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○国税徴収法並びに健康保険法等の改正に伴う措置について

(昭和三四年一二月八日)

(保発第七六号)

(各都道府県保険課(部)長・各社会保険出張所長あて厚生省保険局長通知)

現行国税徴収法(以下「旧法」という。)が全文改正され、これに伴い健康保険法、厚生年金保険法、日雇労働者健康保険法、船員保険法(以下「健康保険法等」という。)が国税徴収法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(昭和三十四年法律第百四十八号)により、それぞれその一部が改正され、改正後の国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号。以下「新法」という。)並びに改正後の健康保険法等は明年一月一日施行と定められた。

このため、健康保険法等の規定による徴収金の国税滞納処分の例による処分及びこれに伴う手続並びに徴収金の徴収についても変更を受けることとなる。

新法施行後においては、その附則第二条の規定により旧法の規定による処分又は手続は、附則に別段の定めがある場合を除き新法の規定による処分又は手続とみなされることとなつている。しかしながら滞納処分の効力の及ぶ範囲の変更されるもの、また新たに手続を要するもの等があるので、旧法の規定によりすでに処分執行中のもの及び今後新法施行日前までの間(以下「経過期間中」という。)に処分を執行するものについては、それぞれ左記により処理することとしたから遺憾のないように措置されたい。

第一 新法附則第二条関係

一 法定果実に対する差押の効力について

旧法は、差押の効力が差押財産から生ずる法定果実(家賃、地代、小作料、利息等)に及ぶこととしていたが、新法第五十二条は、法定果実(債権差押後の利息を除く。以下同じ。)には差押の効力が及ばないことと定められたから次により措置すること。

1 現に差し押えている財産から生ずる法定果実を差押の方法によらないで収取しているものについては、その要否を検討し、新法施行後においても収取の必要があると認められるものについては、経過期間中において別に法定果実に対する債権差押手続をとるものとする。

2 経過期間中に新たに法定果実を生ずる財産を差し押えた場合において、法定果実を収取する必要があると認めたときは、債権差押の方法により収取するものとする。

二 差押財産が保険等に付されている場合の差押の効力について

新法第五十三条((保険に付されている財産に対する差押の効力))の規定により、差押の効力は保険金又は共済金の支払を受ける権利に及ぶこととされたから、現に差押中の財産又は経過期間中に新たに差し押えた財産について、保険等に付されているかどうかを調査し、保険等に付されていることが判明したものは、保険にあつてはその種類、保険金額、保険者、保険契約者、保険金受取人、保険期間等、共済にあつてはこれらに相当する事項を第四に定める差押財産調査表に記載しておき、新法施行後直ちに保険者又は共済事業者に別途通達に定める通知書を発するものとすること。

ただし、差押財産が保険等に付されているかどうかの調査及び保険者等への通知は次に掲げるもの以外の差押財産については、これを省略してもさしつかえない。

1 全喪事業所の滞納にかかる差押財産

2 五〇万円以上の滞納にかかる差押財産

3 特に必要と認められる差押財産

三 差押禁止財産の変更について

1 新法第七十五条((一般の差押禁止財産))の規定により、動産等一般の差押禁止財産の範囲について若干の変更があつたが、新法の規定により新たに差押禁止財産に該当することとなつたものを現に差し押えている事例は少いと思われるから差押禁止財産の有無を差押調書により個別に検討することは省略してさしつかえないこと。

ただし、個別の検討を省略した場合においては、新法施行後差押財産の換価をしようとするときにおいて差押禁止財産でないかを点検し、差押禁止財産であるときは当該財産の差押を解除し、誤つてこれを公売しないよう特に留意するものとする。

なお、経過期間中においても、新法に規定する差押禁止財産の差押又は公売はしないものとし、また現に差押中の財産が新法に規定する差押禁止財産に該当することが判明した場合は差押を解除してさしつかえない。

2 新法第七十六条((給与の差押禁止))の規定により、給料等の債権についてその差押禁止額の範囲が変更になつたので、給料等の債権の差押の事例は少いと思われるが、事例のある場合は次により措置すること。

(一)現に給料等を差押中のものについては、新法施行後直ちに新法施行後に支払期日の到来するものの差押を解除するとともに改めて新法による差押を行うこと。

(二)新法の規定によれば全額差押禁止に該当する給料等の債権は、経過期間中においても差し押えないものとする。

(注)(1)新法第七十六条の規定による差押禁止額の計算にあたつて、同条第一項各号に定める金額のうち不明のものがあるときは、第三債務者等に照会する等適宜な方法により調査するものとし、また毎月支払われる給料等の額が異る場合の差押禁止額の計算については給料等の数か月分を平均して算出するものとする。

