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○社会保険医療担当者の監査について

(昭和二八年六月二四日)

(保険発第一三四号)

(各都道府県民生部(局)保険課(部)長・各社会保険出張所長あて厚生省医療課長通知)

標記の件については、六月十日保発第四六号をもつて保険局長から都道府県知事あて通知されたところであるが、これが改正の要点及び小委員会における審議の際問題となつた諸点は左記のとおりであるか通知する。

なお、監査の実施に際しては、その前後を通じて医師会、歯科医師会は勿論のこと関係健康保険組合及び国民健康保険の保険者との連絡を密にし、協力を求めるように措置されたい。

1 目的

従来の要綱においては、その表題が指導監査となつていたため、重点が指導にあるのか監査にあるのかが不明確で、運用上誤解を招く向もあつたので、今回の改正に当つてはその表現を改め医療担当者の監査が本体であつて、これが実施に当つては指導の精神をもつてなすべきことを明確にするため「指導監査要綱」を「監査要綱」に改めた。おつて、国民健康保険の療養担当者の監査も、この要綱に準じて行うこととしたため、「社会保険診療担当者」という呼称を「社会保険医療担当者」と改めた。

2 方針

この項は前項の主旨を明示した。

3 被監査医療担当者せん❜❜衡の標準

従来のせん❜❜衡の標準には各項目にわたり具体的に実例をかかげていたのであるが、これに該当する者を直ちに監査の対象として選定することは、不適当と考えられる場合が予想される等必ずしも合理的な表現と認められないので、これを抽象的包括的に表示することとした。

唯、新要綱により具体的に被監査医療担当者を選定するに当つては、従来の「せん❜❜衡標準」に掲げられていた事例に該当するか否かは、その重要な一指標となるものと考えられるから念のため申添える。

4 監査の方法

従来とその方法には変りがないが、表現等を次のように改めた。

(一) 監査を行う日前直近二月分だけの診療報酬請求明細書の書面監査で判断を下すのは不充分な場合もあると思われるので、「少くとも」という字句を挿入し直近の月の請求書によれない場合もあると考えたので、「原則として」とした。

また、患者実調における調査事蹟書等を「証憑書」と表現することは、この書類をもつて直ちに行政処分の資料となるかの如く誤解されるおそれもあるので「証憑」という字句を削除した。しかし、調査の結果の事実については、事蹟書は勿論必要に応じ聴取書、始末書等も整備すること。

(二) 監査の実施に当つては、従来より被監査者にあらかじめ通知されていたところであるが、本要綱中にその字句がなかつたので明文化した。

(三) 監査調査書に「社会保険における過去の賞罰保険診療に対する講習会出席率」の欄を新設した。

なお、患者実調において、都道府県医師会又は同歯科医師会関係者を立会わすべきであるという意見が出されたが、行政庁の行う調査に、特に立会わす必要性が認められないので表現は従来どおりとした。

5 監査後の処置

(一) 行政上の措置

(1) 指定取消

従来は期限付指定取消(期限付契約解除を含む。以下同じ。)の項が設けられていたが、健康保険法及び船員保険法上においては、明文の規定がないため、期限付指定取消に該当する者も指定取消(契約解除を含む。以下同じ。)として取扱うこととした。しかし、(ハ)(ニ)の何れかに該当する者に対しては、従来と同様一定期限後再指定することに字句を改めた。従つてその運用は従来と相違はない。なお、取消の期間は運用上当該医療担当者に通知しないことを建前とし、再指定に当つては、新たに指定願いを提出せしめるほか都道府県医師会又は同歯科医師会の意見を求めるなど充分連絡し、再指定の適否の確認のうえ取扱うよう願いたい。

また、処分に対する内議の時期は、なるべく医療協議会の開催後にされたいとの意見があつたので前又は後のいずれでもよいこととした。

(2) 戒告及び(3)注意

従来の事故内容は文理上その表現が不充分であつたので、その表現を統一した。

なお、「重大なる過失」とは医療担当者として守るべき注意義務を欠いた程度の重いものを云い、「軽微なる過失」とはその程度の軽いものを云う。また、不正、不当の診療又は報酬請求を行つたものの「しばしば」とは、一回の監査において件数からみてしばしば事故のあつた場合及び一回の監査における事故がしばしばなくとも監査を受けた際の事故がその後数回の監査にあつて同様の事故が改められない場合を云うものであるから念のため。

(二) 弁明

従来も監査時に医療担当者に対して弁明の機会を与えていたのであるが、その機会が時期的に難点があるため、監査後指定取消に該当する者に対しては、再度弁明の機会を与えることとした。

なお、弁明を聴取した場合には必ず聴取書を作成しその内容につき当該医療担当者捺印の上承認を求めること。また、文書による弁明書あるいは弁明の聴取書は監査調査書その他の参考資料とともに医療協議会に提示し公正妥当なる判断に資すること。

(三) 経済上の措置

従来の要綱の表現では、診療報酬額の決定権の所在が不明確であつたため、あたかも監査官の自由意志によつて返還額が決定せられるような印象を与えたので、保険者が審査を委託している基金審査委員会の意見を聴いて返還額を決定するようその表現を改めた。なお、その「3」中「著しい濃厚診療」は療養担当規程の診療方針に違反するものであるから、本要綱の「1」又は「2」の「不当の診療」に該当するものと認め、「3」は削除した。

6 その他

監査時において、特に都道府県医師会又は同歯科医師会に立合の申入をなし、また立会者には意見を述べる機会を与えることとした。

なお、この立会は必ずしも第三者又は被監査医療担当者の弁護人としての立場ではなく、監査を受ける者の実状を了知せしめ公正なる判断を下し爾後の指導に資する目的であるから念のため。

7 国民健康保険の療養担当者の監査

国保療養担当者の監査について保険者代表委員から強い要望があり、また、当局も今後積極的に行う必要を認めたので新たに一項を設け、この要綱に準じて行うことを明示した。

なお、国保の保険者は市町村等であるため、監査を行うに当つては、特に連絡を密にし運営に支障のないようにせられたい。