添付一覧
○戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の運用について(その三)
(昭和四一年八月一一日)
(援護第三〇二号)
(各都道府県民生主管部長・那覇日本政府南方連絡事務所次長あて厚生省援護局援護課長通知)
別添のとおり、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法関係問答集を作成したので送付する。
(別添)
(問1) 戦没者等の遺族が外国に居住している場合の特別弔慰金の請求手続について示されたい。(山形県)
(答) 請求は、外国に居住している戦没者の遺族がみずから行なうものであり、また、請求に当たつては、特別弔慰金裁定通知書又は却下通知書を受領すべき代人を選定させ、これを証すべき受領委任状を提出させることとし、特別弔慰金請求書は代人の居住地を管轄する市町村長及び都道府県知事を経由して裁定機関に提出させることとされたい。この場合、特別弔慰金国庫債券印鑑等届出書に記載すべき住所、氏名及び印鑑は、代人のものでなく遺族本人のものであることが必要である。
なお、戦没者の妻が外国に居住する場合は、住民票の謄本が添付できないので、この場合にはそれに代るべき書類として、戦没者の妻の居住地を管轄する在外公館等が発行したその者の居住証明書を添付させることとされたい。
おつて、特別弔慰金国庫債券の受領及び償還金の受領については、特別弔慰金国庫債券の発行交付等に関する省令(昭和四十年六月一日大蔵省令第四十一号)における代人の制度によられたい。
(問2) 今回の一部改正により特別弔慰金を請求する者のうちすでに却下の裁定がなされているものについては、従前の添付書類を活用してさしつかえないか。(青森県)
(答) 請求書は改めて提出させることになるが、添付書類については、すでに提出されているもののうち活用できるものは、その提出を省略させてさしつかえない。
(問3) 特別弔慰金国庫債券の受領を市町村長に委任した場合には、特別弔慰金請求書に当該市町村長名を記入することになつているが、市町村長の氏名は記入しないものと解している。これでよろしいか。(岡山県)
(答) お見込みのとおりである。
(問4) 特別弔慰金を妻が請求する場合、現況申立書に兄弟姉妹、伯父叔母等についてまで記載することを要しないのではないか。(静岡県)
(答) 取扱としては、兄弟姉妹等についても記載のこととされたい。しかしながら、要は妻の受給権が問題であるので、それが明確な場合、兄弟姉妹等についての記載がないことをもつて直ちに整備のため返戻するまでの必要はないものと了知されたい。
(問5) 現況申立書中同順位である兄弟姉妹の生年月日の記載がない場合、県保管の遺族台帳等により、これらの者と請求者とが同順位であることが確認されれば、請求者に照会することなく裁定してさしつかえないか。(香川県)
(答) お見込みのとおりである。
(問6) 生計関係申立書には、同順位者についても記載させるのか。また、この申立書の記載内容についての市町村長の奥書証明は必要としないか。(福岡県)
(答) 前段については、戦没者と生計関係を有する遺族全員につき記載するものと了知されたい。後段については、市町村長の奥書証明は必要としない扱いであるが、特に請求者の生計関係に疑問がある場合には、改めて当該市町村長等に十分調査させることとされたい。
(問7) 弔慰金の請求名義人である伯叔父母等が今回の特別弔慰金についても請求してきた場合、その請求書に他の伯叔父母等の請求同意書が添付されているときは、同意者が戦没者と同一生計であつたかどうかの確認(その旨の資料等の添付)をすることなく、そのまま裁定してさしつかえないか。(福岡県)
(答) さしつかえない。
(問8) 特別弔慰金の受給権者が死亡し、その者に相続人がない場合、遺言による受遺者は自己の名で特別弔慰金を請求することができるか、また、特別弔慰金の裁定を受けた者が死亡し、その者に相続人がない場合、受遺者は未払いの償還金の支払を受けることができるか。(大阪府)
(答) 特別弔慰金の受給権者が死亡した場合、受遺者は自己の名で特別弔慰金の請求をすることはできないものと解する。また、特別弔慰金の裁定を受けた者が死亡した場合、特別弔慰金国庫債券の記名変更の請求を認められた受遺者は、未払の償還金の支払を受けることができるものと解する。
なお、この取扱いは、死亡者に相続人がある場合についても同様とする。
(問9) 特別弔慰金の請求について、同順位者があるが財産問題等でそれらの者の仲がこじれてどうしても同意印をえられない場合の処理はどうしたらよいか。(宮崎県)