(2) 新法施行前に旧法の規定により差押をしたものについて、新法施行後に差押の一部解除又は追加差押をすることは取扱上きわめて煩雑である。従つて、事務の簡便のため前記(二)のとおり、いつたん旧法の規定による差押を解除し、改めて新法の規定による差押をすることとしたのであるから留意すること。

(3) 新法第七十六条第一項第四号でいう「政令で定める金額」は国税徴収法施行令(昭和三十四年政令第三百二十九号)第三十四条((給料等の差押禁止の金額))によつて給料等の支給の基礎となつた期間一月ごとに五〇〇○円(滞納者と生計を一にする配偶者その他の親族があるときは、これらの者一人につき三〇〇○円を加算した額)か又は生活扶助の基準額の一〇〇分の二○に相当する金額かのいづれか多い方の金額とすることと定められた。(しかし生活扶助の基準額はその最高額をもつて計算しても前者の金額に満たないものと考えられる。)なお、差押禁止額の計算については、さきに送付した「新国税徴収法の概要」の一六頁~一九頁を参照すること。

四 交付要求にかかるものの措置について

新法第十三条((交付要求先着手による国税の優先))は、交付要求の先着手による国税の優先について定め、また新法第八十二条((交付要求の手続))は滞納者及び権利者に交付要求をした旨の通知をすることを定めたものであるが、これらの規定は健康保険法等による徴収金の徴収或は滞納処分についても適用されることとなるので次により措置すること。

1 経過期間中において交付要求の手続を要すると認められるものについては、できるだけすみやかにその手続をとること。

なお、経過期間中に交付要求する場合は、旧法施行細則第八号ノ二書式に準じた書式に交付要求対象財産を記載した書類を別添して行うものとするが、裁判所、執行吏又は強制管理人に対するときは、財産の名称にかえ事件番号を記載し、破産管財人に対するときは、「破産財団」と記載してさしつかえない。

2 現に交付要求をしているもの及び経過期間中に交付要求をするもので、新法施行時までに交付要求が完結しないと見込まれるものについては、経過期間中に交付要求先執行機関等に照会し、交付要求対象財産を確認するとともに新法第五十五条((質権者等に対する差押の通知))各号に掲げる者の有無及びその権利並びに他に交付要求をしている者があるかどうかを調査しておくものとすること。

なお、交付要求をした旨の通知を要する新法第八十二条第三項で準用される新法第五十五条各号に掲げる者で「知れている者」とは、この場合については交付要求先執行機関に対する問合せ程度で判明する者としてさしつかえないが、登記、登録のできる財産については、登記簿、登録簿を調査し、新法第五十五条各号に掲げる者の有無及びその権利の内容を確認すること。

(注)(1)交付要求対象財産を特定させるのは、財産の権利者に交付要求をした旨の通知をする((新法第八十二条))ほか交付要求の制限((新法第八十三条))交付要求の解除((新法第八十四条))交付要求の解除の請求((新法第八十五条))等の規定が定められたため新法施行後の事務に便宜であるからである。

(2) 新法施行後は、新法施行令第三十六条第一項第三号によつて交付要求の対象となる財産を交付要求書に記載することとなるが、交付要求先執行機関にあらためて通知しなくともその交付要求の効力に変りはない。

(3) 新法施行後において、滞納者及び新法第五十五条各号に掲げる者に、交付要求をした旨の通知をしなくとも交付要求の効力には変りはない。しかしこの通知をしないと新法第十八条((質権及び抵当権の優先額の限度))の適用をうけることができないので、質権者、抵当権者についてはこの通知をしていなければ不利になることも考えられる。この点については、別途その措置を通達する予定である。

(4) 新法第八十六条((参加差押の手続))、第八十七条((参加差押の効力))は、その参加差押に係る財産についてされていた滞納処分による差押が解除されたときは新法第八十七条第一項各号に掲げる時期にさかのぼつて差押の効力を生じさせるものである。したがつて新法施行時において旧法による交付要求中のものを新法による参加差押に切り替えることが考えられるが、これは必ずしも徴収上有利でない場合も考えられる。例えば交付要求によれば先順位にあるため他の交付要求をした者より優先して保険料等の交付をうけることができるのに、これを参加差押に切り替えたため交付要求の順位がおくれて(相手方執行機関が差押財産を換価したときは、参加差押は交付要求の効力しかない。したがつて参加差押をしたときが交付要求をしたときとなる。また旧法の規定に基く交付要求の解除をしないで重ねて参加差押をすることはできないものと解される)他の交付要求をした者に優先されることも考えられる。参加差押への切替の措置については別途通達する予定である。

