添付一覧
○国税及び地方税以外の公課の先取特権の順位について
(昭和三〇年一一月七日)
(保険発第二二七号)
(各都道府県保険課長・社会保険出張所長あて厚生省保険局庶務課長通知)
標記について、国税庁長官より各国税局長宛別添のとおり指示した旨通知があつたので参考とされたい。
(別添)
国税及び地方税以外の公課の先取特権の順位について
(昭和三〇年八月一六日 徴徴第二―二八号)
(厚生省保険局長あて 国税庁長官通知)
課題のことについて、別紙の通達のとおり各国税局長に指示しましたから参考のため送付します。
(昭和三〇年八月一二日 徴徴第二―二八号)
(各国税局長あて 国税庁長官通知)
標題のことについては、各法令の規定が区区にわたつている関係上明りようではないものがあり、取扱上疑義があつたが、それぞれの公課の根拠法令の規定及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百二十五条第五項(地方公共団体の徴収金の先取特権の順位)の規定に基き、左記のとおり解釈すべきであるから、今後は公売代金の配当等に当つてはこれにより取り扱われたい。
なお、おもな公課の先取特権について、その順位ごとに区分すれば別紙3(略)のとおりであるから、取扱上遺漏のないようにされたい。
おつて、前記の解釈については、内閣法制局長官に照会(別紙2)し、その意見(別紙1)も参考としたものであるから申し添える。
記
1 公課相互間の先取特権の順位
第一順位 国税・地方税及びこれと同順位の公課
第二順位 国税又は地方税に次ぐ順位の公課(明文をもつて規定されたものに限られる)
第三順位 国の徴収金
第四順位 都道府県の徴収金
第五順位 市町村の徴収金
第六順位 市町村の徴収金に次ぐ公課
2 公課の徴収における国税徴収法第三条の準用
国税徴収法第三条は、公課の徴収に当つて準用される。
(別紙1)
国税及び地方税以外の公課の先取特権の順位について
(昭和三〇年三月三一日 法制局一発第一二号)
(国税庁長官あて 法制局長官回答)
客年七月二十六日付徴徴二‐二二をもつて照会にかかる標記の件に関し、左のとおり意見を回答する。
1 問題
(1) 地方税、証券を以つてする歳入納付に関する法律第二条第一項の規定により「初ヨリ納付ナカリシモノト看做」された屯税厚生年金保険法の規定による保険料その他の徴収金、土地改良法第三十九条第一項又は第二項の規定による徴収金、森林法第三十六条第一項の規定による受益者負担金、伝染病予防法第二十七条第一項の規定により私人より追徴すべき費用土地収用法第百二十八条第三項の規定により通知された徴収金及び国民健康保険法の規定による保険料その他の徴収金については、それぞれ法令上一定の先取特権が認められているが、それらが互に競合する場合、その順位は、いかにすべきか。
(2) 国税徴収法第三条の規定は森林法第三十六条第一項の規定に基くいわゆる受益者負担金の徴収に当つても準用されるものと解すべきであるか。
2 意見
(1) お尋ねの場合においては、先取特権の順位は、左のとおりである。
第一 地方税及び証券を以てする歳入納付に関する法律第二条第一項の規定により「初ヨリ納付ナカリシモノト看做」された屯税。
第二 厚生年金保険法の規定による保険料その他の徴収金及び土地改良法第三十九条第一項又は第二項の規定による徴収金
第三 森林法第三十六条第一項の規定による受益者負担金
第四 伝染病予防法第二十七条第一項の規定により私人より追徴すべき費用
第五 土地収用法第百二十八条第三項の規定により通知された徴収金
第六 国民健康保険法の規定による保険料その他の徴収金
(2) お尋ねの問題は、積極に解する。
3 理由
(1) まず、地方税の先取特権が第一順位にあることは、疑ない。けだし、国税徴収法第二条第一項及び地方税法第十五条第一項の規定からいつて、地方税の先取特権は、国税のそれと同順位にあるとみるべきであるが、お示しの諸徴収金等のうちには先取特権の順位において国税及び地方税に優先する旨を法令上定められたものは存在しないからである。
