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○健康保険組合の事業運営について

(昭和三二年二月一日)

(保発第三号)

(各健康保険組合理事長あて厚生省保険局長通知)

健康保険組合の事業運営については、従来、当局から示した方針に沿い、組合設立の母体である事業主の企業の特殊性を尊重して、その企業に即応した事業を遂行し、組合設立の目的を達成するため、鋭意努力をされてきたところであるが、健康保険制度のわが国社会保障制度上における使命の重要性にかんがみ、この際特に、組合制度の趣旨を改めて確認し、積極的に公法人としての自主性の確立につとめ、併せて事業内容を再検討し、その合理化をはかることを主眼とし、左記方針を定めたので昭和三十二年度からは従来の方針によるほかこれに基き健全にして円滑なる事業運営を期することとされたい。

なお、従来当局から発したこれらに関する通ちよう中、この通ちように抵触するものは、廃止するものであるから承知されたい。

一 庶務関係について

健康保険組合の事業は、事業主の協力によつて、その円滑な運営を期することは、極めて望ましいことであるが、他面、健康保険組合は、健康保険法にもとづき事業を遂行することを存立目的とする独立した公法人であることに鑑み、自主、積極的な運営により、進んで被保険者の利益を保護することが、制度の目的にそう所以であつて、事務の執行については、事業主に依存し、若しくは、事業主の事務と混淆するが如きは極力避けなければならない。

これが為、事務の執行については、有能な専従職員をもつてこれに充てることを原則とし、事務量に応じた職員を配置することによつてその適正を期すること。

なお、真に已むをえない事情により、兼務職員をもつてこれに充てる場合であつても、その担当する事務量に応じた費用を組合において負担するものとし、その必要額を予算に計上すること。

二 財務関係について

1 保険料額の負担割合について

健康保険制度は、相互扶助の精神にもとづき、勤労者の生活の安定を目的とする制度であつて、これに要する費用を、被保険者において負担することは、その本旨から当然であり、かつ、制度の民主的運営に欠くことのできない要素をなしており、現行法上折半負担を原則として事業主とともに保険料の一部を負担しているところである。

しかしながら、一部においては、事業主の負担割合を極度に増大し、ややもすれば、本制度がその福利施設と混同されるに至る恐れを生じているものもあり、かくてはこの制度の趣旨を逸脱することともなるので、この際、あらためて保険料額の負担割合を再検討し、その適正を期する必要がある。

なお、諸種の事由により、直ちに是正の困難な場合であつても、今後保険料率を増減する等の機会を利用し、逐次適正な負担割合とすることに努められたい。

(註)

1 法定給付費に関しては、折半負担を原則とするが、附加給付費その他の事業に要する費用は、同意により事業主の負担額を増加することが考えられる。

2 保険料の負担割合については、健康保険法第七十二条および第七十五条に定められているところであるが、第七十二条が折半負担の大原則を謳つているのに対し、第七十五条は、特別の場合に、その例外を認めることもあることを定めているに過ぎないものであつて健康保険組合における負担割合も、通常、折半負担の原則のうえにたつべきものであり、第七十二条の原則を全く無視して適当に負担割合を増加することができるということではない。

2 準備金の管理について

準備金の管理については、従来、準備金の一部をもつて、病院、診療所の土地または建物若しくは保健施設の用に供する土地を保有することが、管理の一形態として認められてきたところであるが、今後は、さらにその範囲を拡大することとし、次の方法によつて保管することができるものとする。

(1) 組合が他の組合と共同して、準備金の一部をもつて病院、診療所の土地または建物を保有すること。

(2) 組合または組合が他の組合と共同して、準備金の一部をもつて、保健施設の用に供する土地または建物(保養施設を除く。)を保有すること。

右の方法により、共同して保有しようとするときは、当事者である組合間において十分なる協議を行い、特に、一部の組合が持分について財産処分を必要とするような事態が生じた場合に備え、その方法を文書により明確に規定し、処分に際し、いささかの支障もきたすことのないよう万全の注意を払い、さらに、これらの財産の管理については、共同して所有権保存登記を行うとともに、建物または土地ごとにその持分を確定しておくことが肝要である。

また、保有する財産が建物である場合には、昭和三十年一月五日保発第一号通ちよう❜❜❜に示した準備金の一部をもつて病院、診療所の健物を保有する場合の減価償却の例により、それぞれの価額に応じて減価償却を行うものとし、できうる限り、すみやかに一般財産に転換するよう努めなければならない。

(註)昭和三十年一月五日保発第一号通ちよう抜すい❜❜❜❜❜❜

8イ 準備金の一部で病院、診療所を保有しようとする場合は、その施設の実施にかかる予算認可申請書に減価償却の計画書を添付する取扱とする。

ロ 償却の期間は、償却すべき額の多寡、組合経済の見通し等を勘案して定めなければならないが、早期に償却が完了することが準備金としての性質上望ましいから、必ずしも通常の場合における耐用年数の例によることなく、概ね鉄筋の場合は一五年以内、木造の場合は七年以内の期間で定めることが適当と考えられる。

