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○戦傷病者戦没者遺族等援護法の運用について(その七)
(昭和三九年三月五日)
(援護第一七三号)
(各都道府県民生主管部長・那覇日本政府南方連絡事務所長あて厚生省援護局援護課長通知)
標記のことについて、別添のとおり問答集を作成したので、戦傷病者戦没者遺族等援護法の運用に資せられたい。
(別添)
戦傷病者戦没者遺族等援護法問答(その七)
(問一) もとの日本の軍人が軍人退職後引き続き満州国の軍人として勤務中昭和十九年五月二十三日満州国陸軍の糧秣廠で戦病死し、その遺族は、満州国の遺族一時恩給を受給していた事例があるが、この者の遺族は、戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「遺族援護法」という。)の適用を受けることができるか(富山県)。
(答) 御照会の死亡した者は、旧恩給法の特例に関する件第一条に規定する軍人に該当するものと考えられるが、個々の具体的事例について当局へ協議されたい。
(問二) 準軍人のうち、もとの陸軍の見習士官又はもとの海軍の候補生若しくは見習尉官についてはその身分を有していた全期間を遺族援護法第三条第一項の在職期間としているが、もとの陸軍又は海軍の学生生徒については、戦務、戒厳地域内の勤務又は外国の鎮戌に服する場合にのみ遺族援護法第三条第一項の在職期間となつており、その身分を有していた全期間は特別弔慰金の支給対象となつているに過ぎない。このようなもとの陸軍又は海軍の学生生徒が敵の航空機又は艦船による襲撃に際し対敵行動中公務のため受傷した場合は、準軍人としての在職中公務のため受傷したものとして取り扱われるか。
(答) 御照会の者については、遺族援護法第三条の在職期間内に公務上負傷したものとして取り扱うものであるから了知されたい。
(問三) 戦没者の妻は、昭和二十七年度分限りの遺族年金の裁定を受けたが、その後公務扶助料を請求しないまま時効期間たる七年を徒過したため、当該公務扶助料の請求権を失つた場合、妻は、昭和二十八年四月分以後の遺族年金を受けることができるか。
(答) 御照会の事例の場合は、他に扶助料権者がない限り、昭和二十八年四月に遡つて高額の遺族年金を受けることができるものと解する。
(問四) もとの陸軍の偕行社、軍酒保等の職員についての遺族援護法上の身分の取扱いを教示されたい(奈良県)。
(答) 御照会の者に係る遺族援護法上の身分の取扱いについては、次のとおりである。
(1) 内地、台湾、朝鮮、満州等にあつた偕行社(軍酒保等を含む。以下同じ。)の職員は、原則として有給軍属として取り扱つていないが、日ソ開戦当時ソ連軍等の侵入地域にあつた偕行社等の職員のうち、戦死又は戦傷死した者で、当時の勤務の態様及びその後の行動等から判断し、有給軍属と同視することが相当と認められるものは、有給軍属として取り扱つている。
(2) 中国及び南方地域(戦地)における偕行社等の職員は、原則として有給軍属として取り扱つているが、兵站病院、軍の食堂等で委託経営に係る従業員については、有給軍属として取り扱つていないのが通例である。
(3) (1)及び(2)において有給軍属でないとされている者を有給軍属又は準軍属とみなして遺族援護法を適用することが適当と認められる場合は、個別に当課へ協議されたい。
(問五) 昭和二十年五月十日戦死した戦没者(A)について、その内妻(B)及び実母(X)に対し遺族年金が裁定され、その後実母(X)は公務扶助料に移行し当該扶助料を受給中であつたが、昭和三十一年三月に至り戦没者(A)と、内妻(B)の養母(Y)との間の婿養子縁組及び戦没者(A)と内妻(B)との間の子(C)の認知の委託確認の裁判による戸籍の届出がなされた。
なお、戦没者(A)と養母(Y)との間には生計関係がない。
この場合において、実母(X)、内妻(B)及び子(C)に対する公務扶助料は、いかに裁定されるものであるか(和歌山県)。
(答) (1) 内妻(B)は、婿養子縁組の確認裁判により昭和三十一年三月いわゆる「正妻」となつたが、昭和二十一年法律第三十一号による改正前の恩給法(以下「改正前の恩給法」という。)第七十二条第三項の規定により、恩給法上の遺族とみなされないので、公務扶助料の受給権は生じない。
