添付一覧
○災害防疫の実施について
(昭和四〇年五月一〇日)
(衛発第三〇二号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省公衆衛生局長通知)
災害防疫の実施については、昭和三十七年五月十四日衛発第三四七号本職通知「災害防疫の実施について別添災害防疫実施要綱」によりご配意を願つてきたところであるが、昭和三十七年の激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)の施行等に伴ない、これが運用について改正を加える必要があり、今般別添のとおり「災害防疫実施要綱」を定めたので、これが趣旨をご了知のうえ、都道府県における防疫業務の円滑化と市町村に対する指導の徹底を期し、業務運営に遺憾のないようにされたい。
なお、昭和三十七年五月十四日衛発第三四七号本職通知「災害防疫の実施について」は廃止する。
別添
災害防疫実施要綱
第一 一般事項
一 目的
災害防疫の特性にかんがみ、企画及び総合性ある業務運営を確保し、行政運用の効率化を図るため、これに必要な防疫態勢の整備組織的活動の推進を行ない防疫措置に万全を期するものとする。
二 方針
災害発生時における防疫措置は、生活環境の悪化、罹災者の病原体に対する抵抗力の抵下等の悪条件下に行なわれるものであるため、迅速かつ強力に実施し、伝染病流行の未然防止に万全を期すべきであるが、実施にあたつては特に次の事項に留意すること。
(1) 事前における防疫態勢を確立し周到な計画をたてておくこと。
(2) 警戒態勢を厳重にするとともに災害発生時においては、組織的かつ有機的活動を実施すること。
(3) 業務終そく後の事務処理を適確に実施すること。
三 その他
(1) この要綱において都道府県または都道府県知事とあるのは、指定都市(地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。)および指定都市の長を含む(臨時予防接種の場合を除く。)ものとする。
また、健康診断の実施に関し、都道府県知事とあるのは、政令市(保健所法の規定に基づく政令で定める市をいう。)の長を含むものとする。
(2) 伝染病予防法は「法」と伝染病予防法施行規則は「則」とそれぞれ略称する。
(3) この要綱において、都道府県等が設置することとされている災害防疫対策本部は、災害対策基本法に基づく災害対策本部が設置された場合には、これに含めるものとする。
第二 事前準備
〔都道府県業務〕
一 防疫組織の設置計画
災害時に設置すべき災害防疫対策本部の組織及び運営方法について、事前に計画を樹立しておくこと。
二 防疫計画の策定
管内の地理的環境的諸条件と過去における被害の状況などを勘案して災害予想図を作成するとともに、できるだけ周密な防疫計画を樹立しておくこと。
三 器具器材等の整備
最低限常備する必要のある物件は、普段より整備するとともに、災害時または、そのおそれが顕著となつた際に備えるべき物件については、あらかじめ周到な計画をたてておくこと。なお、備蓄している物件はいつでも使用できる状態に保つておく必要があるので随時点検を行なうこと。
四 職員の訓練及び動員計画
(1) 職員の訓練については、平常時より防疫作業の習熟を図るとともに、災害予想図をもとに随時防疫演習を実施すること。
(2) 防疫従事者の動員については、防疫計画をもとに事務の配分、作業量等に応じ、これに充当すべき職員の確保を計画しておくこと。
五 予防教育及び広報活動
台風来襲期前など適当な時期において災害時の伝染病予防につき、新聞、ラジオ等の報道機関による広報活動を実施するとともに、地区の衛生組織を強化し、その協力を得て住民に対する予防教育を徹底すること。
〔市町村業務〕
都道府県に準じ準備態勢をととのえておくこと、特に伝染病予防委員の選任、作業員の雇上げ及びその組織化等についても充分考慮しておくこと。
