添付一覧
○政府管掌健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて
(昭和四三年七月二五日)
(庁保険発第八号)
(各都道府県民生主管部(局)保険課(部)長あて社会保険庁健康保険課長通知)
標記については、政府管掌健康保険の被保険者等の自動車による保険事故が激増している事態に鑑み、健康保険法第六十七条による求償事務の円滑な実施を図るため、かねてから関係機関と協議を続けてきたところであるが、このたび次のとおり協議がまとまつたので、今後本通知に基づき事務処理を進めるよう取り計われたい。
記
1 求償事務について
(1) 社会保険事務所長は、政府管掌健康保険の保険給付に関し、その保険事故が自動車によつて生じたものであると認めたときは、自賠法(自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)をいう。以下同じ。)に基づく責任保険(自動車損害賠償責任保険をいう。以下同じ。)又は責任共済(自動車損害賠償責任共済をいう。以下同じ。)の損害賠償額、保険金もしくは共済金又は仮渡金の請求の有無、支払(予定)年月日、支払金額等を管轄店(責任保険の管轄店をいう。以下同じ。)又は共済連(責任共済契約の再契約先である都道府県共済農業協同組合連合会をいう。以下同じ。)に照会すること(照会文書は様式2によること。この場合様式3の文書を添付すること。)
(2) 前記(1)の照会に対しては、管轄店又は共済連から損害賠償額(内払金を含む。以下同じ。)保険金もしくは共済金(いずれも内払金を含む。以下同じ。)又は仮渡金の請求の有無、支払(予定)年月日、支払金額、受領者等について、社会保険事務所長あて遅滞なく回答されるものであること。
(3) 社会保険事務所長は、前記(2)の回答により損害賠償額が支払われておらず(回答が発せられた日から一五日以内に支払われる見込みのある場合は除く。)或は保険金もしくは共済金又は仮渡金の請求がないなど求償可能と認めた場合は、遅滞なく管轄店又は共済連に対し次の書類を送付すること。
(ア) 自動車損害賠償責任保険損害賠償額支払請求書又は自動車損害賠償責任共済支払請求書(様式1又は1―2 ただし、請求金額は記載しないこと。)
(イ) 交通事故証明書(様式4又は4―2 ただし、警察署長の証明が得られない場合には、社会保険事務所長が調査した事実に基づいて作成した証明書によることができること。)
(ウ) 保険事故が人対車両及び車両相互の事故であるときには、第三者行為による傷病届の写(保険事故の日時、場所、事故現場見取図、具体的状況を記載したものに限る。)又は事故発生状況報告書(別紙様式7)
(エ) 念書(様式5)
(オ) 保険給付内訳書(様式6)
(カ) 保険事故が死亡の場合には、死体検案書又は死亡診断書並びに死亡者の戸籍謄本又は死亡者と受給権者との関係を証するに足りる書面
(4) 社会保険事務所長は同一事案について第二回目以降の保険給付をしたときは、保険給付内訳書(様式6)を管轄店又は共済連に送付すること。
この場合、事務処理の都合等を考慮して、保険給付の額が、責任保険の保険金又は責任共済の共済金の支払限度額を超過した際に取りまとめて送付しても差し支えないが、この取扱いをする場合は、第一回目の関係書類送付の際にその旨を記載すること。
(5) 前記(3)及び(4)による保険給付内訳書の作成にあたつては、保険給付の額が、保険金又は共済金の支払限度額を超過した場合は当該内訳書(前記(4)による場合は最終の内訳書)の支払完了項目及び連絡事項欄にその旨を記載すること。
(6) 前記責任保険又は責任共済への求償に対しては、管轄店又は共済連から損害賠償の査定の通知があるものであること。
(7) 社会保険事務所長は、前記(6)の通知を受けたときは、債権管理上の調査確認及び徴収決定を行なつたうえ管理店又は共済連に納付書を送付すること(納付書の納付の目的欄に被害者名を明記すること。
2 責任保険又は、責任共済からの照会について
責任保険又は責任共済に対する求償権の行使に関し、責任保険査定事務所又は共済連から事故発生状況等応償事務上必要な事項について照会があつた場合には、責任保険又は責任共済に協力し、応償上の便宜をはかること。
3 責任保険又は責任共済との協議について
