び副腎皮質刺戟ホルモンの使用法

1 使用方針

本剤の使用にあたつては、まず適応の有無を慎重に決定すべきである。

本剤は、その非特異的薬理作用による効果を期待して投与される場合が多い。従つて、他の一般療法によつて十分に治療効果が期待できる場合には、初めから本剤は使用しない。一般療法が無効な場合、あるいはそれのみで十分に治療効果が認められない場合に本剤を使用すべきである。しかし病状重篤な場合には時に救命的に作用するものであるから、その使用に時を逸してはならない。

また本剤はしばしば副作用を伴うものであるから、局所的使用(軟膏塗布、点眼、関節腔内注入、皮内注射等)ですむ時にはなるべく全身的の使用(内服、静注、筋注等)をさけるべきである。また全身的使用を必要とする場合には常に副作用の出現に対し十分な配慮と監視を行なうとともに、なるべく少量短期間使用ですむように努め、長期使用の止むをえない時にも他の療法を併用して常に減量するよう、またできれば中止するように努むべきである。また長期使用後には患者の下垂体副腎皮質機能低下の存在を考えて十分注意しなければならない。

2 使用方法及び使用量

使用方法及び使用量は次に示すように各疾患別に記してある。その量は特に記していない限り成人に対する量であつて、幼小児に対しては適宜減量するが、体重一kg当りでは成人に比しかなり大量を必要とする。なお、ここに記してある一日使用量及び使用期間は大体の標準を示したものであつて、症例によりかなり異るものもあるから、場合によつては標準よりかなり大量又は長期間の使用を必要とすることもある。

なお、このほかに稀な疾患で本剤の効果のあきらかなものにあつては使用して差し支えない。

合成コルチゾン様物質の使用量は、特に記していない限りプレドニゾロンとしての量が示してある。全身的投与の場合、メチルプレドニゾロンはその2/3~4/5量、トリアムシノロンは4/5量、デキサメサゾン、ベーターメサゾンは1/5~1/10量、バラメサゾンは1/3~1/5量使用する。

合成コルチゾン様物質使用中はその効果減少が認められた場合には、酢酸コルチゾン又はヒドロコルチゾンにかえてよい。その場合の使用量は酢酸コルチゾンはプレドニゾロンの五倍、ヒドロコルチゾンは四倍とする。

内科・小児科領域

病名

使用薬

使用方法

使用量

使用上の注意事項

一日量

標準投与期間

副腎皮質機能不全症

(Addison病)

(両側副腎摘出後)

(下垂体機能低下症)

酢酸コルチゾン

内服。内服不能の場合は筋注

二五mg(小児一kg当り一mg)

永久的

必要に応じて使用する。

ヒドロコルチゾン

内服

二〇mg

 

 

筋注

二・五mg(毎日)

DOCA

 

 

ペレット埋植

五・〇mg(隔日)

一回一〇箇一箇五〇mg数カ月毎に埋没

 

 

急性副腎不全又は副腎発症

アナフィラキシーショック

水溶性ヒドロコルチゾン

 

 

一回一〇〇mg一~二回

急性期のみ

急性期を過ぎれば内服剤にかえる。

 

静注又は筋注

水溶性合成コルチゾン様物質

 

一回プレドニゾロンとして二〇mg一~二回

 

 

酢酸コルチゾン

筋注

二〇〇~三〇〇mg

膠原病

(リウマチ熱、全身性紅斑性狼瘡、結節性動脈周囲炎、皮膚筋炎、汎発性鞏皮症等

合成コルチゾ様物質

内服

内服不能の場合静注。筋注

初回プレドニゾロンとして三〇~六〇mg以後症状により漸減

半永久的

急性期を過ぎたもの及び慢性のもので他の薬剤の併用をするなどしてなるべく少量を維持量としでき得れば投与を中止する。

 

 

ACTH

持続点滴静注。

二〇単位

 

 

 

水溶性ヒドロコルチゾン

 

 

 

発作状態が消失るまで

気管支喘息喘息

重積発作状態

 

 

不能の場合筋注

静注

一〇〇mg~二〇〇mgプレドニゾロンとして二〇~四〇mg

水溶性合成コルチゾン様物質

プレドニゾロンとし

て四〇~六〇mg

 

 

 

 

 