(答) ただ、単に同意のみをしないものであるか、別に請求しようとするものであるか明確でないが、同意のとれないものがある場合は、その事情を記載して提出せしめることとし、その事情によつて、裁定し、あるいは裁定を保留して遺族間の調整を指導することとされたい。
なお、二以上の請求書が提出された場合には、事情を具して当局(援護課)に協議されたい。
(問10) 特別弔慰金を受ける権利を有する同順位者はその権利を放棄できるか。また、放棄できるとすれば、その意思表示をするのみで同意印は要しないとして取り扱つてよいか。(宮崎県)
(答) 特別弔慰金の受給権はいわゆる公権であり、個人が放棄し得るものではない。しかし権利を行使するかどうかは個人の自由であるので、その間の事情を記載した文書を提出させることとし、事情が了解できるものについては、そのまま裁定してさしつかえない。
(問11) 特別弔慰金を請求する場合、同一の請求者が二柱の戦没者につき請求するとき(例えば、兄が同一戸籍内の二人の弟につき請求するとき。)は、請求書に添付する戸籍書類は重複を避ける意味からも一通でよいとして取り扱つているところ、裁定機関によつてはそれぞれの請求書について規定どおり戸籍書類を添付するよう返戻されることがあるが、裁定機関が異なる場合を除き、一通でさしつかえないと思うがどうか。(大分県)
(答) お見込みのとおりである。
(問12) 昭和四十年六月一日援発第五九二号事務処理通達によれば、「請求者の昭和四十年四月一日における戸籍の抄本」は、同日前に編製されたものでなければならないこととされているが、そのようにした実益はどこにあるか。この取扱いを緩るめ、編製時期はいつでもよいとする考えはないか。(石川県)
(答) ご照会のような取扱いとしたのは、戸籍を改製する際、改製前の記事の一部を省略することがあるので、改製時期が昭和四十年四月一日後であるときは、同日における状態がわからない場合がありうるからである。したがつて、同日後編製された戸籍であつても、その記載内容からみて同日前の状態が十分わかるものであれば、あえて返戻する必要はないものと了知されたい。
(問13) 配偶者が特別弔慰金を請求する場合、戸籍書類により昭和四十年四月一日においてその者が遺族と婚姻しているか、又は氏を改めない法律婚をしていることが明らかなときは、添付すべき住民票は、謄本でなく抄本でさしつかえないのではないか。(長野県、静岡県)
(答) 謄本とされたい。
なお、弔慰金の受給権を取得した前からの氏を改めない法律婚又は遺族との婚姻の関係がその他の資料によりその後現在まで引き続いていることが明らかであれば、提出された住民票が抄本であることをもつて整備のため返戻する必要はない。
(問14) 戦没者Aに係る弔慰金は、兄Bが妹Cとともに受給したが、その後兄B、妹Cともあいついで死亡し、現在戦没者の墓守り、法事等は、兄Bの妻Dが行なつている。この場合、戦没者Aの義兄弟に当る兄Bの妻Dは、特別弔慰金の受給権者となりうると思うがどうか。
(答) ご照会の妻Dは、戦没者の三親等内の親族であるが、弔慰金については兄Bの同順位者でなく、また今回の改正による転給の範囲にも入つていないので、特別弔慰金の受給権はない。
(問15) 戦没者の妻が、戦没者の死亡後戦没者の父母の養子となつた者と夫の氏を称する婚姻をした場合は、その養子が遺族以外の者であつても、当該婚姻は「氏を改めない法律婚」に該当するものとして、この妻に特別弔慰金を裁定してよいか。(福井県、新潟県)
(答) 戦没者と同じ氏を称していた戦没者の妻が、戦没者の死亡後、戦没者の父母の養子となり戦没者と同じ氏を称することとなつた者と婚姻して、その者の氏を称した場合においては、当該妻が遺族援護法第三十六条第一項第一号及び特別弔慰金支給法第二条第一項第二号にいう「死亡した者と同じ氏を称していた配偶者で、その氏を改めないで法律上の婚姻をしたもの」に該当するものと解する。したがつて、ご照会の妻がそれに該当するものであれば、特別弔慰金の受給権を有するものである。〔昭和二十七年七月援護第三六五号 問六の回答参照〕
(問16) 遺族援護法第三十六条第一項の第二号から第九号までの遺族があつた戦没者の妻が戦没者の死亡後某男と事実婚関係に入つていたが、遺族援護法の施行とともに弔慰金を第一順位として受給した。この妻が昭和二十九年に至りその内縁の夫との間に妻の氏を称する婚姻の届出をした場合、この妻に対する特別弔慰金の受給権はどうなるか。(大阪府)
(答) 御照会の妻は、特別弔慰金支給法第二条第一項第一号に該当するので、特別弔慰金の受給権は有しない。
