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○転勤による資格取得者に対する法第五十五条の適用について

(昭和二七年五月一四日)

(平山健発第二三号)

(厚生省保険局長あて明治鉱業平山健康保険組合照会)

御尋ねの便宜上、新組合をAとし旧組合をBとして表示致しますから御了承願います。

1 被保険者山野三郎は五月三日会社の都合によつてA組合の事業所に転勤を命ぜられたのでB組合ではその翌日五月四日に資格喪失として処理した、予てから、本人に交付してあつた被保険者証は、本人の意志によつて転勤を予知したか否かは不明であつたが、資格喪失の前月である四月二十三日にB組合へ返納してあつたが、傷病の記録経過は何等記載なく空白であつた。

2 被保険者山野三郎の妻芳子は、五月八日右眼が霞んで視力が減退して来たから、A組合発行の被保険者証を使用して保険医山田医師の診断を受けていた。同医師は治療の便宜上翌日K大学病院に入院せしめて左眼の剔出手術を受けた。

3 A組合の保険者は、本人の病歴調査をしたところが、左記のような事実が判つた被保険者山野三郎が、B組合の被保険者であつた当時本年三月十三日外傷性左角膜破裂虹彩脱出で前記山田医師の治療を受けていた。

4 A組合の行政解釈では、病歴の経過から判断して今回の発病は右眼ではあるが、左眼の虹彩脱出から誘発している、即ち、因果関係があるので、健康保険法第五十五条の該当者として継続療養証明書をB組合に発行させて一切の給付を免れようとしている。

5 B組合では、本人が四月二十三日被保険者証を返納していた事実から、一応左眼の病状は治癒かその症状固定か何れかである、現在総ての保険医は治癒する迄被保険者証を領置しておる、若し、山野三郎の転勤が事前に判明し治癒未了であれば、妻芳子の残された病気治療のためには、B組合に医師の診断書を提示するか、何等かの交渉と意志の表示がなされていなければならなかつた筈であるにも拘らず、既に転勤一五日前に被保険者証を返納したという事実から、左眼の疾病は一応治癒と解釈される。

6 山野三郎は、自己の利益擁護の立場からは、当然A組合の資格取得後の五月八日から療養給付を開始してもらうのが有利である。

以上の結果から考察して、A組合の主張の通り、被保険者の転勤にも所謂法第五十五条を適用せねばならぬかに疑いを持つと共に、本件に関しては諸般の事情から法第五十五条の継続療養証明書の発行は妥当を欠くものではないかと考えられ、同時にA組合の言う転勤による形式的な資格喪失も、法文は予期したものか了解に苦しむものである。

転勤による資格取得者に対する法第五十五条の適用について

(昭和二七年六月二三日 保文発第三五三二号)

(明治鉱業平山健康保険組合あて 厚生省保険局健康保険)

(課長回答)

昭和二十七年五月十四日付平山健発第二三号を以て御来照になつた標記の件について、次のとおりお答えする。

法第五十五条の規定は、被保険者資格喪失後の保険給付について規定したものであつて、転勤等の事由により、或保険者における資格を喪失し、同日他の保険者における資格を取得する場合(法第十八条)は、資格を存続するものであるから、同条の規定の適用の問題を生じない。

従つて、同一疾病に関する給付期間についての制限(法第五十七条ノ三)がある外は、被保険者所属変更後のその疾病については、新保険者が給付をすべきものである。従つて、御照会の場合被保険者山野三郎は、A組合の被保険者として同組合に対して配偶者山野芳子の家族療養費を請求できるものである。