また、証券を以てする歳入納付に関する法律第二条第一項の規定により「初ヨリ納付ナカリシモノト看做」された屯税の先取特権は、地方税のそれと同順位にあるものと解すべきである。けだし、同条第二項は、「前項ノ規定ニ依リ関税又ハ屯税ヲ初ヨリ納付ナカリシモノト看做シテ徴収スル場合ニ於テ之ヲ納付セサルトキハ内国税徴収ニ関スル規定ヲ準用ス」と規定しているが、この規定は、右の屯税の徴収について国税徴収法第二条第一項の規定を準用する趣旨をふくむものであることは疑問の余地がなく、したがつて、右の屯税の先取特権は、地方税のそれと同順位にあるものと解すべきであるからである。
次に、厚生年金保険法の規定による保険料その他の徴収金及び土地改良法第三十九条第一項又は第二項の規定による徴収金の先取特権は、第二順位にあるものと解すべきであろう。けだし、両者の先取特権については、それぞれ、厚生年金保険法第八十八条が「保険料その他この法律の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぎ他の公課に先だつものとする」と規定し、土地改良法第三十九条第三項が「前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、市町村税に次ぐものとし……」と規定しており、したがつて両者の先取特権は、共に地方税及びお示しの屯税の先取特権に次ぐ順位にあるものと解すべきであると同時に、以下順次述べるところによつて明らかなとおり、森林法第三十六条第一項の規定による受益者負担金その他の諸徴収金の先取特権には優先するものと解すべきであるからである。
第三に、森林法第三十六条第一項の規定による受益者負担金の先取特権は、第三順位にあるものと解すべきである。右の受益者負担金の先取特権が地方税のそれに劣後するものであることは、国税徴収法第二条第一項及び地方税法第十五条第一項の規定により明らかであり、他方において伝染病予防法第二十七条第一項の規定により私人より追徴すべき費用、土地収用法第百二十八条第三項の規定により通知された徴収金及び国民健康保険法の規定による保険料その他の徴収金の先取特権には優先するものと解すべきであることは、以下順次述べるとおりである。問題は、右の先取特権と厚生年金保険法の規定による保険料その他の徴収金及び士地改良法第三十九条第一項又は第二項の規定による徴収金のそれとの優劣の関係であるが、この関係を直接解決した法令の規定は存在しない。後者の先取特権に対しては、前記厚生年金保険法第八十八条及び土地改良法第三十九条第三項の明文の規定がそれぞれ国税及び地方税又は市町村税に次ぐ順位を与えているのに対して、前者の先取特権に対しては地方自治法第二百二十五条第五項が、以下述べるとおり、都道府県及市町村の地方税以外の徴収金のそれに優先する順位を与えてはいるものの、国税及び地方税に次ぐ順位をこれに与えている法令の規定は、存在しないのであるから、両者の先取特権は、同順位にあるものと解すべきではなく、後者の先取特権は前者のそれに優先するものと解するのが正当であろう。
第四に、伝染病予防法第二十七条第一項の規定により私人より追徴すべき費用の先取特権は、第四順位にあるものと解する。けだし、右の費用は、行政代執行法第六条第二項にいう「代執行に要した費用」に該当し、しかもそれが都道府県費で支弁されるものである以上、同項の規定により、その先取特権は都道府県の徴収金のそれと同順位にあるものと解すべきであるが、地方自治法第二百二十五条第五項の規定によれば、都道府県の徴収金の先取特権は国の徴収金のそれに劣後し、市町村の徴収金のそれに優先するとあり、したがつて同項にいう国の徴収金に該当するところの森林法第三十六条第一項の規定による受益者負担金の先取特権には劣後するとともに、以下順次述べるところによつて明らかなとおり、士地収用法第百二十八条第三項の規定により通知された徴収金及び国民健康保険法の規定による保険料その他の徴収金のそれには優先するものと解すべきであるからである。
