添付一覧
○引揚者給付金等支給法による認定について
(昭和三二年一〇月五日)
(援発第七五九号)
(各都道府県知事・那覇日本政府南方連絡事務所長あて厚生省引揚援護局長通知)
標記の件に関しては、種々御苦心を払われていることと存ずるが、これが処理については、なお、左記事項御了知のうえ遺憾のないようにされたい。
記
1 引揚者給付金の請求者(法第十九条ただし書の規定により受給権を譲渡した者を含み、法第七条の規定により相続人が請求した場合は、当該被相続人とする。)若しくは法第八条第三号に該当する者の遺族又はその相続人たるにより遺族給付金を請求した場合における当該死亡者(以下右の引揚者給付金の請求者及び死亡者を「請求者」という。)が法に定める引揚者であることを判定するいわゆる客観的物証(以下「物証」という。)に関しては先に通知したところであるが、引揚証明書、外地より携行した書類等が現存していない故をもつてただちにいわゆる人証の外は請求書に添附すべき物証又は認定機関において認定上参考とすべき資料がないとする向が見受けられるが更に一段の工夫をこらし例えば次のような諸点に着意して個々のケースに即応する物証又は認定上参考となるべき資料の発見入手に努力するよう市町村その他関係の向に対する指導を徹底されたいこと。
(1) 現地で入営又は応召した者に関しては、その者の入営又は応召前の住所、職業留守宅の所在地、留守家族の氏名等が兵籍等によつて明らかになる場合が多いこと。
(2) 外地の学校に在学していた者が引揚後内地の学校に就学したときは、当該内地の学校に保管されている学籍簿によりその者及びその保護者等の外地の状況を判断しうる物証がえられる例が多いこと。
(3) 引揚者が引揚後はじめて転入して市町村における当時の転入に関する記録等は、その保存期限の経過後であつても現に当該市町村に保存されている例が相当見受けられるので、それによる物証の入手につき市町村の積極的な協力を期待しうる場合が多いこと。
(4) 会社、団体等が現有している確実な資料又は引揚船の乗船名簿個人的に保有されている資料による在外事実等の証明に関しては、先に通知したところであるが、これ等資料の発見活用に関して配意すること。なお、引揚後の居住地の市町村、外地における地域、職域等を単位として組織した引揚者団等が引揚後間もなく作成した在外事実等に関する資料についても、他の資料とあわせて認定の参考資料として利用しうるものがあること。(その資料を作成した当時の事情等に応じ信ぴよう度を判定すべきであるとともに先に通知した如くこのような書類は可及的に都道府県に提供を受けて都道府県において認定上の資料として利用するよう配意すること。)
(5) ある種の断片的資料そのものによつては、請求者の在外事実等を判断することは困難であつても、他の断片的資料を収集しこれを相互に関連させ、総合的に観察した場合請求者が法に定める要件を具備しているか否かを推定いうる例が多いのでこれ等断片的資料による立証についても着意すべきであること。
二 引揚事実及び引揚時期並びに終戦前のある時期に外地に生活の本拠を有していたことが立証されるが、終戦時まで引き続き六箇月以上外地に生活の本拠を有していたことを認むべき物証がない場合における認定に関しては、九月十二日援発第七〇五号通知(以下「援発第七〇五号通知」という。)をもつて指示したところであるが、請求者の引揚事実及び引揚時期等が法に定める要件を具備していることは立証されるが、終戦前外地に生活の本拠を有していたことを認むべき物証がない場合においては、援発第七〇五号通知の例に準じ、請求書に添附された各種の書類によつてえられ、かつ、推定される諸事実にあわせて、当時の内外地間の交通事情(近く当時の事情を通知する予定である。)等の諸事情と総合的に判断した結果、認定機関において終戦時まで六箇月以上引き続き外地に生活の本拠を有していたと認むべきが相当であるとの心証がえられた場合においても、請求者が法に定める引揚者であると認定してさしつかえないこと。なお、この場合においては、事実の推定に過誤なきよう援発第七〇五号通知により認定する場合より更に慎重な態度をもつて請求書類の審査、都道府県に保有している資料との照合等を行うとともに、次の諸点については、十分留意すべきであること。
(1) 外地における居住、職業等の状況に関しては、援発第七〇五号通知左記第三項により作成した人証を必ず請求書類に添附させること。
(2) 認定に当つては、請求者が復員者として引き揚げた者であるか否かを兵籍等との照合等によつて確認することを励行すること。
(3) 昭和二十年二月以後もある程度内地との往来ができた地域からの引揚者等に関しては、その者の生活の本拠の所在及びその期間の推定に誤のないよう留意すること。