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○未帰還者に関する特別措置法の施行について(依命通達)

(昭和三四年三月二六日)

(厚生省発援第三〇号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)

未帰還者に関する特別措置法は、第三十一回国会において成立し、昭和三十四年三月三日法律第七号として公布され、これが施行に必要な政令及び省令もそれぞれ公布の運びとなつたが、この法律は、未帰還者のうち、国がその状況に関し調査究明をした結果、なおこれを明らかにすることができない者について、特別の措置を講じようとする趣旨により制定されたものであつて、これが運用の如何は、留守家族に対し影響するところが少くないと思料されるので、次の事項を御了知のうえ、その施行に遺憾のないよう致されたく、命によつて通達する。

第一 この法律制定の趣旨

この法律は、未帰還者の大多数が終戦前後の混乱期に消息を絶ち、今後調査究明を行つてもこれ以上その状況を明らかにし得ない実情にかんがみ、留守家族の心情をも斟酌のうえ、厚生大臣が民法第三十条の宣告の請求を行い得ることとするとともに、その遺族に対し弔慰料を支給することとする等、特別の措置を講ずるものであること。

第二 一般的事項

1 法第二条第一項に規定する民法第三十条の宣告の請求及び法第三条に規定する弔慰料の支給を行う厚生大臣の権限は、法第十四条並びに同法施行令第一条及び第二条の規定により、都道府県知事に委任されているので、すみやかに事務処理の態勢をととのえるとともに、この法律の趣旨内容及び事務処理に関する手続等を関係職員に十分了知させるよう配意すること。

2 この法律の施行を円滑にするためには、市町村長の協力を得ることが必要であるので、市町村及び市町村の関係職員に対し、この法律の趣旨、内容等を十分徹底させる措置を講ずること。

3 この法律の趣旨、内容等の周知徹底を図り、留守家族の誤解を招くことのないようにするため公的機関及び広報機関を通ずる広報活動を十分行うこと。そのため要すれば、留守家族団体等関係団体のこの面における協力をうるよう努めること。

第三 戦時死亡宣告の請求に関する事項

1 戦時死亡宣告の請求は、厚生大臣において法第二条第一項各号のいずれかに該当すると認めた者についてのみ行われるが、各号該当者は、当局から通知するので、これについて留守家族の意向を聴いたうえ、所要の手続をとられたいこと。

2 戦時死亡宣告の請求を行う場合は、留守家族の意思を尊重することが肝要であるので、常にこれが連絡を密にし、必要に応じ適宜指導すること。

3 戦時死亡宣告に関する審判事件は、その管轄の有無にかかわらず、未帰還者の本籍地の都道府県知事等施行令第一条に規定する都道府県知事の住所地の家庭裁判所において処理されることとなるので、当該裁判所との連絡を密接にし、未帰還者の状況調査の概要を説明する等審判の進行を円滑にするよう配意すること。

4 この法律制定後においても、未帰還者の死亡が判明する場合は、従来通り戸籍法第八十九条による死亡報告がなされるので、留守家族に対しその説明をも十分行うこと。

第四 弔慰料に関する事項

1 弔慰料を受ける権利は、戦時死亡宣告の裁判確定時に発生するが、これを受けるべき遺族の範囲は、当該宣告により未帰還者が死亡したものとみなされる日における配偶者等となつているので、戸籍書類を十分審査し、過誤のないようにすること。

2 弔慰料の額の具体的決定については、別途通知するところであるので、これに基いて慎重に措置すること。

3 戦時死亡宣告の請求を行う都道府県知事と、弔慰料の支給を行う都道府県知事が異なる場合においては、相互に密接な連携を保ちつつ、書類の送付等事務手続を円滑にするとともに、重複支給の防止について留意すること。

第五 その他

1 法第十三条の規定は、戦時死亡宣告を受けた者の実情にかんがみ、設けられたものであり、関係法律の適用時期は、死亡したものとみなされる日の如何にかかわらないものであること。

2 留守家族手当の支給期間は、未帰還者の調査究明の現況にかんがみ、さらに三年間延長されたものであること。