(2) 子(C)については、昭和三十一年三月の認知の裁判により恩給法上の遺族となり(改正前の恩給法第七十二条第四項参照)改正前の恩給法第七十四条の二第一項の規定により認知の届出の受理の日から扶助料を給せられることとなるので、現実に公務扶助料を受けられるのは、昭和三十一年四月分からである。
(3) 実母(X)については、改正前の恩給法第七十四条の二第一項の規定により子(C)が公務扶助料を受けることとなつた前月において公務扶助料権を失い、以後は後順位者としての遺族年金の支給を受けるものである。
以上の関係を図示すれば、次のとおりである。
(問六) 軍人(A)の公務死亡により、内妻(B)は遺族年金の裁定を受け、昭和二十八年四月以後遺族年金(高額)を受給中であつたが、その後婚姻の届出及び内縁関係の間の子(C)に係る胎児認知の委託確認の裁判により、昭和三十四年十月十日当該婚姻及び認知の届出がなされ、その届出は有効に受理された。この場合において、子(C)は恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号。以下「法律第百五十五号」という。)の施行のときに遡つて公務扶助料を受ける権利を有することとなるものと解されるが、妻(B)に支給した遺族年金は、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律(昭和三十三年法律第百二十五号。以下「法律第百二十五号」という。)による改正後の戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百八十一号。以下「法律第百八十一号」という。)附則第十八項の規定により昭和三十四年一月分から同年九月分までの分につき改正後の額(高額)の遺族年金を支給し、また、昭和三十三年十二月分以前については法律第百二十五号による改正前の法律第百八十一号附則第十八項の規定による額(一万円)の遺族年金とすべきでないか(宮城県)。
(答) 法律第百二十五号による改正前の法律第百八十一号附則第十八項の規定の趣旨は、先順位者としての額の遺族年金と公務扶助料とを調整することにある点にかんがみ、同項による「公務扶助料の支給を受ける権利を有する遺族がある」とは、公務扶助料を現実に受けている者がある場合、又は現実に受けられる者がある場合、若しくは受けた者がある場合等いわゆる実権利者がある場合と解されるので、妻(B)は、昭和二十八年四月から子(C)が現実に公務扶助料を受けるべき月の前月(本事例の場合は昭和三十四年十月)までは、先順位者としての額の遺族年金を、子(C)は、同月までは後順位者としての額の遺族年金を受ける権利を有するものと解すべきである。
(問七) 妻子(妻は、その後死亡)を有する軍属(A)、軍人(B)及び軍属(C)の三名の戦没者を有する母(X)は、昭和二十七年には三名の戦没者中軍人(B)に係る遺族年金を選定のうえ受給し、法律第百五十五号の施行により、軍人(B)につき昭和二十八年四月から公務扶助料の支給を、軍属(C)につき同年同月から遺族年金の支給を受けていたが、軍属(A)に係る遺族年金を受給中の同人の子(D)は、昭和三十七年九月二十四日一八歳に達したことにより当該受給権を失つた。この場合において、母(X)は、子(D)の失権に伴い軍属(A)に係遺族年金を受けることができるか。また、遺族年金を受けることができるとした場合、その請求時効はいつから進行するか(大分県)。
(答) 御照会の場合の母(X)は、軍属(A)の子(D)が一八歳に達した月の翌月から先順位者としての遺族年金を併給されるものと解する。
なお、この場合の時効の進行は、先順位者であつた子(D)が、一八歳に達した日の翌日から進行するものと解する。
(問八) 長男は公務上の傷病により死亡し、また、次男は戦争に関する勤務に関連した傷病により死亡した場合の母(子はいずれも妻子がなく、かつ、別戸籍であるが、母とはともに生計関係を有する。)に対し支給する特例遺族年金の額は、いくらであるか。