ハ 毎年の償却予定額は、予算の支出にその額を計上して確実に償却を行うようにするとともに、予算認可申請書に各年度別の償却済額および今後の償却予定額表を添付する取扱とする。

ニ 準備金台帳、財産目録等の取扱は、取得額から償却額を控除した額を準備金としての現価とし、時価から準備金としての現価を控除した額は、その他の財産として整理する取扱とする。したがつて、同一物件が、準備金およびその他の財産としてこの様に整理されることになる。

三 保険給付関係について

1 事業主診療機関における診療については、特に、その実態の把握に努めるとともに、適正なる診療報酬の支払を期すること。

従来、事業主診療機関に対する診療報酬の支払方式は、その大部分が点数単位方式により、一部において人頭式、定額式により実施されており、それぞれの長所を生かし適正な診療報酬の支払に努力されているところであるが、人頭式、定額式による支払方式においては、その支払が適正でないものが見受けられるので、今後、さらに医療の実態把握につとめるとともに療養に要した費用に応じた適正な診療報酬の支払を行い、以つて保険給付の適正を期するものとすること。

2 診療報酬の事後審査を積極的に励行すること。

診療報酬の事後審査は、給付の適正を期する上にとつて、極めて必要であるばかりでなく、保険財政に及ほす影響もまた少なくないので、これら審査を励行し、その徹底を期することとし、これが為に従来の方針によるほか、さらに、次の諸事項を励行することとされたい。

(1) 担当職員の教養訓練につとめ、常に診療報酬支払請求明細書の事務的審査を実施しうる体制を整えること。

(2) 事業主診療機関との診療契約については、診療に当り、健康保険保険医(保険歯科医)療養担当規程により適確に実施させるものとすること。

(註)健康保険保険医療養担当規程 昭和二十五年厚生省告示第二百三十九号

健康保険保険歯科医療養担当規程 昭和二十五年厚生省告示第二百四十号

(3) 事業主診療機関の診療報酬支払請求明細書は、健康保険保険医(保険歯科医)療養担当規程に定める様式の例によるものとすること。

(註)健康保険保険医療養担当規程様式第三号および第三号の二

健康保険保険歯科医療養担当規程様式第三号

3 事業主診療機関としての嘱託医との診療契約について

事業主診療機関としての嘱託医と診療契約を締結し、嘱託医に直接診療報酬を支払つているものが見受けられるが、これは、社会保険診療の体系を乱すものであるから、すみやかに廃止すること。

4 附加給付について

附加給付は、組合制度の特色の一つであり、積極的にその充実をはかることは、極めて望ましいことである。しかしながら附加給付は、法第六十九条ノ三に規定されているとおり、保険給付の一部であり、かつ、法定給付に併せ行わるべきものであるから、法の目的に適い、その趣旨に副つたものでなければならない。これが為に、次に示すところにより、すみやかに、附加給付の内容の整理統合を行うものとすること。

(1) 法定給付期間を超えるもの、健康保険法の目的を逸脱するもの、または、この制度で定める医療の内容または医療の給付の範囲を超えるもの若しくは、保健施設的なものは、廃止すること。

ただし、延長傷病手当附加金については、療養の給付期間内、家族療養附加金については、現に療養に要した費用の範囲内において実施することは差支えない。

(註)附加給付の整理統合を行う必要のある場合においては、 廃止するのみでなく、その費用をもつて適正な附加給付を新設するかまたは、他の施設の充実をはかる等実質的に被保険者の不利益を来たさないよう考慮することが望ましい。

2(2) 被保険者期間(勤続期間)により差の生ずる給付は、廃止すること。

(3) 家族療養費の附加給付は、特定の医療機関に受診した場合に限り認める等、医療機関により差の生ずるものは、受給の機会均等を害するおそれがあるので廃止すること。

(4) 附加給付の名称は、法定給付の名称に「附加金」を附した名称とすることを原則とすること。

四 保健施設について

保健施設については、従来の通ちよう<ヽヽヽ>に示した方針に従い、それぞれ各組合の実態に即応した施設が、活発に実施されているところであるが、今後は、左に掲げる点に留意し、諸統計資料にもとづき、最も効果の期待できるものを重点的に実施するものとする。

(1) 直接に傷病予防を目的とする施設を積極的に実施することとし、これが為、保健施設に要する費用は、保険給付費の一割に相当する額を超えても差し支えないこと。

(2) 組合員に費用の一部を負担させて、薬剤を斡旋することは、疾病予防を目的とするものであつても、薬事法第二十九条の規定に抵触するおそれがあるから、取扱に当つては慎重を期すること。

(註)無償配布することは差し支えない。

(3) 委託経営による保健施設に対する設備資金としで受託者に融資を行うことは、現行法令上妥当と認められないので、これを廃止すること。