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○未帰還者に関する特別措置法の施行について(施行通知)

(昭和三四年三月二六日)

(援発第二六八号)

(各都道府県知事あて厚生省引揚援護局長通知)

標記については、本日別途当省事務次官から通達されたところであるが、右通達のほか左記事項御承知の上、本法の施行に遺憾のないよう配意されたい。

第一 戦時死亡宣告の請求に関する事項

一 法第二条第二項に規定する「当該未帰還者の留守家族の意向」の確認は、次によること。

(一) 右の「留守家族」は、未帰還者留守家族等援護法(以下「留守家族援護法」という。)第四条に規定する留守家族の範囲にある者であること。ただし、留守家族がいない場合には、未帰還者の親族で、留守担当者となつている者又は当該未帰還者につき未帰還の届出をしている者とすること。

(二) 留守家族が数人ある場合は、留守家族全員の同意を得ることが望ましいが、留守家族のうち留守家族援護法第六条の規定の順序による先順位者の同意書(様式第一)が提示されたときは、法に規定する「留守家族の意向」が確認されたものとして取り扱うこと。

なお、この場合において、配偶者及び父又は母があるときは、これらの者の意見が一致した後同意書を提出させること。

(三) 前記(二)の措置は、当該留守家族の居住地の都道府県知事を通じて行う等実情に則した方法により事務処理の円滑を図ること。

二 戦時死亡宣告の審判の申立手続は、次によること。

(一) 戦時死亡宣告の審判の申立は、失踪宣告(戦時死亡宣告)家事審判申立書(様式第二)を、未帰還者の本籍地の都道府県庁(小笠原列島又は硫黄列島に本籍地がある者については東京都庁、樺太又は千島列島に本籍地があつた者で、まだ就籍していないものについては北海道庁)の所在地の家庭裁判所に提出して行うこと。

(二) 右の申立書には、次の書類を添付すること。

1 未帰還調査担当課長が、その保有する資料に基き、当該未帰還者が生死不明となつた当時の状況及びその後の調査の概要を記載した生死不明を証する証明書

2 未帰還者の戸籍謄本。ただし、日本国との平和条約の発効の時まで当該未帰還者の本籍が樺太又は千島列島にあつて、まだ就籍していない場合にあつては、右の戸籍謄本に代えて、右の理由により戸籍謄本が添付できない旨を記載した上申書を添付すること。

3 申立書を提出した家庭裁判所において、家事審判規則第四条第一項ただし書の規定により当該事件をみずから処理されたい旨及びその理由を記載した上申書

三 戦時死亡宣告の審判の申立を行つた都道府県知事は、申立を行つた未帰還者の氏名及び申立年月日を、月毎に取りまとめて当局に報告するとともに留守家族の居住地の都道府県知事に通知をすること。

四 審判の申立を行つた後において、当該未帰還者が法第二条第一項各号のいずれにも該当しなくなると思われる資料が発見されたときは、ただちに、当該事件を審理中の家庭裁判所に審理の中止を申し入れるとともに、当局にその資料の内容を報告すること。なお、家庭裁判所における審理の過程において都道府県知事の提出した資料と内容の異なる資料があらわれたときは、ただちに当該都道府県知事に通報されたい旨を、あらかじめ当該家庭裁判所に申し入れておくこと。

五 戦時死亡宣告の審判が確定し、家庭裁判所から当該審判の謄本の交付を受けたときは、戸籍法の定めるところにより当該未帰還者の本籍地の市町村長に届け出るとともに、前記一の(二)の同意書を提示した留守家族に、その居住地の都道府県知事を経由して通知し、その旨を当局に報告すること。

六 戦時死亡宣告の審判が確定した後において、生存の事実が判明したこと等当該宣告の取消を行うべき事態が生じたが、民法第三十二条に定める者が当該宣告取消の申立をしないときは、その申立をしない理由及び取消によつて発生すると予想される事情について調査のうえ、当局に報告すること。

七 戦時死亡宣告の申立を行う場合の手数料は、法第二条第四項により免除せられることになつているが、必要な通信費等は、申立人において裁判所に予納する建前になつているので、別途通達する委託費より支出すること。

第二 弔慰料に関する事項

一 法第四条においていう「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」とは、民法に定める婚姻成立の実質的要件に違反することなく、婚姻する意思のもとに事質上の夫婦の関係にある者で、ただ形式的要件である婚姻の届出をしてないものをいうものであるが、法第五条第一項第一号にいう「事実上婚姻関係と同様の事情に入つていると認められる場合」には、民法に定める婚姻成立の実質的要件を有しない場合であつても、社会通念上、婚姻関係と類似の関係に入つていると認められ、かつ、その関係に入つている者を第一順位として戦時死亡宣告を受けた者に係る弔慰料の支給対象とすることが社会の実情にそわないと判断されるものを含むものであること。

二 弔慰料を受ける権利を有する者が未成年等民法で定める無能力者である場合における弔慰料の請求は、親権者若しくは後見人が法定代理人として、又は法定代理人若しくは保佐人の同意の下に、その請求を行わせること。ただし、法第八条の規定により相続人が請求する場合を除き、当該権利を有する者が弔慰料の請求に関し意思能力を有するものと認められる場合であつて、右により請求させることが不適当であると認められるとき、又はその必要がないと認められるときは、本人が請求し得るものであること。