(5) 国税の取扱についても、国税についての差押財産について交付要求をしている執行機関に対してはその交付要求にかかる財産を特定するようしようようすることとする旨の通達がされている。

第二 新法附則第十一条関係

新法附則第十一条((滞納処分の利害関係人への通知に関する経過措置))の規定により新法施行後遅滞なく行わなければならない通知を新法施行時において一時に行うことは困難であると認められるので、次により措置すること。

一 新法第五十五条各号に掲げる者に対する差押の通知について

1 現に差押中の財産について、新法第五十五条各号に掲げる者のうち、旧法施行規則第十二条((質権等設定財産ノ差押))の規定により通知を発することになつている権利者以外の者があることが判明した場合は、旧法施行規則第十二条及び第十三条の規定に準じた通知を行うものとしなるべく早い時期に行うこととすること。

2 経過期間中に差し押えた財産については、新法第五十五条各号に掲げる者に対して差押後直ちに通知をすることとすること。

3 前記1及び2の通知に関して新法第五十五条各号に掲げる者で「知れている者」とは、次に該当する者とすること。

(一)抵当権等の登記、登録をしなければ第三者に対抗することができない権利を有している者については、登記簿、登録簿の調査により確認される者

(二)留置権、動産質権等の登記、登録をすることができない権利を有している者については、滞納者の住居、差押財産の所在場所等において、滞納者又は捜索立会人等に対して聞き取り程度の調査を行うことにより判明した者

(三)賃借権である借地権等登記、登録をすることができるが、登記登録がなくても第三者に対抗できる権利を有している者については、その権利について登記、登録があるものについては(一)により、登記、登録がないものについては(二)による。

(注)前記(一)の場合において、登記をしていない抵当権者等のようにその権利について第三者に対抗することができない者に対しては通知は要しないことに留意する。

4 現に差押中の財産について新法第五十五条各号に掲げる者の有無及びその権利の内容を調査する場合において、すでに登記簿、登録簿について旧法施行規則第十二条及び第十三条に規定する権利者の有無について調査しているときは、新法第五十五条の規定により新たに差押の通知を要することとなつた先取特権者、仮登記権利者の有無について改めて登記簿、登録簿の調査を行わないこととしてさしつかえないこと。

また、不動産賃借権等の登記、登録をしていない者及び動産等登記、登録ができない財産についての権利者の有無等については、滞納処分票及びその附属書類等による調査にとどめ、新たな調査は要しない。

(注)(1)新法第五十五条各号に掲げる者のうち旧法施行規則第十二条及び第十三条の規定により通知を発することとなつている権利者以外の者とは、次に掲げる者である。

I 先取特権、留置権、賃借権、その他第三者の権利の目的となつている財産となつている財産

Ⅱ 仮登記がある財産

(2) 新法附則第十一条の規定は、新法施行前であつても新法の規定による通知に相当する通知がしてあれば、新法施行後において改めて新法の規定による通知をしなくてもよい旨を定めたものであると解される。

第三 第三者の権利のある財産の差押について

旧法施行中においても、国税徴収法逐条通達第十関係二十三により財産の差押に際してはできるだけ第三者の権利を尊重することとしており、差押財産の選択については、新法施行後においてもこれと同様の取扱となる見込であるから経過期間中においては、従来と同様に取り扱うものとすること。

第四 差押財産調査表の作成について

差押財産の上にある第三者の権利等の状態をは握し、これら第三者に対する差押の通知書等の発送状況を明らかにして第三者が自己の権利を主張する機会を失うことを防止するとともに、誤つて差押の通知等を行わなかつたことにより、後日異議の申立等が行われることがないよう措置するため、今後次により差押財産調査表を作成するものとすること。

一 差押財産調査表の作成時期等

差押財産調査表は、次に掲げる場合において、それぞれに定めるときに差押調書又は交付要求決議書ごとに直ちに作成することとし、作成した差押財産調査表は差押調書又は交付要求決議書の次に編てつすること。

1 不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械、無体財産権及び債権で登記、登録を要する財産を差し押え、又はこれらの財産について交付要求をした場合、その差押又は交付要求をしたとき。

2 1に掲げる以外の財産を差し押え又は交付要求をした場合、交付要求を受けたとき、又はその財産につき第三者の権利があることが判明したとき若しくは保険等の内容を調査したとき。

