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○健康保険被保険者証の取扱に関する件

(昭和二三年八月二三日)

(保発第四三号)

(各都道府県知事あて厚生省保険局長通知)

健康保険制度における療養の給付は、本制度の根幹とする事実に鑑み、今次の法令改正においては、保険医制度の改善及びこれに関連する社会保険診療協議会の設置並びに社会保険診療報酬算定協議会制度の改正を図り、他方社会保険診療報酬支払基金法を制定して保険医等の切実な要望に応えもつて社会保険診療の円滑な推進を企図したところであるが、省みて最近における受診件数の増加は、診療報酬単価の引上と相俟つて保険経済の逼迫を招来するものと予想されるところであつて、ここに被保険者及び被扶養者の適正な受診方を指導する必要が、極めて痛切に認められ、その一環として被保険者証の取扱について一段とその適正を期し、殊に被保険者証の未回収による不正使用又は他人への貸与等による不正使用の傾向あるやに認められることは、甚だ遺憾とするところであり、かくては徒らな療養給付費の増加によつて保険経済の危殆を招来し、延いては今回法令改正等により企図された健全な保険診療の推進を阻害するものであるから、今般これが徹底的是正を図るため左記要領により、これが取り扱の万全を期されるよう格段の御配慮願いたい。

追て、貴管下健康保険組合に対しては、この旨御示達の上必らず本措置の励行方を御指導願いたい。

第一 恒久的措置

1 被保険者証の交付に当つては、その取扱の尊重精神を喚起するため、特に取扱上の注意を記載した附箋等を貼附して事業主を通じこれを徹底させるように努むること。

2 事業主が保存する被扶養者調書は、常に適正に整備させること。

3 事業主が被保険者に対し、被保険者証を配付する場合には、整備された被扶養者調書に基いて被扶養者記載欄に記載し、必ず事業主若しくは係員の印をおして配付すること。

4 被保険者証の記載事項に変更があつたとき殊に被扶養者の異動による記載事項の変更は、必ず事業主において訂正し、事業主若しくは係員の印をおすようにさせること。

5 被保険者の資格喪失の場合には、その資格喪失後引き続き療養の給付を受ける場合を除き、必ず事業主に返付し、事業主は必ずこれを資格喪失届に添附して提出するよう励行させること。

もし、被保険者証の紛失等の場合には、一定の紛失届を被保険者から提出させ、資格喪失届に添附させるよう励行させること。

6 被保険者証の再交付は、被保険者に対して被保険者証の尊重観念を養成させるために、その取扱を厳格にすること。

7 被保険者に対して被保険者証を他人に貸与して他人に不正使用させ、又は資格喪失後において不正使用することは、犯罪を構成するものとしてその取扱を注意すること。

8 保険課又は社会保険出張所においては、被保険者証未返納整理簿を活用して、可及的に被保険者証の回収に努むること。

9 回収被保険者証は、速やかに無効被保険者証である旨の表示をすること。

10 保険医等に対しては、被保険者又は被扶養者が保険診療を求めたときは、必らずその者が正当受給権者であるかどうかを確認の上、診療を開始するよう徹底させること。

第二 臨時的措置

(一) 趣旨

被保険者及び被扶養者に対して被保険者証の取扱上の尊重観念を徹底させ、且つ、無効の被保険者証を一掃して不正使用を絶滅し、もつて保険経済の確保と保険診療の推進に寄与するためにこの措置を取るものとする。

(二)実施要領

1 十一月一日から同月三十一日までを彼保険者証検認月間として、全被保険者の有効被保険者証を検認して無効被保険者証を一掃すること。

2 被保険者証(十月一日以降において交付したものを除く。)は、事業主をして回収させ、一括して保険課又は社会保険出張所に検認のため提出させること。

3 前号の提出期間中には、被保険者の申出によつて資格証明書を事業主において発行させ、保険診療上支障を来さないようにさせること。

4 提出された被保険者証は、事業所別被保険者名簿と照合して、その有効又は無効を確認すること。

5 有効と確認済の被保険者証とには、その表面の(一)の欄に「昭和二十三年十月検認」と記載して、所属都道府県の印をおして事業主宛返付すること。

6 事業所別に全被保険者の被保険者証の検認を終つたときには、事業所別被保険者名簿の表面の摘要欄に「昭和二十三年十月 日被保険者証検認」と記載し、その日附を記入すること。

第三 附随的取扱

管内保険医又は保険者の指定する者に対しては、この措置の概要を通知し、次の要領によつてこれが協力を求むること。

1 被保険者証の検認月間中若しくは検認のため被保険者証を提出した期間中は、事業主の資格証明書によつて被保険者又は被扶養者の診療を取扱うこと。

2 十一月以降において被保険者証を提出して保険診療を求められたときは、検認済被保険者証であるかどうかを確めて検認済のものに限りこれを扱うこと。但し、十月一日以降において被保険者証の交付をしたものは、この限りでない。

3 十一月一日以降において、未検認被保険者証を提出して保険診療を求めた被保険者又は被扶養者に対しては、検認の趣旨を注意して無効被保険者証は返納を奨め、又有資格被保険者証は、診療の取扱をなさず、検認手続の励行を注意させること。