責任保険又は責任共済と政府管掌健康保険について、管轄店、査定事務所及び共済連との間に問題が生じた場合には、具体的事情を具し、当職あて連絡すること。
4 責任保険又は責任共済の査定基準について
社会保険事務所長の求償に対する責任保険又は責任共済の査定は、別紙「労災保険等他の社会保険の給付ある場合の取扱いについて」によつて行なわれるものであること。
5 日雇労働者健康保険の事務取扱いについて
日雇労働者健康保険の責任保険又は責任共済に対する求償事務の取扱いについては、政府管掌健康保険に準じて取扱うこと。
前 文(第二次改正)抄
〔前略〕昭和四十七年五月一日から〔中略〕改めることとしたので通知する。
なお、同支払請求書の「(3)他の加害自動車に関する事項」欄には、他の加害自動車の運転者あるいは保有者が被害者自身である場合、また、他の加害自動車が自動車損害賠償責任保険と保険契約を締結していない場合は、記入の必要がないので申し添える。
別表
労災保険等他の社会保険の給付ある場合の取扱いについて
1 求償のみの場合
(1) 傷害による損害(死亡に至る迄の傷害による損害を含む。)の場合
a 求償額が法定限度額を超える場合は法定限度額を、又、求償額が法定限度額に満たない場合は求償額を支払う。
b 労災保険法第20条第2項にいう「同一の事由」とは、「同一の損害内容項目」と解されているから、求償を受けたときの損害調査額積上げ計算には「内訳書」に記載なき項目は計上されない。
c 従つて、積算方法は、求償額を各項目別にそのまま計上し後遺障害補償費については、政令に定められた各等級の保険金額を計上する。
d 被害者に既に仮渡金の支払いある場合は、前規定にかかわらず、計算可能の範囲内で全損害額を積算し、この全損害額から仮渡金を控除するものとする。
(例1)
求償額 療養補償給付 60,000円
休業補償給付 18,000円
障害補償給付 80,000円(14級)
――――――――――――――――――
(計158,000円)
調査額 医療費 40,000円
看護料 20,000円
治療機関における補償費 18,000円
障害補償費 70,000円
――――――――――――――――――
(計148,000円)
決定額 148,000円
(2) 死亡による損害の場合
a 求償に応ずる額は、遺族補償給付については支払うべき保険金の70%以内、葬祭料については5%以内とする。
ただし、受給者以外に相続権者ある場合の遺族補償給付については、通常の場合、遺族補償給付について支払うべき保険金から民法第 900条に基づく受給者の相続分を算出、求償に応ずることとなる。
b 求償前に既に被害者に仮渡金が支払つてある場合においても求償に応ずる額は、保険金額の70%以内とすること。
この場合の仮渡金控除は、原則として、留保額(被害者損害額)から行なうこととする。
(例2)
夫が死亡し、妻と子AおよびBが遺族になつた場合で、労災が妻に対し、第1回目の遺族補償年金給付73,000円(給付基礎日額 2,000円× 365日×40%×1/4)、葬祭料95,000円、合計 168,000円を給付して求償を行なつてきた。
求償額 第1回遺族補償
73,000円
年金給付
葬祭料 95,000円
――――――――――――――――――
(計168,000円)
調査額 慰謝料 0円
( 350,000円)
(第3面記載方法)財産損
73,000円
75,000円
葬祭費
( 150万円×5%)
――――――――――――――――――
(計148,000円)
決定額 148,000円
留保額 1,352,000円
(注)
(1) 財産損について
150万円×70%= 105万円財産損とするが、受給権者(労災)妻の相続分は、本例の場合1/3(民900 条)であるから、 105万円×1/3=35万円が求償に応じ得られる範囲となる。
(2) 第1面には括弧書の 350,000円を除いた実額のみを計上する。
(3) 労災は、年金給付については給付の都度求償を行なうことになつているので、自賠責もその都度求償に応ずるのを原則とする。
2 求償と法第16条請求との競合の場合
(1) 傷害による損害(死亡に至る迄の傷害による損害を含む。)の場合
a 損害額合計が法定限度額に満たない場合は、求償に対しては求償額を、法第16条請求に対しては合計額から求償を差引いた額をそれぞれに支払う。
b 合計額が法定限度額を超える場合は、法第16条請求と求償とは共に同質の債権であるから、民法第427 条の比例配分を採用する。