合成コルチゾン様物質

内服

初回プレドニゾロンとして二〇mg以後症状により漸減

なるべく早く中止する。

他の方法が無効の時にのみ使用、他の薬剤と併用する。

 

 

一般の場合

合成コルチゾン様物質

内服

血清病

薬物アレルギー

合成コルチゾン様物

内服。内服不能の場合は静注、筋注

点滴静注

筋注

 

 

 

中毒疹、薬疹は皮膚科領域参照。

 

重症四〇~六〇mg

軽症二〇mg

漸減して一~三週間

ACTH

 

二〇単位

 

持続性ACTH

 

一回二〇単位

一~二回筋注

 

数日

 

 

 

 

肝昏睡

ACTH

点滴静注

二〇単位

昏睡の回復するまで

他の療法と併用する。

持続性ACTH

筋注

二〇単位二回

水溶性ヒドロコルチゾン

 

 

 

 

静注又は筋注

二〇〇mgプレドニゾロンとして四〇mg

水溶性合成コルチゾン様物質

 

 

 

 

胆細管炎性肝炎

胆細管炎性肝硬変症

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg以後漸減

黄疸が消失すれば中止する。

 

ネフローゼ及びネフローゼ症候群

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場

合は筋注

(持続投与法と間歇投与法とがある)

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg

(小児にあつては三〇~六〇mg)

諸症状の消失乃至症状緩解後数週間をもつて一応中止、症状により繰返し得る。

間歇投与法は更に長間に及ぶことがある。

 

ACTH

点滴静注

 

 

 

 

 

一〇~四〇単位

 

一クール一~二月合成コンチゾン様物質療法後二~四週間投与することあり

持続性ACTH

筋注

 

 

 

 

 

 

亜急性腎炎

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~八〇mg

数週

 

ACTH

点滴静注

 

 

数週

 

二〇~四〇単位

持続性ACTH

筋注

 

 

 

重症急性肝炎

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg以後症状により減量

二~三週間

 

限局性回腸炎

合成コルチゾン様物質

同右

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg以後漸減

症状のほぼ消退する迄

 

潰瘍性大腸炎

合成コルチゾン様物質

同前

同前

一〇〇mg

症状のほぼ消退する迄

直腸鏡検査により診断を確定後使用することがのぞましい。

水溶性ヒドロコルチゾン

 

 

 

 

注腸

プレドニゾロンとして二〇mg

水溶性合成コルチゾン様物質

 

 

 

 

スプルー

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇mg以後漸減、後には隔日に五mg宛使用する。

二カ月

生検により診断確定後使用する。

急性膵炎

水溶性ヒドロコルチゾン

水溶性合成コルチゾン様物質

静注又は筋注

一〇〇~三〇〇mgプレドニゾロンとして二〇~六〇mg

急性期のみ

重症例に用いる。

滲出性体質、リンパ性体質に伴う下痢

酢酸コルチゾン

ヒドロコルチゾン

内服。不能の場合筋注

 

 

 

数日

 

 

 

二~三カ月二〇mg

四~五カ月二五mg

 

 

 

合成コルチゾン様物質

内服

内服。不能の場合筋注

 

 

 

 

 

二~三カ月四mg

四~五カ月五mg

 

 

 

紫斑病

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして三〇mg以後漸減

症状消失する迄。場合によつては半永久的

単純性紫斑は除く。

後天性溶血性貧血

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして三〇mg、症状により一〇〇mg迄増量。以後漸減

症状消失する迄。場合によつては半永久的

 

再生不良性貧血

同右

同右

同右

同右

 

急性白血病

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして三〇mg、症状により一〇〇mg迄増量。以後漸減

症状緩解迄

 

リンパ性白血病

同右

同右

同右

症状が消失するまで

 

顆粒細胞減少症

同右

同右

初回プレドニゾロンとして三〇mgより始め以後漸減

血液像が正常化したら中止

 

ザルコイドージス

好酸性肉芽症

同右

同右

同右

 

 

リンパ肉腫症

細網肉腫症

ホジキン病

同右

同右

初回プレドニゾロンとして二〇mgから始め症状により六〇mg迄増量

症状の軽快する迄

二週間使用して効果のない時は中止する。

多発性硬化症

視束脊髄炎

急性球後視束炎

同右

同右

初回プレドニゾロンとして三〇mg以後漸減

症状が緩解したら中止する。

発病後短期間のもの及び増悪期に用いる。

脳脊髄炎

ギランバレー症候群

同右

同右

同右

同右

発病後一カ月以内のものに用いる。

小舞踏病

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg以後漸減

一カ月

 

