○高額療養費支給事務の取扱いについて
(昭和四八年一〇月一七日)
(保険発第九五号・庁保険発第一八号)
(各都道府県民生主管部(局)保険課(部)長あて厚生省保険局保険・医療・社会保険庁医療保険部健康保険・船員保険課長連名通知)
高額療養費支給制度については、関係政省令の公布に伴い、昭和四十八年十月十七日保発第三九号・庁保発第二〇号(「健康保険法施行令等の一部を改正する政令等の施行について」)でその施行に関し通知されたところであるが、政府管掌健康保険および船員保険においては、同通知によるほか、次の事項に留意し、制度の円滑な運用に万全を期せられた。なお、組合管掌健康保険においてもこれに準じて取扱われるよう指導されたい。
おつて、本制度を円滑に運用するためには、被保険者等の本制度に対する正しい理解が前提となるので、別紙の事項について、その周知徹底を図られたい。
1 支給要件に関する事項
高額療養費の支給要件については、健康保険法施行令第七十四条および船員保険法施行令第三条の二に規定されたが、その具体的な取扱いは、次によつて行なうものであること。
(1) 現物給付にかかる高額療養費の取扱い
現物給付扱いとされている家族療養費にかかる高額療養費については、診療報酬請求明細書または調剤報酬請求明細書(以下「レセプト」という。)各一件に基づき、支給を行なうものであること。
すなわち、レセプトの作成は、次の単位によつて作成されるものであることから、高額療養費についても、その単位に応じて作成されたレセプトごとにそれぞれ支給要件に該当するか否かを判定するものであること。
(1) 病院(総合病院にあつては、各診療科)、診療所、薬局別となる。ただし、総合病院であつても、入院患者が他の診療科の診療を受けたときは、各科のレセプトを編綴する等により一件として取扱うこととされている。
(2) 医科と歯科を併せ有する医療機関にあつては、医科、歯科別となる。
(3) 同一医療機関であつても、入院診療分と通院診療分とは、それぞれ区別される。
(2) 現金給付にかかる高額療養費の取扱い
療養費払いとなる家族療養費にかかる高額療養費については、看護料、移送費、生血代、治療用装具費にあつてはそれぞれ同一病院、診療所ごと、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師における手当にあつてはそれぞれ各同一施術所ごとに支給要件に該当するか否かを判定するものであること。
なお、非保険医療機関等で診療を受けた者に対して支給する療養費払いにかかる高額療養費については、前記(1)の現物給付にかかる高額療養費の例によつて支給を行なうものであること。
2 支給申請に関する事項
(1) 高額療養費の支給申請書の記載内容については、健康保険法施行規則および船員保険法施行規則の一部を改正する省令により健康保険法施行規則第六十三条ノ七および船員保険法施行規則第四十七条ノ四で規定されたところであるが、別添「健康保険高額療養費支給申請書」および「船員保険高額療養費支給申請書」を参考にされたいこと。
(2) 高額療養費支給申請書は、前記1の支給要件区分ごとに作成し提出させること。
(3) 前記1の(2)の現金給付にかかる高額療養費の支給申請については、その支給の基礎となる家族療養費に関する療養費払い申請の際に、併せて行なうよう被保険者を指導すること。この場合、高額療養費の支給は、当該家族療養費の療養費支給申請書に添付されている証拠書類に基づいて決定すること。
3 支給事務に関する事項
(1) 高額療養費の支給事務を円滑に行なうために、社会保険事務所(船員保険にあつては保険課および社会保険事務所)においては、レセプトが支払基金から送付されてきた時点で、一定点数以上のものを抽出し、別途、記号、番号順に配列保管しておく等の方途を講ずること。
(2) 高額療養費の支給決定は、当該レセプトに基づき行なうものであり、したがつて、当該レセプトは、支払に関する証拠書類として取扱うこと。
(3) 支給決定または不支給決定に関する通知書、支払に関する事務、被保険者原票、船員保険給付記録台帳への所要事項の記入等は、療養費払いのばあいと同様に取扱うこと。
4 その他特に留意すべき事項
(1) 高額療養費は家族療養費に基づいて支給されるので、特別室料、歯科において認められる差額徴収額等家族療養費の支給対象とならないものについては高額療養費の支給の基礎となる家族療養費の額には含まれないこと。
(2) 総合病院の入院患者が、入院期間中に、他診療科で併せて診療を受けた場合には、各診療科のレセプトを編綴する等により一件のレセプトとして取扱うこととされているところであるが、高額療養費制度の実施に伴い、その徹底方を医療機関に対し指導されたいこと。
(3) 当面、申請者の申立その他により総合病院の入院患者が、入院期間中に、他診療科の診療を受けた場合で、それが一件のレセプトとして取扱われていない疑いがあるときは、関係医療機関に照会する等被保険者の不利益とならないよう配慮すること。
(4) 医療機関において薬剤の投与に代えて処方せんが交付された場合は、当該処方せんに基づく薬局での薬剤の支給は、処方せんを交付した医療機関における療養の一環とみなして取扱うよう配慮されたいこと。この場合、その薬剤の支給を行なつた薬局において領収書が発行されているときは、それに基づき支給してさしつかえないこと。
〔別紙〕
広報についての留意事項
高額療養費の支給制度に関し、次の事項につき、新聞、テレビ等の広報機関を積極的に活用して広報を行なうほか、社会保険協会、社会保険委員、社会保険労務士その他関係機関等に対して、あらゆる機会を利用してその周知の徹底を期すること。
1 高額療養費の対象となるのは、保険診療分だけであり、保険診療外のもの(特別室料、歯科で認められている差額徴収額等)は対象とならないこと。
2 高額療養費は、一人の被扶養者が同じ月内に同じ医療機関(入院と通院と歯科は別)において、その医療機関に支払つた保険診療の自己負担分が三万円をこえるときに支給されること。
3 高額療養費は、医療機関から出される診療報酬請求明細書(通常、レセプトと云つている。)によつて支払うので、実際に支払われるのは、診療を受けた月から二カ月程度後になること。
4 老人医療費等国が実施している公費負担医療については、医療機関における窓口での取扱いは、今までと何ら変わらないものであること。
(別添)