第三 災害発生時の対策
一 警戒態勢の確立
〔都道府県業務〕
1 防疫組織
予測される災害の規模に応じ、県庁内関係部局を含めて必要な限度の防疫組織を設け、状況に応じいつでも災害防疫対策本部の編成に切り替えられるような態勢をととのえておくこと。
2 状況の把握
気象、警察、消防等の諸機関、関係団体等と連絡をとり、情報の早期把握に努めること、特に災害予想図をもとに危険ともくされる地域については、当該保健所、市町村と緊密な情報交換を行ない万全の態勢をたてておくこと。
3 器具器材等の整備
すでに確保している物件の点検を行ない配置を準備するとともに、購入または借上げを行なうべき物件については、状況に応じ、逐次調達すること。
4 予防教育及び広報活動
事前に準備されているパンフレツト等の利用あるいは、報道機関等の活用により、すみやかに地域の住民に対する予防教育及び広報活動を開始すること。
〔市町村業務〕
市町村においても、都道府県に準じて警戒態勢を確立し都道府県知事の指示、命令に応じて、いつでも臨機の防疫活動が開始できるようにし、都道府県業務と一体的活動が行なわれるようにすること。
二 災害防疫活動
〔都道府県業務〕
1 災害防疫対策本部
(1) 県庁内の関係部(局)を含めて構成し、本部長の下に必要な班編成を行なうこと。
(2) 災害防疫対策本部は、防疫計画に基づき当該災害に即応した防疫対策を企画し都道府県における防疫活動を推進すること。
2 検病調査及び健康診断
(1) 検病調査は、医師、保健婦(または看護婦)、助手等、所要人員をもつて班編成を行ない、調査班の稼働能力を考慮し、緊急度に応じて計画的に実施すること。この場合、滞水地域及び集団避難所を重点とすること。
(2) 実施にあたつては、市町村、地区内の衛生組織等関係機関の協力を得て情報の適確な把握に努めること。
(3) 検病調査の結果必要があるときは、法第十九条第一項第一号の規定による健康診断を実施すること。
3 市町村に対する指導及び指示等
(1) 防疫計画をもとに、被害市町村の実情に即応した指導を行なうこと。特に被害激甚な市町村に対しては、ただちに職員を現地に派遣し、その実情を調査するとともに適切な指導にあたらせること。
(2) 都道府県知事が伝染病予防上必要と認めて、次に掲げる事項の指示、命令を発するときは、当該市町村における災害の規模態様等に応じその範囲及び期間を定めて、すみやかに行なうこと。
(ア) 法第十五条第一項の規定による伝染病予防委員の設置の指示
(イ) 法第十六条の規定による清潔方法、消毒方法の施行等に関する指示
(ウ) 法第十六条の二第三項の規定によるねずみ族昆虫等の駆除に関する命令
(エ) 法第十七条の二の規定による家用水の供給の指示
(オ) 予防接種法第六条の規定による臨時予防接種に関する命令(市町村長をして実施させることが適当な場合に限る。)
4 代執行
市町村の被害が激甚なため、または、その機能が著しく阻害されたため、都道府県知事の指示、命令により市町村(または市町村長)が行なうべき業務を実施できないか、実施しても不充分であると認めるときは、都道府県知事は法第二十七条または予防接種法第二十五条の規定により代執行を行なうこと。
5 臨時予防接種
都道府県知事は、伝染病予防上必要あるときは、対象者の範囲及び期日を指定して、予防接種法第六条の規定による臨時予防接種を実施すること。実施にあたつては、ワクチン確保等を迅速に行ない時機を失なわないよう措置すること。
6 報 告
(1) 被害状況の報告
(ア) 都道府県知事は、管内市町村の報告をとりまとめ、すみやかに様式(1)による報告書を厚生省公衆衛生局長あて提出するものとするが、さしあたり事前の措置として必要事項を電話をもつて報告すること。
(イ) 通信途絶等のため、被害状況の報告が得られない場合は、警察、消防、自衛隊等関係機関の協力を求め、あるいは直接現地に職員を派遣する等の方法により、すみやかに被害状況の把握に努めること。
