添付一覧
○未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律の施行について
(昭和三〇年一〇月一日)
(援発第一一七五号)
(各都道府県知事あて厚生省引揚援護局長通知)
未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)は、昭和三十年八月五日法律第百二十九号をもつて公布施行されたが、これに伴い、未帰還者留守家族等援護法施行令等の一部を改正する政令(昭和三十年九月一日政令第二百二十号。以下「改正令」という。)及び未帰還者留守家族等援護法施行規則の一部を改正する省令(昭和三十年九月十九日厚生省令第十八号。以下「改正規則」という。)がそれぞれ公布された。また、改正法の施行については、昭和三十年九月二日厚生省発援第一一二号をもつて厚生事務次官から通知が行われ、改正法により新たに支給されることとなつた手当と普通恩給等との調整については、昭和三十年九月二日援発第一〇五二号をもつて通知したところであるが、改正法の施行事務を進めるに当つては、さらに、左記の点につき特に御留意のうえ、事務処理に遺漏のないよういたされたい。
記
第一 改正法について
1 留守家族手当の増額について
(1) 未帰還者留守家族等援護法(以下「法」という。)第八条の改正により、昭和三十年十月以後の分として支給される同条本文の規定による留守家族手当の月額は、改正前の法による月額より大となるので、法第十四条及び附則第二十九項の規定による普通恩給との調整並びに法附則第十七項の規定により留守家族手当に加給される額の計算については、誤りのないよう特に注意されたいこと。
(2) 法附則第四十三項の規定による手当(以下「継続手当」という。)のうち留守家族手当の額に相当する額の手当は、留守家族手当と同様、昭和三十年十月分以後増額されるものであること。
2 療養の給付期間の延長について
法附則第四十一項の改正により法による療養の給付期間は最大限帰還後一〇年となつたが、このような長期にわたる全額国庫負担の療養を認めているものは、わが国の社会保障制度にもその類を見ないのであつて、当該改正が行われたのも、ひとえに法による療養を受けている患者の特殊性に基くものであるから、療養に関する事務処理に当つては、法の運用に厳正を欠くことのないよう配意されたいこと。
3 継続手当について
(1) 法附則第四十三項中「当該未帰還者が帰還せず、又は当該未帰還者の死亡の事実が判明するに至らなかつたとすれば、留守家族手当又は特別手当の支給を受けるべき者」とあるのは、未帰還者の帰還又は死亡の判明ということが起らなかつたとすれば、留守家族手当又は特別手当の支給を受ける権利を有すべき先順位者を指すものであること。従つて、未帰還者が帰還したとき又は未帰還者の死亡の事実が判明したとき、現に留守家族手当又は特別手当の支給を受けている者は、法附則第四十三項に定める期間、継続手当の支給を受けることができるのであるが、その期間内において、その者が留守家族手当又は特別手当の支給を受けるための条件に該当しなくなつた場合は、その者が当該条件に該当しなくなつた日の属する月の翌月以後、継続手当は、その支給を停止し、又はその者と同順位にある者若しくは次順位者に支給するものであること。
(2) 法附則第四十三項中「その者が支給を受けるべき留守家族手当又は特別手当の額」とあるのは、前記(1)に説明した者が未帰還者の帰還又は死亡の判明ということが起らなかつたとすれば受けるべき留守家族手当又は特別手当の額を意味するのであつて、未帰還者が帰還したとき又は未帰還者の死亡の事実が判明したとき、現に留守家族手当又は特別手当の算定の基礎となつている者は、継続手当の算定の基礎となるのであるが、その者が当該算定の基礎となるための条件に該当しなくなつた場合は、その者が当該条件に該当しなくなつた日の属する月の翌月以後、支給すべき継続手当については、その者を算定の基礎としないものであること。
(3) 未帰還者の帰還又は死亡の判明ということが起らなかつたとすれば、普通恩給の給与が行われ、法第十四条の規定による調整を受けるべき者に対し継続手当を支給する場合、法附則第四十三項にいう「その者が支給を受けるべき留守家族手当又は特別手当の額」は、普通恩給の給与が行われず、且つ法第十四条の規定による調整が行われなかつたものとして算定すべきこと。
(4) 継続手当は、未帰還者が帰還したとき又は未帰還者の死亡の事実が判明したときにおける実績を保障するという建前に立つているので、法附則第四十三項中の括弧書により明らかなとおり、未帰還者が帰還し、又は未帰還者の死亡の事実が判明した日の属する月以後において、留守家族手当の支給の条件(例えば、父母について六〇歳であること)に新たに該当するに至つた者に対しては、留守家族手当の額に相当する額の手当は支給せず、また、その者を留守家族手当の額に相当する額の手当の算定の基礎としないものであること。
ただし、その者が特別手当若しくは特別手当の額に相当する額の手当の支給を受けている者又はこれらの手当の算定の基礎となつている者であるときは、その者が留守家族手当の支給条件に該当するに至つた日の属する月の翌月以後も、その者について、特別手当の額に相当する額の手当を支給すべきこと。
(5) 継続手当の支給については、申請を必要とせず、また、その支給を受けるべき同順位の者が二人以上あるときは、その全員に対して支給するものであること。
(6) 改正法の施行の日(昭和三十年八月五日)前に帰還し、又はその死亡の事実が判明した未帰還者に関しては、継続手当は全く支給されないこと。