即ち、求償額と、合計額から求償額を差引いた額との割合をもつて、法定限度額を配分した額をそれぞれに支払う。
c 既に被害者に仮渡金が支払つてある場合においては、被害者に支払う額から仮渡金を控除するものとする。なお、仮渡金が被害者に支払う額を超えるときは、その超える額を求償額から差し引くこととする。
d 損害額合計が、法定限度額を超えるため按分比例する場合においては、前項bの方法で按分比例した後、被害者の損害額から仮渡金を控除するものとする。
(例3)
求償額
療養補償給付 180,000円
休業補償給付 180,000円
――――――――――――――――
(計360,000円)
損害調査額 労災 16条
医療費 180,000円 180,000円 0円
治療機関における補償費
410,000円 180,000円 230,000円
―――――――――――――――――――――――――
計 590,000円 360,000円 230,000円
仮渡金 50,000円 決定額
36万円
求償 50万円×―――= 305,085円
59万円
23万円
16条 50万円×―――= 194,915円
59万円
194,915円-50,000円= 144,915円
(2) 死亡による損害の場合
前記1の(2)の場合と同様、労災が遺族補償給付と葬祭料を給付している場合は、保険金の配分割合を乗じて得た受給者の取得部分と葬祭料を求償に応じ、法第16条請求に対しては残額を支払う。
(例4)
例2と同様、妻と子AおよびBが遺族のとき
求償額 第1回遺族補償年金給付 73,000円
葬祭料 95,000円
――――――――――――――――――
計 168,000円
調査額 労災 16条請求
慰謝料 375,000円 0円 375,000円
財産損 1,050,000円 73,000円 977,000円
葬儀費 75,000円 75,000円 0円
―――――――――――――――――――――――――
計 1,500,000円 148,000円 1,352,000円
決定額
労災 148,000円
16条 1,352,000円
(注)
労災に対しては、 105万円×1/3=35万円を求償に応じられるが、本例の如く競合となつた場合、 350,000円-73,000円= 277,000円を、労災の2回、3回目の求償に備え、留保の必要はない。
従つて、16条請求に対しては、 1,352,000円全額支払うものとする。
3 求償と法第15条請求との競合
(1) 傷害による損害(死亡に至るまでの傷害による損害を含む。)の場合法第15条請求を優先とする。
(例5) 求償額 15条請求
療養補償給付 80,000円
休業補償給付 18,000円 12,000円
慰謝料 50,000円
障害補償給付 80,000円
――――――――――――――――――――――――――
計 178,000円 62,000円
調査額
医療費 80,000円
治療期間における補償費 60,000円
障害補償費 70,000円
――――――――――――――
計 210,000円
決定額
15条請求 62,000円
労災 148,000円(210,000円-62,000円)
(2) 死亡による損害の場合
法第15条請求を優先とする。
従つて、被保険者に支払つた後の残額について1の(2)の方法で配分し労災の求償に応ずることになる。
ただし、示談成立等のため被害者が請求権を放棄しているときは、残額につき、この配分の必要はなく、示談成立前の給付額については、労災の求償にそのまま応ずることとする。
(例6)
例2と同様、妻と子AおよびBが遺族になつたとき
求償額 15条請求額
慰謝料 1,000,000円
第1回遺族補償年金給付 73,000円
葬祭料 95,000円
―――――――――――――――――――――――――――
計 168,000円 1,000,000円
決定額
15条請求 1,000,000円
労災 73,000円+25,000円=98,000円
財産損 50万円×70%×1/3= 116,667円
従って 73,000円
葬祭料 50万円×5%=25,000円
(注)
16条請求のないことが明らかなときは、 168,000円を求償に応ずることができる。
様式1
様式1―2
様式2
様式3
様式4
様式4―2
様式5
様式6
様式7