(2) 防疫活動状況の報告
都道府県知事は、管内市町村の報告をとりまとめ、県が実施する防疫活動状況とともに様式(2)に記載する事項を毎日厚生省公衆衛生局長あて報告すること。
なお、報告は、当初においては、電話をもつてし、厚生省と協議のうえ適当な時期に文書に切り替えること。
(3) 災害防疫所要見込額の報告
都道府県主管部局は、災害防疫に関する所要見込額を調査(市町村分については、その報告を集計する。)のうえ、様式(3)に示す事項について、すみやかに厚生省公衆衛生局防疫課宛電話等をもつて報告すること。
ただし、次に掲げるものは報告する必要がないこと。
(ア) 伝染病院隔離病舎消毒所等の施設災害復旧費については、一の施設におけるその見込額が一○万円未満のもの
(イ) 防疫作業費については
(Ⅰ) 都道府県事業分については、一○万円未満のもの
(Ⅱ) 市町村事業分については、一の市町村においてその見込額が五万円未満のもの(ただし五万円未満のものであつても、当該都道府県における市町村事業分の見込額の合計額が二○万円以上である場合を除く。)
7 記録の整備
災害防疫に関し整備すべき書類は、おおむね次のとおりであること。
(1) 被害状況報告書
(2) 災害防疫活動状況報告書
(3) 防疫経費所要見込額及び関係書類
(4) 各種防疫措置の指示命令に関する書類
(5) 防疫作業日誌(作業の種類及び作業量、作業に従事した者実施地域及び期間、実施後の反省その他参考事項を記載すること。)
〔市町村業務〕
1 防疫組織
(1) 都道府県に準じ災害防疫対策本部を設置しまたは、これに準じた防疫組織を設け、管内の防疫対策の企画、推進にあたること。
(2) 都道府県知事の指示にしたがい、伝染病予防委員をおくこと。
2 予防教育及び広報活動
都道府県知事の指導のもとに、パンフレツト、リーフレツト等により、あるいは衛生組織その他関係団体を通じて住民に対する予防教育を徹底するとともに、報道機関を活用して広報活動を強化すること。その際特に社会不安の防止に留意すること。
3 清潔方法
(1) 法第十六条の規定による都道府県知事の指示に基づき市町村が管内における道路、溝渠、公園等の公共の場所を中心に実施すること。
(2) 清潔方法のうち、主なものは次のとおりであること。
(ア) ごみの処理
収集したごみ、汚泥、その他の汚物は、焼却埋没等衛生的に適切な処分をすること。この場合の取扱については、清掃法の定める基準によること。
(イ) し尿の処理
し尿の処理については、できる限り、し尿浄化槽または下水道終末処理場の処理施設を利用する等の方法により、不衛生にならないようにすること。
4 消毒方法
(1) 法第十六条の規定による都道府県知事の指示に基づき実施すること。実施にあたつては、則第二十一条乃至第二十七条に定めるところにしたがつて行なうこと。
(2) 薬剤の所要量を算出し、すみやかに手持量を確認のうえ、不足分を入手し適宜の場所に配置すること。
5 ねずみ族昆虫等の駆除
(1) 法第十六条の二第三項の規定により都道府県知事が定めた地域内で都道府県知事の命令に基づき実施すること。実施にあたつては則第二十七条の二から第二十七条の五までの規定により定められたところによること。
(2) 薬剤の所要量を算出し、すみやかに手持量を確認のうえ、不足分を入手し、適宜の場所に配置すること。また、噴霧器、運搬器具その他の物件についても、手持量を確認のうえ、不足分を整備し配置すること。
6 家用水の供給
(1) 法第十七条の二の規定による都道府県知事の指示に基づき、すみやかに家用水の供給を開始し、停止期間中継続すること。
(2) 家用水の供給方法は、容器による搬送、戸水器による戸過給水等現地の実情に応じ適宜な方法によつて行なうこと。この際特に配水器の衛生的処理に留意すること。