(7) 法附則第四十四項及び附則第四十五項の規定は、継続手当と普通恩給、扶助料又は遺族年金との調整規定であつて、留守家族手当と普通恩給との調整を規定した法第十四条及び附則第二十九項の規定に対応するものであること。なお、法附則第四十四項の規定の適用を受ける「普通恩給を受ける権利につき裁定があつた場合」とは、未帰還者であつた者が帰還後、請求したことに基き普通恩給を受ける権利につき裁定があつた場合をいうものであつて、その者が未帰還中に留守家族が請求したことに基き裁定があつた場合をいうものではないこと。
第二 改正令について
1 継続手当の支給に関する厚生大臣の権限等の委任について
未帰還者留守家族等援護法施行令(以下「令」という。)第二条に関する改正は、継続手当の支給に関する厚生大臣の権限又は権限に属する事務を、留守家族手当又は特別手当の支給に関する厚生大臣の権限又は権限に属する事務と同様に、行政機関の長、最高裁判所長官若しくは各議院の事務総長若しくは都道府県知事に委任し、又は琉球政府の当局に委任することができることとしたものであること。例えば、未復員者たる未帰還職員であつた者につき支給する留守家族手当の額に相当する額の手当については、当該手当のうち法附則第十七項の規定により留守家族手当に加給される額に相当するものの支給に関する権限は、行政機関の長、最高裁判所長官又は各議院の事務総長に委任され、当該加給額に相当するものを除く当該手当の支給に関する権限は、都道府県知事に委任されるものであること。
2 普通恩給、扶助料又は遺族年金の内払とみなされる継続手当の額について
(1) 改正令により令の本則に新たに加えられた令第四条の規定は、法附則第四十五項の規定に基き、普通恩給、扶助料又は遺族年金の内払とみなされる継続手当の額を定めたものであつて、法附則第二十九項の規定に基き普通恩給の内払とみなされる留守家族手当又は特別手当の額を定めた令第三条の規定に対応する規定であるが、次に述べるとおり、普通恩給、扶助料又は遺族年金の別に応じ、それぞれ継続手当との調整方法を異にするので、この旨注意されたいこと。
(2) 普通恩給については、調整すべき月の分として支給された継続手当の全額をその内払とみなすこと。
(3) 扶助料については、令第三条の規定による留守家族手当又は特別手当と普通恩給との調整と同様の要領をもつて、調整を行うこと。
例 内縁の妻、子、父が継続手当の算定の基礎となつており、内縁の妻に対し三一〇〇円の継続手当を支給していた場合。
内縁の妻は恩給法上の遺族でないから、扶助料の内払とみなされる額は、(3,100×2/3)円である。
(4) 遺族年金については、継続手当の算定の基礎となつた者が受ける遺族年金についてのみ個々に調整を行うものとし、その者が算定の基礎となつた継続手当の種類及び当該手当の支給についてのその者の順位による区分に従い、令第四条第三号に掲げる表の下欄に定める額を、その者に支給される遺族年金の内払とみなすこと。
例(イ) 妻、子が継続手当の算定の基礎となつており、妻に対し二七〇〇円の継続手当を支給していた場合。
妻に支給される遺族年金の内払とみなされる額は、当該手当が留守家族手当の額に相当する額のものであり、当該手当の支給につき妻は先順位者であつたから、(2,700-400×1=2,300)円であり、子に支給される遺族年金の内払とみなされる額は、当該手当が留守家族手当の額に相当する額のものであり、当該手当の支給につき子は後順位者であつたから、四〇〇円である。
例(ロ) 六〇歳以上の父母に対し二七〇〇円の継続手当を支給していた場合。
当該手当は留守家族手当の額に相当する額のものであり、父母はいずれも当該手当の支給につき先順位者であつたから、父に支給される遺族年金の内払とみなされる額及び母に支給される遺族年金の内払とみなされる額は、いずれも、
((2,700―400×0)/2=1,350)円である。
例(ハ) 継母に対し一四〇〇円の継続手当を支給していた場合。
継母に支給される遺族年金の内払とみなされる額は、当該手当が特別手当の額に相当する額のものであり、当該手当の支給につき継母は先順位者であつたから、(1,400-400×0=1,400)円である。
なお、令第四条第三号に掲げる表の下欄中「当該手当の額」とあるのは、令第二条第三項の規定により行政機関の長、最高裁判所長官又は各議院の事務総長が支給すべき継続手当の額を含むものであること。
3 沖繩地域に関する継続手当の支給方法について
改正令第二条の規定により、沖繩地域に居住する者に支給する継続手当は、留守家族手当と同様、三箇月をこえない期間に限り、その期間に係る各月の分をとりまとめてその期間の最後の月に支払うことができるようになつたこと。
第三 改正規則について
改正規則は、未帰還者留守家族等援護法施行規則に継続手当の支給に関して必要な改正を行つたものであり、これにより、継続手当の算定の基礎となつている者が当該算定の基礎となるための条件に該当しなくなつた場合は、継続手当の支給を受けている者その他の者は、その旨を継続手当の支給を行つていた都道府県知事に届け出なければならないこととなり、また、都道府県知事は、継続手当の支給を終える場合及び継続手当の支給に係る未帰還者であつた者に関し普通恩給、扶助料又は遺族年金を受ける権利につき裁定があつたことにより継続手当の全部又は一部の支給を停止する場合は、それぞれの旨を継続手当の支給を受けている者に通知しなければならないこととなつたこと。