添付一覧
○健康保険保険料の事業主負担増加分に対する課税に関する件
(昭和二四年四月一一日)
(保発第二三号)
(各都道府県知事・健康保険組合理事長あて厚生省保険局長通知)
標記の件に関して、富士銀行厚生課長から別紙甲号の通り照会があつたので、大蔵省主税局長の意見を徴したところ、別紙乙号の通り回答を得たから、承知されたい。
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(別紙甲号)
健康保険保険料の事業主負担増加分に対する徴税の件
(昭和二四年二月一日)
(厚生省保険局長あて 富士銀行厚生課長照会)
首題に関し、当行新潟県支店に於いて新潟税務署直税課大蔵事務官より甲種勤労所得税調査を受け、左記の点を指摘されました。
記
1 健康保険保険料の事業主負担の増加分に対し課税を要する。
例 健康保険組合の場合
1 本人甲月収八一〇〇円の場合
2 当行保険組合料率六〇銭
3 二七級 保険料四八六円
4 右保険料負担割合
法第七十五条に基き組合規約を以つて
事業主 三八九円/本人甲 九七円/計 四八六円
5 この場合法第七十二条に基き折半負担額以上事業主が増加負担を為すことは、増加額負担分を賃銀として支払うものとして課税対象とする。
保険料 486円×1/2=243円(折半負担額)
243円-97円=146円(増加負担額)
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課税対象
6 即ち、本人甲に対する課税対象給与額を
8,100円+146=8,246円
とする。
右に対し、次の事由に基き従業員の課税対象とすることは、疑義ありと考えますから、御詮義の上増加負担分に対して非課税を願いたく、大蔵省当局に対じ善処方可然至急御高配の上何分の御指示仰ぎます。尚今後の問題として社会保険料は、課税対象より除外する旨の法的措置を御研究願いたいと存じます。
事由
1 法第七十二条の折半負担規定の主旨は、事業主負担の最小限度を定めたるものである。
2 法第七十五条に増加負担の規定あり、被保険者の利益を認める立法主旨に鑑み、課税対象とは考えられない。
3 社会保険は、強制保険であり、産業従業員の義務であるが、保険利益は、必ずしも平等に被保険者に還元されるものでないから、個人給与と見做すことは不当であると考える。
若し、課税対象と解釈すれば、法定折半額事業主負担分も賃銀と見做さるべきものと思料する。
4 保険料の負担割合は、法定以上は、事業主と被保険者の任意に協定して保険料を負担すべきであり、国家の定める厚生施設の費用負担額の内容に対して迄課税妥当なりや。
5 社会保険制度の主旨に鑑み、之等の課税は妥当なりや。
6 賃銀所得の原則として取得者が自由な使用価値あるものでなければならぬと言われるが、保険料は国家の厚生施設として法定義務であつて、個人に給与されても自由な使用価値が認められない。
この保険料の一部を直接事業主が増加負担する場合、本人の所得とすることは妥当なりや。
7 課税対象としては、事務的に極めて煩瑣であり、徴税額も亦僅少であるため従来一般通念として之を除外した。
8 勤労所得税の過重を世論とする現在、更に之を加重し苛斂誅求を敢て強行せられるものなりや。
(別紙乙号)
健康保険法第七十五条及び第七十五条の二の規定により事業主の負担する保険料に対する所得税の課税について
(昭和二四年四月五日 蔵税第一〇二八号)
(厚生省保険局長あて 大蔵省主税局長回答)
本月十日付保文発第二三四号で照会があつた標記の件については、別紙のとおり各財務局長宛通牒しておいたから了承されたい。
(別紙)
健康保険法第七十五条の規定により事業主の負担する保険料に対する所得税の取扱について
(昭和二四年四月五日)
(各財務局長あて 大蔵省主税局長通知)
健康保険法第七十五条の規定に基き、健康保険組合の規約(制定又は変更については、厚生大臣の認可を経ることになつている。)を以て事業主の負担すべき割合を増加した場合における当該増加部分について、これを被保険者たる組合員に対する給与として所得税を課税している向もあるようであるが、右は同法第七十二条又は第七十五条ノ二の規定による事業主負担の保険料額と同様、所得税を課税しないものであるから留意されたい。