(3) 家用水の使用停止処分に至らない程度であつても、井戸、水道等における水の衛生的処理について指導を徹底すること。
7 患者等に対する措置
(1) 災害地において、伝染病患者または病原体保有者が発生したときは、すみやかに隔離収容の措置をとること。交通途絶等のため伝染病院隔離病舎に収容することが困難な場合は、なるべく近い非災地域内の適当な場所に臨時の隔離施設を設けて収容すること。ただし、やむを得ない事由によつて隔離施設への収容措置をとることができない病原体保有者に対しては、自宅隔離を行ない、し尿の衛生的処理等について厳重に指導すること。
(2) いわゆる予防内服は、原則として認めないこと。
8 避難所の防疫指導等
避難所は、施設の設備が応急仮設的であり、かつ、多数の避難者を収容するため、衛生状態が悪くなりがちで、伝染病発生の原因となることが多いので都道府県防疫職員の指導のもとに、市町村において防疫活動を実施すること。この際施設の管理者を通じて衛生に関する自治組織を編成せしめ、その協力を得て指導の徹底を期すること。
9 報 告
(1) 被害状況の報告
警察、消防等の諸機関、地区の衛生組織その他の関係団体の緊密な協力を得て被害状況を把握し、すみやかに様式(4)による報告書を管轄保健所長を経由して都道府県知事に提出すること。ただし、その概要については、できる限り電話をもつて報告すること。
(2) 防疫活動状況の報告
災害防疫活動を実施したときは、様式(5)による報告書を管轄保健所長を経由して都道府県知事に提出すること。報告書の提出前にあつては、できる限り、その概要を電話をもつて報告し、適当な時期において保健所長と協議のうえ文書による報告に切り替えること。
(3) 災害防疫所要見込額の報告
災害防疫に関する所要見込額を別紙様式(6)に示す事項について、すみやかに電話等をもつて管轄保健所に報告すること。
ただし、伝染病院隔離病舎消毒所等の災害復旧費については、一の施設の見込額が一○万円未満のものについては、報告する必要がないこと。
10 記録の整備
災害防疫に関し整備すべき書類はおおむね次のとおりであること。
(1) 被害状況報告書
(2) 防疫活動状況報告書
(3) 防疫経費所要見込額調及び関係書類
(4) 清潔方法及び消毒方法に関する書類
(5) ねずみ族昆虫駆除等に関する書類
(6) 家用水の供給に関する書類
(7) 患者台帳
(8) 防疫作業日誌(作業の種類及び作業量、作業に従事した者、実施地域及び期間、実施後の反省、その他参考事項を記載すること。)
第四 防疫完了後の措置
一 災害防疫完了報告
(1) 市町村長は、災害防疫活動を終了したのち、すみやかに様式(7)による災害防疫完了報告書を作成し、管轄保健所長を経由して都道府県知事に提出すること。
(2) 都道府県知事は、管内市町村の報告書をとりまとめ、都道府県分と合せて様式(7)による災害防疫完了報告書を作成し、防疫活動を終了した日から起算しておおむね一カ月までに厚生省公衆衛生局長に提出すること。
二 災害防疫経費の把握
災害防疫に要した経費は、他の防疫活動に要した経費とは明確に区分し、災害防疫活動を終了したのち、ただちに把握しておかなければならないこと。
三 激甚災害にかかる災害防疫経費所要額の報告
激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)第二条に基づき激甚災害及び当該災害に対して適用すべき措置の指定がなされた当該災害に要した経費の所要額を、次により第一項の報告書に添付して報告すること。
(1) 市町村長は、別紙様式(8)による書類を作成し管轄保健所長を経由して都道府県知事に提出すること。
(2) 都道府県知事は、管内市町村の報告額を審査ののち集計し、都道府県分と合せて別紙様式(9)による書類を作成し、厚生省公衆衛生局長に提出すること。
〔別紙〕様式1
様式2
様式3
様式4
様式5
様式6
様式7
様式8の(1)
様式8の(2)
様式9の(1)