(答) 旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律(以下「特例法」という。)の規定に該当する遺族は、遺族援護法の適用については、同法第二十三条第一項第一号に掲げる遺族とみなされるものであるから、二以上の遺族年金を受ける場合の同法第三十二条第三項第一号の規定による控除すべき額は、五○○○円となるべきであるが、特例法第二条第三項の規定によれば、同項により支給すべき遺族年金の額は、「遺族援護法の規定により支給すべき額の一○分の六」とあるので、御照会の母に支給する遺族年金の額は、七万一○○○円から五○○○円を控除した額の一○分の六、すなわち、三万九六○○円である。
(問九) 昭和三十八年十二月十七日援護第四百七十九号通知「戦傷病者戦没者遺族等援護法の運用について(その六)(通知)」の(問二六)の(答)によれば、戦没者(A)の母となつた(C)は遺族年金の受給権を有するとあるが、この者に係る遺族年金及び弔慰金の請求権の消滅時効は、次のいずれの日から進行するものであるか。また、時効が遺族援護法の施行の日から進行するものとした場合は、(C)が戸籍訂正により戦没者の母となつても弔慰金の請求権はないので、(C)の父(D)(昭和二十七年六月四日死亡)の相続人(F)に裁定された弔慰金は取り消さないでおくことはできないか(島根県)。
(1) 遺族援護法の施行の日(昭和二十七年四月三十日)
(2) 母としての戸籍訂正記事が記載された日
(3) 戸籍訂正の許可の裁判があつた日
(4) (3)による裁判を受けるための申請をした日
(答) 戦没者(A)の母となつた(C)に対する弔慰金の時効は、昭和二十七年四月三十日から進行するものと解する(昭和三十三年八月三十日援発第八五○号通達「戦傷病者戦没者遺族等援護法による遺族年金等を受ける権利の消滅時効について」の三の(三)参照)。また、(C)の父(D)は、弔慰金の受給権を有しないことになつたものであるから、その相続人(F)に対する当該弔慰金の裁定は取り消し、改めて(D)からの請求をまつて同人に弔慰金を裁定するものであるが、御照会の事例の場合は時効が完成していることも考えられるので留意されたい。
(問一○) 法律第百二十五号による改正後の法律第百八十一号附則第十八項の規定中「公務扶助料」とあるのは、恩給法第七十五条第一項第三号の扶助料及び特例扶助料も含むものと解してよいか(新潟県)。
(答) お見込みのとおりである。
(問一一) 過ぐる戦争で戦死した恩給法上の公務員たるもとの陸軍軍属(書記)の遺族で、公務扶助料を請求しないまま受給権を時効により失つた者は、遺族援護法第三十四条第四項の規定による弔慰金の受給権を有するものと解してよいか。
(答) お見込みのとおりである。
(問一二) もとの陸軍幼年学校の生徒が春の休暇のため帰省の途次昭和十八年三月十九日乗船が触雷のため沈没した際、死亡したが、この場合、当該死亡を戦争に関する勤務に関連するものとして遺族援護法による特別弔慰金を支給することはできないか。
(答) 学校職員の引率のもとに行動し、又は乗船が学校当局から指定されていた等の特別の事情があれば、当該死亡を戦争に関する勤務に関連したものと認め、特別弔慰金を支給しうるものと解する。
(問一三) 軍人としての増加恩給を受給中の者がもとの陸軍又は海軍以外の文官として再就職し、その在職中昭和二十六年十月五日平病死した場合、その遺族は、法律第百五十五号の施行により文官として恩給法第七十五条第一項第三号に掲げる額の扶助料を受けることとなつたとき、受給中の遺族援護法第二十三条第一項第二号の規定による遺族年金は併給されるか。
(答) 御照会の者に係る文官としての恩給法第七十五条第一項第三号に掲げる額の扶助料は、遺族援護法第二十三条第一項第二号の遺族年金の支給事由と同一の事由によるものと考えるべきであるので、昭和二十八年四月以後の遺族年金は支給されないものである。
(問一四) 戦没者(A)は、父(B)及び母(C)の嫡出子として戸籍届出がなされていたが、昭和三十八年九月二十日許可の裁判(出生届出錯誤)により、同年十月二十一日某女(X)の「男」として戸籍の訂正が行なわれた。この事例において戦没者(A)の実母となつた某女(X)は遺族援護法による遺族年金を受けることができないものと解して差し支えないか。
なお、戦没者(A)の父(B)は、遺族年金受給中昭和二十七年十二月十四日に死亡し、また母(C)は遺族援護法の施行前に死亡している。以上の関係を図示すると次のとおりである(佐賀県)。
