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○引揚者給付金等支給法による遺族給付金を受けるべき遺族の認定について

(昭和三二年七月三一日)

(援発第六一二号)

(各都道府県知事・那覇日本政府南方連絡事務所長あて厚生省引揚援護局長通知)

引揚者給付金等支給法による遺族給付金の受給権認定上参考となると思われる、死亡者との親族関係及び受給順位に関する質疑回答は、左記のとおりであるから御了知ありたい。

第一 配偶者関係

問1 死亡者が死亡当時、婚姻年齢(男子一八歳、女子一六歳。ただし、旧民法施行当時は男子一七歳、女子一五歳)未満の者(甲)と事実上の婚姻関係にあつた場合において、甲を死亡者の配偶者と解してよいか。

答 死亡者の配偶者と解すべきでない。

問2 旧民法の施行時において、男三○歳未満、女二五歳未満の者が、父母の同意を得ないで婚姻しているときは、この婚姻を有効なものとして扱つてよいと解して差支えないか。

答 御見解のとおりである。

問3 死亡者の配偶者(甲)が、死亡者の父(乙)の養女であつた場合に、甲が乙と離縁し、乙との親族関係が終了しても、先順位者として遺族給付金を受ける権利を有するか。

答 当該離縁によつては、甲と死亡した者との親族関係に異動は生じないから、再婚、養子縁組、所得制限等により、後順位となり、又は失格しない限り、先順位者として遺族給付金を受ける権利を有するものである。

問4 死亡者死亡後、実家に復籍した妻が、死亡者の父母の養子となつた者と婚姻した場合における妻の遺族給付金受給順位如何。

答 最後順位となるものと解する。ただし、当該養子となつた者が、死亡者の死亡前において死亡者の父母の養子となつたものである場合においては、その者と婚姻した妻の遺族給付金受給順位は、第一順位である。

問5 日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律(以下「民法応急措置法」という。)施行当時、妻が実家に復籍するときは、実家の父母の養子として届け出た事例があるやにきくが、この様な場合は、妻の遺族給付金を受けるべき順位は最後順位となるか。

答 妻は、当該養子縁組によつては最後順位とならないものと解する。民法の応急措置法施行当時においては、御指摘のごとき事例があつたが、これは、縁組の実体的効果を目的としたものではないと解すべきであるからである。ただし、復籍の手段として、実家の父母以外の者の養子となつた場合においては、この限りでない。

第二 親子関係

1 実親子関係

問6 内縁の妻の子で、父(死亡者)が認知していないものは、父の子として扱われないか。

答 内縁の妻の子を父が認知していない場合は、法律上父の子ではないから、この子は、遺族給付金受給に関する対象とはならない。

問7 父と母が内縁関係にある間に生れた子(死亡者)であるが、父が認知していないため、戸籍には、母の私生子として記されている場合、死亡者の父は、遺族給付金の受給上父として取り扱うことができるか。

答 子の死亡前か又は死亡後に認知していない場合は、死亡者の父として認められないから、父は、遺族給付金を受けることができない。子死亡後は、その直系卑属があるときに限り、死亡した子を認知することが許されるが、この場合において、生存している直系卑属が成年ならば、その承諾を得なければならないことになつている。

2 養親子関係

問8 事実上の養子である者が、養子縁組により養親の戸籍に入籍していなかつた場合は、その者と事実上の養親との関係は、本法上親子として扱えないか。

答 事実上の養子と養親との関係を本法にいう親子関係として認めるには、明文の規定が必要であると考える。従つて、親子的共同生活を営んでいた場合であつても、法律上養子縁組の手続がされていないときは養親子として遺族給付金を受けることはできない。

問9 養父と養母は、事実上の婚姻関係にあつたものであるが、養母が長女であつたため戸籍上の婚姻手続をしていなかつた。従つて養子は、戸籍上養父とのみ養子縁組をしていた場合において、事実上養親の関係にあつた養母は、遺族給付金の受給上母として取り扱うことができるか。

答 法に規定する母として取り扱うことはできない。

問10 養父死亡後、養子が義母と離縁して実家に帰つた場合において、養子と亡養父との養親子関係は消滅するものであるか。

答 養子が亡養父と離縁しない限り、養親子関係は消滅しない。ただし、民法の応急措置法施行前(昭和二十二年五月二日以前)において養母と養子とが離縁したものであれば、離縁の効力は亡養父にも及ぶものである。

問11 養子死亡前、養父母が離婚したときは、養子と養親との身分関係はどうなるか。又養子死亡後離婚したものである場合はどうか。

答 養親の離婚が、養子死亡の前になされたものであると後になされたものであるとにかかわらず、離縁しない限り養親子関係は消滅しないものである。ただし、民法応急措置法施行前(昭和二十二年五月二日以前)において、他家より入つた養親が離婚により養子の養家を去つた場合においては、当該養親と養子との親族関係は消滅するものである。

3 嫡母庶子関係及び継親子関係

問12 死亡者の死亡が旧民法施行の当時である場合において、その者と継親子又は嫡母庶子の関係にあつた遺族は、遺族として取り扱われるか。

死亡した者の死亡が昭和二十二年五月三日以後(即ち、民法応急措置法の施行の日以後)であつた場合はどうか。

答 旧民法の施行の当時死亡した者と継親子又は嫡母庶子の関係にあつた者は、旧民法第七百二十八条の規定により親子間における同一の親族関係にあるものであつて、当然本法に定める遺族として扱われる。