3 現に差押又は交付要求中のものは、前記12に準じて作成すること。

二 差押財産調査表に記載する事項は次のとおりであること。

1 新法第五十五条各号に掲げる者の住所、氏名、権利の内容及び権利者への通知に関する事項

2 交付要求にかかる執行機関の所在、名称、債権金額等交付要求に関する事項

3 損害保険の保険者等の所在、名称、損害保険等の内容及び保険者等に対する通知に関する事項

4 差押換の請求及びその措置に関する事項

5 差押又は交付要求の解除に関する事項

三 差押財産調査表の様式は適宜定めることとすること。

(注)新法施行後においては、差押財産調査表の様式は別途通達により定める見込みであるが、その場合においてもこの通達にもとづいて経過期間中において作成した差押財産調査表は新法施行後も引き続き使用することとし、別途通達により定めたものに改めて移記することはしない取扱とする見込みである。

第五 その他

一 封印その他差押の公示について

差押えた動産又は有価証券(以下「動産等」という。)を滞納者又は第三者に保管させたときは、旧法においても封印その他の方法をもつて差押を明白にすることとしていたが、新法施行後は、封印、公示書その他差押を明白にする方法(以下「封印等」という。)により差し押えた旨を表示したときに差押の効力が生ずることになつたから、次により措置すること。

1 経過期間中においても、動産等を差し押え滞納者又は第三者に保管させた場合は、封印等を確実に行うものとすること。

2 現に差押中の動産等で滞納者又は第三者が保管中のものについては、後記四によつて臨場検査をした場合、或は滞納処分等により臨場したときにおいては、封印等をしていないものについて封印等をするものとすること。

二 公売実施上の注意について

国税徴収法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律第三十八条((健康保険法の一部改正))、第四十一条((船員保険法の一部改正))、第七十条((日雇労働者健康保険法の一部改正))、第七十二条((厚生年金保険法の一部改正))により健康保険法等の徴収金の先取特権の順位が変更になり、同法附則第七項((公課の先取特権の順位の改正に関する経過措置))、新法附則第十二条((換価及び配当に関する経過措置))には、それぞれ公売に関する経過措置が定めてあるが、取扱上種々問題を生ずることが予想されるので、新法および旧法の両施行時にまたがる公売は行わないこととすること。

三 差押調書等の整理について

新法は新たに参加差押の制度を設け、また差押換あるいは交付要求の解除の請求ができることを定めているので、新法施行後はこれらの手続がふくそうすると思われるからできるだけ早い時期に現在未完結となつている差押調書及び交付要求決議書を点検し、次により整理することとすること。

1 次に掲げる場合は差押を解除し、旧法施行規則第十七条ノ二((差押解除ノ通知))に定める通知(その解除が新法施行後であるときは、新法第八十一条((質権者等への通知))に定める通知)をすることとすること。

(一) 差押又は交付要求にかかる保険料等徴収金(延滞金・滞納処分費を含む)の全額が納付、調定取消等の理由により消滅している場合

(二) すでに差押財産が滅失した等差押が失効していることが明らかな場合

2 次に掲げる場合は差押を取り消し滞納者にその旨通知することとすること。

不動産(登録自動車、船舶を含む)電話加入権及び差押の登記、登録をすることを要する無体財産権等差押の登記、登録を要する財産を差し押え、その登記、登録を嘱託したが権利者が滞納者以外である等の理由で登記、登録ができないものであることが明らかとなつている場合

3 次に掲げる場合は交付要求を解除し、交付要求先執行機関に解除の通知をすることとすること。

(一) 前記1の(一)に該当する場合

(二) 交付要求先執行機関において、当該交付要求にかかる処分が結了していることが明らかな場合

4 同一の差押調書又は交付要求決議書に記載されている数件の保険料等徴収金(延滞金・滞納処分費を含む)のうちその全部が完結していない場合においては、差押調書又は交付要求決議書の適宜の箇所に完結部分を明示するものとすること。

5 同一の差押調書に記載されている財産の一部について引揚げ、公売又は差押解除があつた場合はそれぞれ4と同様に明示をほどこすものとすること。

四 差押財産の確認について

前三の一の(二)及び3の(二)に該当するかどうかは明らかではないが、差押が失効している疑がある場合はすべて実地調査をして確認することが望ましいが、年末の徴収事務で繁忙な時期であることも考慮されるので、次により措置すること。

(一) 土地以外の不動産、滞納者又は第三者に保管させてある動産については、納入督励、滞納処分等に出張の際に確認するものとする。

(二) 第三債務者等のある債権(電話加入権を除く)については、当該第三債務者等に照会するものとする。

(三) 交付要求については、第一の四の2によつて交付要求先執行機関に照会するときに行うものとする。