(答) 戦没者(A)に係る戸籍訂正は、戸籍法上有効に受理されたものであるから、遺族援護法上、某女(X)の身分関係は戦没者(A)の母と認めて差し支えないが、遺族年金の受給権については、戸籍訂正前の父(B)と生計関係があるものとして裁定を受けたものであるから、戸籍訂正により、母となつた某女(X)と戦没者(A)との生計関係はなく、したがつて受給権は原則としてないものと考える。
(問一五) 男(A)と女(B)の内縁関係により生れた戦没者(C)が、男(A)に認知され男(A)の戸籍に入つた後に女(B)は死亡した。その後男(A)は女(D)と婚姻したが、女(B)の父(E)が死亡したので、戦没者(C)が(E)家の選定家督相続人となつた場合、女(D)と戦没者(C)との間の嫡母庶子関係は消滅するか。
(答) 御照会の事例においては、女(D)と戦没者(C)との間の嫡母庶子関係は消滅しないものと解する。
(問一六) 戦没者(A)は昭和十八年九月十日に某女(B)と入夫婚姻した後昭和二十年六月七日に戦死したが、その後某女(B)の母(X)は、昭和三十三年六月二十八日戦没者(A)を養子とする縁組の委託確認の裁判を求め、入籍の届出を行なつた。この場合において、戦没者(A)の養母となつた者(X)の配偶者の母(Z)と戦没者(A)との間に養祖母孫関係は生ずるか。なお、(X)及び(Z)のそれぞれの配偶者は、戦没者の入夫婚姻前に死亡している。
(答) 御照会の養子となつた戦没者(A)と養母(X)の配偶者の母(Z)との養祖母孫関係は生じないものと解する。
(問一七) A女がX家の選定家督相続人となり、B男を養子に迎えた後、A女は隠居しY家に嫁した場合、A女とB男の養親子関係は消滅するか。
(答) 御照会の場合の養親子関係は消滅しないものと解する。
(問一八) 日本赤十字社救護員に対する遺族援護法上の取扱いについては、昭和三十八年七月一日援発第五七○号通達「日本赤十字社救護員に関する戦傷病者戦没者遺族等援護法上の取扱いについて(通達)」(以下「援発第五七○号通達」という。)をもつて示されたところであるが、これらの者に係る該当者のは握及び請求書の受付、進達等についても、昭和二十八年十月二十二日援護第八九号通知「日本赤十字社救護員に関する戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用について(通知)」の要領により日本赤十字社からの確認申請を受け、該当者については、厚生省から該当都道府県に対して通知されるものであるか(愛媛県)。
(答) 援発第五七○号(通達)をもつて遺族援護法上軍属又は準軍属として取り扱われることとなつた「日本赤十字社救護員」に係る該当者のは握及び請求書類の受付、進達等については、昭和三十四年三月二十七日援発第二六九号通達「日本赤十字社救護員に関する戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用について」により、一般の軍属又は準軍属の場合と同様の要領によつて取り扱うこととしているので了知されたい。
(問一九) もとの陸軍の軍人が昭和二十八年八月一日以後に死亡し、公務扶助料が裁定されているが、弔慰金が却下となつている事例がある。この場合、弔慰金の裁定替をされるか(宮崎県)。
(答) 原則として弔慰金の裁定替を行なう予定なので、御照会のような事例があれば、個別に当局へ連絡されたい。
(問二○) 法律第百八十一号附則第十八項の規定により、遺族年金の額の改定を受けることとなつた者の請求にあたり、次の場合、扶助料権を有する者がいなくなつたことを立証するには如何なる書類を添付すればよいか。
(1) 扶助料権者が請求時効により扶助料権を失つたと思われるとき。
(2) 扶助料権者(妻)が事実婚関係に入り扶助料権を失つたと思われるとき(大阪府)。
(答) (1)の場合においては、時効期間内に扶助料権者から扶助料の請求がなかつたことについての丙都道府県知事(死亡した者が除籍された当時における本籍地を管轄する都道府県知事をいう。)の証明書を添付されたい。
(2)の場合は、恩給局の失権処分によりはじめて失権するものであるから、遺族年金の額の改定の請求は、失権処分をまつて、当該処分についての通知書等恩給局の証明書を添付して行なわれたい。