死亡した者の死亡が昭和二十二年五月三日(民法応急措置法施行の日)以後であつた場合は、旧民法施行の当時における継親子関係にあつた者であつても、民法応急措置法施行後は、その継親子関係は引き続き存続するものではないから、本法に定める遺族として扱われない。

問13 私生子が父に認知されてその籍に入つた後、再び生母の籍に帰つた場合において、当該私生子と父の配偶者との間の嫡母庶子関係は消滅するか。

答 証滅しないものと解する。

問14 継子が養子縁組により他家に入つた後死亡した場合において、継親であつた者は、死亡者死亡当時の継親として取り扱つて差支えないか。

答 死亡した者の死亡の日が旧民法応急措置法施行前(昭和二十二年五月二日以前)であれば、御見解のとおりである。

問15 民法の応急措置法施行前(昭和二十二年五月二日以前)において、死亡者の義母死亡後、養父は後妻をむかえたが、養父もまた死亡し、後妻が更に後夫をむかえ、後夫と死亡者とが死亡者死亡当時において同一戸籍にあつた場合、後妻(死亡者の継母)の後夫は、死亡者の継父となるか。

答 後夫は、死亡者の継父となるものと解する。

問16 民法の応急措置法施行前(昭和二十二年五月二日以前)において、甲女は乙男を養子とした後丙男と婚姻したが、丙男と乙男との間には継親子関係があるものと解するが如何。

答 乙男が甲丙夫婦と同一戸籍にある限り、貴見のとおりと解する。

問17 甲と乙とは、継親子の関係にあつたが、乙死亡後、甲は離婚により実家に帰つた。甲の遺族給付金を受ける権利はどうなるか。

答 当該去家によつては、遺族給付金を受ける権利に変動はないものと解する。

問18 民法の応急措置法施行前(昭和二十二年五月二日以前)において、いわゆる連れ子は、連れ子の父又は母の配偶者の継子となるか。

答 連れ子(父又は母が婚姻により他家に入つた場合において、引取入籍によつてその家に引き取られた子)と、その家にある連れ子の父又は母の配偶者との間には継親子関係を生ずるものと解する。ただし、母の連れ子が母の私生子(当該私生子が、事実上の父の認知をうけたものである場合を含む。)である場合においては、母の配偶者と母の連れ子との間には継親子関係を生ぜず、又父の連れ子が庶子である場合においては、父の配偶者と父の連れ子との間には嫡母庶子関係を生ずるものである。

問19 甲女の私生子が乙男に認知せられて乙男の庶子となつた後、甲女はその子を連れ子して丙男と婚姻した場合において、甲女の連れ子は、丙男の継子となるか。

答 甲女の連れ子は、乙男の庶子ではあるが、甲女にとつては私生子であるから、丙男との間には継親子関係は生じないものと解する。

問20 死亡した者と継親子又は嫡母庶子の関係にあつた父又は母で遺族給付金を受けることができる者は、実父母との関係において、その支給順位はいかになるか。

答 死亡した者との生計関係が同じであれば、両者は同順位のものであると解する。

第三 祖父母関係

問21 死亡者死亡後、その実母と実父の父とが婚姻の届出をしたところ、その届出は受理された。この場合、遺族給付金は実母のみに支給されるか、実母と祖父とに支給されるか。

答 遺族給付金の受給権は、死亡者の死亡当時におけるその者との身分関係に基いて確定されるから、設問の場合実母のみに支給されるものと解する。

問22 祖父は、孫の死亡前、後妻をむかえたが、後妻は、死亡者(孫)の祖母として、遺族給付金を受けることができるか。

答 祖父の後妻は、死亡者の祖母ではないから、遺族給付金を受けることはできない。ただし、民法応急措置法施行前(昭和二十二年五月二日以前)において孫の父又は母と右の後妻との間に継親子関係が発生した後に、右の孫が出生したものであれば、後妻は、死亡者(孫)の祖母として取り扱うことができる。

第四 兄弟姉妹関係

問23 父母の一方のみを同じくする子は、法にいう兄弟姉妹であるか。

答 御見解のとおりである。ただし、当該父又は母が継父又は継母である場合はこの限りでない。

問24 本人死亡前に、本人の父が某女を養子とした場合は、死亡者と某女とは、兄弟姉妹となるか。

答 養子は縁組の日から嫡出子たる身分を取得する。従つて、設問の場合、本人死亡前に死亡者と某女とは、兄弟姉妹となるものである。

問25 継子と継親の実子又は養子は、兄弟姉妹と解して取り扱われるものであるか。

答 継子の父又は母(養父母を含み、継父母を含まない。)と、設問における実子又は養子の父又は母(養父母を含み、例父母を含まない。)とが同一人である場合には兄弟姉妹であると解する。

問26 子の父死亡後、子の母は後配(継父)をむかえたが、その後、子の母は死亡し、継父はさらに後配をむかえ、継父と、その後配との間に子が出生した。この場合、前の子と後の子とは、兄弟姉妹となるか。ただし、いずれも、旧民法施行当時のことである。

答 兄弟姉妹であるとは解さない。