末梢性顔面神経麻痺

同右

同右

同右

二~三週間

発病後二週間以内の場合に用いる。

筋強直症

同右

同右

同右

半永久的

 

脊髄腫瘍

同右

同右

同右

同右

手術不能な場合に用いる。

二週間用いて効果のない時には中止する。

脊髄蜘網膜炎

同右

同右

同右

一~二月

発病後一カ月以内の場合に用いる。

うつ血性心不全

合成コルチゾン様物質(ナトリウム排泄作用のあるもの)

内服。内服不能の場合は筋注

プレドニゾロンとして二〇mg

数日間

他の療法が奏効せぬ時に試みる。

亜急性甲状腺炎

同右

同右

初回プレドニゾロンとして二〇mg、以後漸減

血沈正常化後二週間で中止する。

 

甲状腺疾患に伴う悪性眼球突出症

同右

同右

同右

一カ月

二週間以上投与して無効の場合は中止

特発性低血糖症

(幼児)

同右

同右

初回プレドニゾロンとして一〇~二〇mg以後漸減

半永久的

 

肺線維症

合成コルチゾン様物質(ナトリウム排泄作用のあるもの)

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg以後漸減

症状の軽快する迄

 

肺結核

(粟粒結核を含む)

同右

同右

同右

一カ月

症状重篤な場合に使用する。

化学療法と併用する。

結核性髄膜炎

同右

 

同右

一カ月

化学療法と併用する。

酢酸ヒドロコルチゾン

 

 

二五mg隔日

症状の軽快する迄

 

髄腔内注入

水溶性合成コルチゾン様物質

 

五mg隔日

(プレドニゾロンとして)

 

 

結核性胸膜炎

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg以後漸減

三~四週

軽症の場合は除く。

化学療法と併用する。

酢酸ヒドロコルチゾン

胸腔内注入

週一回二五mg

三~四週

水溶性合成コルチゾン様物質

 

週一回五mg

(プレドニゾロンとして)

 

結核性心包炎

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg以後漸減

三~四週

同右

結核性腹膜炎

同右

同右

同右

一カ月

同右

重症感染症

(急性伝染病を含む。)

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

プレドニゾロンとして二〇~四〇mg

重篤症状の消退する迄

化学療法と併用する。

四~五日の使用で効果が認められないときは中止する。

放射線性宿酔

同右

同右

プレドニゾロンとして二〇mg

数日間

他の療法で無効と思われる場合に使用する。

副腎皮質ホルモン中止時前後

持続性ACTH

筋注

二〇単位

数日間

副腎皮質ホルモン全身投与が長期にわたつた場合に限る。

原因不明の発熱

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

初回プレドニゾロンとして二〇~三〇mg、以後漸減

三~四週

軽症の場合は除く。

化学療法と併用する。

癌末期

同右

同右

同右

苦痛が軽減する間

他の療法によるも苦痛が甚しい場合に用いる。

副腎皮質機能検査法

ACTH

筋注

二五単位

一日

 

 

注射前後流血中好酸球数の変動を測定する。

注射前後血中、尿中副腎皮質ホルモンの変動を測定する。

点滴静注

一〇~二〇単位

一~二日

 

 

 

 

持続性ACTH

筋注

二〇単位

一~二日

 

 

 

 

下垂体抑制試験

デキサメサゾン

内服

三mg

二~三日

投薬前後の尿中副腎皮質ホルモンの変動を測定する。

新生児スクレレーマ

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能な場合は筋注

プレドニゾロンとして一五~二〇mgを一日三~四回に分与

 

 

 

 

数日

持続性ACTH

筋注

一日五~一〇単位を一日一~二回

 

 

 

小児喘息性気管支炎

合成コルチゾン様物質

内服。内服不能の場合は筋注

プレドニゾロンとして三〇mg

症状軽快する迄

経過が遷延する場合、他の療法が無効と思われる場合に使用する。

数日で効果なければ中止する。

抗生物質、鎮咳材、きよ〔きょ〕痰剤を使用する。

持続性ACTH

筋注

一回一〇~二〇単位

一日一~二回