第五に、土地収用法第百二十八条第三項の規定により通知された徴収金の先取特権は、第五順位に国民健康保険法の規定による保険料その他の徴収金の先取特権は第六順位にあるものと解する。けだし、土地収用法第百二十八条第五項の規定によれば、前者の先取特権は市町村の地方税以外の徴収金のそれと同順位にあるとあり、したがつて、地方自治法第二百二十五条第五項の規定により、伝染病予防法第二十七条第一項の規定により私人より追徴すべき費用――それが地方自治法第二百二十五条第五項にいう都道府県の徴収金であることは既に述べた。――の先取特権には劣後するが、他方において後者の先取特権については、国民健康保険法第八条第三項が「第一項ニ規定スル徴収金ノ先取特権ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徴収金ニ次ギ他の公課ニ先ツモノトス」と規定しているのであり、したがつて、前者の先取特権は後者のそれに優先するものと解すべきであるからである。
(2)森林法第三十六条第四項にいう「国税滞納処分の例によつてこれを徴収する」とは、同条第一項の規定による受益者負担金の徴収について、事柄の性質上それを許さないものを除く外、国税滞納処分に適用される法令の規定をあてはめてこれを処理すべきである旨を意味するものであることは明らかであるが、国税徴収法第三条が国税滞納処分を規制すべき規定であることは、同法第十二条第一項第一号の規定からいつても明らかであり、しかも右の受益者負担金の徴収をこの規定によらせたとしてもなんらの不都合はないのであるから、お尋ねの問題を積極に解すべきことは当然である。
(別紙2)
(昭和三九年七月二六日 徴徴二―二二)
(内閣法制局長官あて 国税庁長官照会)
国税及び地方税以外の公課の先取特権の徴収順位に関して左記諸点について、貴見をお伺いします。なお、公課の先取特権の順位については、各法令の規定が種々様々であつてその徴収順位が明りようでないばかりでなく実質的に妥当であるかどうか疑わしいものもありますから、適当の機会に立法上の整備統合につき考慮されるようにお願いします。
記
1 国税及び地方税以外の各種公課は、一般に先取特権が認められているが、その先取特権の順位に関する法令の規定が区々まちまちで明りようでない。一応公課の先取特権の順は(1)国税及び地方税、(2)国税以外の国の徴収金及び特に国税及び地方税に次ぐ旨の明文規定のあるもの、(3)地方税以外の都道府県の徴収金、(4)地方税以外の市町村の徴収金、(5)その他のものの五順位に分類されるものと思われるが、この可否及び各種公課の具体的徴収順位。
2 右のうち特に同じ社会保険関係の保険料でありながら、厚生年金保険と日雇労働者健康保険の保険料については、「国税及び地方税に次ぎ、他の公課に先だつ」とあり他の社会保険の保険料については、すべて「市町村その他これに準ずるものの徴収金に次ぎ、他の公課に先だつ」とあつて、条文の字義のうえからみれば厚生年金保険と日雇労働者健康保険の保険料は右の第二順位、その他の保険料は右の第五順位に該当し、それぞれ順位が異なるように解釈されるが、この点明文の規定がある以上やむを得ないものとして、右の通り解釈するが適当であるかどうか。また、たとえば土地改良法による徴収金は「市町村税に次ぐ」とあつて、市町村税を形式的に地方税と同一視して読んだ場合には、右の第二順位に該当することとなるが、実質的にはむしろ右の第四順位(又は第五順位)に該当すると解釈するが妥当のようにも考えられるが、この点の解釈についてはどうか。
3 諸公課の中には、たとえば児童福祉法に基く徴収金のように先取特権の順位について明文の規定のないものがあるが、これについては一応地方自治法第二百二十五条の徴収金の順位に関する規定が適用されるものと考えられるが、すべてそう解釈してさしつかえないか。
4 諸公課については、一般に先取特権が認められるが、その先取特権の順位に関して国税徴収法第三条(又は地方税法第十五条)に相当する特定の担保物権附私債に劣後する場合の規定がなく一見すべての私債権に優先するかに見える。しかし、諸公課に優する国税、地方税についてさえ、私経済の取引保護の見地から、右の例外規定が設けられているのであるから、公課についても一応国税、地方税の場合に準じて、特定の担保物権には劣後するものと解釈するのが穏当と認められるかどうか。
(以下略)