(問17) 妻が弔慰金の受給権を取得した後昭和四十年三月三十一日までに氏を改めた婚姻をした場合は、この妻以外に遺族(遺族援護法第三十六条第一項の第二号から第九号までに掲げる遺族をいう。)がないときであつても、特別弔慰金を支給できないと思うがどうか。(徳島県)
(答) お見込みのとおりである。
(問18) 戦没者の父母が戦没者の死亡前に戦没者の伯父(戦没者の父の兄)と養子縁組をしたことにより、その伯父は戸籍上戦没者の祖父となつていたところ、戦没者の死亡後その祖父が養子をむかえ、その養子と戦没者の妻が夫の氏を称する婚姻をした。この事例における妻は、遺族援護法及び特別弔慰金支給法にいう「氏を改めない法律婚」をしたものと取り扱われるかどうか。(福岡県)
(答) 戦没者の父母が戦没者出生後に戦没者の伯父の養子となつたものであれば、父母の養親すなわち、戦没者の伯父と戦没者との間には、いわゆる養祖父孫の関係は生じないものである。したがつて、御照会の妻は「氏を改めない婚姻」をしたものとはならない。
なお、戦没者の父母が戦没者の出生前に養子となつている場合においては、養祖父孫の関係は生ずるが、この場合においても、当該妻は「氏を改めない婚姻」をしたものとはならないものであるから申し添える。〔昭和二十七年十月援護第五五三号 問一六の回答参照〕
(問19) 戦没者の妻は、戦没者の死亡後、戦没者の母の養子となつた者と婚姻(法律婚)したが、昭和二十八年三月その夫が戦没者の母と協議離縁して縁組前の氏に複したため、妻も夫の氏を称するに至つたまま現在に及んでいる。この事例において、弔慰金は妻が第一順位で受給していたところ、特別弔慰金については戦没者の子から請求があつたが、請求どおり裁定してよろしいか。(福岡県)
(答) 妻については特別弔慰金の受給権についての欠格事由はないから、特別弔慰金の請求は妻から行なわせることとされたい。
(問20) 戦没者の父は、戦没者死亡後に死亡し、戦没者の母は戦没者の死亡前当該父と離婚して他家に嫁している。この母(七三歳)には、遺族年金の受給権があるようにも思われるが未だに遺族年金は請求していない。この事例の場合、戦没者の子(妻は死亡)が弔慰金を受給したことにより、子から特別弔慰金を請求してきたが、母の年金受給権との絡み合いもありどのように処理したらよいか。(岡山県)
(答) ご照会の事例の場合母と戦没者との間の生計関係が明らかでないため母に遺族年金の受給権があつたかどうか疑問であるが、かりに母に遺族年金の受給権があつたとしても、当該受給権は時効により消滅しているので、当然戦没者の子に特別弔慰金を裁定すべきである。
(問21) 弔慰金の裁定を義姉(兄嫁)が受けている場合、特別弔慰金の受給権はあると思うがどうか。(佐賀県)
(答) ご照会の内容が必らずしも明確ではないが、義姉が第一一順位又は第一二順位として弔慰金を受けたものであれば、お見込みのとおりである。
(問22) 特別弔慰金支給法第二条第二項にいう「当該死亡した者の子」には、遺族以外の者の養子となつた子も含まれるか。また、含まれるとした場合も、遺族援護法第三十六条による「遺族の順位」に関する規定の適用を受け、当該養子となつた子は特別弔慰金についても後順位として取り扱われるものであるか。(長崎県)
(答) 前段については、お見込みのとおりである。
後段については、法第二条第二項の子に順位はないので、遺族以外の者の養子となつた子であつても、他の戦没者の子とともに特別弔慰金の受給権者となるものである。
(問23) 戦没者の妻が弔慰金を受給した後に、遺族以外の者の養子となつた場合には、離婚とみなされ、当該戦没者の子があるときは、特別弔慰金はその子に転給することになるか。(長崎県)
(答) 弔慰金を受けた配偶者がその後遺族以外の者の養子となつても特別弔慰金の受給権には影響がないので、この場合、たとえ戦没者の子があつても特別弔慰金が子に転給されることはない。
(問24) 請求者は、戦没者の養子として弔慰金を受けたものであるとして特別弔慰金を請求してきたが、戸籍によれば同人の縁組は戦没者死亡後のものであり、弔慰金の正当受給権者は戦没者の兄であつたと認められる。この場合、いかに取り扱つたらよいか。(奈良県)
(答) 請求者は特別弔慰金の受給権を有しない。
なお、戦没者の兄から特別弔慰金の請求があつた場合は同人に特別弔慰金を裁定することとされたい。
(問25) 弔慰金は、戦没者の父(昭和三十八年八月五日死亡)に裁定されていたが、今回、戦没者の妻から特別弔慰金の請求があつた。戸籍によれば、同人は遺族援護法第三十六条第一項第一号ただし書の規定(氏を改めない婚姻)に該当し、弔慰金の正当受給権者であつたと認められるが、この場合いかに取り扱つたらよいか。(岩手県)
(答) 請求者に特別弔慰金を裁定することとされたい。