三 法第七条又は第八条第二項の規定により弔慰料を受けるべき同順位の遺族又は相続人が数人ある場合は、そのうちの代表者一人が弔慰料の請求を行うよう指導すること。この場合においては、遺族又は相続人相互の間における紛議等を防止するため、その代表者の請求につき他の同順位の遺族又は相続人の同意書(様式第三又は第四)を請求書に添付させること。ただし、他の同順位の遺族又は相続人が所在不明である等、当該同意書をとることができない相当の理由があるときは、その理由を明らかにした書類を添付してその者に係る同意書の添付を省略してよいこと。

四 施行規則第一条第二項により弔慰料請求書に添付すべき書類に関しては、次の各号によられたいこと。

(一) 次に掲げるものはそれぞれに掲げる様式によられたいこと。

1 同項第一号中の括弧内に掲げる書類    様式第五

2 同項第二号に掲げる書類         様式第六

(二) 戦時死亡宣告を受けた者が、樺太、千島列島、沖繩地域、戦災地等に本籍を有していた場合で、施行規則第一条第二項第一号に掲げる戸籍書類が得られないときは、次によられたいこと。

1 「未帰還者が死亡したものとみなされる日におけるその者と弔慰料請求者との親族関係を明らかにすることができる戸籍の謄本又は抄本」に代えて次の書類を提出させること。

(1) 未帰還者が死亡したものとみなされる日におけるその者と請求者との親族関係に関する請求者の申立書

(2) 前記(1)の申立書に記載された事実に関する請求者の親族(又は未帰還者の親族)の証明書

2 「未帰還者が死亡したものとみなされる日以後における弔慰料請求者の親族関係の異動を明らかにすることができる戸籍の謄本又は抄本」に代えて次の書類を提出させること。

(1) 未帰還者が死亡したものとみなされる日以後就籍した時又は戸籍を再製した時までの請求者の親族関係の異動に関する請求者の申立書

(2) 前記(1)の申立書に記載された事実に関する請求者の親族(又は未帰還者の親族)の証明書

(3) 就籍又は戸籍の再製後請求時までにおける請求者の親族関係の異動を明らかにすることができる戸籍の謄本又は抄本

五 第二条第一項各号の何れかに該当する者であつて、戦時死亡宣告を受けたならば、戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「遺族援護法」という。)の適用について遺族年金、遺族給与金、又は弔慰金の支給事由たる死亡者とみなされる者(以下「公務死亡者」という。)と認定されるものについては、あらかじめ通知するものであること。右の通知は、施行令第一条の規定により戦時死亡宣告の請求の権限を委任された都道府県知事(以下「本籍地都道府県知事」という。)に対して行うから、弔慰料の支給を受けようとする者の居住地の都道府県知事(以下「居住地都道府県知事」という。)が本籍地都道府県知事と異なるときは、当該本籍地都道府県知事から通報を受けること。なお、公務死亡者とすることが適当であると認められる者について右の通知がない場合は、その者に関する諸資料を具して公務死亡者とすべきか否かについて当局に協議すること。

六 弔慰料の重複支給の防止のための確認及び支給の決定は、次により行うこと。

(一) 居住地都道府県知事は、弔慰料請求書の提出を受けたときは、弔慰料支給確認書(様式第七)を二部作成し、当該都道府県知事と本籍地都道府県知事が異なるときは、その弔慰料支給確認書二部を本籍地都道府県知事に送付すること。

(二) 本籍地都道府県知事は、右により弔慰料支給確認書の送付を受けたときは、重複支給の有無等について調査し、所要の事項を付してその一部を居住地都道府県知事に返送し、他の一部を整理保管すること。

(三) 居住地都道府県知事は、弔慰料支給確認書により弔慰料の支給ができることを確認した後、弔慰料の支給を決定し、弔慰料請求処理簿(様式第八)及び弔慰料支給確認書を整理すること。

(四) 弔慰料の支給につき決定を行つたときは、決定通知書を作成して請求者に送付すること。

第三 戦時死亡宣告を受けた者に係る遺族年金、遺族給与金及び弔慰金の請求に関する事項

戦時死亡宣告を受けた者に係る遺族年金、遺族給与金又は弔慰金を請求する場合において、前記第二の五の通知があつた者については、遺族援護法施行規則第二十五条第二項第一号、同条第三項第一号、第三十六条の二第二項第一号又は同条同項第三号に掲げる書類(第二十六条に規定するこれらの書類を含む。)は添付しなくても差し支えないこと。ただし、陸軍に属していた軍人軍属の遺族が請求する場合は、都道府県において戦没者調査票を添付すること。なお、前記第二の五の通知がなかつた者の遺族が請求する場合は、当該遺族が有している資料を提出するよう指導するとともに、都道府県においてその者に関する資料を保有しているときは、これをも添付して、当局に進達されたいこと。

様式第一

様式第二

様式第三

様式第四

様式第五

様式第六

様式第七

様式第八